高齢化社会の「孤」を支える、地域(生活クラブ)の柔軟な支援 第7回 生活クラブ 福祉・たすけあい研究交流集会
3月26日に「第7回 生活クラブ 福祉・たすけあい研究交流集会」を開催しました。6人の講師の方々(基調講演と4つの分科会)からさまざまなお話をいただき、生活クラブがこれまで取り組んできた活動は、今後ますます必要とされる「制度によらない柔軟な支援」につながる、ということを理解するとともに、今後に向けて前向きな気持ちを共有することができました。
当日は、福祉・たすけあいに携わる生活クラブの組合員や、関連団体のメンバーなど、約280人が東京会場とオンラインで参加しました。
当日は、福祉・たすけあいに携わる生活クラブの組合員や、関連団体のメンバーなど、約280人が東京会場とオンラインで参加しました。
基調講演 「個・孤の時代の高齢期を生き抜く 地域の力に期待すること」
講師:沢村香苗氏(日本総研シニアスペシャリスト)
多くの人は高齢になると、元気な「個」から支援が必要な「弧」になっていきます。かつて家族が担っていたさまざまな「老後の面倒」に対し、家族形態が大きく変化している中でどう対処するのか。個々の課題を解決する専門家はいますが、制度や契約だけでは対応しきれません。全体として「老後の面倒」な暮らしを成り立たせるには、非専門な日常の「ちょっとしたこと」への対応が必要になっていきます。そこに登場するのが、家族だけでなく、友人・知人・近所の人など「制度によらないアメーバー支援者」の存在です。生活クラブがすすめている、地域の柔軟な支援はその一つではないでしょうか。
分科会1 循環型未来食堂 みんなの食堂
講師:川﨑敦子氏(特定非営利活動法人 芹川の河童 代表/一般社団法人 ゆめと月詩舎)
引きこもりや生きづらさを感じている若者も受け入れ、「逓信サロン~誰にも会いたくないカフェ」を運営しています。何をしてもいい場所、何もしなくていい場所です。ここで少しずつ働くことを経験し、社会とつながれるようになります。相互に支援する場所を作りたいと、「みんなの食堂」ができました。日替わり店長、「恩送り券」などさまざまな取組みもあり、福祉のように見えない場所だからこそ、地域の誰もが食を通じて集まる居場所になっています。
分科会2 地域が変わる、子どもが変わる、未来を変える 子ども真ん中のまちづくり
講師:栗林知絵子氏(認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク理事長)
子どもの貧困の問題に、地域の課題として取り組んでいます。子どもや親の声を聞き、プレーパークの活動から始めました。子ども食堂、無料学習支援、ホームスタート・わくわく、WAKUWAKUホーム(親子関係に煮詰まったとき、緊急に預かってほしいときなどの宿泊機能をもつ拠点)を運営しています。今、子どもたちの支援をしていることが、将来の高齢になった時の自分たちのアメーバー支援につながっていくのだと思います。コロナ禍の中では、居住支援や就労サポートに力を注ぎ、食料支援も始めました。いろいろな人が関わることで、「おせっかい」をまちに広げていきます。
分科会3 協同労働でつなげる「地域・人・モノ・経済」
講師:北田恵子氏(ワーカーズコレクティブういず 理事長)
地域のニーズに合わせた事業を展開したいと、一軒家を借りた居場所づくりから家事支援事業に発展しました。次いで、団地内の商店街の中で、地域のボランティアを主体に居場所を開いています。コロナ禍では休眠預金を活用してキッチンカーを購入し、フードパントリーを行ない、多くの人が利用しました。今まで関心のない人や企業などからの支援も広がりました。行政と提携して地域に根差した重層的なネットワークをつくり出し、拠点があることで人がつながることを実感しています。
分科会4 居住を地域で支える ホームタウンみなみの取り組み
講師:坂本左織氏(認定NPO法人さくらんぼ 理事・上写真右)・籠嶋雅代氏(横浜みなみ生活クラブ生協 理事長・上写真左)
ケア付きシェアハウス・多世代食堂・保育スペースを備えた「ホームタウンみなみ」を、生活クラブ旭センター(配送センター)の3階を活用して、2023年4月に立ち上げました。シェアハウスでは、「生活コーディネーター」を配置して、利用者が安心して社会に戻るための環境を整備しています。フードパントリーも行ない、社協や自治会とのつながりなどをつうじて、地域との関係も広げています。「地域づくりを実践・発信できる拠点を開きたい」と考えていた横浜みなみ生活クラブ生協と、「女性を対象にした居住支援事業を行ないたい」と考えていた認定NPO法人さくらんぼが協働しています。
【2024年5月8日掲載】