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生協の食材宅配【生活クラブ】
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香り高い生みそを届けて、半世紀


 
1972年、生活クラブのオリジナル消費材第1号として、信州田舎みそ(こうじ、こし)が開発された。生産者は長野県長野市にあるマルモ青木味噌醤油(みそしょうゆ)醸造場。当時は高度経済成長期にあったが、大量生産、大量消費とは縁のない、時間をかけたみその醸造を続けていた。それから50年。香り高いみそを造り届け、発酵食品としての魅力を伝えている。

信州で造る

みそは大豆とこうじと塩を混ぜ合わせて発酵熟成させたもの。米、麦、大豆にこうじ菌をつけると、それぞれ米こうじ、麦こうじ、豆こうじの3種類ができる。

蒸した米にこうじ菌をつけ繁殖させたものが米こうじだ。大豆をゆでてつぶし、米こうじと塩を一緒に仕込むと、数カ月から1年程度で米みそができる。米こうじに含まれる酵素が、タンパク質をうま味成分のアミノ酸に、でんぷんをブドウ糖に分解する。ブドウ糖からはさらに酵母によってアルコールがつくられ、香りのもととなる。みそは、醸造期間中に時間をかけて、さまざまな微生物がはたらき、うま味や甘味、独特の香りが生まれる発酵食品だ。

生活クラブ連合会の提携生産者、マルモ青木味噌醤油醸造場(以下、青木味噌)は長野県長野市にある。山々に囲まれた善光寺平は寒暖の差が大きく、みその醸造に適した地だ。大豆を浸しゆでたり米を炊いたりする水にも恵まれている。通常は半々だが、この地域では大豆10に対して米こうじを6から7割程度の分量で仕込む。大豆の比率が多いみそは、長い熟成期間に香りが際立っていく。「この香りが信州味噌の魅力ですよ」と、代表取締役社長の青木幸彦(ゆきひこ)さんが、全国でも多くの人に愛用され、人気がある理由を教えてくれた。
こうじの原料の米を蒸す釜から湯気が立つ
 
一度に2トンの大豆を蒸す釜。作業はオートメーションで進むが、水の量や蒸す時間など、農産物の加工には、人の感覚が必要だ

生みそだからこそ

青木味噌では、年間を通して一定の温度で醸造する温醸造と、季節の移り変わりの中で醸造する天然醸造の二つの方法でみそを造る。製造部長の柳本正澄さんは、長年青木味噌でみそを仕込んできた。「気温が上がる夏は、天然醸造蔵では酵素の働きが活発になり、みそを仕込んだたるの中から、ぽこっぽこっという音が聞こえてきます。酵母がブドウ糖からアルコールをつくる時に炭酸ガスを発生するからです。この音を聞くと微生物が生きて働いているんだなと、しみじみ思いますよ」と言う。
 

マルモ青木味噌醤油醸造場の製造部長、柳本正澄(まさずみ)さん。「みそを熟成させる天然醸造蔵では、みそが生きていることを実感します」
みそをそのまま密封包装すると、生きている酵母が活動して炭酸ガスを発生する。パッケージが膨らまないようにするためには酵母を休ませる必要がある。青木味噌では、2%のアルコールを添加するか、冷蔵して酵母を仮眠させる。常温で流通するには、アルコール添加の他に、パッケージに空気穴のバルブをつける方法をとる。しかし市販品の多くは効率よく加熱によってこうぼ菌を殺す方法をとるため、「生みそ」ではなくなっている。

青木さんは、「みそは良質な植物性タンパク質を含み、体調を整えたり病気を予防する機能性を持つ発酵食品です。加熱殺菌したみそは酵素も菌もすべて死滅しています。機能性を発揮するのは生みそだからですよ」。これが生みその魅力だ。
たるには約3トンのみそを仕込む。空気が入らないようにたんねんに表面をならす
 
仕込んだみそを温醸造蔵で熟成させる

大豆と米は契約栽培

マルモ青木味噌醤油醸造場の代表取締役社長、青木幸彦さん。「日本特有のこうじ菌で造る生みそは、今、世界でも注目されています」
 
日本の大豆は用途にあわせて、豆腐向けに色を白くしたり、煮豆向けに粒を大きくしたりと品種改良がされてきたが、みそを造ると物足りない色調に仕上がる。青木味噌は色がきれいなみそができる中国産の有機丸大豆も使っているが、国産の原料を使おうと、生活クラブと共に根気よく国内の原料生産地を開拓し、2000年には、消費材の原料大豆をすべて国産に変えた。

「みその原料の6割ほどは大豆。おいしい大豆を使うことが基本です。北海道の大豆は粒が大きい煮豆用で、きめが細かく軟らかく煮えますよ」と青木さん。JAこしみずの大豆を中心に、契約栽培をする北海道産を使う。

みそのもう一つの主な原料はこうじを作る米。山形県のJA庄内みどりを中心に、長野県のJAながのとJA上伊那と提携し、契約栽培する加工用米を使う。主食用の米と同じものだが用途を限定して作付けすると約束し、加工用途向けに販売する米だ。長野県の両JAは、県内の生活クラブの提携生産者と生活クラブが組織する「ぐるっと長野地域協議会」のメンバーでもある。同じ県内の生産者が協力して原料や飼料を自給し、組合員と共に、資源の地域内循環をすすめている。
青木さんは、「大豆も地元産を使いたいと思いました。でも、長野県産はみそ造りには合わないようです」と残念そうだ。

