海と空の気持ちで、固形せっけんシャンプー開発
天然油脂を原料とし、微生物による分解が進みやすいせっけん。生活クラブの重要な消費材だが、利用人員率が高いとはいえない。特にせっけんシャンプーは、利用を継続できない組合員や家族も多いようだ。使いはじめのハードルを下げて、人にも環境にもやさしいせっけん生活を広げたいと、横浜北生活クラブの組合員が神奈川独自の消費材開発に取り組んだ。

新たに開発した固形せっけんシャンプー、友達にもプレゼントしやすいパッケージ入り
始まりはプラごみ削減
「きっかけは環境活動家、武本匡弘(まさひろ)さんの講演会でした」。横浜北生活クラブ理事の荒井喜久美さんはそう話す。荒井さんが運営に関わる居場所「ちか・まるラボ」では、海洋汚染に関する武本さんの話にショックを受け、プラごみ削減を中心に、環境に負荷をかけない暮らしの提案や実践を始めた。「武本さんからプラ容器を必要としない固形のシャンプーがあると教えてもらい、しばらくして、市販品を見つけて居場所のメンバー4人で切り分け使ってみました。使いやすいと感じる一方で、香りや原材料には課題があって、『こういう消費材があるといいね』『私たちならもっといいものができるはず』となったんです」
組合員参加の消費材開発には、生活クラブ連合会の消費材開発改善提案のほか、各単協独自の活動がある。今回は生活クラブ神奈川にゆかりのある生産者で構成する「さんえすクラブ」との協働による神奈川独自品の開発となった。
横浜北生活クラブ常務理事で連合消費委員の澤田妙子さんはこう話す。「せっけんは生活クラブ運動の基本の消費材。開発改善提案には慎重さが求められます」。新規開発は難しそうと諦めかけたとき、さんえすクラブの生産者「生活アートクラブ」の製品の中に、固形せっけんシャンプーがあることがわかり、これをベースに開発が進められることになった。同社は企業理念の第一義に、「環境に負荷をかけないとともに環境を育てること」への取り組みを掲げている。「生活アートクラブは『せっけんを敬遠していた層にも届くものが、組合員と一緒ならできる』と応じ、共同購入政策委員会(消費委員会)の担当職員も後押ししてくれました」
めざしたのは、プラごみ削減で海のマイクロプラスチックを減らすこと、輸送コストとCO2排出量削減で空をきれいに保つことだ。せっけんシャンプーの使用感をより良くし、使い続けてもらえるよう、固形のコンディショナーも同時に開発することとした。
組合員参加の消費材開発には、生活クラブ連合会の消費材開発改善提案のほか、各単協独自の活動がある。今回は生活クラブ神奈川にゆかりのある生産者で構成する「さんえすクラブ」との協働による神奈川独自品の開発となった。
横浜北生活クラブ常務理事で連合消費委員の澤田妙子さんはこう話す。「せっけんは生活クラブ運動の基本の消費材。開発改善提案には慎重さが求められます」。新規開発は難しそうと諦めかけたとき、さんえすクラブの生産者「生活アートクラブ」の製品の中に、固形せっけんシャンプーがあることがわかり、これをベースに開発が進められることになった。同社は企業理念の第一義に、「環境に負荷をかけないとともに環境を育てること」への取り組みを掲げている。「生活アートクラブは『せっけんを敬遠していた層にも届くものが、組合員と一緒ならできる』と応じ、共同購入政策委員会(消費委員会)の担当職員も後押ししてくれました」
めざしたのは、プラごみ削減で海のマイクロプラスチックを減らすこと、輸送コストとCO2排出量削減で空をきれいに保つことだ。せっけんシャンプーの使用感をより良くし、使い続けてもらえるよう、固形のコンディショナーも同時に開発することとした。
仲間がいるからできる

左から、澤田妙子さん、鈴木由美子さん、荒井喜久美さん、久保田のぞみさん
