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ぶどうの樹と仲間と、ともに人生を【スチューベン、キャンベルアーリー、ナイアガラ 他】


JA秋田ふるさと 十文字こだわりぶどうの会は、秋田県の南部、横手盆地にある十文字町でブドウを生産する15人のグループだ。土地の気候に合った品種を選び、互いに栽培の技術を高め合いながら味の良いブドウ作りに取り組んでいる。

順調な実り

全国的に猛暑が続くお盆の前。秋田県横手市の十文字町でブドウを生産する「JA秋田ふるさと 十文字こだわりぶどうの会(以下・こだわりぶどうの会)」のメンバーは、園地巡視会を行った。

こだわりぶどうの会は毎年収穫時期の少し前に、互いの園地を訪問しブドウの生育状況を確認する園地巡視会を行う。巡視が終わると、自分が見た園地の様子をそれぞれ報告する。副会長の菅原良助さんは、「私が見た園地は病気もなく、順調に生育していました。これから朝晩の温度差が大きくなると、色づきも良くなるでしょう」と報告した。

高橋和一(わいち)さんは、「自分が見た園地はブドウの粒がそろっていました。一部に黒とう病が出ていましたが、大事には至らないようです」と話す。黒とう病は大雨が降った後に出やすい病気だ。防除の判断が遅れると粒の表面に黒い斑点が現れ、出荷できなくなる。菅原信子さんは、「今年はうすくして収穫が少ないようです。みんなよく頑張っていました」と笑顔の報告だ。「うすくして」とは、単位面積当たりにできるブドウの房の数を少なくすること。収穫は減るが、完熟するのが早まり、樹(き)への負担も軽くなる。こだわりぶどうの会の栽培方法の特徴の一つだ。

参加者は、今年も無事に収穫を迎えられる喜びと安堵に包まれた。会長の小松正司さんも笑顔を見せる。「暑い日が続き雨量も少なく、粒の肥大はもうひとつですが、甘味がよくのったブドウができました。キャンベルアーリー、ナイアガラ、スチューベンと、順次出荷します。ご苦労さまでした」と参加者をねぎらった。

減農薬栽培へ

横手市は豪雪地帯。ブドウ棚の上まで雪が積もり、雪の重みで樹が割れてしまうこともある

十文字町で、こだわりぶどうの会が設立されたのは30年以上も前。十文字町は西の出羽山地と東の奥羽山脈に囲まれた横手盆地の中にある。夏は暑く、冬は積雪が2メートルを超える豪雪地帯だ。朝晩の寒暖差も大きい盆地特有の気候にあり、味の良い果物が生産される。

1970年代の高度経済成長期には、農薬や化学肥料を大量に使う農業が行われていた。化学物質による生態系や人体への影響を懸念した消費者は、このような農法に疑問を持つようになる。

十文字町でブドウを生産していた農家は、食品の安全性を求める首都圏の消費者の要望に応じ、こだわりぶどうの会を設立し減農薬のブドウ栽培に取り組んだ。
「それまでの農法を変えることに不安はありました。でもできないことではありませんでしたよ」と小松孝志さん。「収量は少なくなりましたが、価格は安定し、今まで続いています」。現在のメンバーは15人だ。

こだわりぶどうの会の化学合成農薬の使用量は一般の農法の半分以下に抑えられ、除草剤は使わない。小松さんは、「ブドウは病気にかかってしまったら治療薬はないので、必要な時は生活クラブの使用基準に従って最低限の効果的な防除を行います」。病害虫の広がりを防ぐためには、短い間隔で園地を見回り点検することが大切だと言う。

みんなで選果

他の果物と同じように、ブドウ栽培にかかる作業は、ほとんどが人の手による。
4月末に新しい芽が出てくると、混み合わないように「芽かき」をして健康な芽を残す。花芽が出たら粒がそろった房に育つように余分な花芽をかく。結実して粒が大きくなってきたら袋をかけて色づきを待つ。
収穫は樹上で完熟してから。会長の小松さんは、「ブドウはリンゴなどと違い、追熟しません。消費者の皆さんになるべくおいしく食べていただきたいので、完熟するまで樹にならせておきます」と、語る。しかし適度に熟した頃を見計らうのは難しい。収穫時期の見極めは、園主の判断に任せられる。

収穫したブドウは、品種ごとに、出荷したメンバーで選果する「目揃(めぞろ)え会」を経て出荷される。見た目や傷、重さ、糖度などの基準はあるが、その年の雨量や気温など、生育条件も考えに入れて判断する。副会長の菅原さんは、「収穫したものを自由に出荷しているわけではないのです。質の良いものを食べてもらいたいと、みんなで選果していますよ」

ブドウの粒は白い粉で覆われているように見える。これはブルームと言って、果実から分泌される物質だ。水分の蒸発を防ぎ病気から守る役割がある。このブルームがきれいなほど、新鮮で品質が良いとされ出荷の基準になる。指などでこすると簡単に取れてしまうので、ブドウ農家は収穫から出荷まで気が抜けない。
十文字町を東西に流れる皆瀬川に沿って広がるブドウ畑

