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生協の食材宅配【生活クラブ】
国産中心・添加物削減・減農薬
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危機を越え、ともに作る「食」へ

市場の米価格高騰を受け、2024年産の生活クラブの米の利用が急増、組合員に安定供給できない事態が生じている。生活クラブでは、米の生産にかかる原価をもとに、提携生産者と組合員が協議して再生産可能な価格や数量を決め、予約登録を基本とする共同購入を進めてきた。その意義を改めて問い直すとともに、米を含む食の生産と消費を今後どう持続可能にするか。生活クラブ連合会専務理事、柳下信宏さんに聞いた。

食料のあり方を見つめて

エネルギーや資材、食料の価格が高騰する中、「食料・農業・農村基本法」が2024年に25年ぶりに改定された。改定の柱は食料安全保障だ。海外への輸出を図ることで食料の供給能力を維持することや、スマート農業等が掲げられている

食料安全保障とはそもそも何か。生活クラブ連合会専務理事の柳下信宏さんは「例えば自給率が100%の国であってもお金がなければ食べ物を買えない人はいます。食料安全保障とは、すべての市民が食にアクセスできる状態を目指すものと考えています」と言う。そのために、大規模化によるコスト削減を図るとしても、日本は中山間地が多く、農地の規模もさまざまだ。「生産基盤全体を強化していく対策なくしては、食料の増産は絵に描いた餅になり、安定供給にはつながらない」と懸念する。

米の生産量が年々減少する中、昨年夏からの需給バランスの変動で、市場はパニック状態に陥った。今後の米の安定供給をどう考えたらいいのだろうか。

「24年産米の米価格は上昇しましたが、生産費の上昇や猛暑の影響などもあり、生産すること自体が困難になっています。まずは生産者が安定して生産できるようにしていくことが重要です。食料の問題は生産者と消費者の問題ととらえられがちです。しかし、流通を含むシステム全体を見ていかないと、生産コストが上がったのに価格転嫁ができないというような、生産者と消費者の対立構造になります。対立を生まないためにも、生産者の所得を直接補償する政策が不可避です」と柳下さんは言う。これまで他生協とともに実施してきた国政レベルの政策提案を今後も進めていく。

同時に、まず自分たちでできることを進める必要もある。
生活クラブの米の取り組みは、食糧管理法の下での山形県遊佐町の生産者との提携に始まり、生産者と組合員が直接交流し、価格についても米の生産にかかる原価をもとに、再生産可能な価格を決めてきた。「産直」を制度化し、減農薬、飼料用米、NON―GMOの運動と、米にとどまらない産地全体との複合的な提携関係を築いている。今回、米価格の高騰で、一般市場に売れば短期的には利益が上がる状況でも、提携産地は生活クラブに契約通りの量を供給し続けた。長い信頼関係の成果だ。

しかし、生活クラブでもこの数年、米の利用は減少し続け、契約数量を食べきれないこともあり、契約数量を抑制してきた。そんな中で、米の注文が殺到し、供給を制限せざるを得ない事態が発生した。だから現在の状況は、安定した消費ができていなかった結果という側面もある。

新規の予約登録を増やしていかない限り、安定した消費は実現できない。24年産の限りある米をどうやって食べていくか、組合員が議論を重ね、新規に予約する人を増やすチャンスととらえて、組合員でわけあって食べる方針を決定した。

望む社会へのアクション

とはいえ、農薬を減らした環境保全型農法の米の価格が慣行栽培による米と同程度か逆転するような事態が今後も続けば、生産者の意欲に影響が出ても不思議はない。

この課題に対して、生活クラブ連合会は「水田活用対策費」を暫定的に新設した。24年産米の価格を25年4月最終週から値上げし、差額分をこれに充てる。将来的な水田の維持を図るには、主食用、加工用、飼料用を含めた水田全体を守ることが重要になる。主食用米へのシフトが進み、飼料用米の生産が減って、飼料用米価格が大幅に上がれば畜産への影響も懸念される。直接的な経済支援によって生産者を守るとともに、今後産地の水田を守る対策のための原資としていく計画だ。
また個別の生産者だけでなく、産地自体が持続可能になってはじめて生産が持続可能になる。昨年7月の庄内豪雨災害では、累計256人の組合員、職員が遊佐町のほ場を中心とする被災地の復旧に参加し、折れかけた生産者の心を支えることができた。

組合員が産地に出向いて生産に参加する。それによって産地の人が改めて地域の価値を見直し、生産への意欲につながる。「たった2、3日の体験であっても、一緒に作っていこうという気持ちは確実に伝わります」と柳下さん。生産そのものへの参加を含め、産地との交流の機会を増やしていく考えだ。
 
「生活クラブは、一般市場の商品に対して、自分たちが望む材、新たな価値をつくる消費者運動です。同時に、人間が人間らしく生きられる社会をつくる運動でもあります。パートナーである生産者がいて、仲間である組合員がいる。生活クラブを通じて、望む社会に向けた問題解決に主体的に関わる市民を増やしていきたいと考えています」
 
生活クラブ連合会専務理事、柳下信宏さん
撮影/葛谷舞子
文/本紙・元木知子


★『生活と自治』2025年6月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。

【2025年6月9日掲載】
 

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