【日藝×生活クラブ】学生が長野県の生産者を取材しました
学生たちが「食料自給」の魅力を探る4日間
生活クラブ連合会は日本大学芸術学部(以下、日藝)と産学連携プロジェクトを実施しています。2024年度は「食料自給」をテーマに、日藝の16名の学生たちが、生活クラブと生産者が行なう食料自給力向上の取組みを取材しました。この記事では学生たちによる産地取材の様子をレポートします。
美勢商事の「地域を元気にする」地産地消の取組み
取材は2024年8月21日から24日までの4日間で行なわれ、初日は長野県塩尻市にある美勢(みせ)商事株式会社を訪問しました。
美勢商事は生活クラブのオリジナルの餃子のほか、水餃子や野菜餃子などの点心類を製造している生産者です。アルプスの豊かな伏流水に恵まれ、昼夜の気温差が大きい高原で育った野菜をたっぷり使った餃子は、人気の消費材として組合員に長年親しまれています。
今回の取材では、原料野菜を栽培する圃場と工場を訪問し、餃子をはじめとする点心が製造されるまでの流れを見学するとともに、美勢商事が考える食料自給の重要性について伺いました。
美勢商事は生活クラブのオリジナルの餃子のほか、水餃子や野菜餃子などの点心類を製造している生産者です。アルプスの豊かな伏流水に恵まれ、昼夜の気温差が大きい高原で育った野菜をたっぷり使った餃子は、人気の消費材として組合員に長年親しまれています。
今回の取材では、原料野菜を栽培する圃場と工場を訪問し、餃子をはじめとする点心が製造されるまでの流れを見学するとともに、美勢商事が考える食料自給の重要性について伺いました。
美勢商事では野菜の栽培から点心の加工まで、一貫で生産するためのしくみを揃えている。
一般的に、餃子原料の日本の食料自給率は低く、小麦粉は15%、豚肉は6%と原料調達の大半を海外に頼っていますが、美勢商事では餃子をつくる原料のほとんどに国産素材を使用しています。
ニラなどの餃子の原料野菜の一部は、同じ地域の関連会社のきららファーム株式会社が栽培しています。きららファームでは20代から定年退職後の再雇用者まで、幅広い年代のメンバーが農業に従事しています。全国的に農業の担い手不足がすすむなか、美勢グループでは地産地消を続け、地域を活性化するためにも、雇用の創出に力を入れています。
どうして雇用の創出や地域貢献に取り組んでいるのか、という学生からの質問に対し、美勢商事 代表取締役社長兼きららリンクCEOの小松直さんは「今ある豊かさを目減りさせないため」と語りました。
「農業を持続可能にしていくためには、関わる人が多くなることが重要です。また、働きたいと思っている人がいるうちは、働ける場所を提供することも事業としての使命だと考えています」
取材のなかで学生たちはきららファームの圃場を訪問し、生産者のレクチャーのもとニラの収穫を行ないました。
ニラなどの餃子の原料野菜の一部は、同じ地域の関連会社のきららファーム株式会社が栽培しています。きららファームでは20代から定年退職後の再雇用者まで、幅広い年代のメンバーが農業に従事しています。全国的に農業の担い手不足がすすむなか、美勢グループでは地産地消を続け、地域を活性化するためにも、雇用の創出に力を入れています。
どうして雇用の創出や地域貢献に取り組んでいるのか、という学生からの質問に対し、美勢商事 代表取締役社長兼きららリンクCEOの小松直さんは「今ある豊かさを目減りさせないため」と語りました。
「農業を持続可能にしていくためには、関わる人が多くなることが重要です。また、働きたいと思っている人がいるうちは、働ける場所を提供することも事業としての使命だと考えています」
取材のなかで学生たちはきららファームの圃場を訪問し、生産者のレクチャーのもとニラの収穫を行ないました。
学生たちがニラの収穫にチャレンジ。収穫したニラは信州名物「ニラせんべい」として学生たちも試食した。
「ニラを切るときは、手に取ってもらったひとに嬉しいと思ってもらえるように、少し根本を残して切ってくださいね」と教えてくれたのは、きららファームで働く生産者の大野田 美和子さん。
もともと美勢商事で働いていた大野田さんは、定年退職を機にきららファームに就職しました。農業に携わる仕事は初めてでしたが、日差しの強い夏の日中は就業時間を調整するなど、自分のペースにあわせて働けているといいます。
