「庄内交流会」51年目の新たなスタート「庄内の食料自給」を私たちの目で確かめる4日間をレポート
山形県遊佐町でお米の生産者の話を聞く組合員たち
日本では近年、食料品や輸入原料が日々値上がりしています。もともと日本は食料自給率が低く、多くの食料を海外からの輸入に頼ってきたことが理由のひとつです。為替の影響を受けやすいうえ、世界情勢の変化や自然災害などで原産国からの輸入が滞ると、すぐに価格がはね上がってしまいます。
こうした中、「日本の食料自給力を上げる」ことの重要性が注目されています。
生活クラブと半世紀にわたり提携する山形県の庄内地域は、まさにその食料自給の先進地です。
2024年7月21日から24日まで4日間にわたり、全国各地の組合員が庄内地域を訪れる「庄内交流会」を開催。1974年に始まり51年目となった今年も、組合員が自分たちの目で産地の現状を確かめました。
日本では近年、食料品や輸入原料が日々値上がりしています。もともと日本は食料自給率が低く、多くの食料を海外からの輸入に頼ってきたことが理由のひとつです。為替の影響を受けやすいうえ、世界情勢の変化や自然災害などで原産国からの輸入が滞ると、すぐに価格がはね上がってしまいます。
こうした中、「日本の食料自給力を上げる」ことの重要性が注目されています。
生活クラブと半世紀にわたり提携する山形県の庄内地域は、まさにその食料自給の先進地です。
2024年7月21日から24日まで4日間にわたり、全国各地の組合員が庄内地域を訪れる「庄内交流会」を開催。1974年に始まり51年目となった今年も、組合員が自分たちの目で産地の現状を確かめました。
組合員と生産者が、産地でともに語りあう「庄内交流会」
庄内地域はお米の提携をはじめ、生活クラブの農畜産物の最大生産拠点です。庄内交流会は「自分たちの食べ物がつくられる産地を見たい」という組合員の声から始まり、生産者と直接話しあえる大切な機会となっています。
2024年はコロナ禍で中止されていた生産者の訪問も再開し、4日間で全14箇所を視察しました。
■JAさがえ西村山のりんご生産者の畑
化学合成農薬の使用を減らし、りんごの葉をあえて取らずに光合成による養分を増やして果実のおいしさを高める「チャレンジ葉とらずりんご」などを生産しています。近年は高温が続き、古い品種の紅玉などは栽培しづらくなっているそうです。組合員からは「毎年買っているので、何とかつくり続けてもらえるとうれしい」とエールが寄せられました。
2024年はコロナ禍で中止されていた生産者の訪問も再開し、4日間で全14箇所を視察しました。
■JAさがえ西村山のりんご生産者の畑
化学合成農薬の使用を減らし、りんごの葉をあえて取らずに光合成による養分を増やして果実のおいしさを高める「チャレンジ葉とらずりんご」などを生産しています。近年は高温が続き、古い品種の紅玉などは栽培しづらくなっているそうです。組合員からは「毎年買っているので、何とかつくり続けてもらえるとうれしい」とエールが寄せられました。
「気候の変化もあるが、これまで通り農薬を減らして栽培を続けたい」と話すりんごの生産者(左から2人目)
■JAさがえ西村山の選果場
選果場は2022年に新設したばかり。収穫シーズンになると近隣の各地域からりんごなどの果実が運ばれ、ここで選別されます。
一般の選果ルートでは大きさなどで細かく等級が分けられ、弾かれるものもありますが、生活クラブではりんごをむだなく食べようと小さいものも受け入れています。そのため生活クラブ専用の選果ルートが設けられています。
■JAさがえ西村山の選果場
選果場は2022年に新設したばかり。収穫シーズンになると近隣の各地域からりんごなどの果実が運ばれ、ここで選別されます。
一般の選果ルートでは大きさなどで細かく等級が分けられ、弾かれるものもありますが、生活クラブではりんごをむだなく食べようと小さいものも受け入れています。そのため生活クラブ専用の選果ルートが設けられています。
広く新しいJAさがえ西村山の選果場
■鈴木食品製造株式会社(寒河江市)
