Tハウス おむすび(生活クラブ生協埼玉)「子育て」を「孤育て」にしない。つながりのはじめの一歩を応援
【連載】みんなで広げる たすけあい
生活クラブグループの生協や関連団体では、福祉・たすけあいの活動や事業が各地でとても豊かに展開され、さらに広がりをみせています。これらの取組みを紹介します。
少子化、核家族化など、乳児とその保護者は地域の中で孤立を深めています。乳幼児と親たちの出会いの場「Tハウス おむすび(以下、おむすび)」は、同じ地域に住み、同じくらいの月齢の子どもをもつ親たちをつなげています。育児中に抱える「これでいいの?」「誰に相談すればいいの?」「不安でいっぱい」などの思いから一歩踏み出せる場を提供しています。
「おむすび」は2人の組合員の出会いから始まり、さらに一人ひとりのつながりによって広がっています。
参加者みんなで集合写真記念撮影。前列左から3人目(赤ちゃんを含む)が元川ひとみさん
「おむすび」では毎回、会の終了時に集合写真をパチリ。参加者は「来月は近所の人を誘ってきますね!」と言いながら帰っていきました。おむすびへの参加は一人ひとりのつながりで広がります。「おむすび」の発案者で、地域の助産師として活動する三田江利さんは、集合写真について「私が皆さんにおもてなしをしてもらった記念なんです!」とうれしそうに話します。
「おむすび」に集う赤ちゃんたちと保護者たち
「赤ちゃんがたくさん集まっている光景だけでも楽しいものですよ」と、元川ひとみさん(「おむすび」の運営者)に誘われ、川越市高階市民センターに伺いました。会場の和室では、乳児を抱いたり、畳の上に寝かせたりして、親たちがおしゃべりの真っ最中。ハイハイする子やおもちゃで遊ぶ幼児を見守る人たちもゆったりした感じで、思い思いの時間を過ごしていました。「若いママたちが地域でつながりをつくる場になればいいと思っています」(三田さん)。
「最近は近くの公園などに出かけても誰もいないこともあり、日中は子どもと二人きりで誰とも話さずいる人が、子どもと一緒にここへ来ておしゃべりすることで気持ちが開放されて元気になります。親の元気は子どもの元気につながります。同じ地域に住む人との出会いが次につながればいいなと思っています。地域の縁や親子の縁を結ぶ場にしたいのです」と、三田さんは「おむすび」に込めた思いを話します。
「おむすび」では、まったりした時間を過ごせるように、特別な活動やイベントは行なわないことにしています。元川さんは「育児に不安を覚えると誰かに正解を求めがちですが、おむすびでは助産師や先輩がアドバイスすることはありません。私たちは親たちの持っている、自分で考え工夫する力に共感し、寄り添うだけです」と言います。三田さんは「ここで出会った仲間で同じ階段を上っていくという思いが持てたらいいなと思っています」と、地域のつながりに期待しています。
参加者一人一人に声掛けをする三田江利さん(中央)
地域に必要とされる、このような素晴らしい活動はどのようにして始まったのでしょうか?
助産師の三田さんは、母乳相談や育児相談で出会った人たちに子育てサロンなどの情報を提供するのですが、「子どもが泣いたらどうしようか」「知らない場所には行きづらい」など、不安が先に立つ人を多く見てきました。そのため、「はじめの一歩がむずかしい人の後押しがしたい」と考えるようになりました。その思いを、生活クラブの活動で出会った元川さんに話してみました。すると「乳幼児と親たちが集まれるTハウス※をつくろうよ」と提案されたのです。元川さんは「よりそいサポーター」の研修を受け、三田さんは知り合いの人たちに「私が待っているから、よかったら来てみてください」と声をかけ、2023年11月に「おむすび」を始めることができました。
※「Tハウス」とは、生活クラブ生協埼玉が進めている地域に開かれた居場所活動です(約60カ所の「Tハウス」が活動中)。相談機能を担う組合員を「よりそいサポーター」として養成し、その人たちが中心となって地域で誰もが気軽に立ち寄れる場所「Tハウス」を定期的に開いています。生活クラブ生協埼玉から月3000円の補助もあり、会場費や交通費などに充当できます。
元川さんと三田さん。それぞれ思いをもった組合員が出会い、持ち味を活かすことによって、また生活クラブ埼玉からの資金的な支援によって、「おむすび」の立ち上げにつながりました。
おむすびの開催は毎月第3月曜日10時~11時30分。場所は川越市高階市民センター。参加費なし、事前予約不要です。
【2024年5月7日掲載】