5年ぶりの現地開催!畜産飼料の国内自給をみんなで考える「まるごと栃木生産者を訪ねる旅」
新生酪農株式会社 栃木工場の前で、参加した組合員と生活クラブ東京職員、生産者のみなさんとの記念撮影
生活クラブは、組合員が主要な産地の一つである栃木県内の提携生産者を訪問する「お肉も牛乳もお野菜もお米もまるごと生産者を訪ねる旅」(以下、「まるごと栃木生産者を訪ねる旅」)を2024年9月7日に開催しました。
オンラインを使用せず、実開催のみでの丸1日におよぶ現地訪問は、2019年以来となる5年ぶりです。
今回は「畜産飼料の国内自給」をテーマに、東京都・栃木県内の生活クラブ組合員とその家族、生活クラブ東京職員、生産者を含めて約120名が2つのコースにわかれて実施。提携する生産者の工場や農場を視察し、生産現場の実態を見学しながら意見交換をしました。
生活クラブは、組合員が主要な産地の一つである栃木県内の提携生産者を訪問する「お肉も牛乳もお野菜もお米もまるごと生産者を訪ねる旅」(以下、「まるごと栃木生産者を訪ねる旅」)を2024年9月7日に開催しました。
オンラインを使用せず、実開催のみでの丸1日におよぶ現地訪問は、2019年以来となる5年ぶりです。
今回は「畜産飼料の国内自給」をテーマに、東京都・栃木県内の生活クラブ組合員とその家族、生活クラブ東京職員、生産者を含めて約120名が2つのコースにわかれて実施。提携する生産者の工場や農場を視察し、生産現場の実態を見学しながら意見交換をしました。
牛も米も野菜も、栃木県内でまるっと循環
栃木県は牛乳や米、野菜、牛肉、豚肉など、生活クラブと提携する生産者が多数いる重要な産地です。2008年には、地域の活性化や国内自給力の向上に取り組むために「まるごと栃木生活クラブ提携生産者協議会」(以下「まるごと栃木」)が発足。16年にわたる活動のなかで、「耕畜連携」という「まるごと栃木」ならではの生産モデルにたどり着きました。
それは乳牛や食肉用の牛の生産農家が飼料を自ら生産し、次にその飼料や、米農家が栽培した飼料用米・飼料用イネを食べた牛や豚の排せつ物を堆肥にして、米や野菜の農家に供給するという循環のしくみです。このしくみは飼料の自給力アップのみならず、生産者同士のつながりを強化し、地域における資源の循環を促進しています。
■生産者と組合員が交流して「畜産飼料」の未来を考える旅
今回の「まるごと栃木生産者を訪ねる旅」は、農産物や飼料用作物の収穫などの最盛期にあたる9月の開催となりました。最も忙しい時期に生産現場を見学することで、生産者の努力や苦労を体感できるだけでなく、「畜産飼料の国内自給」について考えを深めようという意図があります。
近年は穀物飼料の価格が高騰し、家畜の生産にも大きな影響をあたえています。そうした状況を受け、栃木県開拓養豚事業協議会の会長・宮崎一明さんは開会式で次のように語りました。
「飼料や輸送費などの生産コストが高騰するなか、『まるごと栃木』では生産者自ら飼料をつくり、それを牛や豚にあたえて生産を続けています。今回の旅で生産者にたくさん質問してみてください。そして感じたことを、組合員みなさんの言葉でつなげていってほしいです」。
それは乳牛や食肉用の牛の生産農家が飼料を自ら生産し、次にその飼料や、米農家が栽培した飼料用米・飼料用イネを食べた牛や豚の排せつ物を堆肥にして、米や野菜の農家に供給するという循環のしくみです。このしくみは飼料の自給力アップのみならず、生産者同士のつながりを強化し、地域における資源の循環を促進しています。
■生産者と組合員が交流して「畜産飼料」の未来を考える旅
今回の「まるごと栃木生産者を訪ねる旅」は、農産物や飼料用作物の収穫などの最盛期にあたる9月の開催となりました。最も忙しい時期に生産現場を見学することで、生産者の努力や苦労を体感できるだけでなく、「畜産飼料の国内自給」について考えを深めようという意図があります。
近年は穀物飼料の価格が高騰し、家畜の生産にも大きな影響をあたえています。そうした状況を受け、栃木県開拓養豚事業協議会の会長・宮崎一明さんは開会式で次のように語りました。
