[本の花束2024年3月] オーガニックな庭は人や自然のつながりを育み、生態系を豊かにします Q-GARDEN 代表取締役 小島理恵さん
Q-GARDEN 代表取締役 小島理恵さん
(著者撮影:尾崎三朗)
(著者撮影:尾崎三朗)
庭の楽しみ方は人それぞれ。
自宅の庭でもコミュニティスペースでも。
生態系を育む庭仕事は、地域貢献にもつながります。
生活クラブの組合員でもある小島理恵さんに、その魅力をお聞きしました。
──オーガニックな庭を始めたきっかけをおしえてください。
大学卒業後に造園会社に就職しました。法人関係の部署で、工場周りの緑化などを担当していましたが、環境緑化を掲げながら、その緑を化学農薬で管理していたのです。化学農薬を吸うと体調も悪くなる。絶対に良くないと思っていました。上司に無農薬でやりたいと相談しましたが、「クレームがあったらだれが責任とるの?」と。会社を辞めて勉強をし直し、先輩と立ち上げた会社でオーガニックな庭づくりを実践していきました。
その後、独立しQ−GARDENを立ち上げ、今に至ります。
──小島さんが感じる庭づくりの魅力とは何でしょうか。
たとえば通勤で雨が降ると嫌ですよね。でも、庭づくりをしていると「助かった。これで草花が元気になる」と思うんです。
自然への価値観が変わるのは庭づくりのおもしろさだと思います。庭に家庭菜園や果樹をつくれば、身近で穫れたものをいただくぜいたくも味わえます。また、庭には鳥が遊びに来たり、蝶が飛んだり、生きものが集まり楽しめます。庭の手入れをしていると近所の方から声をかけられたりもしますね。
──実際に庭をつくる際に気をつけることはなんでしょう。
植物にはそれぞれ適した環境があるので、植えたい場所の環境を確かめて、合う植物を選ぶことです。とはいえ、いろいろ試して失敗して学ぶのがガーデニングです。ベテランなら失敗がないかといえば、そんなこともなくて、たとえば昨年の夏は雨が少なくて思ったより丈が伸びなかった、「もう少しこうしておけば」というのは毎年必ずあるんです。
ガーデニングをする人は長生きできるといわれます。その理由は、秋に球根を植えれば春の開花を見たいから。そして何より、来年はこう手入れしようと、いつも先のことを考えているからだと思います。
──庭のない人が楽しむアイディアはありますか?
自宅の庭を持つという固定概念を外して、公園でもカフェでも、そこに生き物がいて、自然と触れられる庭のような場所が身近にあればいいと思います。
最近ではみんなで管理をするコミュニティーガーデンを持つマンションも増えています。地域の公園には草花や樹木の手入れをする愛護会などもあります。
そういうところに参加するのもいいですね。自然に触れるだけでなく、共通の趣味の人同士が出会うきっかけになります。
──自然や人とのつながりは、地域のなかにある庭的な場所からもつくれるわけですね。
地域全体の自然を眺めると、庭もその生態系の一部です。庭の樹木が育ち、草花が増えると、周辺から虫や鳥が集まります。
その分、地域の生態系が豊かになっています。
──そこでは農薬を使わないオーガニックな庭が活きてきますね。
フランスでは、公園や街路樹、さらに家庭菜園でも化学農薬使用禁止です。日本では、定期的な散布を行わないなど公共の場や住宅地での使用を抑えるよう環境省が通知しています。
また、ホームセンターには、国によっては使えない農薬も置かれている一方、オーガニックの生薬、有機肥料や堆肥も探せます。情報は自分から求め、きちんと見極めることが大切です。パッケージの裏の成分表示を見て判断する。食品と同じです。
──化学農薬は、生態系全体に対してのダメージがありますね。
たとえば毛虫が嫌であっても、それは鳥の餌でもあります。舗装の多い都会では豪雨などで水の逃げ場がなくなり洪水が起きることがありますが、庭は雨水を土に染み込みませる役割も担います。広い範囲で庭を捉えると、庭づくりには社会貢献へとつながる一面があることがわかってきます。そうやって視野を広げて考えられるような世の中であるといいなと思っています。
インタビュー: 新田穂高
取材:2023年11月
取材:2023年11月
●こじま りえ/1971年神奈川県横浜市生まれ。信州大学農学部森林科学科卒業。大手造園会社などを経て2011年に(株)Q-GARDENを設立。化学的な農薬・肥料を極力使わないオーガニックな庭づくりを掲げ、ガーデンの設計・施工・年間管理を行うとともに、セミナー講師などでも活躍する。
『はじめてのオーガニックな庭づくり 植物の力を引き出すガーデニング術』
小島理恵 著
家の光協会(2023年2月)
21cm×14.8cm/159頁
小島理恵 著
家の光協会(2023年2月)
21cm×14.8cm/159頁
図書の共同購入カタログ『本の花束』2024年3月1回号の記事を転載しました。