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生協の食材宅配【生活クラブ】
国産、無添加、減農薬、
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つややかなお米を届けるため とにもかくにも一生懸命に


栃木県東北部、那須塩原・黒磯地方に広がる那須野ヶ原は、広大な平地とゆるやかな丘陵からなる土地だ。この地で「那須山麓米」を生産しているJAなすの・どではら会は、長年、生活クラブ連合会と連携しながら、減農薬と環境に配慮した米作りをしてきた。「どではら」とは黒磯地方の言葉で「おなかいっぱい」という意味。おいしくて安全なお米で私たちのおなかを満たすために……どではら会は日々努力している。

危機を救った生産者の思いやり

どではら会の交流田で生活クラブ東京と生活クラブ栃木の組合員が田植え交流会を実施。7月現在の生育具合は順調とのこと
「どではら会を結成したきっかけは、1993年の冷害ですね」

そう語るのは、どではら会の会長、佐藤友幸さん。この年、冷夏による凶作が原因で歴史的な米不足が発生し、国が米の出荷を統制する事態に陥った。店頭から米が消えていくなか、生活クラブは米の供給を維持するために奔走する。そのとき、生活クラブ東京が独自に提携していた那須塩原・黒磯地域の生産者たちが、貴重な米を送って助けてくれた。これが縁で97年に、どではら会は結成され、首都圏にもっとも近い米の提携生産者グループとして正式に生活クラブ連合会と協力していくことになった。現在、どではら会には27軒の生産者が所属している。

どではら会と生活クラブが連携して作る「那須山麓米」は、粒が大きく、ほどよい粘り気の食感が特徴だ。品種は栃木県が独自に開発した「なすひかり」。コシヒカリのおいしさを受け継ぎつつ、冷害に強く(耐冷性(たいれいせい))、稲が倒れにくいよう(耐倒伏性(たいとうふくせい))改良された品種だ。
 
どではら会の会長、佐藤友幸さん

夏場の草とりが正念場

JAなすのアグリセンター黒磯営農次長兼係長 那須一雅さん
 
この「なすひかり」を、どではら会では、減農薬と環境への配慮に力を入れて育てている。まず、苗となる種もみを消毒する際、農薬を一切使わない。

「殺菌剤を使用するのが一般的ですが、種もみを60度のお湯に約10分浸(つ)け込む温湯(おんとう)消毒という方法を採用しています」

教えてくれたのは、JAなすのアグリセンター黒磯営農次長兼係長の那須一雅さん。生活クラブとどではら会の窓口役として、日頃からどではら会メンバーと連絡を取り合っている。

温湯消毒した種もみで作った苗は、田植えから収穫まで、厳しい農薬使用基準に則して育てられる。どではら会の基準は、栃木県の一般栽培基準である14成分回数の約4割減、8成分回数というもの。この「成分回数」という単位は、使用した農薬の数を表す。つまり、8成分回数とは、農薬を8回散布したことを意味するのではなく、8成分(種類)の農薬を使用したことを意味する。
例えば、4成分の農薬を2回散布すれば8成分回数、3回散布すれば12成分回数だ。どではら会が基準とする8成分回数は上限であり、これよりも農薬を少なくする生産者もいる。8成分回数以内であれば、何成分の農薬を、どのタイミングで、何回に分けて散布するかは、生産者ごとの判断となる。というのも、那須野ヶ原は、場所によって土壌の性質がまるで違うからだ。那須野ヶ原を流れる那珂川(なかがわ)や蛇尾川(さびがわ)の周辺は、水はけのよい砂壌土だが、そのほかに肥沃(ひよく)な黒土の地域もあれば、砂壌土と黒土の中間の地域もある。土壌によって、農薬や肥料の効き方から水の管理方法までまったく異なるため、長年その場所で米を作り続けてきた己の経験だけが頼りだ。

安心・安全な米を作るために農薬を減らせば、その分、雑草が増える。除草剤をまけば一気に解決できるところを、どではら会のメンバーは、手作業で草をとる。特に雑草がもっとも増える夏場の草とりは重労働だ。真夏の時期、佐藤さんは朝4時過ぎに起きると、まず牛に餌をやり、5時から1時間半かけて田んぼを回って水の管理をする。6時半に朝ごはんを食べると、その後はひたすら雑草との格闘だ。まず、田んぼの土手の草を刈り、次に田んぼに入って草をとる。一番暑い午後の作業は避けたいところだが、とてもじゃないが時間が足りない。結局、昼食をはさんで一日のほとんどを草とりについやすことが多いという。