「飼料や輸送費などの生産コストが高騰するなか、『まるごと栃木』では生産者自ら飼料をつくり、それを牛や豚にあたえて生産を続けています。今回の旅で生産者にたくさん質問してみてください。そして感じたことを、組合員みなさんの言葉でつなげていってほしいです」。
栃木県開拓養豚事業協議会の会長・宮崎一明さん
新生酪農株式会社の牛乳を片手に登壇した、JAなすの・どではら会会長の佐藤友幸さん。牛乳での「乾杯!」の掛け声とともに楽しい旅がスタート
提携生産者がつくった肉や米、野菜と愛情を詰め込んだ「まるごと栃木弁当」。このお弁当を楽しみに参加した組合員もちらほら…
「まるごと栃木生活クラブ提携生産者協議会」参加団体(カッコ内は代表的な生産物)
栃木県開拓農協(牛肉・野菜)、JAなすの(米・野菜)、どではら会(米)、全農栃木、箒根酪農協(牛乳)、全国農協食品(加工食品)、新生酪農株式会社(牛乳)、太陽ネットワーク物流(消費材流通)、生活クラブ栃木、生活クラブ東京、生活クラブ連合会の11団体
栃木県開拓農協(牛肉・野菜)、JAなすの(米・野菜)、どではら会(米)、全農栃木、箒根酪農協(牛乳)、全国農協食品(加工食品)、新生酪農株式会社(牛乳)、太陽ネットワーク物流(消費材流通)、生活クラブ栃木、生活クラブ東京、生活クラブ連合会の11団体
「飼料」もすべて栃木県内で育てる
「まるごと栃木では参加する酪農家と肥育牛農家とで連携し、地域の中で乳牛と食肉用の牛をともに生み、育てる方法を実践しています。これを、乳(酪農)と肉(肉牛肥育)を一貫して生産していることから「地域内“乳肉”一貫生産」と呼んでいます。
また、飼料においても一貫生産を実施。乳牛には飼料用トウモロコシ(デントコーン)と飼料用米などを、食肉用の牛には飼料用イネと飼料用米などをあたえて、飼料もできる限り栃木県内で生産をしています。牛の餌となる飼料を確認するため、乳牛・食肉用の牛・そして米の生産者のもとを訪れました。
■生活クラブの牛乳の原乳を生産する乳牛の生産者
――訪問先:那須箒根(ほうきね)酪農業協同組合
ここでは乳牛の生産だけでなく、その牛の餌となる飼料用トウモロコシ(デントコーン)も育てています。飼料用トウモロコシを茎から機械で刈り取って裁断し、乳酸菌を足してロール状に丸めたら、栄養素を長期間持続させるために2ヶ月間発酵させます(これを「ホールクロップサイレージ」と呼びます)。トウモロコシを専用の機械で勢いよく巻き上げる様子に組合員からは大きな歓声があがりました。
また、飼料においても一貫生産を実施。乳牛には飼料用トウモロコシ(デントコーン)と飼料用米などを、食肉用の牛には飼料用イネと飼料用米などをあたえて、飼料もできる限り栃木県内で生産をしています。牛の餌となる飼料を確認するため、乳牛・食肉用の牛・そして米の生産者のもとを訪れました。
■生活クラブの牛乳の原乳を生産する乳牛の生産者
――訪問先:那須箒根(ほうきね)酪農業協同組合
ここでは乳牛の生産だけでなく、その牛の餌となる飼料用トウモロコシ(デントコーン)も育てています。飼料用トウモロコシを茎から機械で刈り取って裁断し、乳酸菌を足してロール状に丸めたら、栄養素を長期間持続させるために2ヶ月間発酵させます(これを「ホールクロップサイレージ」と呼びます)。トウモロコシを専用の機械で勢いよく巻き上げる様子に組合員からは大きな歓声があがりました。
飼料用トウモロコシの収穫を見学
機械でロール状に巻き上げている様子
■「ほうきね牛」や「栃木開拓牛」の生産者
――訪問先:栃木県開拓農業協同組合・イソシンファーム
乳牛の雄を食肉用として育てた「栃木開拓牛」や、乳牛と黒毛和牛をかけあわせた「ほうきね牛」を供給しているここでは、牛の餌となる飼料用イネの収穫の様子を見学。飼料用イネは、米の部分だけではなく稲の茎や葉もすべて裁断し、ホールクロップサイレージにして飼料として給餌するため、専用機械を使って圃場でラッピングを行なっていました。組合員は実際に田んぼの中に入り、普段なかなか見られない稲の刈り取りやラッピング作業を見学しながら生産者と意見交換をしました。
