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検証・再考・熟考「政治」と「推し活」
――アイドル論的視座からの提言――

中森ゼミ特別企画 トークセッション part 2
ゲスト 朝日新聞編集委員 高橋純子さん


偶像を推す(AIコラージュ)

とうとう買いました。64歳にしてグリム童話の当たり直しです。どうも気になって仕方がなかった『ハーメルンの笛吹き男』。ある町の為政者(おそらく)にネズミ退治を依頼された男が、仕事を終えても約束された報酬が支払われなかったため、その町の子ども130人を笛の調べと音色で惑わせ、いずこかに連れ去ったというお話です。まぁ、見知らぬ人には簡単に付いていってはいけないよ、オモチャやお菓子で釣られてはいかんぞ!という教訓めいたものだろうと受け止めていましたが、どうもそうではないらしいようなのです。

ナント実話に基づくという説もあり、ネズミは黒死病(ペスト)の感染拡大を暗示し、連れ去られた(失踪事件は事実)子どもたちは隔離され、亡くなった後に秘密裏に地中に埋められた可能性があるとの推測も成り立つといわれれば、なるほどねとも思えてきませんか。むろん、あくまでも推測に過ぎないことは「陰謀論」が世界的な関心事になる時代ですから、強く申し添えておきます。それにしても笛吹き男の笛は魔術的な力を持っていたよう。リズムとメロディーも子どもたちを「ノリノリ」の「大コーフン」のトランス状態にすんなり招き入れる、そんなフェスティバル(お祭り)性を帯びていたのではないでしょうか。そういえば、世界と日本の歴史にも、国を挙げてトランス状態に突入した時期がありました。さて、いまの日本はどうでしょうか。元気いっぱい、笑顔でニコニコ、ワン、ツウ、スリーのリズムでGo!はいいけれど、行きは良い酔い返りは〇〇〇なんて二度と御免被りたいものです。そんな老爺心から朝日新聞編集委員の高橋純子さんをゲストに迎えての中森ゼミ特別企画「政治」と「推し活」をめぐるトークセッションpart2をお届けします。(2025年10月22日に取材)

アイドル性があり、学習能力も高く、良くも悪くも「神秘的」な怖さが

高橋 ところで高市早苗総理はアイドル性がありますか?

中森 ありますね。内閣総理大臣に選出されて以降の報道をご覧になるとわかると思います。「憲政史上初の女性総理」と大きく報じられた。キャッチフレーズが大事なんですよ、アイドルって。「1000年に一人の美少女」とか(笑)。高市総理の最初の記者会見にも感心しました。韓国の記者からの懸念を伝える質問に対する答えです。「韓国ノリは大好き、韓国コスメも使ってます。韓国ドラマも見ています」とアピールした。事前に念入りに考えていたのかな。あんなの咄嗟(とっさ)に出てきませんよ。それが咄嗟に出てきたように見える。あれこそがアイドルの模範解答です。そこが怖くもありますが……。

高橋 確かに怖い。それって瞬発力の卓抜さということですか?

中森 瞬発力というか、考えているんだけど咄嗟に出たように見せる。いわば演技力ですね。僕は高市総理と同世代です。山口百恵や松田聖子の世代。いわば物心ついた頃からテレビとの親和性が高いジェネレーション。だからテレビがいかなる力を持ち、それを行使してどう振る舞えば好感を持たれ、大衆受けするかを心得ているというか、メディアリテラシー(理解・解析力)が高いんじゃないかな。

高橋 なるほど。

中森 オールドメディアと言われるけど、テレビの影響力はいまも強大ですよ。だからこそ怖さもある。作ったような振る舞いをしたり、言葉を発したりすれば、すぐに本性がバレてしまう。初期の松田聖子の「嘘泣き」みたいな(笑)。だから、すべてメディアでバラされてしまう時代の政治家は大変だなと思うわけです。アイドルもネットのSNSで「顔の形が変わった」とか頻繁につっこまれてますよね。一般ユーザーの強烈なつっこみ目線に常にさらされる。国民民主の玉木代表の不倫釈明会見なんかでも「表情がヤバい」とか「目が泳いでる」とか散々つぶやかれていましたしね。アイドルにしろ政治家にしろ、今の時代の"人気商売”は大変ですよ。


アイドルと笑顔(AIコラージュ)

なぜ日本にアイドル文化が生まれたのか?  そう訊かれると、僕はよく「日本国憲法」を例にあげます。日本国憲法の第一条は<天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く>という。主権は国民にあるんですよ。<大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス>という明治憲法と真逆です。つまり戦後憲法では、天皇がアイドルであり、国民はファンなのだと。そうしてアイドルの世界ではファンの側に主権があるんですね。どんなに美しく完璧な人でも、ファンに選ばれなければアイドルになれない。ファンに最終的な決定権がある。逆に完璧な人ではなく、自分が応援しなければ、推してあげなければダメだ!というファンの主体的な思いが「人気」を生むわけです。アイドル自身が何もかも自分でアピールできてしまうと、伸びしろというか「推す余白」が無くなってしまう。

高橋 推す余白ですか?

中森 そう。ファンから言われる前に自分で全部言ってしまってはダメなんだと。玉木さんはそういう感じかな。

高橋 一方、高市総理は余白を感じさせる?

中森 ものすごく余白があるじゃないですか。先にも触れましたが、高市総理は自分自身で「女性初の」とは言わない。2024年の総裁選では決選投票に残り、その時点では高市さんが勝っていた。そのせいか、スピーチでけっこう舞いあがってしまった。反対に石破さんは落ち着いていた。あれが決定的でね。今回は小泉進次郎さんが舞い上がって逆の結果となりました。高市さんは、この一年で相当に学習したんですよ。だから、総裁選に勝っても、総理就任後にトランプ大統領との米軍基地での会見で見せた喜色満面の大はしゃぎはしっかりと封印し、一切舞い上がった素振りは見せなかった。その意味で実に学習能力が高いといえる。

高橋 学習能力と修正力もアイドルの素養ですか?

