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届け!沖縄の心 私たちは「新たな戦前」を望んでいない

琉球新報統合編集局長 島洋子さん

沖縄の軍事化の次は「国」の軍事化、そして戦争への道が

米軍基地の被害に長く苦しみ、新たな基地は造らせないとの粘り強い闘いを続けてきた沖縄。いまも先島(さきしま)と呼ばれる石垣島や宮古島などの離島に自衛隊基地が続々と新設され、さらに沖縄本島にも自衛隊の訓練場建設が「抜き打ち発表」されるなど一連の軍備拡張が続いたままだ。沖縄は79年前の沖縄戦では本土決戦を遅らせるために戦闘を長引かせるための〝捨て石〟とされた。その後、27年間に及んだ米国の施政権下では「太平洋の要石」として沖縄は軍事要塞化された。そして日本復帰から半世紀が過ぎた現在、「台湾有事」を口実に日本政府は沖縄を盾に見立て、米国と中国の対立の狭間のなかで再び捨て石にしようとしているかのような動きを隠さない。沖縄の軍事化の次は日本全体の軍事化、そして戦争への道が続いているのではないかと心が凍え、震えるような思いのなかに沖縄の民は置かれている。むろん、私たちは「新たな戦前」への歩みを望んでなどいない。

住民の意思は一切問わず ゴルフ場跡地に自衛隊訓練場の建設決定とは

今年2024年3月20日の春分の日は花曇りの行楽日和だった。この日開かれたのは「住宅地への自衛隊訓練場計画の断念を求める市民集会」。そこに家族連れでやって来た人の姿も少なくなかった。この日は主催者の予想を上回る数の地域住民が集い、約1000人を収容可能なホールに入りきれない人たちの姿もあった。彼らはホールロビーに置かれたテレビモニターで集会の進行を見守っていた。

うるま市石川のゴルフ場の跡地に自衛隊の訓練場を造るという計画が住民の知るところとなったのは昨年12月。それも公式発表ではなくもっぱら新聞報道を通して、という形が採られた。その後も防衛省は住民に計画をつまびらかにせず、整備関係予算案を閣議決定した。ゴルフ場は最も近い住宅から約6メートルの距離にあって、子どもたちがキャンプなどで利用する石川少年自然の家と接している。地域を無視した計画推進に住民の怒りと不信感は募った。住民たちは短期間で5580筆の反対署名を集め、市の全自治会が反対運動を展開した。「計画の断念を求める会」の共同代表となったのは元自民党県連政調会長だ。この反対運動は保革を超えた「オール沖縄」で進み、県議選を6月に控えた自民党県連は「白紙撤回を求める」とならざるを得なかった。

市民集会は絶対に訓練場を造らせないという決意と熱気にあふれていた。結局、防衛省はゴルフ場への訓練場建設を断念したが、沖縄県内の別の場所で訓練場を建設する計画は継続の扱いとなっている。

米軍絡みの事件事故、騒音公害に有機フッ素化合物(PFAS)汚染も

戦後、米国の施政権下に置かれた沖縄は日本国憲法に定められた基本的人権が適用されず、米軍による事件事故の被害を受け続けた。日本復帰運動のスローガンは「基地のない平和な島」「平和憲法への復帰」であった。ところが、復帰がかなって52年を経ても日本の国土面積の0.6パーセントしかない沖縄県に米軍専用施設の70パーセントが集中しているのが実情だ。

日常生活では米軍がらみの事件事故や騒音、有機フッ素化合物(PFAS)に代表される環境汚染に悩まされている。有事となれば、集中する米軍基地がミサイルの標的にされる恐れが高い。在沖米軍基地の機能強化や自衛隊配備が進み、基地負担は間違いなく増加している。いまだに軍事の要衝として沖縄を使い続けようとする日米両政府の姿勢をみると、かつて沖縄のみならず全国の、沖縄を支援した多くの人々が望んだ「基地のない平和な島」の実現ははるかに遠く、さらに遠のいている。

沖縄の米軍基地負担が政治課題になって以降、日米両政府は「沖縄の負担軽減」と称し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を強行に推し進めた。

ここで質問だが、普天間飛行場が返還されたとして沖縄が抱えた70パーセントもの米軍基地がどのくらい減ると思われるだろうか。

多くの方が「基地負担は半分くらい減る」と回答する。しかし、答えはわずか1パーセント減。それほど、沖縄には広大な米軍基地が存在しており、日米両政府の「負担軽減策」の具体的中身はといえば、沖縄の米軍基地をまたもや沖縄の別のどこかへ移すだけという、域内移動になっているからだ。

3500億円×2.5倍の税金投じ、12年かけて辺野古を基地化


今年1月10日の正午過ぎ、名護市の大浦湾に浮かぶ作業船から大きな石材が青い海に向かって投げ入れられた。透き通った海が次々に投げ入れられる石材によって濁っていく様は心をえぐられるような光景といえる。辺野古新基地の大浦湾側の埋め立てが始まったのだ。ここに至るまで、埋め立て阻止を掲げた玉城デニー沖縄県政と日本政府の法廷闘争が続いたが、昨年12月、県が拒否した埋め立ての許可を日本政府が代わって行う「代執行」訴訟が国の勝訴に終わり、大浦湾の埋め立て工事に着手したのだった。

辺野古の新基地建設は水深の浅い辺野古崎の埋め立てがほぼ終わり、大浦湾の埋め立てが進むが、相当な難工事が予想される。「マヨネーズ状」といわれる軟弱地盤に7万1千本のくいを打ち、約160ヘクタールの基地を造る計画だが、その埋め立て予定地の最深地点には約90メートルにも及ぶ国内では前例のない深さに軟弱地盤が堆積しているとされ、埋め立て完了後も沈下が進むと分析する専門家もいる。