――訪問先:栃木県開拓農業協同組合・イソシンファーム
乳牛の雄を食肉用として育てた「栃木開拓牛」や、乳牛と黒毛和牛をかけあわせた「ほうきね牛」を供給しているここでは、牛の餌となる飼料用イネの収穫の様子を見学。飼料用イネは、米の部分だけではなく稲の茎や葉もすべて裁断し、ホールクロップサイレージにして飼料として給餌するため、専用機械を使って圃場でラッピングを行なっていました。組合員は実際に田んぼの中に入り、普段なかなか見られない稲の刈り取りやラッピング作業を見学しながら生産者と意見交換をしました。
生産者に積極的に質問する組合員
飼料用イネの刈り取り風景
■「那須山麓米」や飼料用米の生産者
――訪問先:JAなすの・どではら会
生活クラブ組合員と生産者が一緒に開発したお米「共同開発米」の一つでもある“那須山麓米”の生産者の田んぼも訪れました。米の選別・乾燥を見た後は、米の収穫、そして牛や豚などの餌となる飼料用米の収穫も見学しました。組合員のお子さんから、「倒れた稲があるのはどうして?」と聞かれた生産者の佐藤友幸さんは「するどい質問ですね。たいしたもんだ!」と会場を盛り上げ、次のように教えてくれました。
「大雨の影響や、肥料を多くあたえて稲の背丈が伸びすぎてしまうと倒れる原因になります。今年は台風の影響で田んぼがぬかるんでしまいましたが、ぬかるんだ稲を餌にしても牛は食べてくれません。この稲は細かく粉砕した後、畑にすき込んで肥料の窒素成分として還元します」。
さらに草刈りの大変さ、新しい品種の開発についての話も聞き、リアルな“稲作”の様子を確認できました。
――訪問先:JAなすの・どではら会
生活クラブ組合員と生産者が一緒に開発したお米「共同開発米」の一つでもある“那須山麓米”の生産者の田んぼも訪れました。米の選別・乾燥を見た後は、米の収穫、そして牛や豚などの餌となる飼料用米の収穫も見学しました。組合員のお子さんから、「倒れた稲があるのはどうして?」と聞かれた生産者の佐藤友幸さんは「するどい質問ですね。たいしたもんだ!」と会場を盛り上げ、次のように教えてくれました。
「大雨の影響や、肥料を多くあたえて稲の背丈が伸びすぎてしまうと倒れる原因になります。今年は台風の影響で田んぼがぬかるんでしまいましたが、ぬかるんだ稲を餌にしても牛は食べてくれません。この稲は細かく粉砕した後、畑にすき込んで肥料の窒素成分として還元します」。
さらに草刈りの大変さ、新しい品種の開発についての話も聞き、リアルな“稲作”の様子を確認できました。
メモを取りながら真剣に生産者の話を聞く
生産者に質問する家族参加の組合員
牛乳や野菜を、つくり続けることのむずかしさ
昨今の気候危機に悩みを抱えながらも、暑さにも負けず一生懸命に頑張る2つの生産者のもとを訪れ、それぞれ話を聞きました。
■生活クラブで人気の高い「パスチャライズド牛乳」の生産者
――訪問先:新生酪農株式会社 栃木工場
那須箒根酪農業協同組合の酪農家から集められた生乳が検査、殺菌処理を経て、びんに詰められるまでを見学しました。さらに「ゴーダチーズ」の生産レーンも確認。組合員から牛乳の生産量について問われ、生産者の大森兼治さんが答えました。
「徐々に減っているのが現状です。酪農家の廃業が生産量減少の要因の一つとも言えますね。さらに夏の暑さで乳牛自体が餌を食べず、乳を搾っても出なかったり、薄かったりするときもあり、それが生産量の減少に影響しています」。
■生活クラブで人気の高い「パスチャライズド牛乳」の生産者
――訪問先:新生酪農株式会社 栃木工場
那須箒根酪農業協同組合の酪農家から集められた生乳が検査、殺菌処理を経て、びんに詰められるまでを見学しました。さらに「ゴーダチーズ」の生産レーンも確認。組合員から牛乳の生産量について問われ、生産者の大森兼治さんが答えました。
「徐々に減っているのが現状です。酪農家の廃業が生産量減少の要因の一つとも言えますね。さらに夏の暑さで乳牛自体が餌を食べず、乳を搾っても出なかったり、薄かったりするときもあり、それが生産量の減少に影響しています」。
生産者の話を熱心に聞く組合員
大森さんの案内のもと牛乳びんの充填の様子を確認