JAさがえ西村山などのフルーツを使った加工品をつくる生産者。この日は近隣で採れたももの加工を視察しました。
■鈴木食品製造株式会社(寒河江市)
JAさがえ西村山などのフルーツを使った加工品をつくる生産者。この日は近隣で採れたももの加工を視察しました。
加工品にするため、ももの硬い種を手で取り除く作業
お米と豚加工品の利用を増やすアイディアを共有しました
遊佐町共同開発米部会の水田を視察しました
■遊佐町共同開発米部会(飽海郡遊佐町)
遊佐町は、生活クラブの組合員と生産者がお米の品種から育て方まで話しあいながらつくる「共同開発米」、庄内遊YOU米の産地です。農薬の成分を山形県の一般栽培基準の半分以下にまで削減して栽培し、町内で生産するお米の約6割を生活クラブに供給しています。
これからも安定的にお米をつくり、食べていくためどのようなことができるか、生産者である遊佐町共同開発米部会と意見を交わしました。
組合員からは、「ほかにはないお米の生産者とのつながりや、栽培基準の高さをアピールしたい」、「カタログでもっとさまざまな食べ方を提案してみては」といった意見が出たほか、SNSを活用するアイディアも提案されました。
また、「新しい組合員に向け、共同開発米の価値を知ってもらえる機会を増やす必要がある」など、情報の共有を見直す意見が多く上がりました。
近年は夏の猛暑日が増えていることから、生産者たちは高温に耐性のある品種も検討しています。遊佐町共同開発米部会部会長の今野修さんは「目先のもうけを考えるなら他に売ります。地域の未来のため、組合員のためにお米をつくっていることを知ってもらえたら」と訴えました。
■遊佐町共同開発米部会(飽海郡遊佐町)
遊佐町は、生活クラブの組合員と生産者がお米の品種から育て方まで話しあいながらつくる「共同開発米」、庄内遊YOU米の産地です。農薬の成分を山形県の一般栽培基準の半分以下にまで削減して栽培し、町内で生産するお米の約6割を生活クラブに供給しています。
これからも安定的にお米をつくり、食べていくためどのようなことができるか、生産者である遊佐町共同開発米部会と意見を交わしました。
組合員からは、「ほかにはないお米の生産者とのつながりや、栽培基準の高さをアピールしたい」、「カタログでもっとさまざまな食べ方を提案してみては」といった意見が出たほか、SNSを活用するアイディアも提案されました。
また、「新しい組合員に向け、共同開発米の価値を知ってもらえる機会を増やす必要がある」など、情報の共有を見直す意見が多く上がりました。
近年は夏の猛暑日が増えていることから、生産者たちは高温に耐性のある品種も検討しています。遊佐町共同開発米部会部会長の今野修さんは「目先のもうけを考えるなら他に売ります。地域の未来のため、組合員のためにお米をつくっていることを知ってもらえたら」と訴えました。
組合員から寄せられたメッセージを共同開発米部会の今野修部会長(左から3人目)に届けました
■株式会社 平牧工房(酒田市)
ポークウインナーやハムなどの豚肉加工品をつくる平牧工房では、工場見学だけでなく、どんな加工品があるといいかを平牧工房の従業員と話しあいました。
組合員からは「塩分や脂質に配慮した品目がほしい」「ロースハムがもう少し厚いと盛り付けやすい」などの声が。
また、豚肉が余っている現状から、生産者からは「組合員と一緒に、余りがちな部位を生かした加工品を開発したい」とのアイディアが出ました。
■株式会社 平牧工房(酒田市)
ポークウインナーやハムなどの豚肉加工品をつくる平牧工房では、工場見学だけでなく、どんな加工品があるといいかを平牧工房の従業員と話しあいました。
組合員からは「塩分や脂質に配慮した品目がほしい」「ロースハムがもう少し厚いと盛り付けやすい」などの声が。
また、豚肉が余っている現状から、生産者からは「組合員と一緒に、余りがちな部位を生かした加工品を開発したい」とのアイディアが出ました。
平牧工房で加工に使われる豚肉を自分たちの目で確認
「私たちの豚肉」を守るために何ができる?
