三重県のしじみ生産者が苦難を乗り越え取り組む 未来につなげる地域の漁業─赤須賀漁協の挑戦─
生活クラブのしじみ生産者のひとつに、三重県漁連の赤須賀漁協があります。
この地域では、長年の度重なる周辺環境の変化からしじみの漁獲量が大幅に減ったことにより、2年前に消費材の供給を休止せざるを得ない状況になりました。漁業者が回復に向けて努力を続けた結果、2022年10月から供給を再開しています。どのような取組みなのか一緒に見ていきましょう。
生態系バランスの崩れがしじみの減少につながっています
貝類の産地偽装が国内で問題になるなか、生活クラブは産地を明確に特定できるしじみを届けたいとの考えから、2002年より三重県・赤須賀で獲れるしじみの供給を開始しました。赤須賀は、伊勢湾の海水と木曽三川(木曽川・長良川・揖いび斐川)の淡水が交わる河口域に面し、しじみの産地として知られていますが、2002年頃から漁獲量が減少。背景には、農業用水の確保や防災などを目的とする長良川河口堰ぜきやダムの建設などにより、川の流れが乏しくなり、しじみの産卵場に必要な砂や栄養分が山から川を通って流れなくなったことが挙げられます。また、大規模な干拓や埋め立てなどにより干潟も失われたことで、海岸に生息する生き物が減少し、生態系のバランスが崩れたことも影響していると赤須賀の漁業者は考えています。
1990年代半ばには2,000トンを超える漁獲量を誇っていましたが、2020年以降は100トンに満たない年もあるなど大幅に減少しています。
1945年頃の木曽三川河口周辺には、広大な干潟が広がっていましたが、2016年頃には大部分が失われてしまいました。
独自の厳しい規制を設けてしじみの資源管理に努める
漁獲量の減少を受けて、漁業者で話し合い、赤須賀漁協独自の厳しい漁獲規制を導入しました。年間120日程度を上限とした出漁制限や1日あたりの漁獲量制限、小さい貝は川へ戻すなど資源管理を強化。さらに、産卵のための砂地を回復させ、山から流れ出した栄養分が川を伝って漁場が豊かになることから、これまでも続けてきた植樹活動も継続しています。
このような取組みの結果、赤須賀のしじみの漁獲量は過去最低を脱し、ようやく回復の兆しが見えてきました。稚貝も見られ、このまま成長すれば来年にもつながる見込みです。
このような取組みの結果、赤須賀のしじみの漁獲量は過去最低を脱し、ようやく回復の兆しが見えてきました。稚貝も見られ、このまま成長すれば来年にもつながる見込みです。
赤須賀漁協では、漁獲サイズや漁獲量に制限を設けて資源管理に努めています。
豊かな山、川、海を守り 次世代にも残していきたい
赤須賀漁協の水谷隆行さんは「しじみの不漁は、伊勢湾にも影響があることへの警鐘」と捉え、次のように語ります。「川はその先にある伊勢湾へとつながります。かつて山の栄養分が川や海を育み、食卓を豊かにしてくれました。私たちは、干潟観察会や地元小学校との交流などを通して、『豊かな川があってこそ豊かな海となる』ことを多くの人に知ってもらい、貝が棲む豊かな環境を次世代にも残していきたいです」。
漁業者の数は減っているものの、想いを持った若手の後継者にバトンは受け継がれ、環境保全活動が続けられています。生活クラブも、ともに活動できることを検討していきます。産地の状況や漁業者のたゆまぬ努力に想いを馳せながら、生産者から届くしじみを、これからもおいしく食べていきましょう。
漁業者の数は減っているものの、想いを持った若手の後継者にバトンは受け継がれ、環境保全活動が続けられています。生活クラブも、ともに活動できることを検討していきます。産地の状況や漁業者のたゆまぬ努力に想いを馳せながら、生産者から届くしじみを、これからもおいしく食べていきましょう。
赤須賀漁業協同組合
水谷 隆行さん
水谷 隆行さん
2023年4月に行なわれた組合員の代表による産地視察では、20~30代の若手漁業者から「子どもの頃は漁を手伝うのが嫌だったが、就職して社会人になってから漁師の魅力に気づいた」「収入は安定しないが漁師はおもしろい、やりがいのある仕事」などの想いが語られました。
赤須賀漁協では地域の漁業を未来につなげるためさまざまな取組みを行なっています。
海の環境を守り、食料主権の考え方を基軸とした国内生産の追求と公正な調達を行ないます
地球の生態系を維持しながら、水産加工品をつくり食べ続けていけるよう、提携生産者が抱える課題にも取り組み、国内自給力のアップをめざしています。
地球の生態系を維持しながら、水産加工品をつくり食べ続けていけるよう、提携生産者が抱える課題にも取り組み、国内自給力のアップをめざしています。
★生活クラブ食べるカタログ 2023年8月5回(35週)より転載しました。
【2023年8月7日掲載】