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【「生活と自治」読者参加企画開催報告】誰にとっても「プラスな」社会をつくるには 暉峻僚三さんを囲んで

平和とは何か。平和の反対は何か。川崎市平和館専門調査員で大学講師の暉峻(てるおか)僚三さんは、既存の方法とは異なる平和教育プログラムを実践している。本紙2025年8月、9月号のマイオピニオンで紹介したところ、多くの読者から「実際に受講してみたい」という声が寄せられた。言葉のやり取り力を磨く対話の会に30代から80代の読者が参加し、言葉のキャッチボールを体験した。

「非平和」に気づく

「非平和」とは何か。インドの平和研究者スガタ・ダスグプタは、第三世界を犠牲にして先進国だけが享受する平和を非平和と位置づけた

「寒い」の反対は「暑い」。「暗い」の反対は「明るい」。では平和の反対は?

暉峻さんの問いかけに、「つい戦争って言っちゃうけれど……」と迷いも交え参加者が答えた。「そう。とても象徴的。平和の反対は戦争とされます」と暉峻さん。続いてホワイトボードに三つの影絵を映し出す。銃を構える兵士、縄跳びで遊ぶ子どもたち、両膝をついてうなだれる女性。最後の女性の姿は必ずしも戦争をイメージさせるものではない。けれど、多くの参加者が「平和ではないと感じる」と答えた。「だとすれば、平和の反対は必ずしも戦争とは限らないと言えないか」。暉峻さんはそう投げかける。

「平和学」という学問では、平和の反対を「非平和」とし、非平和は暴力によってつくり出されているとする。では暴力とはなんだろう。

殴る。罵声を浴びせる。銃で人を撃つ。これらは明らかに暴力だ。一方、働いても貧困から抜け出せないこと、ケア労働は主に女性に課せられること、これらは暴力なのか。地球過熱化は暴力なのか。暉峻さんの問いかけに会場の意見は分かれていく。前者は行為者が見え、後者は直接的な行為者が見えない。困窮者や女性や洪水で家を流された人を、「被害者」と位置づけることには違和感やためらいがあるのだ。

平和学では、人の心が傷ついたとき、その行為者が見え人権が損なわれることを、暴力の一つの形「直接的暴力」とする。これに対して、現に害を被る人がいるのに、行為者を特定できない状況は「構造的暴力」とされる。生命を脅かし、人権を損なう社会の仕組みを暴力とする考え方だ。

さらに1990年代には「文化的暴力」という概念が生まれた。「女性だから、子育てや家事を担うのは仕方ない」「海外ルーツだから差別されても仕方ない」など、直接的暴力や構造的暴力を正当化したり、見えなくしたりする集団の理屈、感情をさす。怒りの感情を抑えられないとき、人は理屈をつけて加害の行為を正当化しようとする。集団も同じだ。戦争の当事国は常に「自国を守るためだから仕方ない」「自分は正しい」「自分は被害者だ」と考える。

「この三つの暴力から社会を眺めてみると、僕たちが社会問題と呼ぶもののほとんどが平和問題だといえます」(暉峻さん)
 

平和とは何があること(または何がないこと)か、非平和とは何があること(または何がないこと)か。参加者が付箋に書いて貼り出すのを見守る暉峻僚三さん

「与党になろう」?

非平和や暴力について一定の理解を得た参加者が次に体験したのは、「与党になろう」という学習プログラム。全員が政治家という仮定で、与党、つまり自分の主張を政策にして実現する立場に立とうというものだ。そのためには、その主張を支持する仲間を増やす必要がある。それを実践する体験型の学習だ。一人一つ、日本社会の現状への不満や不安、恐れなどを紙に書き出し、会場を歩いて互いに見せ合い、説明し、質問する。原発再稼働、ヘイト、教育予算、金もうけ優先、農的空間の激減など、切り口も表現のし方もさまざまだ。対話を繰り返し、共通項を見つけ出し、グループをつくる。10分後、30人の参加者が四つの「党派」に分かれた。

次のステップは各党派のスローガンを作ること。「党員」すべての主張を含みつつ、人を魅了するようなアピール文を作る。「国籍、性別、障害の有無などによる差別は論外!」「持続可能な人間らしい暮らし。コンクリートを剥がして畑をつくろう!」「防衛費を減らし、教育費の充実を。子どもの未来のために戦争をしない!」。最も少数のグループは「いろんな意見がありすぎて言語化されず、一つにまとまらない本当に自由な民主党」を立ち上げた。まだまだ、どこかに共通項がありそうだ。

グループごとに輪になり、スローガンを話し合う

今回は導入部分のみとなったが、大学の授業ではその次のステップに進む。自分たちの提案によってどれだけ社会が良くなるかをアピールし、聞く人の心を動かして、仲間に加わってもらう。反対意見が出たときは、自分たちのアピールの中に相手のアピールが含まれていることを示して共感を獲得する。このプロセスを繰り返し、狭かった主張を広げて最終的に「与党」になるというプログラムだ。

「これは統合アプローチと言います。一つの与党が幅の広い信条を掲げ、大勢の要求を包み込んでいくと、自然と統治が穏健になり、融和的な社会を目指すようになるのです」と暉峻さん。テーマを変えてそれぞれの場で応用してほしいと提案する。

言葉の捉え直しから

とはいえ、異なる意見を持つ相手との対話は難しい。地域の子ども会で主権者教育をしようと考えている参加者から「どうしても許容できない意見にはどう対応したらいいか」と質問が出た。大学の授業のほか中学校や高校でも平和教育を行う暉峻さんは、初めにこれ以上は進めるべきではないという境界線を示しておき、その線を超え、人の尊厳を損なう発言があったときは、他の生徒から意見が出る前に介入するという。「長い年月の中で、人々が合意してきたことを超えているよと指摘します。子どもの主権者教育とは、社会をつくる主役を育てることですから」とアドバイスした。

「構造的暴力や文化的暴力にどうあらがっていけばいいのか」という質問もあった。暉峻さんは「一つ一つ、言葉を捉え直していくことが鍵になるのではないか」と言う。

「たとえば国防という言葉をどう使っているでしょうか。みんなが食べることができ、みんなが教育を受けられるのは、すなわち国防だと思うのです。今、排外的な態度が主流になっているように感じますが、開放的でない社会は必ず崩れます。国内の社会が崩壊したら、守るものすらありません。安全保障という言葉もよく使うけれど、どういう意味で使っているか捉え直す。そうしたテーマで対話していくのは、より多くの人の納得を得やすいのではないでしょうか」

のぼりを立て、「○○反対!」と声をあげることだけが、平和構築を探る道ではないだろう。社会を構成する誰にとっても「これなら納得!」と言える社会をつくりましょうというアプローチなら、一緒に平和をつくっていく仲間が見つかりそうだ。

 
写真/葛谷舞子
文/本紙・元木知子
★『生活と自治』2026年2月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2026年2月20日掲載】
 

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