本文へジャンプする。
本ウェブサイトを利用するには、JavaScriptおよびスタイルシートを有効にする必要があります。
生協の食材宅配【生活クラブ】
国産、無添加、減農薬、
こだわりの安心食材を宅配します。
ここからサイト内共通メニューです。

子どもの甲状腺検査活動(2022年度)・保養活動の報告会を開催しました


生活クラブでは組合員からのカンパをもとにした「災害復興支援カンパ基金」を通じ、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故(以下、福島第一原発事故)で被災した方々への支援活動を続けています。そのひとつが、2012年度から毎年続けている生活クラブ独自の甲状腺検査です。また、被災者の保養活動のサポートなども行なっています。
2022年度の活動内容を共有する「甲状腺検査活動2022報告会」を、2023年11月25日に東京都の会場とオンラインで開催。あわせて72人の組合員が参加しました。

震災後から続ける独自の甲状腺検査活動

2011年の福島第一原発事故によって放射性物質が拡散されたことから、被ばくによる甲状腺がんの発生が懸念されています。年齢が低いほどかかるリスクが高いとされていますが、医学的にまだわかっていないことが多い状況です。
生活クラブでは、原発事故のときに福島県にいた子どもだけでなく、福島県以外の子どもにも甲状腺検査を実施しています。
福島県は「甲状腺検査で見つかったがんと、原発事故による被ばくとの関連は認められない」という見解を示していますが、生活クラブは「福島の子どもと知る権利を守る活動」として独自に検査を継続。福島県と他地域を比べ、また全国各地での実態を調査することで、甲状腺がんの早期検診を実現し、ひいては脱原発活動にまでつなげようとしています。

2019年度以降、コロナ禍で活動が計画通りにすすまず、また事故から年数が経ったため検査件数は減少傾向にあります。しかし、希望者の「検査を続けたい」という声に応えるため、2022年度は19地域の生活クラブで甲状腺検査を実施。299人の子どもが受診し、活動には44ヶ所の医療機関が協力しました。

被ばくリスクを確かめるために大切な検査

社会医療法人 道北勤労者医療協会・ながやま医院院長の松崎道幸医師
 
報告会では、生活クラブ連合会から2022年度の検査活動の報告をしました。その後、生活クラブの甲状腺検査を監修する、社会医療法人 道北勤労者医療協会・ながやま医院院長の松崎道幸医師が講演しました。

福島県と国の甲状腺検査に対する従来の考えは、「甲状腺がんによって亡くなるリスクがある人は少なく、基本的に検診は不要。無症状の人たちへの検診は過剰で、デメリットのほうが大きい」というものです。ただ松崎医師によると、事故から年数が経つにつれて専門家からは空間線量が高かった地域でがん患者が多かったことなどを認める発言も出てきているといいます。
さらに松崎医師は、「福島県内での検査がすすむにつれ、これまでに見つかった小児甲状腺乳頭がんのデータでは、従来予想されていたよりも腫瘍が大きく、患者の260人中219人がすぐに手術が必要な段階だった」と報告。甲状腺がんは死亡率が低いものの発見が遅れると再発率が高く、検査による早期発見が必要だとあらためて主張し、「生活クラブの甲状腺検査は、市民の立場から放射線被ばくの影響を明らかにする活動として、大きな意義がある」と語りました。

被ばくを訴える若者たちとともに闘う

「311子ども甲状腺がん裁判」弁護団長の井戸謙一弁護士
 
続いて、「311子ども甲状腺がん裁判」弁護団長の井戸謙一弁護士が講演しました。この裁判の原告は、福島第一原発事故当時、福島県内に住み、その後小児甲状腺がんを発症した18~29歳(事故当時は6~16歳)の7人の若者たちです。東京電力ホールディングス株式会社(以下、東京電力)に損害賠償を求め、2022年に東京地裁に提訴しました。

