「庄内ローカルSDGs視察交流会」を開催!“ローカルSDGs” の先進地・庄内の今とこれから
2024年11月1日(金)と2日(土)、生活クラブと提携産地である山形県庄内地域のサステイナブルな取組みを見て知る「庄内ローカルSDGs(※)視察交流会」が開かれました。生活クラブの組合員の代表や提携生産者、庄内地域の関係者など65人が参加し、2日間にわたって報告会と関連施設の見学を行ない、庄内の自然エネルギーを活用した地域事業の広がりと現状の到達点を確認しました。
※ローカルSDGsとは、地域が自らの長所をいかして主体的に課題を解決し続け、そうした地域同士のネットワークを形成して国全体を持続可能にしていく自立・分散型社会のこと。生活クラブでは各地でこのようなネットワークを形成して、持続可能な社会づくりに取り組んでいます。
※ローカルSDGsとは、地域が自らの長所をいかして主体的に課題を解決し続け、そうした地域同士のネットワークを形成して国全体を持続可能にしていく自立・分散型社会のこと。生活クラブでは各地でこのようなネットワークを形成して、持続可能な社会づくりに取り組んでいます。
太陽光発電の利益を地域へ還元
2019年、各地の生活クラブと地方自治体、企業、市民ファンドなどが協力して出資し、「庄内・遊佐太陽光発電所」が建設されました。ここで発電された電気の一部は「生活クラブでんき」として組合員のもとへ届けています。当発電所が担う役割は、発電だけではありません。売電益の一部を庄内地域の課題を解決する新規事業などに活用し、地域活性化に還元するという構想をもって建設されました。地域づくりに活用される売電益は、酒田市に「庄内自然エネルギー発電基金」を造成し、2022年から助成を開始。発電所建設から助成の開始を経た5年の間に、基金はさまざまな形で活用されており、その多彩な取組みについて報告します。
<開催概要>
開催日:2024年11月1日(金)~11月2日(土)
主催:(株)庄内自然エネルギー発電
共催:(一社)生活クラブエネルギー事業連合、生活クラブ連合会、生活クラブ共済連、(株)生活クラブエナジー
参加者:11月1日報告交流会65名、11月2日現地視察34名
<開催概要>
開催日:2024年11月1日(金)~11月2日(土)
主催:(株)庄内自然エネルギー発電
共催:(一社)生活クラブエネルギー事業連合、生活クラブ連合会、生活クラブ共済連、(株)生活クラブエナジー
参加者:11月1日報告交流会65名、11月2日現地視察34名
庄内・遊佐太陽光発電所の太陽光パネル
開会挨拶と基調講演「地域エネルギーからすすめる地域づくり」
「ガーデンパレスみずほ」での報告会の様子
11月1日、山形県酒田市で報告会がスタート。開会に先立ち、主催者の村上彰一氏があいさつしました。
11月1日、山形県酒田市で報告会がスタート。開会に先立ち、主催者の村上彰一氏があいさつしました。
(株)庄内自然エネルギー発電代表取締役兼生活クラブ連合会会長 村上彰一氏
「庄内の財産である太陽光エネルギーで発電し、行政と協力してこの地域を持続可能な形に変えていこうとする取組みを報告します」
次に酒田市長 矢口明子氏、遊佐町長 松永裕美氏からご挨拶をいただきました。
酒田市長 矢口明子氏
「庄内と生活クラブは、50年以上にわたる食の連携を経て、発電事業をともに立ち上げることができました。エネルギーを作り、地域を支えるために活用するという取組みを、力をあわせて続けていけたらうれしいです」
遊佐町長 松永裕美氏
「7月の豪雨災害後、多くの組合員がボランティアとして復旧に尽力してくださり、大変感謝しています。自然のエネルギーを活用する太陽光発電で未来のために何ができるのか、みなさんと一緒に考えていきたい」
続いて、早稲田大学名誉教授の坪郷(つぼごう)實氏が「地域エネルギーからすすめる地域づくり」をテーマに基調講演をしました。
早稲田大学名誉教授 坪郷實氏
「世界的には、経済社会のしくみを持続可能な形に変えていく“移行期”に入っていますが、日本は重要な役割を果たす再生可能エネルギーを促進する制度が整っていません。日本をサステイナブルな方向へ動かすには、地域や自治体が新たな方向性を示したうえで連携していく必要があります。生活クラブの庄内での活動は、エネルギーだけでなく食や福祉の分野においても着実にすすんでおり、貴重なモデルケースになるでしょう。今後、全国に展開されることを期待しています」
