本文へジャンプする。
本ウェブサイトを利用するには、JavaScriptおよびスタイルシートを有効にする必要があります。
生協の食材宅配【生活クラブ】
国産中心・添加物削減・減農薬
安心食材をお届けします
ここからサイト内共通メニューです。

〝悠々自適〟に〝遊び心〟を忘れない福祉の在り方を求めて

生活クラブ東京を母体に、社会福祉法人「悠遊」(以下、悠遊)が設立されたのは、介護保険制度が始まる以前の1993年。当時、在宅介護を支える「デイサービス」は特別養護老人ホームに併設されるケースが多かったが、悠遊は日本初の「単独型デイサービス」を立ち上げ、全国から注目を集めた。日本社会の高齢化がますます進むなか、住み慣れた地域で安心して暮らせる「福祉の形」は、重要性を増している。

手探りで始まった運営

高齢者人口が1割を超えた1980年代。親の介護は家族、主に「嫁」が担うものとされ、日常活動もままならず介護に疲弊する女性は、生活クラブ東京の組合員にも多かった。自分の老後を考えたとき、家族に過重な負担をかけず、地域に住み続けるにはどうすればいいか。組合員の間には、新たな福祉の在り方を求める声が次第に高まっていった。ちょうどその頃、当時の保谷市(現・西東京市)にあった同生協の配送センターは、老朽化のための建て替えが検討されていた。新しいセンターに福祉事業を併設しようとの案が浮上し、93年の悠遊の設立につながった。

「組合員は、年をとっても慣れ親しんだ地域に住み続けるためにどんな機能が必要かを、懸命に議論したと聞いています。非営利性や公益性、事業の透明性が求められる社会福祉法人の立ち上げは、生活クラブの活動とも親和性があったと思います」と悠遊の4代目理事長・山田健介さんは言う。

当初から介護福祉のプロがいたわけではない。共同購入の創成期と同様、悠遊も、試行錯誤しながらの運営を続け、少しずつ成長してきた。2012年には小規模多機能型居宅介護などを手がける「ケアセンター世田谷」(世田谷区)を、19年には同じく「安心ケアセンター・悠遊えごた」(中野区)を開設し、西東京事業所と合わせ、現在都内の    3カ所に拠点を持つ。サービスの種類もデイサービス、訪問介護、認知症高齢者グループホーム、認知症対応型デイサービスなどの他、地域包括支援センターの受託や、ケアプランの作成・介護サービスの相談窓口など、設立時に比べると圧倒的に増えたが、経営は厳しい状況が続いている。
 
社会福祉法人「悠遊」の理事長・山田健介さん

人材確保の努力

15時のおやつの時間。職員は、映画やテレビの話題でアットホームな雰囲気づくりに気を配る

現在、悠遊には185人の職員が在籍しているが、それでも人手が十分とは言えない。職員同士のコミュニケーションを密にして、円滑な運営を心がけると同時に、現場の負担を少しでも減らせるよう必要な人材の確保に力を入れる。とはいえ、経験豊富な人材が必ずしもその事業所の方針にマッチするとは限らない難しさが介護の現場にはある。たとえば、悠遊のグループホームには「日中、玄関に鍵をかけない」というルールがある。外に出たい人には、必ず出たい理由があるはずで、職員はその背景を把握して、徹底的に寄り添う方針だが、他の事業所での経験者の中には、事故のリスクを優先する人もいて、なかなか理解してもらえないことがあるという。こうした採用後のミスマッチをなくすことは難しいが、見学や面接時には、「日中、玄関に鍵をかけないこと」「おむつは最後の手段」「できることを奪わない」など悠遊の基本理念に関わることを丁寧に説明し、納得してもらった上で入職してもらうようにしている。また、職員の紹介による採用にも力を入れている。こうした工夫を重ねる一方、職員の高齢化は悩ましい問題だ。

「職員の平均年齢は50代後半くらいです。20代の職員もいますが最高齢は82歳で、身体介護の仕事はなかなかお願いできません。また、訪問介護のヘルパーさんには70代の職員もたくさんいて、猛暑続きの夏場は大変です」(山田さん)

若手職員の活躍に期待

一方、有望な若手職員もしっかり育っている。27歳の伊藤祐斗(ゆうと)さんは、高齢者施設でボランティアをする母親の姿を見て介護の仕事に興味を持ち、大学では社会福祉学を専攻、社会福祉士の国家資格も取得した。別の介護施設でのアルバイト経験もある伊藤さんは、悠遊についてこう語る。「認知症の方の居場所を地域につくっていくという理念に共感したことが入職の決め手になりました。夏祭りなどを開催して地域と交流し、地元の人々との相互関係をつくっていけるところに一番魅力を感じています」

祭りの他、地元の保育園や小学校に通う子どもたちとの交流の機会も積極的につくっている。
 
西東京事業所に勤務する伊藤祐斗(ゆうと)さん。「認知症の人は決して特殊ではない、当たり前の存在ということを、若い人たちにもっと知ってほしい」と語ってくれた
「悠々自適に、遊び心を忘れず楽しく過ごす」が「悠遊」の名前の由来だ。「そのための機能をつくるという思いは当初から変わりません」と山田さんは語った。誰もが最期まで自分らしく暮らせるように、悠遊は経営基盤を固めつつ、これからも地域に密着した活動を展開していく。

 
撮影/小澤晶子
文/本紙・山本 塁
★『生活と自治』2025年2月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2025年2月30日掲載】
 

生活クラブをはじめませんか?

42万人が選ぶ安心食材の宅配生協です

生活クラブ連合会のSNS公式アカウント
本文ここまで。
ここから共通フッターメニューです。
共通フッターメニューここまで。