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暮らしとつながる循環の森林(もり)、市民の参加で再生をサポート

水を蓄え災害を防ぎ、温室効果ガスを吸収する森林。目には見えにくいが、多方面から人々の暮らしを支えている。だが近年人口減少が進み、手入れが行き届かない森林が全国的に増えているという。生活クラブ長野は2018年に「熱エネルギー自給構想」を描き、木質ペレットを使うストーブを共同購入しつつ、これを生み出す森林の整備活動にも力を注ぐ。活動を通して森林と暮らしのつながりへの理解が少しずつ広がっている。

長野らしいエネルギーを

生活クラブ長野、熱エネルギー自給構想実行プロジェクトのメンバー。前列左から、千村康代さん、向山敏恵さん、花岡すみ子さん。後列左から成田由美子さん、藤田恭子さん、有沢ひとみさん、西村枝里子さん、黒岩綾子さん、生活クラブ長野専務理事・牧友昭さん
 
「大きくなーれ」。口々に苗木にそう声をかけながら植えていくのは、生活クラブ長野「熱エネルギー自給構想実行プロジェクト」(熱エネ)のメンバーだ。この日は長野県千曲市が主催する「植樹祭」。小学生を含む約250人の市民とともに、市が所有する「大池自然の森」に14種類1000本の苗木を植樹した。

「そもそもは生活クラブ長野のエネルギー政策の一環なんです」と成田由美子さん。理事長として活動していた頃、「生活クラブでんき」の共同購入を開始、エネルギーについて学習した際、自給率が10%にも満たない現状に衝撃を受けたことが発端だったと言う。輸入に依存する化石燃料や原発でないエネルギーを使いたいとの思いから「長野らしいエネルギー」の模索が始まった。「見渡せば周囲にはこんなに森林があると気づきました」(成田さん)。かつては主要なエネルギーだった薪(まき)だが、戦後は使う人が激減し需要の低下とともに間伐が行き届かない森林も増えた。であれば、間伐材を原料とする木質ペレットを活用できないか。新潟県に出向きペレット工場を視察したメンバーは、そこで森林を軸とするエネルギーの地域循環にヒントを得て「熱エネルギー自給構想」をまとめた。

これに基づき2019年、生活クラブ長野は、ペレットストーブの共同購入を開始する。方針には、ただ使うだけでなく「植えて伐(き)って使う」という森林の循環に自ら携わることも盛り込んだ。ペレットストーブを使う意味への理解がより広がると考えたからだ。折しも長野県では、県が仲介する、自治体と企業、市民の連携による森林づくりが進んでいた。19年から千曲市の森林で活動を開始、22年7月には千曲市・財産区と里親契約を調印し、市と財産区の所有林の一角を「生活クラブ活動の森」として登録、本格的な森林整備活動への参画が始まった。
*財産区:一部地域(住民)が、山林など特定の財産や施設を保有する場合、それを管理するために設けられる法人格を有した特別地方公共団体のこと。生活クラブ活動の森は、市有林と財産区有林にある。

ロゴ ねつエネさん 組合員からの公募で決まった「熱エネルギー自給構想」のマスコットキャラクター

さまざまな参加の形

植樹の他、生活クラブ長野が独自に担うのは、シカの害を防ぐため木にネットを巻く作業だ。樹齢10年ほどの木はシカが樹皮を食べたり角で傷つけることが多く、木材としての価値が下がり枯れてしまうこともある。「広範囲に及ぶため手が行き届かない場所もあり、生活クラブさんに担当してもらえないかと提案しました」と千曲市経済部の森林整備担当、大橋和也さんは振り返る。作業を始めて3年。専門家の検証では保護した木にシカの害は見られず、財産区の人たちも喜んでいると言う。

当初、組合員の中には「なぜ生活クラブが森林整備の活動をするのか」という声も少なくなかった。森林の役割が十分に伝わっていないからではないか。そう考えた熱エネのメンバー、西村枝里子さんは、ペットボトルの中に腐葉土や砂、小石を入れた森林土壌の模型を作ってみた。これに汚水を注げば下からきれいな水になって出てくる。その様子を展示会で実演し森林の水浄化機能を訴えた。理事長の有沢ひとみさんは「森は海の恋人」という本の著者、畠山重篤さんの話を聞いたことがこの活動を語る力になったと言う。「雨は森林を通ることで栄養豊富な水となって海に注ぎ魚介類を育むという話に感銘を受けました。おいしい食材は、森林が支えていると多くの組合員に知ってほしい」
木に巻くネットの購入費用も組合員のカンパで賄う。夏にはアウトドアを楽しむ親子企画、冬は間伐材を活用した小物づくりのワークショップを開催、現地の作業以外にもさまざまな参加の形がある。「少しずつ森への思いが重なっていけばいい」と前理事長の千村康代さんは言う。とはいえ、現地に来て初めてわかることは多い。千村さんは以前に見た間伐の光景が忘れられない。「木が倒れた瞬間、さーっと草地に光が差して。間伐の必要性が一瞬で理解できました。広葉樹林を歩けばフカフカで、土壌の豊かさも体感できます」

千曲市の大橋さんは「里山の活動は、動植物がいる限りこれで終わりということはない」と言い、市民が参加することで森林の公共的機能が周知され温暖化対策への意識も高まることに期待を寄せる。

24年度から年間千円の森林環境税の徴収が始まった。都市部でも少し足を延ばせば森林に親しむ活動は可能だ。生活クラブ長野では、生産者とも連携してペレットの利用を広げ、消費材を通した参加の形も視野に入れる。地元の水源や森林に関心を寄せる活動はこの場だけにはとどまらない。
 
保護した木には作業した人の名前を書いた木札をつり下げ、毎年無事に生育しているか確認できる
撮影/永野佳世
文/本紙・宮下 睦
★『生活と自治』2024年7月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2024年7月30日掲載】
 

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