基金を活用した交流拠点「TOCHiTO」と地域への展開
次は、庄内自然エネルギー発電基金を活用した活動報告です。酒田市移住者の住まいと地域の交流拠点「TOCHiTO」について、その事業の背景にあった、消費地・産地双方の抱える地域社会の課題を交えて、生活クラブ顧問の伊藤由理子氏が説明しました。
生活クラブ連合会顧問 伊藤由理子氏
「TOCHiTOは基金による助成を受け、酒田市や地元企業、大学と生活クラブが協働してつくり上げた施設です。移住者が庄内の土地や人とともにすすめる持続可能なコミュニティづくりをめざしています。以前行なった組合員へのアンケートで、『元気なうちに終(つい)の住処を見つけたい』といったニーズがあったことから、組合員になじみの深い庄内への移住を選択肢として考えてもらいたい、それが地域の発展につながれば、との思いがありました。移住した方々は地域に根付いて元気に活動しており、すでに2世帯は遊佐町に転居して農業に携わっています。この場所をきっかけに、どんどん地域へ飛び立ってもらいたいです」
TOCHiTO事業に携わる仮設機材工業(株)の西村修氏からは、これまでのあゆみと今後の展開が語られました。また、生活クラブ共済連パートナーの佐藤博氏より、「庄内の地域ニーズ・資源調査事業」の取組みが紹介されました。これは、移住者の「地域に参加できる暮らし」をめざしたものです。
次にスライドで、TOCHiTOオープンまでの軌跡を年表と写真で振り返り、居住者4名から、基金をいかした活動の報告や、移住してからの思いが語られました。
TOCHiTO居住者の宮田あい子氏
シェアする暮らし検討プロジェクト
「モノ(家事家電)とコト(家事に関するスキル・知恵)をシェアして無駄をなくし、良質な暮らしをめざす計画です。居住者からの提供と基金の活用でミシン・アイロン・掃除機などを揃え、TOCHiTOの共有スペースに置いて誰でも使えるようにしました。
また、ミシンやせっけんの活用など、講座を開いて知恵を共有しました。なかでも話題になったのは、庄内の伝統文化である『槇島ほうきづくり』のワークショップです。居住者だけでなく地域の方も参加してくれるなど、新たな交流も生まれています。さらに参加者がSNS教室で学び発信することで、多くの人に知ってもらうことができました」
家電を共有し、余分なモノを減らす
「さかたオープンガーデン」プロジェクト
「TOCHiTOの庭を整備して花や野菜を育て、季節ごとに彩りあふれるスペースにしようという試みです。まずは土づくりから始め、地元の方を招いて庄内で野菜を育てる際のポイントを教わりました。地元の方が菜園を見て話しかけてくれるなど、こちらでも地域とのつながりを深めることができました。いずれはこのようなスペースを、TOCHiTOだけでなく市内にも広げていきたいです」
他にも、以下のような事業が展開されています。
庄内の地域ニーズ・資源調査事業
地域に『参加する暮らし』をめざし、どんな活動をすれば地域も人も元気にできるのかを調べました。メンバーは居住者のほか、東北公益文科大学の学生3名、アドバイザーの同大学准教授、事務局が参加しています。
庄内・酒田のことを知るためにワークショップで意見を出しあい、調査テーマを「酒田の魅力づくりのための調査」としました。茶話会に地域の方を招いてお話を聞いたり、市役所職員へのインタビューを行なって、何ができるかを検討。その結果、山形県産フルーツを使ったブランドフードの開発など、新たな取組みが決まりました。試作・試食を重ねて、今後は首都圏への販売を検討中です。
庄内文化を知り、都市部とつなぎ、子どもらに伝承するプロジェクト
庄内文化の魅力を学んで、地域の方々とともに次世代を担う子どもたちに伝えていこうという活動です。これまでに9つの講座を実施しました。山居倉庫について学ぶナイトツアー、庄内の歴史文化や酒田弁を知る講座、鳥海山登山に芋煮会体験、酒田舞娘から北前船文化を学ぶなど。その経験を踏まえて、酒田に住む子ども向けに『私たちが感じた庄内・酒田の魅力!』という資料をつくり、SNSで発信しています。
「さかたオープンガーデン」プロジェクト
「TOCHiTOの庭を整備して花や野菜を育て、季節ごとに彩りあふれるスペースにしようという試みです。まずは土づくりから始め、地元の方を招いて庄内で野菜を育てる際のポイントを教わりました。地元の方が菜園を見て話しかけてくれるなど、こちらでも地域とのつながりを深めることができました。いずれはこのようなスペースを、TOCHiTOだけでなく市内にも広げていきたいです」
