「時間貧困から考える、地域で支え合う福祉の可能性」 第8回 生活クラブ 福祉・たすけあい研究交流集会報告

3月25日、「第8回 生活クラブ 福祉・たすけあい研究交流集会」を開催しました。テーマは「時間貧困から考える、地域で支え合う福祉の可能性」。慶応義塾大学の石井加代子先生の基調講演のあと、4つの分科会に分かれて時間貧困にまつわる実情の報告や現場で対応した活動の実例について報告を行ないました。当日は福祉・たすけあいに携わる生活クラブの組合員や、関連団体のメンバーなど約260人が東京会場とオンラインで参加し、交流を深めました。各会の概要と参加者の感想を報告します。
基調講演「時間貧困の現状と地域社会の可能性」
講師 石井加代子氏(慶応義塾大学特任助教授)
貧困問題をはかる指標としては経済貧困が一般的ですが、時間貧困も大きいのではないかということを大勢の個人を長期間にわたり追跡調査したパネルデータと呼ばれるものから明らかにし、特に時間貧困に陥りやすい世帯として「ひとり親世帯」と「育児期のフルタイム共働き世帯」をあげられていました。普段なんとなく感じていたことが数字を使って見える化されよく理解できました。家事分担を金銭で解決しようとすると経済貧困に陥る可能性もあるジレンマや、家事分担のジェンダーギャップ解消の前に、他国に比べ男女とも長すぎる労働時間を解決すべきではないかとの指摘もありました。政府・市場・家族にゆだねられたケアシステムに互酬システム(地域社会の助け合い活動)を加える必要性へ言及されて講演は締められました。その後、生活クラブで実践している時間貧困を解決する事例報告と先生のやりとりから、多角的に時間貧困について考える機会になりました。
貧困問題をはかる指標としては経済貧困が一般的ですが、時間貧困も大きいのではないかということを大勢の個人を長期間にわたり追跡調査したパネルデータと呼ばれるものから明らかにし、特に時間貧困に陥りやすい世帯として「ひとり親世帯」と「育児期のフルタイム共働き世帯」をあげられていました。普段なんとなく感じていたことが数字を使って見える化されよく理解できました。家事分担を金銭で解決しようとすると経済貧困に陥る可能性もあるジレンマや、家事分担のジェンダーギャップ解消の前に、他国に比べ男女とも長すぎる労働時間を解決すべきではないかとの指摘もありました。政府・市場・家族にゆだねられたケアシステムに互酬システム(地域社会の助け合い活動)を加える必要性へ言及されて講演は締められました。その後、生活クラブで実践している時間貧困を解決する事例報告と先生のやりとりから、多角的に時間貧困について考える機会になりました。
分科会1 「ひとり親世帯の現状と課題」
講師 赤石千衣子氏(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長)
「分科会1」では長年シングルマザーに寄り添って活動してきた赤石さんから、現状報告と今後の展望について学びました。ひとり親が直面する、時間の貧困、関係の貧困、経済的貧困、自己尊重感の低下という4つの貧困について確認し、私たちにできることは何か考えました。時間貧困については、国が政策としてヘルパー派遣ができるのではないか。また、関係の貧困については生活クラブは地域をつくることで、その中で見えない物を見るという姿勢が大事なのではないか、と。地域の中で困難の中にいる人たちを一生懸命見るという姿勢を忘れず、出会ったときには話をしっかり聞き、そこからの繋がりで居場所や相談の場ができるかもしれないということを理解できました。
「分科会1」では長年シングルマザーに寄り添って活動してきた赤石さんから、現状報告と今後の展望について学びました。ひとり親が直面する、時間の貧困、関係の貧困、経済的貧困、自己尊重感の低下という4つの貧困について確認し、私たちにできることは何か考えました。時間貧困については、国が政策としてヘルパー派遣ができるのではないか。また、関係の貧困については生活クラブは地域をつくることで、その中で見えない物を見るという姿勢が大事なのではないか、と。地域の中で困難の中にいる人たちを一生懸命見るという姿勢を忘れず、出会ったときには話をしっかり聞き、そこからの繋がりで居場所や相談の場ができるかもしれないということを理解できました。
分科会2 「今こそたすけあいワーカーズの価値を再発見」
講師 伊藤雄子氏(特定非営利活動法人 ワーカーズどんぐり 代表)、土田さち子氏(同メンバー)
生活クラブでは首都圏を中心に各地で多様なたすけあいの事業をワーカーズという形態にこだわって活動してきました。ワーカーズどんぐりは今年で立上げ24年。「誰もが安心して自分らしく生き生きと暮らせる世の中であってほしい。老いても、ハンディをもっても、いつまでも住み慣れたまちで暮らし続けたい」との思いから、助け助けられるしくみづくりを目指しています。また従来の事業にとどまらず、武蔵野市委託事業 として、「産前産後支援 ・ひとり親家庭支援 ・養育支援訪問事業」を、武蔵野市補助金事業 として「テンミリオンハウス事業「くるみの木」 ・小規模保育事業」を展開しています。例えば、家事支援やエッコロ*のちょっとしたたすけあいなど、一人ひとりの困りごとに寄り添えることは普段の実践でもできていることです。そこから少し広げることでそれが事業化し地域のたすけあいに広がるところに繋がるということで、私もできることがありそうな気がする、自分ももう一歩前に出て頑張れるかなと感じられる分科会でした。
*組合員どうしのたすけあいのしくみ 「エッコロ(共済)制度」についてはこちら 生活クラブ共済連のページへ
