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生協の食材宅配【生活クラブ】
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最高品質の原卵が生きる 無添加の自然な味【からし明太子】


生活クラブの「からし明太子(めんたいこ)」は食品添加物を一切使用していない無添加だ。着色料や発色剤などの添加物を使うのが当たり前の辛子明太子業界において、無添加の明太子を作るのがどれほど難しいか、業界関係者以外にはあまり知られていない。では、なぜ、難しいのか。提携先の泰山食品商行(東京都世田谷区)と製造を担当するイリイチ食品(山口県下関市)の両社長によれば、それは原料であるスケトウダラの卵が「繊細」だからだ。

添加物ありきで発展した業界

これが着色料も発色剤も使っていない明太子の自然な色だ。冷蔵庫で12時間ほどかけてゆっくり解凍することがおいしく食べる秘訣(ひけつ)

生活クラブと泰山食品商行の関係の歴史は長い。1968年、当時は島根県にあった泰山食品商行の前身の会社が、生活クラブに煮干しや昆布などを納めるようになった。それが縁で86年、生活クラブに「無添加の明太子を作れないか」と相談された泰山食品商行は、明太子メーカーの老舗、イリイチ食品に声をかけた。およそ2年もの開発期間を経て、88年、業界初ともいわれる無添加の「からし明太子」は誕生した。

辛子明太子といえば、光沢のある、鮮やかな赤やピンクを思い浮かべる人も多いだろう。だが、真っ白なご飯のうえで映えるあの鮮明な色は、添加物なしには絶対に出せない。色をよくする着色料や発色剤をはじめ、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、調味料、甘味料、香料、酸味料、膨張剤、凝固剤など、明太子に使われる添加物をあげればきりがない。また、これら添加物を「魚卵用品質改良剤」と称して一袋にまとめた商品を製造する会社も存在する。添加物の会社とともに発展してきたのが明太子の業界なのだ。

黄色5号や赤色102号などの着色料は、発がん性が疑われるため、最近はこれらを使わず、「無着色」と表示する明太子が増えた。その表示を見て安心と思う消費者もいるかもしれないが、「無着色」と表示されている明太子も、ほとんどの場合、発色剤を使っている。発色剤として使われる亜硝酸ナトリウムは、魚に多く含まれる第2級アミンと反応して、ニトロソアミンという物質に変わる。このニトロソアミンは、発がん性物質の疑いが強いとされている。
「だけど実によくできています。発色剤を使えば本当においしそうに見えます」とイリイチ食品の代表取締役社長・髙井顕(たかいあきら)さんは複雑な心境を打ち明ける。

食品の一括表示を見てもどれが添加物なのか、消費者にはわかりにくい。だが、食品と食品添加物が、/(スラッシュ)や改行で区切られていると知ればわかりやすい。つまり、右の表で見ると、スラッシュの前が食品、後が添加物だ。生活クラブの「からし明太子」は、食塩や昆布などの食品原材料しか使ってないのでスラッシュはない。「無着色」をうたった市販の辛子明太子Aは、たしかに着色料は使っていないが、発色剤として亜硝酸ナトリウムが使われている。一方、市販の辛子明太子Bは、発色剤の他に着色料の黄色5号と赤色102号を使用している。だが、複数の添加物を一袋にまとめた「魚卵用品質改良剤」が記載されることはない。泰山食品商行の代表取締役社長・山崎晃裕(やまさきあきひろ)さんが教えてくれた。

「複数の効果がある添加物は、調味料(アミノ酸等)など、その使用目的で表記されます。ですから、『魚卵用品質改良剤』の場合、使用目的の『酸化防止剤(ビタミンC)』などに置き換わって表記されるので、『魚卵用品質改良剤』と表記されることはありません」
■生活クラブの「からし明太子」


 
■市販の辛子明太子A


 
■市販の辛子明太子B

同世代社長ふたりの奮闘

泰山食品商行の代表取締役社長・山崎晃裕さん(左)とイリイチ食品の代表取締役社長・髙井顕さん

88年に無添加の「からし明太子」を開発してから、もうすぐ40年がたつ。泰山食品商行は山崎晃裕さん、イリイチ食品は髙井顕さんに代替わりして、先代の技術を引き継いだ。ともに40代と同世代のふたりは、ときに激しく意見をぶつけ合いながら品質の向上に努めている。ここ数年、ふたりは無添加の明太子を作る先代の苦労を味わった。きっかけは、原料であるロシア産スケトウダラの卵の品質が低下したことだった。これを機に、生活クラブと協議しながらMSC認証のアラスカ産に原料を切り替えるための開発が始まった。「水産資源や環境に配慮し、適切に管理された持続可能な漁業に関する認証」であるMSC認証のアラスカ産の中でも最高の品質を求めて、髙井さんは、何度も現地に飛んだ。その結果、信頼できるところから良質の原料を仕入れられるようになった。