他にも、以下のような事業が展開されています。
庄内の地域ニーズ・資源調査事業
地域に『参加する暮らし』をめざし、どんな活動をすれば地域も人も元気にできるのかを調べました。メンバーは居住者のほか、東北公益文科大学の学生3名、アドバイザーの同大学准教授、事務局が参加しています。
庄内・酒田のことを知るためにワークショップで意見を出しあい、調査テーマを「酒田の魅力づくりのための調査」としました。茶話会に地域の方を招いてお話を聞いたり、市役所職員へのインタビューを行なって、何ができるかを検討。その結果、山形県産フルーツを使ったブランドフードの開発など、新たな取組みが決まりました。試作・試食を重ねて、今後は首都圏への販売を検討中です。
庄内文化を知り、都市部とつなぎ、子どもらに伝承するプロジェクト
庄内文化の魅力を学んで、地域の方々とともに次世代を担う子どもたちに伝えていこうという活動です。これまでに9つの講座を実施しました。山居倉庫について学ぶナイトツアー、庄内の歴史文化や酒田弁を知る講座、鳥海山登山に芋煮会体験、酒田舞娘から北前船文化を学ぶなど。その経験を踏まえて、酒田に住む子ども向けに『私たちが感じた庄内・酒田の魅力!』という資料をつくり、SNSで発信しています。
庄内の米づくりを支える3つの取組み
「庄内自然エネルギー発電基金」は、TOCHiTO関連の他にもさまざまな事業に運用されています。今回の交流会では、庄内の基幹産業である米づくりに関する取組みについても、報告や視察が行なわれました。
「アイガモロボ」の導入
水田を自動で巡る「アイガモロボ」を酒田市と遊佐町で導入しています。太陽光で動くため燃料は不要。プロペラが水を攪拌して濁らせ、雑草の成長を妨げる害虫のジャンボタニシを振り落とすなど、プラスの効果が見られるため継続を検討します。
「高たんぱく飼料用米」の育成
「アイガモロボ」の導入
水田を自動で巡る「アイガモロボ」を酒田市と遊佐町で導入しています。太陽光で動くため燃料は不要。プロペラが水を攪拌して濁らせ、雑草の成長を妨げる害虫のジャンボタニシを振り落とすなど、プラスの効果が見られるため継続を検討します。
「高たんぱく飼料用米」の育成
高たんぱく飼料用米を育てている圃場
休耕田を活用した飼料用米栽培に取り組むなか、輸入飼料を減らして効率よく国産化をすすめるため、たんぱく質を多く含む「高たんぱく飼料用米」を試験的に育てています。品種や肥料などを変えて試行錯誤しながら、よりよい結果をめざしています。
餅加工場の整備
休耕田を活用した飼料用米栽培に取り組むなか、輸入飼料を減らして効率よく国産化をすすめるため、たんぱく質を多く含む「高たんぱく飼料用米」を試験的に育てています。品種や肥料などを変えて試行錯誤しながら、よりよい結果をめざしています。
餅加工場の整備
廃校をリフォームして餅加工場に
少子化が原因で廃校となった旧藤崎小学校(遊佐町)の校舎を改修し、餅加工場として活用します。余目農産加工の加工事業の終了により、生活クラブの消費材「丸もち」の製造が途絶えかけましたが、基金による助成と生産者や自治体との連携により継続できることになりました。
最後に、生活クラブ東京理事長の加瀬和美氏が閉会の挨拶を述べました。
少子化が原因で廃校となった旧藤崎小学校(遊佐町)の校舎を改修し、餅加工場として活用します。余目農産加工の加工事業の終了により、生活クラブの消費材「丸もち」の製造が途絶えかけましたが、基金による助成と生産者や自治体との連携により継続できることになりました。
最後に、生活クラブ東京理事長の加瀬和美氏が閉会の挨拶を述べました。
生活クラブ東京理事長 加瀬和美氏
「TOCHiTO年表の1行目は『1974年/生活クラブと庄内の交流が始まる』となっています。まさにここからがスタートです。再生可能エネルギーを活用した電気の利用が庄内のまちづくりに貢献し、私たちの食を守ることにもつながります。持続可能なしくみをつくり、次の世代へ引き継いでいきましょう」
今回の視察交流会では、庄内地域でのさまざまな活動を通じ、地域と一体となってすすむローカルSDGsの成果が共有されました。生活クラブは今後も地域と連携しながら、持続可能な社会づくりをめざします。
【2024年12月11日掲載】