子どもの甲状腺検査活動(2023年度)・保養活動の報告会を開催しました
講師の白石 草さん(前列左から2番目)とともに、参加した組合員のみなさん
生活クラブでは組合員からのカンパをもとにした「災害復興支援カンパ基金」を通じ、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故(以下、福島第一原発事故)で被災した方々への支援活動を続けています。そのひとつが、2012年度から毎年続けている甲状腺検査です。また、被災者の保養活動(※1)のサポートなども行なっています。
2023年度の活動内容を共有する報告会を、2024年11月30日に東京都新宿区にて開催し、オンライン参加も含め、組合員50名以上が参加しました。
※1:福島県や栃木県の組合員の子どもとその家族を他地域の生活クラブが招き、放射能の心配のない地域で子どもたちが過ごせる場を提供する「リフレッシュツアー」などの取組み
生活クラブでは組合員からのカンパをもとにした「災害復興支援カンパ基金」を通じ、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故(以下、福島第一原発事故)で被災した方々への支援活動を続けています。そのひとつが、2012年度から毎年続けている甲状腺検査です。また、被災者の保養活動(※1)のサポートなども行なっています。
2023年度の活動内容を共有する報告会を、2024年11月30日に東京都新宿区にて開催し、オンライン参加も含め、組合員50名以上が参加しました。
※1:福島県や栃木県の組合員の子どもとその家族を他地域の生活クラブが招き、放射能の心配のない地域で子どもたちが過ごせる場を提供する「リフレッシュツアー」などの取組み
震災後から続ける独自の甲状腺検査活動
福島第一原発事故により放射性物質が拡散されたことから、被ばくによる甲状腺がんの発生が懸念されています。年齢が低いほどリスクが高いとされていますが、医学的にまだわかっていないことが多いのが現状です。
生活クラブの甲状腺検査(※2)は、原発事故の時に18歳までの子どもを対象とし、福島県にいた子どもだけでなく、他の地域の子どもも検査の対象としています(※3)。福島県と他地域を比較するとともに、全国各地の実態を把握して、甲状腺がんの早期検診や脱原発活動につなげることをめざしています。
2023年度は、18地域の生活クラブで甲状腺検査を実施。280人の子どもが受診し、活動には41ヶ所の医療機関が協力しました。
※2:甲状腺検査活動について
※3:事故後に生まれた子どもも希望があれば対象とする
生活クラブの甲状腺検査(※2)は、原発事故の時に18歳までの子どもを対象とし、福島県にいた子どもだけでなく、他の地域の子どもも検査の対象としています(※3)。福島県と他地域を比較するとともに、全国各地の実態を把握して、甲状腺がんの早期検診や脱原発活動につなげることをめざしています。
2023年度は、18地域の生活クラブで甲状腺検査を実施。280人の子どもが受診し、活動には41ヶ所の医療機関が協力しました。
※2:甲状腺検査活動について
※3:事故後に生まれた子どもも希望があれば対象とする
最新の情報を得て学び、対話する姿勢を大切に
報告会では2名の講師が講演しました。
はじめに登壇したのは、生活クラブの甲状腺検査活動が始まった当初から検査を監修する、道北勤労者医療協会・ながやま医院院長の松崎道幸医師です。
松崎医師はこれまでの報告と同様、「子どもの甲状腺がんの死亡率は低いものの、手術や再発を繰り返すことにより生活の質が大きく損なわれるため、甲状腺検査による早期発見・早期治療が大切」といいます。
さらに新たなトピックとして、2023年に公表された、放射線被ばくとがん死の関連を調べた最新の調査結果を紹介。フランス・イギリス・アメリカの原発労働者およそ30万人を約35年間追跡して得られたもので、この調査結果によって、100ミリシーベルトを大きく下回る低線量被ばくでも、がん死などの健康リスクが明らかに高まることが示されました。
ICRP(国際放射線防護委員会)は、今から四半世紀も前の古い医学常識をもとに「100ミリシーベルト以下の被ばくでがんは発生しない」という勧告案を発表していますが、この勧告案は最新の調査によって覆されたと松崎医師は説明します。
「放射線被ばくの健康影響は、これまで常に過小評価されてきました。ICRPの勧告案がこのまま運用されれば、別の原発事故が起きたときに、政府が『避難せずに家の中にいなさい』と指示を出す可能性は高いです。しっかり学んで、組合員のみなさんで対話していくことが必要です」
はじめに登壇したのは、生活クラブの甲状腺検査活動が始まった当初から検査を監修する、道北勤労者医療協会・ながやま医院院長の松崎道幸医師です。
松崎医師はこれまでの報告と同様、「子どもの甲状腺がんの死亡率は低いものの、手術や再発を繰り返すことにより生活の質が大きく損なわれるため、甲状腺検査による早期発見・早期治療が大切」といいます。
さらに新たなトピックとして、2023年に公表された、放射線被ばくとがん死の関連を調べた最新の調査結果を紹介。フランス・イギリス・アメリカの原発労働者およそ30万人を約35年間追跡して得られたもので、この調査結果によって、100ミリシーベルトを大きく下回る低線量被ばくでも、がん死などの健康リスクが明らかに高まることが示されました。