荒井さんが所属するあおばコモンズ(※)の運営委員会が主体となり活動を開始。横浜北生活クラブ組合員を対象にアンケート調査を行うと1000通以上の回答が得られた。「集計にはとても苦労しました。価格帯や香料の有無など開発会議で話が盛り上がり、夢も膨らむのですが、繰り返しアンケート結果に立ち戻り冷静に検討しました」と荒井さんは振り返る。
「運営委員として関わり始めたものの、特に強い問題意識はなかった」という鈴木由美子さんは、次第に地球上のすべての生き物にやさしいものを作りたいと思いはじめ、パッケージデザインのアイデアを出した。「当初、シンプル系やナチュラル系を考えていましたが、市場調査するとそんな商品ばかり。これでは埋もれてしまうと考え直しました」。生活アートクラブのデザイナーも一緒に考案した結果、気候変動の影響を受けやすい生物、ペンギンとホッキョクグマをキャラクターにしたパッケージが生まれた。
同じく運営委員の久保田のぞみさんは「自分たちが求める消費材を形にできるわくわく感だけでは続かない難しさを感じた」と打ち明ける。いくつか試作品を作ったが、手作りせっけんと同じプロセスのため固まるまで時間がかかる。完成には2年を要した。「でも、実際に形になってみて、親子の話題にできました。これをきっかけに環境問題についても少しずつ話ができたらうれしい。一人一人の小さな変化が大きなうねりになるといいですね」
消費材開発要望の提案書には、利用仮説や利用目標などの項目がある。2025年6月の初回取り組み以降、毎月利用点数の点検が続き、結果によっては取り組み中止になることもあり得る。「生み出した責任をもって、私たちも利用を呼びかけていきます」と澤田さんは表情を引き締める。一方で、消費材開発は誰でもチャレンジできるとも。「生活クラブには一緒に課題を解決する組合員がいて、応えてくれる生産者がいます。小さな気づきを話し合う場をつくって、賛同する人が2人でも3人でも見つかったら、話し合いで終わらせずに、提案書を書いてみるところから始めてみてはどうでしょうか」
※コモンズとは、生活クラブ神奈川の組合員活動の基礎組織
「運営委員として関わり始めたものの、特に強い問題意識はなかった」という鈴木由美子さんは、次第に地球上のすべての生き物にやさしいものを作りたいと思いはじめ、パッケージデザインのアイデアを出した。「当初、シンプル系やナチュラル系を考えていましたが、市場調査するとそんな商品ばかり。これでは埋もれてしまうと考え直しました」。生活アートクラブのデザイナーも一緒に考案した結果、気候変動の影響を受けやすい生物、ペンギンとホッキョクグマをキャラクターにしたパッケージが生まれた。
同じく運営委員の久保田のぞみさんは「自分たちが求める消費材を形にできるわくわく感だけでは続かない難しさを感じた」と打ち明ける。いくつか試作品を作ったが、手作りせっけんと同じプロセスのため固まるまで時間がかかる。完成には2年を要した。「でも、実際に形になってみて、親子の話題にできました。これをきっかけに環境問題についても少しずつ話ができたらうれしい。一人一人の小さな変化が大きなうねりになるといいですね」
消費材開発要望の提案書には、利用仮説や利用目標などの項目がある。2025年6月の初回取り組み以降、毎月利用点数の点検が続き、結果によっては取り組み中止になることもあり得る。「生み出した責任をもって、私たちも利用を呼びかけていきます」と澤田さんは表情を引き締める。一方で、消費材開発は誰でもチャレンジできるとも。「生活クラブには一緒に課題を解決する組合員がいて、応えてくれる生産者がいます。小さな気づきを話し合う場をつくって、賛同する人が2人でも3人でも見つかったら、話し合いで終わらせずに、提案書を書いてみるところから始めてみてはどうでしょうか」
※コモンズとは、生活クラブ神奈川の組合員活動の基礎組織
撮影/葛谷舞子
文/本紙・元木知子
文/本紙・元木知子
★『生活と自治』2025年7月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2025年7月18日掲載】