「やっと全部の田んぼを回り終えて最初に草を刈ったところを見ると、もう別の雑草が生えているんです。たくましいですねぇ、雑草は!」
佐藤さんは豪快に笑いながら言った。
 
炎天下で草とりを実演してくれたどではら会の学習部長、白井通(とおる)さん。猛暑は米の品質にも影響を及ぼす。対策として、今年、「なすひかり」よりも暑さに強い新しい品種「とちぎの星」の試験栽培を始めた
 
取材に協力してくれたみなさん。前列左から、市村和則さん、佐藤友幸さん、室井博文(ひろぶみ)さん、後列左から、大島成(じょう)さん、白井通さん、友幸さんの息子の佐藤優樹さん(以上がどではら会)、JAなすのアグリセンター黒磯の那須一雅さん。おなかに手を当てて、「どではら」のポーズ

環境保全のために最善を尽くす

田んぼの清らかな水は、那須疏水から引いている。写真は那須疏水の西岩崎頭首工。ここから水は水路へと流れ込み、農業用水となる。那須疏水は、福島県の安積疏水、京都府の琵琶湖疏水と並ぶ日本三大疏水のひとつ
 
どではら会は、環境への配慮も欠かさない。土壌を汚さないよう、農作業で出た廃プラスチック類のごみや余った農薬は、JAなすのが定期的に回収している。
「処分する費用は生産者の負担なのですが、環境保全のためにみんなで取り組んでいます」と那須さん。

さらに一定期間、田んぼから水を抜く中干し作業をすることで、温室効果のある硫化水素ガスの発生を抑えている。減農薬に取り組むだけでなく、有機肥料の使用にも積極的だ。

今後の課題は化学肥料をこれまで以上に削減していくこと。カメムシの発生や病気を防ぎ、求められる米の収量を維持するには、最低限の化学肥料が必要だ。だが、近年は、最適のタイミングで溶け出すようプラスチックでコーティングされた化学肥料が主流で、そのプラスチックが土壌を通して流れ出し、河川や海を汚染する問題がある。どではら会では、こうしたマイクロプラスチックが出る化学肥料の削減に努めながら、化学肥料と有機肥料を混ぜた「どではら会専用肥料」の開発も検討し、実用化を目指していく方針だ。

また、どではら会は、田んぼの土と玄米のサンプルを提出し、国よりも厳しい生活クラブの独自基準による放射能検査を受けている。
「本当に厳しい検査を通ったお米だけを出荷しているので、安心して食べてください」と那須さんは胸を張った。

組合員からの言葉を仕事の糧に

提携して長い生活クラブ東京と地元の生活クラブ栃木は、定期的に田植え交流会や稲刈り交流会などを開催し、どではら会と組合員の顔の見える関係を構築してきた。どではら会のメンバーによれば、交流会では、日々の苦労が報われる瞬間にたびたび遭遇するという。

どではら会の副会長、室井博文さんは、交流会で組合員からかけられた言葉が忘れられない。
「年配の方だったのですが、『私は年を取ったから、あまり量を食べられないんだけど、一生懸命食べるから、あなた、頑張ってお米を作りなさいよ』と励ましてくださったんです」

近年、少子高齢化や食生活の多様化から、米の消費量は落ちる一方だ。事実、生活クラブも、どではら会と話し合いのうえ購入を約束した米の量を消費できていない現状がある。室井さんに声をかけた組合員の言葉の通り、生産者の努力には継続的に購入・消費することで応えていかなければならないだろう。一方、どではら会の学習部長、白井通さんは「毎回交流会に参加してくれるお子さんが、会うたびに大きくなっていくのを見るのが楽しいですね」と語る。それを聞きながら「うん、うん」と大きくうなずいていた佐藤さんが最後にこう言った。

「さあさあ、おにぎりを用意したから、みんなおなかいっぱい食べていって」

田植え交流会と稲刈り交流会の様子。「子どもたちは一生懸命に作業してくれます。こうした食育を通してご飯を残さず食べようという気持ちになってくれたらうれしいね」と佐藤さん(写真提供:生活クラブ東京)

撮影/葛谷舞子
文/本紙・山本 塁
『生活と自治』2024年9月号「連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2024年9月20日掲載】
 

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