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生協の食材宅配【生活クラブ】
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大きな試練をのりこえて 新たに出会った仲間とともに【鶏卵】


 
2022年12月と翌年11月、生活クラブ連合会が提携する鶏卵の生産者、生活クラブたまごの養鶏農場で、鳥インフルエンザが発生した。生活クラブたまごは法令に従い防疫措置をとり、その後、再建に取り組んできた。同時期、国産飼料として近年注目を集める子実(しじつ)トウモロコシの栽培農家との新たな出会いがあり、飼料の国産化に向け新しい一歩を踏み出している。
 
埼玉県加須市にある子実トウモロコシのほ場。左より、子実トウモロコシの生産農家の山中哲大さん、鳥海充さん、生活クラブたまごの工藤一さん、栃木県開拓農業協同組合の神山雅如さん、米卸「神明」の松木飛鳥さん

鳥インフルエンザ発生

2022年から23年にかけて、日本全国で高病原性鳥インフルエンザ(以下・鳥インフルエンザ)が猛威を振るい、過去最多の発生となった。鶏卵価格が高騰し、家庭の食卓だけではなく、鶏卵を使わないメニューが考え出されるなど外食産業にも大きな影響を及ぼした。
生活クラブ連合会の鶏卵の提携生産者、生活クラブたまごは、埼玉県深谷市にある岡部農場と同県毛呂山町(もろやままち)の坂戸農場の2カ所で鶏卵を生産し、東京、神奈川、埼玉など8地域の生活クラブに供給する。ところが、22年12月16日、岡部農場で鳥インフルエンザが発生し、さらに翌年11月には坂戸農場でも発生してしまった。

鳥インフルエンザが発生した農場では感染拡大を防止するために、家畜伝染病予防法に従い防疫措置をとることが定められている。飼育する鶏の殺処分を行い焼却・埋却し、鶏舎などの消毒を行う。必要な処置が完了するまで、鶏卵は生産停止となる。生活クラブたまごでも、法令に基づき、岡部農場では19万4千羽の処置を行った。鶏舎の消毒を完了した後、老朽化した鶏舎をリニューアルし、防疫体制を整備するなどの復旧作業を進めた。坂戸農場では4万5千羽を処置し、防疫も行ったが、河川敷に立地するため河川管理者による再建の許可を得るのは厳しいと判断し、やむなく農場の閉鎖を決めた。

 
生活クラブたまごの岡部農場。埼玉県深谷市郊外にある(2022年10月撮影)
生活クラブたまごが飼育する鶏は、純国産鶏種の「さくら」と「もみじ」。何代にもわたり日本の気候風土に合うように国内で育種改良された希少な鶏種だ。岐阜県の後藤孵卵(ふらん)場で生まれ、埼玉県本庄市にある境野養鶏で飼育され親鶏になり、岡部農場に運ばれて卵を産む。鳥インフルエンザが発生した当時、岡部農場向けに境野養鶏で8万羽のヒナ鶏を確保していたが、生産停止の間は育てられず、これを引き取り飼育してもらう農場を探さなければならなかった。

「提携先から紹介してもらった養鶏業者が引き受けてくれました。まだ鳥インフルエンザ発生の危険がある時期、国産鶏種の鶏を扱ったこともなく、慣れない飼育で大変だったと思います」と生活クラブたまごの代表取締役専務、工藤一さん。各方面からの協力と支援のもと再建を進め、1年後の23年12月に元通り供給ができるようになった。工藤さんは「組合員からの励ましのメッセージもあり、それは大きな力となりました」と振り返る。
 
生活クラブたまごの代表取締役専務、工藤一さん
再建中の岡部農場の鶏舎(写真提供:生活クラブたまご)
 
鶏が入り、採卵が始まった岡部農場(写真提供:生活クラブたまご)

国産鶏種を国内産の餌で

日本の鶏卵はほぼ国産といわれている。しかし卵を産む鶏(採卵鶏)の親の親(原種鶏)のほとんどを外国から輸入する。かつては国内にも多くの育種会社があったが、安い外国産の鶏が使われるようになるとどんどん減り、現在、国内の採卵鶏育種会社は後藤孵卵場1社のみ。生産する純国産鶏の割合は日本の採卵鶏のわずか4%だ。国際情勢の変化や、生産地での病気のまん延、気象災害などにより、原種鶏の輸入が難しくなれば、日本で鶏卵を供給できなくなる可能性もある。国内で継続して鶏卵を供給できるよう、生活クラブ連合会は後藤孵卵場とともに純国産鶏を守る活動を進めている。