ICRP(国際放射線防護委員会)は、今から四半世紀も前の古い医学常識をもとに「100ミリシーベルト以下の被ばくでがんは発生しない」という勧告案を発表していますが、この勧告案は最新の調査によって覆されたと松崎医師は説明します。
「放射線被ばくの健康影響は、これまで常に過小評価されてきました。ICRPの勧告案がこのまま運用されれば、別の原発事故が起きたときに、政府が『避難せずに家の中にいなさい』と指示を出す可能性は高いです。しっかり学んで、組合員のみなさんで対話していくことが必要です」
道北勤医協・ながやま医院院長の松崎道幸医師
福島の子どもの甲状腺がんの実態を知ってほしい
次に登壇したのは、福島第一原発事故後の被ばく問題を精力的に報道しているジャーナリストでOurPlanet-TV代表理事の白石 草(はじめ)さんです。
白石さんは、甲状腺がんの検査や手術の動画を用いながら、その過酷な治療実態や、若い患者たちが抱える苦悩について報告しました。
甲状腺がんの治療は、検査の段階で首に麻酔なしで長い針を刺すなど苦痛を伴うものであり、摘出などの手術を受けた後には、まれに大量出血で死亡するケースがあるなど危険も伴います。
もっとも過酷といわれるのがアイソトープ治療です。高濃度の放射性ヨウ素を体内に入れて内部被ばくさせ、がんに冒された細胞を破壊する治療ですが、患者自身が放射線源となるため、入院中は隔離された病室で、看護師による緊急対応もままならない状態で過ごさなければなりません。
白石さんは、「これらの治療に直面しているのが十代の子どもたちであり、再発を繰り返し進学や就職をあきらめるなど、甲状腺がんと診断された子どもの4人に1人が進路の変更を余儀なくされている」と訴えます。
「彼らは結婚や恋愛といった将来に対する不安に加え、検査の度にかかる費用など経済的な不安も同時に抱えています。現在、原発事故当時に6~16歳だった6人の原告が、東京電力ホールディングスを相手取って損害賠償を求める裁判を起こしていますが、原告のなかには、今年の夏に4回目のアイソトープ治療を受けた子どももいます。検査を受ける方は年々少なくなっていますが、早期発見のために定期的な検査を受けてほしいです」
白石さんは、甲状腺がんの検査や手術の動画を用いながら、その過酷な治療実態や、若い患者たちが抱える苦悩について報告しました。
甲状腺がんの治療は、検査の段階で首に麻酔なしで長い針を刺すなど苦痛を伴うものであり、摘出などの手術を受けた後には、まれに大量出血で死亡するケースがあるなど危険も伴います。
もっとも過酷といわれるのがアイソトープ治療です。高濃度の放射性ヨウ素を体内に入れて内部被ばくさせ、がんに冒された細胞を破壊する治療ですが、患者自身が放射線源となるため、入院中は隔離された病室で、看護師による緊急対応もままならない状態で過ごさなければなりません。
白石さんは、「これらの治療に直面しているのが十代の子どもたちであり、再発を繰り返し進学や就職をあきらめるなど、甲状腺がんと診断された子どもの4人に1人が進路の変更を余儀なくされている」と訴えます。
「彼らは結婚や恋愛といった将来に対する不安に加え、検査の度にかかる費用など経済的な不安も同時に抱えています。現在、原発事故当時に6~16歳だった6人の原告が、東京電力ホールディングスを相手取って損害賠償を求める裁判を起こしていますが、原告のなかには、今年の夏に4回目のアイソトープ治療を受けた子どももいます。検査を受ける方は年々少なくなっていますが、早期発見のために定期的な検査を受けてほしいです」
ジャーナリスト・OurPlanet-TV代表理事
白石 草(はじめ)さん
白石 草(はじめ)さん
これからも組合員どうし寄り添い続ける
報告会の後半には、3つの地域の生活クラブからリフレッシュツアーの実施報告がありました。
受け入れる側として参加した生活クラブ愛知と神奈川の代表者からは、「12年が経っても放射能や原発は安心できない」「脱原発に向けた取組みが必要。交流を通してともに考えていく必要がある」といった感想が寄せられました。
受け入れる側として参加した生活クラブ愛知と神奈川の代表者からは、「12年が経っても放射能や原発は安心できない」「脱原発に向けた取組みが必要。交流を通してともに考えていく必要がある」といった感想が寄せられました。
生活クラブ愛知の土橋禎子さん
生活クラブ神奈川の競 啓子さんと安藤佳子さん
送り出し側として参加した生活クラブ福島の佐藤美智子さんからは、支援への感謝の言葉とともに、「これからは、自分たちが生活する福島で何ができるのか、福島のなかでも話しあっていきたいといった声が挙がっています」との報告がありました。
生活クラブ福島の佐藤美智子さん
福島県は、「甲状腺検査で見つかったがんと、原発事故による被ばくとの関連は認められない」という見解を示しています。
しかしながら、生活クラブは放射能による子どもたちへの影響を明らかにするため、独自に検査を継続し、全国各地での実態を調査してきました。そして、この調査結果を携え政府や福島県による甲状腺検査を監視し、行政による情報管理への異議申し立てとし、脱原発活動にまでつなげようとしています。
甲状腺検査活動については、他の生協団体が現在も続けている例は少なく、生活クラブでの検査数も少なくなってはいますが、あとから被害が明らかになる可能性もあります。また、そうなった場合には被害者の救済措置がなくなってしまい、実際に裁判が起きているケースもあります。
生活クラブでは、これからも組合員が力をあわせ、子どもたちの未来のために、みんなが安心して暮らせる原発のない社会をめざして活動をすすめていきます。
【2024年12月27日掲載】