■株式会社 平田牧場(酒田市)
平田牧場は、生活クラブの豚肉「日本の米育ち豚」を生産しています。国産の飼料用米などをあたえ、健康に育てた良質な豚の肉を供給してきました。
一方で近年、豚肉の消費量が下がっていることが大きな課題となっています。
組合員とともに利用しやすい規格に見直す対策もしてきましたが、平田牧場によると「約1万頭分もの余剰が出ている状況」だといいます。さらに特定の部位に消費が偏り、肩ロースやバラなどが余りがちになっています。
こうした状況にあわせ、「どうしたらもっと豚肉を食べてもらえるか」を一緒に考えました。
平田牧場は、生活クラブの豚肉「日本の米育ち豚」を生産しています。国産の飼料用米などをあたえ、健康に育てた良質な豚の肉を供給してきました。
一方で近年、豚肉の消費量が下がっていることが大きな課題となっています。
組合員とともに利用しやすい規格に見直す対策もしてきましたが、平田牧場によると「約1万頭分もの余剰が出ている状況」だといいます。さらに特定の部位に消費が偏り、肩ロースやバラなどが余りがちになっています。
こうした状況にあわせ、「どうしたらもっと豚肉を食べてもらえるか」を一緒に考えました。
平田牧場では、1頭の豚からどれだけの肉がとれるのかを見せてもらいました
きびしい生産の現状を知り、食の未来と向きあう
豚肉の未来について生産者とともに話しあう組合員
組合員からは「豚肉のおかれている現状や、生活クラブの豚肉の価値について知らない組合員が多い」という声が上がりました。
「利用を増やすには、どの部位が余っているのかなどを組合員に伝えたほうがいい」、「今後も豚肉を食べていくためにも、変えるべきところや変えたくないところを生産者と新たに決めていかないといけないのでは」など、さまざまな意見が出ました。
豚肉の消費量が減ると、豚を育てる肥育農家が経営的に厳しくなり、このままでは「日本の米育ち豚」となる豚を育てられなくなる農家が増える可能性もあります。
これからも豚肉を食べ続けるためにはどうしたらよいのか、あらためて見直す機会となりました。
組合員からは「豚肉のおかれている現状や、生活クラブの豚肉の価値について知らない組合員が多い」という声が上がりました。
「利用を増やすには、どの部位が余っているのかなどを組合員に伝えたほうがいい」、「今後も豚肉を食べていくためにも、変えるべきところや変えたくないところを生産者と新たに決めていかないといけないのでは」など、さまざまな意見が出ました。
豚肉の消費量が減ると、豚を育てる肥育農家が経営的に厳しくなり、このままでは「日本の米育ち豚」となる豚を育てられなくなる農家が増える可能性もあります。
これからも豚肉を食べ続けるためにはどうしたらよいのか、あらためて見直す機会となりました。
産地の声を、もっとたくさんの人に伝える大切さ
庄内交流会団長 並木 道代さん(左)と副団長 市野 正枝さん
庄内交流会の団長を務めた並木道代さん(生活クラブ千葉)は、今回の交流会を次のように振り返りました。
「産地では気候危機や生産者の高齢化の課題に加え、お米や豚肉の消費量が減った影響を思い知らされました。こうした生産者の声を、私たちがさまざまな場面で伝えていくことが大事です。参加者した組合員には、ぜひ見聞きしたことを各地で共有してもらいたいです。
庄内交流会では生産者だけでなく、各地の生活クラブの仲間と会うことができるのもうれしいですね。同じ消費材を食べてきているからか、食材を通し、まるで前から知っている友人のように親近感がわきます。
産地と人を結ぶ交流が50年も続いてきたのは大きなこと。生産者と組合員がともに食の未来をつないでいく思いあってこそだと感じました」