輸入に依存することの危険性は鶏種だけではない。トウモロコシや大豆油かすの原料となる大豆など、配合飼料の原料の多くも輸入に頼り、高騰が続く。「配合飼料の価格は20年頃と比べて約1.7倍に上がりました。円安が続いていること、中国がトウモロコシを大量に輸入するようになったことが原因です」と工藤さん。高いばかりではなく、将来手に入らなくなるのでは、という不安さえあると言う。

生活クラブたまごでは、飼料の国産割合を増やす取り組みを続け、現在は50%を超えている。脱脂米ぬか、ふすま、魚かすなどだ。なたね油の提携生産者、米澤製油はオーストラリア産のナタネを絞った油かすを提供する。

08年より本格的に給餌を始めた飼料用米は35%を占める。生活クラブたまごの鶏が1年間に食べる飼料用米を作る田んぼの広さは、東京ドームのグラウンドの面積にすると約37個分になるという。

さらに22年、生活クラブたまごは埼玉県で子実トウモロコシを栽培する農家と出会う。

子実トウモロコシで農地を守る

子実トウモロコシは、3メートルもの高さに育つ。コーンを収穫した後の茎や葉は畑にすき込むと、とてもいい肥料になる
 
国産飼料として注目される子実トウモロコシは、10年ほど前から北海道で栽培が始まったが、埼玉県加須(かぞ)市でも栽培する農家が現われた。生活クラブたまごがその農家を知ったのは、栃木県開拓農業協同組合から。農畜産部次長の神山雅如さんは、「生活クラブたまごに、地元の埼玉県でとれる子実トウモロコシを使ってもらいたいと思いました」と、出会いまでの道のりを教えてくれた。

22年より、栃木県開拓農協の畜産農家は子実トウモロコシを、ほうきね牛、栃木開拓牛、栃木県産平牧三元豚に給餌している。栽培しているのは同県鹿沼市の農業生産法人「かぬま」だ。飼料用米も扱うかぬまは、東京都の米卸「㈱神明」と情報交換をしていた。一方、神明の取引先でもある、埼玉県加須市の「とりうみファーム」の代表取締役、鳥海充さんは、子実トウモロコシの栽培に興味を持っていた。神明を通じて、かぬま、栃木県開拓農協へと鳥海さんの存在が伝わり、栃木県開拓農協が生活クラブたまごに声をかけることになる。
同じ県内で養鶏をする生活クラブたまごと出会った鳥海さんは、23年に5ヘクタールの畑で子実トウモロコシを栽培し10トンの収穫を得る。それを栃木県開拓農協の提携飼料加工場で鶏の餌用に加工し、今年3月より4月初めにかけて、生活クラブたまごが給餌した。

「今回は農場長が手作業で従来の餌に2%ぐらいの割合で混ぜました」と工藤さん。だが関税の適用上、トウモロコシは、国産のものと輸入のものを厳しく分別管理しなければならず、配合飼料工場で両方を扱うには大きな設備投資が必要だ。「量の割合を増やしたり、給餌期間を長くするなど大量に扱うには、手作業では無理です。飼料メーカーが工場で配合できるように働きかけていくつもりです」
 
とりうみファームの代表取締役、鳥海充さん。昨年初めて、5ヘクタールで子実トウモロコシを栽培した
埼玉県北東部にある加須市は関東平野の北部に位置し、耕地面積は市の面積のほぼ半分の6千ヘクタールにのぼる。米どころであり麦の栽培も盛んだ。しかし、農家の高齢化や後継者不足などで放置される農地が増えている。とりうみファームの近くで農業を営む山中農産の代表取締役、山中哲大さんは、「田んぼは田んぼとして、畑は畑として使い、次の世代へ引き継いでいきたいと思います」と、手放される農地をどんどん引き取っている。今年は子実トウモロコシの種を10ヘクタールの畑にまいた。
 
山中農産の代表取締役、山中哲大さん。2年前より子実トウモロコシの栽培を始めた。飼料用米、麦、ソバもつくる
一方、鳥海さんは、所属する農業生産法人「のりす」と神明で、農家を育成する「㈱神明アグリイノベーション」という合弁会社を立ち上げ、新規就農者や農地を広げたい農家を支援する事業を始めた。「子実トウモロコシは稲作よりも手がかかりません。これから農業を目指す人たちにとって取り組む作物の選択肢が広がりました」。国内で生産できる飼料として期待される作物でもあると話す。

「国産の子実トウモロコシを給餌することは、国内の農地を守ることにもつながります」と工藤さん。生活クラブたまごの鶏卵には、出会った仲間たちと力を合わせて国産の飼料を増やし、輸入に頼らない食を目指していきたいとの思いが込められている。

撮影/田嶋雅已
文/伊澤小枝子
『生活と自治』2024年7月号「連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2024年7月20日掲載】
 

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