23年の夏は全国的に猛暑日が続いた。「暑かったですが、天気に恵まれたので、米も大豆も収量はよかったです。ただ、品質が思うようにはいきません。主食用米は1等米が少なく、収量が多かったのは2、3等米です。それより粒が小さい米はくず米と言われ、みそやせんべいなどの米菓の加工品の原料となりますが、このくず米が極端に少なかったのです」。青木さんは、米を原料にしたせんべいやみそなどの市販品は、輸入米を使ったものが増えると思いますよ、と予想する。

「原料は農産物ですから、年によって収量や品質、価格が変動します。国産原料を安定して手に入れられるのは、生活クラブと一緒に取り組んできた成果です」。原料生産地を一つ一つ訪ね直接提携し、契約栽培によって信頼関係を築いてきた青木味噌だ。

香るみそ

1972年より利用されている信州田舎みそは、生活クラブが初めて独自に開発した消費材だ。当時は高度経済成長期で、大量生産・大量消費がされ、みそは短期間で熟成させ、防腐剤や着色防止用の漂白剤が使われていた。そうした中でも青木味噌は、大豆と米こうじと塩を原料に、それまでと変わらない方法でみそを造っていた。

生活クラブは一切の化学薬品を使わないみそを造れないかと青木味噌に要請、醸造期間は短いが味や品質が安定する温醸造と、その時々の気候に左右されるが風味がよく仕上がる天然醸造をブレンドした信州田舎みそを開発した。香りのよいみそは、現在まで長く愛用されている。
 
信州田舎みそがオリジナル消費材第1号として登場してから半世紀が過ぎる。組合員の世代が代わり、嗜好(しこう)やライフスタイルが変わった。組合員から信州田舎みそのリニューアルの提案があった時、青木さんはそれまで慣れ親しんだみそはそのままに、新しいみそを開発することを提案した。
組合員と話し合いを重ね、2012年、国産十割こうじみそが誕生する。これまでとは原料割合を変え、大豆と米こうじを同じ割合で造ったところ、優しい味わいで、明るい色に仕上がった。使いやすいようにという要望に応えて容量を半分の500グラムに減らし、カップ入りにした。仕様は変わっても生みそに変わりはない。

「こうじ菌は、温暖で湿潤な気候の中で育つ日本独特の菌です。その働きで造られる優れた発酵食品であるみそを、長く伝えていきたいですね」と青木さん。長男で営業部の青木孔之介(こうのすけ)さんは「ウチのみそを使うと、だしがなくても具材を煮て最後にみそを溶いても十分においしいみそ汁ができます。手軽に作ってみてください」とすすめる。具材の味をまとめたみそが、ふわりと香るようだ。
 
マルモ青木味噌醤油醸造場の営業部、青木孔之介さん。「みそ用のこうじ菌はくすんだ黄色、麹(こうじ)甘酒用のこうじ菌は真っ白です。それぞれに働きぶりがちがうんですよ」

 
撮影/田嶋雅已
文/伊澤小枝子

「麹(こうじ)甘酒」をどうぞ

麹甘酒の原料のこうじ
 
米こうじと蒸した米で作る「麹甘酒」は、温めると香りが立ち、やさしい甘い味がする。酒かすに砂糖を加えて作る甘酒とは違いノンアルコールで、酒が苦手な人や子どもも飲める。

麹甘酒の原料の米こうじは、みその原料と同じように、米にこうじ菌をつけて作る。しかし、こうじ菌はみその原料の米こうじを作るこうじ菌とは違うものだ。

「こうじ菌はいくつも種類があり、働きもそれぞれに違います。とてもデリケートで、一つの工場で作れるこうじは1種類だけです」と話すのは、マルモ青木味噌醤油醸造場の営業部、青木孔之介さん。大学を卒業し他社へ就職したが、3年前より青木味噌の社員だ。麹甘酒の工場を任され、みその製造にも取り組んでいる。「青木味噌の工場で作るこうじは、米みそを造るための米こうじです。工場では麦みそも造りますが、麦こうじは他社より購入し、仕込んで製品にした後は、製造に使った器具やラインをていねいに洗浄しています」と、こうじ菌の扱いにはとても気を使うと言う。
麹甘酒を作る工場は、使うこうじ菌が違うため、青木味噌から車で20分ほど離れた須坂市にある。工場では、蒸した米に白いこうじ菌を手作業でまぶし二晩置き、米こうじを作る。そこに蒸した米と水を加え、18時間ほど60度に保つと麹甘酒ができる。

原料の米は長野県のJA上伊那が提供する加工用米だ。青木味噌が、ぐるっと長野地域協議会を通して契約栽培してもらっている。加工用米は、減反による休耕田や耕作放棄地を再生した田んぼを利用し栽培され、みそやせんべいなどの米菓の原料に使われる。契約栽培なので、農家は計画的に米を生産し、田んぼの機能を損なうことなく、田んぼとして使っていくことができる。

米こうじで作る甘酒は栄養豊富で、「飲む点滴」とも言われている。米こうじに含まれる酵素が、米のでんぷんを分解してブドウ糖やオリゴ糖を作り、それらが疲労回復や腸の働きを整える、といった働きがあることが知られている。

冬に温めて香りを楽しみながら飲み、体を温めるのはもちろん、夏に氷を浮かべて飲んでも疲労回復効果が期待できる。俳句の世界では、甘酒は夏の季語だ。江戸時代はてんびん棒をかついだ甘酒売りが江戸の町中を売り歩いたという。暑気払いの栄養ドリンクとして人気があったそうだ。

これからも猛暑が予想される。夏を乗り越えるために、こうじが作り出す栄養豊富な発酵飲料が活躍しそうだ。
 
撮影/田嶋雅已
文/伊澤小枝子
 
『生活と自治』2024年1月号「連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2024年1月20日掲載】
 

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