生活クラブでは首都圏を中心に各地で多様なたすけあいの事業をワーカーズという形態にこだわって活動してきました。ワーカーズどんぐりは今年で立上げ24年。「誰もが安心して自分らしく生き生きと暮らせる世の中であってほしい。老いても、ハンディをもっても、いつまでも住み慣れたまちで暮らし続けたい」との思いから、助け助けられるしくみづくりを目指しています。また従来の事業にとどまらず、武蔵野市委託事業 として、「産前産後支援 ・ひとり親家庭支援 ・養育支援訪問事業」を、武蔵野市補助金事業 として「テンミリオンハウス事業「くるみの木」 ・小規模保育事業」を展開しています。例えば、家事支援やエッコロ*のちょっとしたたすけあいなど、一人ひとりの困りごとに寄り添えることは普段の実践でもできていることです。そこから少し広げることでそれが事業化し地域のたすけあいに広がるところに繋がるということで、私もできることがありそうな気がする、自分ももう一歩前に出て頑張れるかなと感じられる分科会でした。
*組合員どうしのたすけあいのしくみ 「エッコロ(共済)制度」についてはこちら 生活クラブ共済連のページへ
分科会3 地域の課題を、共に働くパン屋を通じて解決
講師 岡澤三保子氏(ワーカーズ・コレクティブ 地域のかまど 代表)
生活クラブ長野では2019年、誰もが社会とつながりをもち安心して暮らせる地域共生社会づくりを目指すことを方針化し、就労支援プロジェクトを立ち上げました。その有志で作ったのがW.Co地域のかまどです。なぜパン屋だったかというと生活クラブの遊休施設を使えることと、パンの製造は作業工程が細分化されており分業で得意な作業に取組むことが出来るため。ワーカーズの中には精神障害を抱える方や鬱から引きこもりを経験した方もいます。2023年に生活クラブ福祉事業基金に応募し助成金を得てオーブンを購入し、オーブンが1台から2台になったことで焼けるパンの種類が大幅に増えました。今年度の4月からは食パンの共同購入の生産者としても活躍しています。また、みんなのかまどでは来店者との会話を心掛けています。みんなのかまどの前に県営住宅、市営住宅が多く建っていて母子家庭、高齢者が多く訪れます。その方たちとの会話から顔見知りになりパンを届けたりするような小さなたすけあいにつながっているという報告でした。「失敗しても大丈夫という働く場所が増えるといいな」「ワーカーズは面白いんですよ」と言われていたのが印象に残った分科会でした。
生活クラブ長野では2019年、誰もが社会とつながりをもち安心して暮らせる地域共生社会づくりを目指すことを方針化し、就労支援プロジェクトを立ち上げました。その有志で作ったのがW.Co地域のかまどです。なぜパン屋だったかというと生活クラブの遊休施設を使えることと、パンの製造は作業工程が細分化されており分業で得意な作業に取組むことが出来るため。ワーカーズの中には精神障害を抱える方や鬱から引きこもりを経験した方もいます。2023年に生活クラブ福祉事業基金に応募し助成金を得てオーブンを購入し、オーブンが1台から2台になったことで焼けるパンの種類が大幅に増えました。今年度の4月からは食パンの共同購入の生産者としても活躍しています。また、みんなのかまどでは来店者との会話を心掛けています。みんなのかまどの前に県営住宅、市営住宅が多く建っていて母子家庭、高齢者が多く訪れます。その方たちとの会話から顔見知りになりパンを届けたりするような小さなたすけあいにつながっているという報告でした。「失敗しても大丈夫という働く場所が増えるといいな」「ワーカーズは面白いんですよ」と言われていたのが印象に残った分科会でした。
分科会4 「地域でつながる居場所」(つながりづくり助成団体パネルディスカッション)
講師 津島裕子氏(RingRing 代表)、原あずさ氏(特定非営利活動法人 みんなの食堂はだの・フードバンク 統括責任者)、山口ひとみ氏(パレット 幹事)
生活クラブ福祉事業基金<特別枠>「つながりづくり助成」から助成を受けた団体が登壇し、立上げの思い、活動する中での課題、今後についてなど語りつくしました。青森、神奈川の秦野、やまがた、それぞれ身近なところの問題解決を行っているという報告です。「子どもが汚して帰ってくるからおさがり会がやりたい」「子どもの友達が夕方になっても帰らず、話を聞いたらお家に誰もいないという。こういう子たちにご飯をたべさせたい」という思いから子ども食堂が始まったという話は、誰でも周りにあることから、何か出来そう、何かやらなくちゃという気持ちで聞かれた方が多かったようです。どんどん活動が広がり協力してくれる行政や企業ともつながるところが見事で素晴らしい。今年も「つながりづくり助成」は継続されます。地域で色々な活動をしている人たちに呼びかけ、生活クラブは地域の中でつながっていく、地域を楽しくする、未来を作っていくことを確認できた分科会でした。
生活クラブ福祉事業基金<特別枠>「つながりづくり助成」から助成を受けた団体が登壇し、立上げの思い、活動する中での課題、今後についてなど語りつくしました。青森、神奈川の秦野、やまがた、それぞれ身近なところの問題解決を行っているという報告です。「子どもが汚して帰ってくるからおさがり会がやりたい」「子どもの友達が夕方になっても帰らず、話を聞いたらお家に誰もいないという。こういう子たちにご飯をたべさせたい」という思いから子ども食堂が始まったという話は、誰でも周りにあることから、何か出来そう、何かやらなくちゃという気持ちで聞かれた方が多かったようです。どんどん活動が広がり協力してくれる行政や企業ともつながるところが見事で素晴らしい。今年も「つながりづくり助成」は継続されます。地域で色々な活動をしている人たちに呼びかけ、生活クラブは地域の中でつながっていく、地域を楽しくする、未来を作っていくことを確認できた分科会でした。
【2025年4月17日掲載】