学生からの「元気でいる秘訣は何ですか?」という質問に対し、「元気に暮らせているのはお仕事があるからだと思います。やっぱりお仕事があると、暮らしにはりあいが出ます」と大野田さんは答えました。
「ニラを切るときは、手に取ってもらったひとに嬉しいと思ってもらえるように、少し根本を残して切ってくださいね」と教えてくれたのは、きららファームで働く生産者の大野田 美和子さん。
もともと美勢商事で働いていた大野田さんは、定年退職を機にきららファームに就職しました。農業に携わる仕事は初めてでしたが、日差しの強い夏の日中は就業時間を調整するなど、自分のペースにあわせて働けているといいます。
学生からの「元気でいる秘訣は何ですか?」という質問に対し、「元気に暮らせているのはお仕事があるからだと思います。やっぱりお仕事があると、暮らしにはりあいが出ます」と大野田さんは答えました。
学生からの取材に笑顔で答える大野田さん
信州トマトジュースの製造に密着取材 収穫から加工まで
2日目は、長野県飯綱町での加工用トマト計画的労働に参加。学生たちは加工用トマトの収穫にチャレンジしました。「加工用トマト計画的労働参加」では、減少傾向にある加工用トマトの生産者を支えるため、苗の定植や収穫といった生産に組合員が参加しています。参加者は無償で手伝うのではなく、労働力として生産に参加し手間賃を受け取ります。この手間賃や交通費・宿泊費といった諸経費も、トマトジュースの価格に含まれ、「L’s信州トマトジュース」を購入する組合員が、生産に必要な経費をみんなでまかなうしくみになっています。この取組みは、国産の加工用トマトを使ったトマトジュースを飲み続けたいという組合員の想いから、信州トマトジュースの製造元である長野興農株式会社、販売元の雪印メグミルク株式会社、加工用トマトの生産者であるながの農業協同組合の協力のもと1995年からはじまり、今年で30年目を迎えます。
8月の猛暑のなか、地這いで育つ加工用トマトの収穫に初めて挑戦する学生たち。
翌日は加工用トマト計画労働に参加する組合員や生産者に取材したのち、長野興農の工場を訪れ、信州トマトジュースの加工製造の様子を見学しました。
信州トマトジュースになる加工用トマトは収穫後、48時間以内に長野興農の工場に運ばれ、シーズンパックとして加工される。
「今後の原料確保について不安な点はありますか」という学生からの質問に対し、長野興農 東京支店課長の桐原 洋平さんは次のように答えました。
「加工用トマトの生産は年々減少しており、原料確保に危機感はあります。その一方で、国産の加工用トマトを使用したトマトジュースの製造は、生活クラブや組合員のみなさんの協力があって続けられています。今後の情勢を乗り越えていくためにも、つながりや産地の状況を知ってもらうための発信は、今後より重要になっていくと考えています」
「加工用トマトの生産は年々減少しており、原料確保に危機感はあります。その一方で、国産の加工用トマトを使用したトマトジュースの製造は、生活クラブや組合員のみなさんの協力があって続けられています。今後の情勢を乗り越えていくためにも、つながりや産地の状況を知ってもらうための発信は、今後より重要になっていくと考えています」
長野興農・東京支店課長 桐原 洋平さん
加工用トマトを栽培する生産者に取材をする日藝の学生たち。
トマトの収穫のため、神奈川県と千葉県から訪れた組合員への取材も行ない、計画的労働に参加したきっかけや想いなどについてインタビューした。
飼料の自給で土地を守る 佐藤牧場の農畜連携
最終日は長野県松本市にある佐藤牧場を訪れました。
佐藤牧場では南信酪農業協同組合を通して、生活クラブの「パスチャライズド牛乳」の原料乳を供給しています。不安定な国際情勢を背景とした飼料価格などの高騰により、多くの酪農家が経営危機に直面しているなか、佐藤牧場では牛へ給与する飼料の自給率の向上に取り組んでいます。
学生たちは牧場と飼料を栽培する圃場を訪れ、牛の飼料となるデントコーン(飼料用トウモロコシ)の収穫の様子を見学しました。
デントコーンの収穫の様子。実だけではなく茎や葉も牛の飼料として活用される。
収穫したデントコーンは粉砕後、乳酸菌を足してロール状に丸めラップ巻きにし、2ヶ月発酵させて飼料として完成する。
