メンバーどうしがたすけあい、「その人らしさ」を大切にする支援をすすめる 水戸たすけあいワーカーズ・コレクティブにじのえぷろん(茨城県)【前編】
【連載】みんなで広げる たすけあい
生活クラブグループの生協や関連団体では、福祉・たすけあいの活動や事業が各地でとても豊かに展開され、さらに広がりをみせています。これらの取組みを紹介します。
資格を持たない組合員が立ち上げた「水戸たすけあいワーカーズ・コレクティブにじのえぷろん(以下、にじのえぷろん)」。さまざまな困難も力を合わせて乗り越え、「住み慣れた地域で自分らしく生きたい」を支え続けてきました。その秘訣について、メンバーの岡野妙子さん(代表)、吉村恭子さん(コーディネーター)、小泉佐栄さん(事務局)に聞いてみました。
【前編】特別な資格は持っていないけれど
「50歳代の何も資格もない専業主婦の私にできるのか、本当に不安でした」と、コーディネーターの吉村さん。
吉村恭子さん(コーディネーター)
―「資格がなかった」とのことですが、みなさんはどのような経歴をお持ちだったのですか?
「生活クラブ茨城のエッコロを担うエッコロコーディネーターとして活動していました。その中で、エッコロではできないケアや、組合員以外の人へのケアの必要性などが見えてきたため、地域の中にたすけあいを広げたいと考えるようになりました。そして、にじのえぷろんを立ち上げました」。(岡野さん)
―不安を感じる中で、実際にやってみてどうでしたか?
「やってみると案外何でもできることがわかって、うれしい発見でした。そのお宅にある材料で『名前のないおかず』をつくることも、しだいに頭の体操のように思えてきました」。(吉村さん)
「子育てを卒業し、介護も経験した今だからこそ、地域のたすけあいの力になれているのだと思います。自宅では自分流の掃除や洗濯でよかったのですが、仕事として家事をするのは別ものです。自宅の掃除機と異なる機種にとまどったり、合成洗剤を使ったり、さまざまな経験をしてきました。その人らしさを大切にして暮らしをサポートするのですから、たくましくなりましたね」と、岡野さんは笑います。
岡野妙子さん(代表)
一人ひとりに寄り添うさまざまな支援をするには、専門技術や資格以前に、「主婦力」やそれまでの人生経験による「生活力」が役に立ってきたのだそうです。
にじのえぷろんでは、掃除・片付け、食事作り、買い物などの家事支援から、話し相手・見守り、ペットの世話など会員(利用者)の希望に応えた生活支援まで、幅広く対応しています。にじのえぷろんの事業はすべて「介護保険制度外」であることが大きな特徴です。
「会員(利用者)の方のお話をお聞きすると、その人らしく生きていくために必要なことの中には、介護保険制度の範囲ではできないことがたくさんあります。それを担うのが私たちです。例えば、年末年始のお掃除、お酒やたばこなど嗜好品の買い物、家族のように可愛がっているペットの世話など、さまざまなケアをしています」。(岡野さん)
小泉さんは、「施設に入ることを勧められたけれど、愛猫と一緒に過ごしたい」という末期がんの方を担当しました。「ご自分ではできなくなった猫の世話やペット用品の買い物などのために、チームを組んで週3回通いました」。(小泉さん)
小泉佐栄さん(事務局)
このように、その人を支えるのに必要なケアは一律ではないので、状況に合わせてきめ細かく対応します。介護保険制度のヘルパーであれば、介護保険制度で決められた時間内でたくさんのことをしなくてはなりません。そのため、ヘルパーでは対応できないケアもたくさんあるのです。
「にじのえぷろんの場合は、介護保険制度ではないため時間延長も可能ですから、ゆっくりしたケアができます。また、1回のケアで『買い物と食事作り』『食事作りと掃除』などのように組み合わせて依頼されても、臨機応変に対応することができます」と岡野さん。
会員(利用者)は44人(登録上は54人)、ワーカーズ・コレクティブのメンバーは13人にまで広がりました(2024年7月時点)。年間を通して350日以上。ほぼ毎日ケアに出向いています。
「私はコーディネーターなので、受付用の携帯電話を24時間365日肌身離さず持っていますが、それを負担だとは感じません」。やりがいのある仕事に出会ったと吉村さんは自信をもって話します。
吉村さんの携帯電話
一方で、厳しい対応に苦慮することもあります。ある方からの依頼は、「一人になるのは不安だから、そばにいてくれればいい」というものでした。ところが、「最初はかなりきつい物言いをされて、どうしたらいいのかわからず、とても不安でした」。(吉村さん)
この厳しい状況の中で、吉村さんはどう対応したのでしょうか?
*後編に続きます(9/17掲載予定)。
【2024年9月11日掲載】