ブドウとともに

設立より30年以上が過ぎたこだわりぶどうの会は世代が変わり、ブドウ作りは親から受け継いだ生産者がほとんどだ。

その中で定年後に会に加わりブドウ作りを始めた会員もいる。「家が農家で、身内で食べるぐらいのブドウを作っていました。会長の小松さんに誘われて本格的に始めましたよ」と言うのは、横手市役所職員だった小川孝行さん。「少しずつ教えてもらいながら作っています。年数がたてばたつほど難しいと感じるようになりました。ブドウ作りは奥が深くて楽しいですよ」。安倍幸一(あんばいこういち)さんは57歳で早期退職し農業に就いた。13年前からこだわりぶどうの会でスチューベン、キャンベルアーリー、シャインマスカットを作る。「ブドウを作り始めてから17年が過ぎますが、まだまだひよっこですよ」と笑う。

近年、気候が変わり、収穫時期の夜の気温が下がらなくなった。熱帯夜のまま朝を迎える日が多くなり、ブドウが思うように色づかないことがある。さらに消費者の嗜好は巨峰やピオーネなどの大玉のものに移っている。

会長の小松さんは、「会のメンバーが高齢になってきたこともあり、今のところは園地の面積を維持することに力を注いでいます」と言う。香りの良いキャンベルアーリーやナイアガラ、糖度が高く独特のうま味があるスチューベンなどの品種やその栽培方法を守っていきたいそうだ。

そのうえで、オリエンタルスターやヌーベルローズなどの新しい品種の栽培にも取り組み始めた。菅原さんは「4年ぐらい前から新しい苗木を育てていますよ。植えてから木が落ち着くまでに時間がかかります。どうすれば色がつくかなども模索中です」と楽しそうだ。「なるべく手をかけず、省力栽培できる品種を探しているところです」と小松さん。
こだわりぶどうの会はメンバー全員で、ブドウの樹とともにある人生を長く楽しみたいと考えている。
 



撮影/田嶋雅已
文/伊澤小枝子

ブドウの味わい


甘い果汁たっぷりのブドウは果糖やブドウ糖などの糖質が主成分だ。体内ですばやくエネルギー源となり、猛暑日や熱帯夜が続く夏を過ごした体を元気づけてくれる。
ブドウの生産者グループの一つ、秋田県横手市にあるJA秋田ふるさと 十文字こだわりぶどうの会は、毎年1回、収穫前に園地巡視会を開き、メンバーが互いの園地を訪問しブドウの生育状況を点検し合う。その報告会の会場に、女性の会員が集まるひときわにぎやかなテーブルがあった。

「私たちみんな、結婚してブドウ作りをするとは思っていなかったのよ」と、菅原信子さん。「兼業農家で、最初は義父といっしょにブドウ作りをしていました。今は夫も仕事をやめていっしょに作っていますよ」。みんな同じような環境だそうだ。

橋本名緒子さんは「こだわりぶどうの会に入ってみんなと知り合い友達になりました。とても楽しいです」と、ブドウ栽培や日ごろの暮らしの情報交換をし、いっしょに園地巡視会や目揃(めぞろ)え会にも参加する。

会長の小松正司さんが開催する講習会がとても勉強になると言うのは、嶋田多津子さん。小松さんは開花する頃から定期的に、圃(ほ)場でその時々の作業をしながら講習をする。「会に入って最初の頃は、ブドウ作りは初心者でした。わからないところは聞いて、と言われても何を聞いていいかわからない状態でした」と笑う。園地での講習会では、房や粒の大きさなど自分の畑の状況と比べ、なぜ違うのかなどを聞くことができる。「品種によって栽培方法が違うので、新しい品種の栽培を始める時は、とても役に立ちます」。シャインマスカットやオリエンタルスターなどの栽培にも挑戦している。

小川照子さんも結婚してからブドウ作りを始め、年を重ねてきた。夫に教えられながら一人前になったが、夫は体調を崩し、今は畑に出ることができない。圃場の面積を4分の1に減らし、一人でできる範囲で作業をしながら、夫とともにさまざまな困難を乗り越えてきたこれまでの道のりを振り返っている。

「子育ては終わりましたけど子どもたちはブドウを作らないの」と菅原さん。みんなが「そうそう」とうなずき合う。それでも笑顔が絶えないのは、こだわりぶどうの会の一員として自信を持ってブドウ栽培に取り組み、想(おも)いを同じくする仲間がいるからだろう。

キャンベルアーリー、ナイアガラ、スチューベン、オリエンタルスター。十文字町で作る人たちの姿を思い浮かべながら食べるブドウは、いつもの秋とは一味も二味も違う。
 
「十文字こだわりぶどうの会に入って友達になりました」。右から、橋本名緒子さん、菅原信子さん、小川照子さん、嶋田多津子さん
撮影/田嶋雅已
文/伊澤小枝子
 
『生活と自治』2023年10月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2023年10月20日掲載】
 

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