また、交流会直後の7月25日に発生した山形県酒田市・遊佐町の大雨被害について、「参加した全員が心配しています。産地に行っただけに、あの時見た畑はどうなっただろうと、自分たちの実家を心配するような気持ちです」と心を寄せました。
組合員が産地を訪ね、生産者と話すことで初めてわかることがあります。生産者にとっても、どんな思いで農畜産物や加工品をつくっているかを伝えられる大事な機会です。
昨年、50周年という大きな節目を迎えた庄内交流会。51年目の今年は「次の50年をつくるための第一歩」として新たなスタートを切る役割もありました。
これからの50年、そしてその先の未来まで、安心安全な国産のおいしい食材をつくり食べ続けていくために、組合員と生産者が交流できる機会や場を設け、お互いに何ができるかを考え、行動していきます。
庄内交流会の団長を務めた並木道代さん(生活クラブ千葉)は、今回の交流会を次のように振り返りました。
「産地では気候危機や生産者の高齢化の課題に加え、お米や豚肉の消費量が減った影響を思い知らされました。こうした生産者の声を、私たちがさまざまな場面で伝えていくことが大事です。参加者した組合員には、ぜひ見聞きしたことを各地で共有してもらいたいです。
庄内交流会では生産者だけでなく、各地の生活クラブの仲間と会うことができるのもうれしいですね。同じ消費材を食べてきているからか、食材を通し、まるで前から知っている友人のように親近感がわきます。
産地と人を結ぶ交流が50年も続いてきたのは大きなこと。生産者と組合員がともに食の未来をつないでいく思いあってこそだと感じました」
また、交流会直後の7月25日に発生した山形県酒田市・遊佐町の大雨被害について、「参加した全員が心配しています。産地に行っただけに、あの時見た畑はどうなっただろうと、自分たちの実家を心配するような気持ちです」と心を寄せました。
組合員が産地を訪ね、生産者と話すことで初めてわかることがあります。生産者にとっても、どんな思いで農畜産物や加工品をつくっているかを伝えられる大事な機会です。
昨年、50周年という大きな節目を迎えた庄内交流会。51年目の今年は「次の50年をつくるための第一歩」として新たなスタートを切る役割もありました。
これからの50年、そしてその先の未来まで、安心安全な国産のおいしい食材をつくり食べ続けていくために、組合員と生産者が交流できる機会や場を設け、お互いに何ができるかを考え、行動していきます。
第51回庄内交流会フォトギャラリー
■月山トラヤワイナリー(西村山郡西川町)
月山トラヤワイナリーの醸造タンクを視察。山形県産のブドウ、果実のみを使用したワインを製造しています
月山トラヤワイナリーの醸造タンクを視察。山形県産のブドウ、果実のみを使用したワインを製造しています
■JAさがえ西村山 大江トマト倶楽部
朝から真っ赤に実ったトマトの農園を見学しました
朝から真っ赤に実ったトマトの農園を見学しました
■庄内・遊佐太陽光発電所(飽海郡遊佐町)
庄内・遊佐太陽光発電所のソーラーパネルは周辺環境に配慮し、除草剤を使用せずすべて人力で草刈りをしています
庄内・遊佐太陽光発電所のソーラーパネルは周辺環境に配慮し、除草剤を使用せずすべて人力で草刈りをしています
■遊佐開発米部会とJA庄内みどり遊佐支店女性部との交流会
生産者たちが地元ならではの産物をふるまいました
生産者たちが地元ならではの産物をふるまいました
■山形の提携生産者たちによる「山形親生会」との交流会
庄内交流会が次の50年をめざす第一歩として、思いを新たにし、提携する生産者のひとつ、(資)杉勇蕨岡酒造場の酒「杉勇」で鏡開きしました
庄内交流会が次の50年をめざす第一歩として、思いを新たにし、提携する生産者のひとつ、(資)杉勇蕨岡酒造場の酒「杉勇」で鏡開きしました
【2024年9月13日掲載】