大阪府泉佐野市の沖合に浮かぶ関西国際空港は、埋め立て開始から約35年たった今も沈下が続き、数年に一度、ジャッキで建物の柱を持ち上げて鉄板を挟むことで建物の傾きを調整している。

大浦湾を埋め立てて仮に滑走路が完成したとしても「後遺症」として滑走路にゆがみやくぼみが生じる可能性が否定できないのは明白だろうし、そのメンテナンスも日本政府の負担になる。

辺野古への移設完了には12年を要し、事業費は9300億円と日本政府はいうが、費用はさらに膨らむだろう。政府は2014年段階で事業費を3500億円としていたが、それを2.6倍以上の規模に修正した。それは昨今の資材高騰の影響を受けること必至の数字だ。

大阪万博の会場建設費が当初の1250億円から2350億円と約1.9倍に膨らむと批判が高まっているが、辺野古は万博の約4倍に達する。開催後は民間利用できる万博用地と施設とは大きく異なり、辺野古を日本国民は使えない。これだけの時間と国税を使って米軍基地を造ることに国民的議論が起こらないのはなぜだろうか。

政府幹部の「戦う覚悟」発言とあいまいな「敵基地攻撃能力」行使判断

沖縄県民が最も危惧しているのは沖縄戦の再来だ。

太平洋戦争の教訓は「基地があるところが標的にされる」こと。それは沖縄も被爆地にも通じるものだ。米側の見方も同じで「知日派」と称されるジョセフ・ナイ元国防次官補は中国の弾道ミサイル発射を念頭に、米軍基地が集中する沖縄をかごに詰め込んだ卵に見立て「卵を一つのかごに入れれば、(全て)壊れるリスクが増す」と述べた。

そうしたなか、日本政府は台湾有事を協調して防衛力強化へ進むための世論醸成を図る。自民党の麻生太郎副総裁は台湾を訪問した際、日米や台湾に「戦う覚悟」が求められていると発言するなど現政権幹部が台湾有事をあおり、大国の覇権争いを激化させる方向に進もうとしているとの強い印象を抱くのは、おそらく私だけではあるまい。

岸田政権が閣議決定した「安全保障関連3文書」は日本の安全保障政策を抜本的に転換し、敵基地攻撃能力の保有に連動して南西諸島の防衛力強化を掲げている。

しかしながら「敵基地攻撃能力」という考え方ひとつをとってみても、その行使に至る判断は実にあいまいだ。相手の攻撃「着手」をどのように判断するかも不明であるし、相手よりも先に攻撃を行使すれば必ず反撃される。原発を狙われれば致命的だ。その能力を発動する有事や戦争は、日本を滅ぼすという意味で非現実的というほかない。そんな「新たな戦前」への歩みを止め、紛争や戦争に至らしめないためには対話や外交による火種の除去と信頼醸成が現実的なのは間違いなかろう。そのためにも沖縄で今、起こっていることを知り、我が事として考えてほしい。そう切に願う私がいる。
 
しま・ようこ
琉球新報社編集局長。1967年、沖縄県生まれ。1991年琉球新報社入社。政経部、社会部、中部支社宜野湾市担当、経済部、政治部、東京報道部長などを経て現職。米軍基地が沖縄経済の発展を阻害している側面を明らかにした連載「ひずみの構造―基地と沖縄経済」で、2011年「平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞」を受賞。


そ~う! つながってるんです!! モノも人も

どうして生活クラブ連合会のホームページにいきなり沖縄からのメッセージなの??といぶかしく思われたかもしれません。その理由は二つあります。一つはこれから断続連載を予定しているアイドル評論家(当方はアイドル学研究者と勝手に称しております)の中森明夫さんを講師に招いて開講するウエブ版「中森ゼミ」ブレ講座のテーマと深く関係していること。もう一つは生活クラブ生協と沖縄とが浅からぬ「つながり」を持っているからです。とにもかくにも「週刊生活クラブ 食べるカタログ」を開いたら、どんな品々が沖縄から届いているかを追いかけてみていただけたら幸いです。

また、余り知られていないことですが、生活クラブ生協と提携する各地の産地からさまざまな品を輸送してくれている関連会社「太陽物流ネットワーク」(東京都新宿区)の社員には沖縄をふるさととする人が少なくありません。カビラ慈英さん風に言えば「そーう、つながっててるんです!!モノだけじゃない!人もなんです!」というわけです。そんな沖縄を中森明夫さんは南沙織さんをパイオニアにあまたのアイドルを輩出してきた「推しメン」のメッカと位置付け、そのパワーの源に目を向けます。そこには沖縄が抱え続けている胸苦しい現実が同居し、いまなお沖縄の人びとを困惑させ失意を感じさせ続ける歴史的な負の遺産が暗い影を投げかけているのはいうまでもないでしょう。 「それでも沖縄の人びとは歌と踊りを忘れない」と中森さんはかの地の人びとの不思議な魅力を語ります。

安倍政権当時に共同通信が実施した世論調査によれば、回答者の九割が「日本国憲法が掲げる恒久平和主義を支持する」とした一方、同数が「日米安保を支持する」という現実が浮き彫りになりました。そうしたなか、いまも沖縄は「基地の島」でもあります。この事実を「非戦」の決意を社会に表明している生活クラブ生協がいかに受け止め、今後どうしていくのかが問われているのは間違いないと思います。それが今回のレポート掲載を決めた理由です。何とも悩ましく、心が震えるような重い問い。でも避けては通れなかった次第です。

生活クラブ連合会 山田衛

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