■「はればれ育ちキャベツ」の生産者
――訪問先:JAなすの・黒磯キャベツ部会
1999年からキャベツの生産をはじめた、黒磯キャベツ部会の部会長・児山裕司さんの畑を訪問。児山さんは近年の地球過熱化の影響について次のように語ります。
「ここ数年は日中に畑仕事ができないほど暑く、局地的な雨の被害もあり、実ったキャベツのほとんどが腐ってしまうほどです。暑さの影響で外葉が黒く変色してしまったものは土の肥料にします。丹精込めて育てたキャベツを土に還す時は心が痛みますね」。
こうした状況を受け、児山さんをはじめ「黒磯キャベツ部会」の所属メンバーは、夏の暑さにもバテないキャベツの品種を研究しながら、組合員に最高のキャベツを届けるための努力を続けています。
――訪問先:JAなすの・黒磯キャベツ部会
1999年からキャベツの生産をはじめた、黒磯キャベツ部会の部会長・児山裕司さんの畑を訪問。児山さんは近年の地球過熱化の影響について次のように語ります。
「ここ数年は日中に畑仕事ができないほど暑く、局地的な雨の被害もあり、実ったキャベツのほとんどが腐ってしまうほどです。暑さの影響で外葉が黒く変色してしまったものは土の肥料にします。丹精込めて育てたキャベツを土に還す時は心が痛みますね」。
こうした状況を受け、児山さんをはじめ「黒磯キャベツ部会」の所属メンバーは、夏の暑さにもバテないキャベツの品種を研究しながら、組合員に最高のキャベツを届けるための努力を続けています。
児山さんのキャベツ畑で育て方の話を聞く
「あっぱれはればれ野菜おまかせ4点セット」にも入っている元気なキャベツ
※消費材とは生活クラブで取り扱う品物のことで、その多くは組合員と生産者が協力してつくったオリジナル品です。
これからも組合員と一緒に、栃木を盛り上げていこう!
1日の旅を終え、生活クラブ東京・副理事長の豊崎千津美さんは次のように振り返りました。
「国内自給力を高めるためには、『まるごと栃木』のように耕畜連携を通じて、飼料の自給率向上に貢献することが重要だとあらためて感じました。そして牛の餌となる飼料から育て、めぐりめぐって私たち組合員のもとに消費材として届くことを知るという意味でも、組合員が現地に訪れて目で見て感じることは大切ですね。機会があれば、多くの方に気軽に参加してほしいですね。気候危機などにより生産の基盤が揺らぐなか、地域内でつながりながら生産を続けてくれる生産者に感謝をしながら食べて支えて、言葉を交わしあっていきたいです」。
「国内自給力を高めるためには、『まるごと栃木』のように耕畜連携を通じて、飼料の自給率向上に貢献することが重要だとあらためて感じました。そして牛の餌となる飼料から育て、めぐりめぐって私たち組合員のもとに消費材として届くことを知るという意味でも、組合員が現地に訪れて目で見て感じることは大切ですね。機会があれば、多くの方に気軽に参加してほしいですね。気候危機などにより生産の基盤が揺らぐなか、地域内でつながりながら生産を続けてくれる生産者に感謝をしながら食べて支えて、言葉を交わしあっていきたいです」。
生活クラブ東京・副理事長の豊崎千津美さん
「まるごと栃木」では2022年から「子実(しじつ)用トウモロコシ」の生産をすすめています。茎や葉も含めてすべて給餌する飼料用トウモロコシとは異なり、“実”だけを収穫するもので、豚や牛、鶏卵の餌として活用します。この取組みが拡大すれば、輸入飼料が高騰するなかでも、国産飼料を増やし、国内自給力の向上に貢献できます。これからも生産者と組合員がお互いに知る機会をつくり、話しあいを重ね、ともに課題を解決していきます。
「まるごと栃木」では2022年から「子実(しじつ)用トウモロコシ」の生産をすすめています。茎や葉も含めてすべて給餌する飼料用トウモロコシとは異なり、“実”だけを収穫するもので、豚や牛、鶏卵の餌として活用します。この取組みが拡大すれば、輸入飼料が高騰するなかでも、国産飼料を増やし、国内自給力の向上に貢献できます。これからも生産者と組合員がお互いに知る機会をつくり、話しあいを重ね、ともに課題を解決していきます。
【2024年10月8日掲載】