スケトウダラの卵は、成熟具合によってガム子(未熟卵:粒子がほとんどなく皮は厚くて硬い)、真子(まこ)(成熟卵:皮に張りがあり、粒子もしっかりしている)、目付(めつけ)(過熟卵:皮に張りがなく、水っぽくてやわらかい)、水子(みずこ)(完熟卵:皮が非常に薄く、粒子は液状化している)にわかれる。生活クラブの「からし明太子」に使われるのは、デパートに並ぶ最高級品と同じ、極上の真子のみだ。それにもかかわらず、デパートの最高級品に比べれば手頃な価格で、そのうえ無添加なのだから、生産者の努力は計り知れない。

ロシア産に比べてアラスカ産は粒子が大きくしっかりしている。この違いから、山崎さんと髙井さんは、一から開発をやり直すことになった。「今までの作り方だと、ゴムボールのように硬い明太子になってしまったんです」と山崎さんは振り返る。スケトウダラの卵は、塩水に漬けることで粒子が立ってくるが、塩分のわずかな違いで味や食感に差が出てしまう。もちろん、調味液(辛子ダレ)の具合も出来を左右する。しかも、魚卵は見た目の通りとても繊細だ。ひと腹ごとに大きさも違えば粒子の質感も違う。ここで添加物を使えれば、実は味や食感を均一にするのは簡単だ。だが、無添加ではごまかせない。イリイチ食品は、塩水の濃度や漬ける時間・回数、調味液のレシピを調整しながら試作を繰り返した。

「原料の個体差が大きいですから、均一に仕上がっているかどうか確認するため、試食は500グラムから1キロの単位で食べ比べます。もう嫌になるくらいに」と山崎さんは笑う。山崎さんに「うまくない」と言われた髙井さんが「これ、デパートに売られているようないい原料なのになんで?」と言えば、山崎さんが「いや、でもうまくないものはうまくないよ」と返す。ふたりで頭を抱え、「じゃあ、塩分濃度をもう少し下げてみようか」となる。そんなやり取りが何度も繰り返された。2023年、最終的に原料を塩水に漬ける「塩水漬け」の工程を2回に増やすことで、納得の出来になった。塩気と辛み、昆布だしのうまみ、ゆずの香りの最良のバランスが、原料の良さを伝えている。奇しくも先代たちが無添加の明太子を開発するのに費やしたのと同じ、2年の歳月が流れていた。

原卵の繊細さに理解を

イリイチ食品の工場。表面についた余分な血管や腸管などを慎重に手作業で取り除く。やわらかい卵ゆえ、絶対に機械化できない繊細な工程で、明太子が高級品である理由のひとつ

では、具体的な製造工程はどうなっているのか。原料の卵は、船上で採卵されるとその場でマイナス18度の氷のブロックに凍結され、鮮度そのままにイリイチ食品に届けられる。解凍した卵は、定期的に撹拌(かくはん)しながら行う「塩水漬け」と、網目のトレーの上に並べて適度に塩分を抜く「水切り」を2回繰り返したあと、手作業で血管や腸管などの異物を丁寧に取り除く。その後、調味液に漬けてから「水切り」同様に「タレ切り」を行い、ほどよい味に仕上げる。それでも原卵の繊細な個体差ゆえ、生活クラブの「からし明太子」として提供するには、作り手として納得できないものが出てしまうという。髙井さんは、それを「正規品」と認められなかった。だが、食品ロスの観点から無駄にするわけにもいかない。考えたふたりは生活クラブとも相談して、これらの明太子を、増量して価格を下げた「徳用」として提供することにした。

「色、粒子の質感、水分含有量などのわずかな違いで仕上がりに差が出ます。明太子は繊細な食品だと理解していただきたいですね。特別なことをしているつもりはありません。ただ、努力して真面目なものをお出ししていることが組合員のみなさんに伝わればうれしい」と髙井さんが話すと、山崎さんが「一度食べてもらえたら、きっとご理解いただけると思います」と続いた。ふたりの努力の結晶を、ぜひ味わってみてほしい。
塩水に漬ける「塩水漬け」の工程は、24時間と12時間の2回行う
 
昆布だしに砂糖、唐辛子、ゆずをブレンドしたタレに漬ける「調味液漬け」は、夏は96時間、冬は120時間もの時間をかける。無添加ゆえに時間がかかる
 
「塩水漬け」と「調味液漬け」のあとは、このように網目状のトレーの上で「水切り」「タレ切り」を行う。写真は「タレ切り」。「この地味な工程が最適の味に仕上げるためにはとても重要」と髙井さん
撮影/大串祥子
文/本紙・山本 塁
 
『生活と自治』2025年1月号「連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2025年1月20日掲載】
 

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