牧場見学の後は、南信酪農業協同組合 指導事業部の市岡 英昭さんより、酪農危機の要因や現状について伺いました。
自給飼料の生産をしている佐藤牧場でも、国際情勢による飼料価格の変動の影響は受けにくい一方、自給飼料生産に伴う機械代(減価償却費)、資材費、燃料代などの経費が負担となっているといいます。
そのような中、佐藤牧場では農業人口の減少により、増えつつある遊休耕地を譲り受けるなど、精力的に自給飼料の増産をすすめています。なぜ飼料の自給に力を入れているのか、佐藤牧場を営む佐藤勝彦さんは次のように答えました。
「牛は毎日たくさん排泄します。酪農を営めば、牛糞を処理や還元する土地が必ず必要になりますが、飼料作物を育てれば排泄物を堆肥として活用することができます。エサは買おうと思えば買うこともできるけれど、酪農には国土を保全するという大切な役割があると考えています。だからこそ、佐藤牧場では飼料の自給に力を入れているのです」
自給飼料の生産をしている佐藤牧場でも、国際情勢による飼料価格の変動の影響は受けにくい一方、自給飼料生産に伴う機械代(減価償却費)、資材費、燃料代などの経費が負担となっているといいます。
そのような中、佐藤牧場では農業人口の減少により、増えつつある遊休耕地を譲り受けるなど、精力的に自給飼料の増産をすすめています。なぜ飼料の自給に力を入れているのか、佐藤牧場を営む佐藤勝彦さんは次のように答えました。
「牛は毎日たくさん排泄します。酪農を営めば、牛糞を処理や還元する土地が必ず必要になりますが、飼料作物を育てれば排泄物を堆肥として活用することができます。エサは買おうと思えば買うこともできるけれど、酪農には国土を保全するという大切な役割があると考えています。だからこそ、佐藤牧場では飼料の自給に力を入れているのです」
デントコーンの子実部分。佐藤牧場ではほかにも、牧草やライ麦なども飼料として栽培している。
背丈の倍以上ある重機でデントコーンを収穫。佐藤牧場で働くスタッフは若い女性も多く、活発な雰囲気にあふれていた。
学生たちが見つけた「食料自給」の魅力とは
日本国内の食料自給率はカロリーベースで38%(*)と、食料調達は国内で消費される食品の多くを輸入に頼っています。こうした課題を受け、生活クラブでは生産者と協力し食料自給力の向上に取組むとともに、日本の食料自給について知ってもらうための発信をすすめてきました。
今回のプロジェクトは、「食料自給」という普段は実感しにくい課題について、より多くのひとに「自分ごと」として捉えてもらうきっかけをつくるため実施されました。
取材を通して学生たちが気づいたのは、食料自給力が上がることは、安心して食べられる食材が買えるようになるだけではなく、地域の活性化や土地の保全につながるという発見でした。また、食べる人たちが産地に足を運び、お互いの想いや意見を知ることによって、より暮らしを豊かにしていくためのよい循環につながるのではないかといいます。
今回のプロジェクトは、「食料自給」という普段は実感しにくい課題について、より多くのひとに「自分ごと」として捉えてもらうきっかけをつくるため実施されました。
取材を通して学生たちが気づいたのは、食料自給力が上がることは、安心して食べられる食材が買えるようになるだけではなく、地域の活性化や土地の保全につながるという発見でした。また、食べる人たちが産地に足を運び、お互いの想いや意見を知ることによって、より暮らしを豊かにしていくためのよい循環につながるのではないかといいます。
学生からのコメント
日本大学芸術学部 文芸学科 舩木 山吹さん
「加工用トマトの収穫作業に参加してみて、思っていた以上に大変で、手間がかかっていることなど、食べる側とつくる側のギャップがあると実感しました。普段は買う側として、もっといいものを、もっと安くほしいと考えがちですが、実はわがままな意見なのではないかとも考えさせられました」
取材での学びを通して発見した内容は、学生たちが冊子やポスターなどにまとめます。11月上旬には制作物と取材のことを組合員へ発表しますので、 次回はプレゼンテーションの様子をレポートします。
★日藝との産学連携プロジェクトについて、生活クラブ連合会公式SNS各種でも情報を発信中です。各SNSよりご覧ください。
【2024年10月21日掲載】