もともと小児甲状腺がんは極めて珍しい病気で、一般的には年間の発症数は100万人に1~2人ほどです。福島県では、事故当時18歳以下の子ども約38万人を対象とした甲状腺検査を2011年から実施。その結果、2023年7月までに公表されているデータでは発症数がすでに316人にのぼり、集計外も含めれば358人に達することがわかりました。しかし福島県と国は「潜在的ながんを検査で早期に発見しただけ」との姿勢を崩していません。
福島県の甲状腺検査は、治療の必要がない潜在がんを摘出して子どもに無用な負担をかけることのないよう十分な注意が図られています。しかし福島県内で実際にあった手術の多くの例では、リンパ節転移や被膜外浸潤が生じて手術適応と判断されるものでした。井戸弁護士は無用な手術はないことなどを理由に、小児甲状腺がん多発の原因は被ばくであると訴えています。加えて、「被ばく被害を軽視する国の姿勢を背景とした社会のバッシングにより、福島県内の住民ですら被ばくの不安を言えない風潮ができてしまっている」と主張。原告の若者たちはがんの手術や再発に苦しみながらも「自分と同じような仲間の力になりたい」と裁判に臨んでいると話し、裁判への理解と支援を求めました。

避難経験者の立場から、原発事故の責任を問いたい

京都府立大学大学院博士後期課程の明智礼華さん
 
次に登壇したのは、京都府立大学大学院在学中の明智礼華さん。福島県いわき市出身で、原発賠償京都訴訟原告団の一人です。福島第一原発事故が起きた当時、明智さんは地元にいました。原子炉建屋の爆発をニュースで見て、「得体の知れないものが吹き出してしまった」と恐怖を感じたといいます。安定ヨウ素剤が配布される非常事態の中、明智さんは進学先の京都府へ家族とともに自主避難しました。

明智さんはその後も福島県での甲状腺検査を受けていましたが、今後もし数値が悪くなってしまったらと思うと辛くなり、検査を数年間避けていたそうです。「自分の気持ちに向きあってくれる専門家の方々に相談する中で、また検査に行けるようになった」と話しました。
原発賠償京都訴訟では、「健康に影響がなくとも、健康に対する権利という観点から避難が認められるべき」との立場で国や東京電力を相手に闘っています。一審では国などの責任が認められたものの、明智さん自身は避難先が進学先でもあったために権利が認められませんでした。現在は大阪高裁での裁判をすすめているところです。

明智さんは、「生まれた時から原発がそこにある生活でしたが、事故後に放射性物質によるリスクがあるとされた地域が置き去りにされたのを目の当たりにし、この責任は一体誰が負うべきなのかをずっと考えています」と苦しい心境を語りました。

被災の経験を話すことで見えてくるもの

リフレッシュツアー 埼玉単協
 
リフレッシュツアー 山梨単協
生活クラブでは2011年より各地の生活クラブで集まった復興支援カンパをもとに、福島県や栃木県の組合員の子どもと家族を「保養」の目的で招くリフレッシュツアーを開催しています。コロナ禍を経て、2023年は埼玉県と山梨県で4年ぶりに再開しました。

生活クラブ埼玉は「キャンプを通じて住む地域の違う子どもたちがすぐに仲良くなり、夜には親同士が話しあえる会も設けて交流を深めました」と報告しました。生活クラブ山梨では、ツアー後に参加者が交流する機会をつくろうとオンラインのアフター会も開催。参加者からは「福島県民の間でも複雑な感情があり、原発事故について腹を割って話せない。違う地域の方とのほうが話しやすい」との声がありました。

生活クラブふくしまからは、開催地域の組合員に感謝を述べるとともに、参加者から「震災後に生まれた子どもに放射線についてどう話したらいいか悩んでいましたが、福島で起きたことを話すきっかけになりました」などの感想が伝えられました。生活クラブ栃木からも「以前のような生活に戻ってほしいけれど、原発問題についてはこれからも向きあっていかなければいけない」との声が上がりました。

これからも検査活動を続け、子どもたちの未来を守る

報告会の最後に、石井清美生活クラブ生協埼玉理事長が次のように話しました。
「放射線、放射性物質などは存在するけれども目に見えず、体に影響を及ぼす怖いものであり、見えないがために忘れられてきている気がします。甲状腺検査を続けることで体への影響について知ることができ、保養活動も参加者にとって心のケアになっています。これからも、私たちにどんなことができるのか、各地域の組合員とともに考えていきましょう」

東日本大震災から13年、生活クラブでは今後も被災地や被災した人たちに寄り添い、子どもたちの未来のために検査活動を続けていきます。
【2024年1月22日掲載】

生活クラブをはじめませんか?

42万人が選ぶ安心食材の宅配生協です

生活クラブ連合会のSNS公式アカウント
本文ここまで。
ここから共通フッターメニューです。
共通フッターメニューここまで。