遊佐町の小学校の空き校舎を活用した庄内ローカルSDGsの新規事業
2025年3月10日から首都圏のデポーで丸もちを取り扱い

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会（本部：東京都新宿区、会長　村上彰一、以下生活クラブ）は、山形県遊佐町で製造する「ゆざのチビちゃん丸もち」（1袋価格：税込585円）の取り扱いを、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県内にある生活クラブのお店・デポーで、2025年3月10日より開始します。

小ぶりの丸もち200g（約20個）で1袋です
 

生活クラブでは、山形県庄内地域の提携生産者が製造する丸もちを、1970年から取り組扱ってきました。地元で栽培されたもち米をつかった食べごたえのある丸もちは、全国の組合員に大変人気でしたが、生産者の人手不足や工場の老朽化により製造・供給が継続できない状況となりました。そのまま丸もち生産が途絶えてしまうと、生活クラブへの供給ができなくなるだけでなく、庄内地域における丸もち文化の継承や、働く場の損失にもつながることが考えられます。

そこで、餅加工事業を地域の中で存続させたいと考える町や住民、そして生活クラブの思いが重なり、生活クラブをはじめとした提携生産者の出資参画による新たな餅加工会社・株式会社鳥海風土が設立され、遊佐町内での丸もち生産が継続できることとなりました。

また新工場は、遊佐町で廃校となった小学校の旧校舎を活用しており、地域住民にとっての働く場や交流の場としても活用される予定です。さらに餅製造の機械の一部は、庄内町の元生産者から譲渡され、技術面でも指導を受けながらその文化を継承しています。

「ゆざのチビちゃん丸もち」は、直径約3㎝の丸もちです。遊佐町で栽培しているもち米「でわのもち」を使用している小ぶりのお餅で、焼いても煮てもおいしく食べられます。

今回取り扱うのは、生活クラブのお店「デポー」※店頭のみとなります。今回は原料となるもち米の確保や製造の都合によりデポーのみでの先行取組みとなりますが、今後は製造数量を増やして、全国の生活クラブ組合員に宅配でお届けできる予定です。
※デポーは東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県内に44店舗ある、生活クラブのオリジナル品を扱うお店です。

生活クラブのお店「デポー」 ※写真はデポー越谷
 

遊佐町では2023年に、町内に5校あった小学校が1校に統合されました。2003年に建築された藤崎小学校は、木材をふんだんに使った木造2階建ての校舎で、遊佐町で空き校舎の活用が検討されていました。

同じころ、生活クラブの提携生産者から、高齢化や人手不足により餅製造を終了したいとの申し出がありました。空き校舎の活用と、餅加工事業の継続という地域の課題が重なり、校舎の一部を使用して工場がつくられました。

工場設立にあたり、遊佐町からの予算執行に加え、生活クラブ連合会や庄内地域の他の提携生産者（庄内協議会）からの出資が行なわれました。さらに、遊佐町にある生活クラブのメガソーラー「庄内遊佐太陽光発電所」の売電益を活用した「庄内自然エネルギー基金」の助成金も活用しています。

元生産者から譲り受けた機械を一部使用して製造しています
 

日本でお正月などに食べるお餅には、大きく分けて角もちと丸もちの2種類があります。元々は全国的に丸もちが食べられていましたが、江戸時代に江戸から東日本に角もちが広がり、現在では、東日本は角もち、西日本は丸もち、と地域によってもち文化が異なるようになりました。

江戸時代には庄内地域にも角もちが広がりましたが、当時から明治時代にかけて活躍した「北前船」が、東北最大の寄港地である酒田と京都や大阪を結び、西の文化が庄内に広まったことから、庄内地域に丸もち文化が根付いたと言われています。そのため庄内地域の人にとって「お餅」といえば、当然丸もちのことを想像するのだといいます。

私の実家は共同開発米※2の生産者です。もち米も当たり前のように目の前の田んぼでつくっていて、お正月には各家で餅をついて食べていました。そのように当たり前に親しんできたお餅ですが、遊佐町内の加工場※3が老朽化して閉鎖することを知り、遊佐でつくっているもち米を加工できる場所がなくなることに不安を覚えました。また過去に仕事で生活クラブと関わっていた際に、長年の提携の歴史もよく聞いていたため、生活クラブへお餅の供給ができなくなることへの寂しさも感じました。町内での餅製造を継続するために何か方法はないかと考えていたところ、生活クラブでも製造者を探していたことを知り、自分が生産者になることを決意しました。

いざ製造を始めてみると、技術的な難しさを実感しました。庄内町で製造していた生産者から助言も受けていますが、設備やもち米の品種、水が変わると同じようにはつくることができません。日々試行錯誤してスキルアップを図っている最中です。

今後はまず、安定して丸もちが製造できるようになることをめざします。また、お餅が一番おいしいのはやはりつきたての状態なので、それを味わってもらえる場所をつくりたいという思いもあります。工場を構える校舎には、まだ使われていない部屋がたくさんありますので、つきたてのお餅を味わえて、さらに地域のみなさんが集まり交流できる場所をつくるのが、これからの夢ですね。

※2共同開発米とは、組合員と生産者が品種や農法、価格まで意見を交わしてつくっている、生活クラブオリジナルのお米です。
※3庄内町の元生産者が最需要期となる12月は、JA庄内みどりに製造委託をかけており、そのうちの一つの加工場が遊佐町にありました。

【2025年3月7日掲載】