中森 そう。ただし、それを露骨に前面に出しちゃダメ。「ウザイ印象」を与えてしまうから。よく「天然」といいますが、こいつ何だよと思っても憎めないというか嫌味を感じさせないキャラクターが「天然」でしょう。そういうところが必要。そこにこちらがつっこめる余地がある。キャラはある程度作られたものかもしれませんが、どこか余白が無いとファンは推せない。高市総理は用意周到に考えたうえで行動をしているはずですが、それを敢えて前面に押し出さない。そこにアイドル性の高さを感じます。

高橋 良くも悪くも「神秘的」ではあると。

中森 そう、神秘的。いまはSNSとかで全部を出しちゃう時代ですからね。

高橋 全部出されたら、つまらない?

中森 そう思います。全部を出して「これはこういうつもりでした」と自己解説しすぎるのは禁物ですよ。その点をご一考願いたい政治家もいますよね。

高橋 くだくだと本人が自己解説すると、聞く側の想像力が抑え込まれますよね。

中森 敢えてそうしないのが高市総理のすごさであり怖さ。ある政治評論家が総理の多種多様な発言について「想像力を喚起させる力がある」と言っていました。総理はかなりのタカ派ですし、いわば「男性的な」印象も強い。<高市総理はなぜ女性に嫌われるのか>と題して三浦瑠麗さんと浜田敬子さんが対談していました。なぜか女性から嫌われていることを前提にしている。炎上ねらいかもしれませんが。上野千鶴子さんも「女性が総理になっても、高市さんでは嬉しくない」と表明していた。その意味では今回はフェミニズムの女性たちが大きく試された感がありますよね。たとえ高市総理の誕生で女性の政治参画が進んだと言われ、経済協力開発機構(OECD)加盟国内でのジェンダーギャップ指数が改善されても、フェミニストらが素直に喜べないという状況が生まれてしまっています。


純白・無垢はアイドルの象徴

SNSでは、リベラル嫌いのマッチョ男性たちからの「この間まで女性の政治参画推進、ジェンダーギャップを何とかしろと言ってたくせに」といった投稿をよく見かける。こういうところも高市総理の「手の内」じゃないですかね。高市さんは、ほとんど女性としての自分自身の心情は語っていない。にもかかわらず単純に「中身はおっさん」とか批判してしまってはダメでしょう。実はパートナーの介護をして大変なんだとも言われる。お前は女だから地元の短大に進学しろ、と親に言われたなんてエピソードが次々と出てくる。総理自身が言うのではなく、だれかが調べてどんどん発信している。どこかアイドルのプロモーションというか、巧みな広告代理店的な手法にも感じます。

とかく「正解率の高さ」を求められ、そのせいか、どこか没個性的な政治家たち

高橋 周りが言ってくれてストーリーが出来上がっていく。アンチであれシンパであれ、何か語りたくなる。語らずにいられなくなるような「仕掛け」めいた力学を感じます。それにしても先に話が出た「余白」って面白いですね。中森さんが浜辺美波さんたちを見出したように、アイドルと聞いて、私が最初にイメージしたのは山本鈴美香作のスポーツ漫画『エースをねらえ!』です。西高テニス部宗方仁コーチは部員の岡ひろみにエースとしての可能性を見出す。「お蝶夫人」と呼ばれる竜崎麗香を筆頭に、他にもすごい人がいるのに岡ひろみを育成しようとします。なぜかというと、あまりに岡ひろみが下手だったからです。

中森 アイドルに限らず、最初から上手な人にはドラマが無い。伸びしろがなくて、早々と辞めちゃったりする。最初は下手な人のほうが長く続けていく過程でのドラマがある。
現在のアイドル文化はオーディション番組「スター誕生!」(1971年〜)から始まりました。キーパーソンは審査員の作詞家・阿久悠さんだった。審査員であるだけじゃなくプロデューサー的な存在でもあり、最大のヒット作はピンクレディーでした。阿久悠さんが最初に「下手を選ぼう」と言った。審査員の声楽家で「うたのおばさん」こと松田トシ先生に、中森明菜なんかすごく怒られたりしていましたね。岡ひろみの話と阿久悠さんの「下手を選ぼう」にはつながるものがある。アイドルは、欠点こそが長所であるということ。たとえば東大出身で官僚から政治家に転身するエリートなんて真逆でしょう。つまり、この国ではテストの成績がいい者がトップエリートになる。東大出身の財務官僚といえば、何事においても「正解率の高さ」を求められる。しかし、テストの正解って一つだから、没個性なんですね。むしろ間違いこそが無限に多様で個性的です。それこそ正解なんてAIに任せればいい。魅力的な間違いこそが人間のクリエイティブな仕事であり、AIには決して生み出せない「まったく新しい答え」になると思います。

高橋 正解率の高さかぁ。なるほど!

中森 2世3世の世襲政治家以外は松下政経塾出身になってしまう。この問題が非常に大きい。とくに自民党ですね。高市総理も松下政経塾ですが、女性でカバン(資金)、カンバン(知名度)、ジバン(地元の支援組織)無しの「叩き上げ」と少しタイプが違います。自民党の小林鷹之政調会長も経産官僚からの転身組で2世3世ではありませんが、そのせいか旧来の保守系団体などとの繋がりが言われ、若いのに主張もテンプレの保守に見えますね。


中森氏=高木あつ子撮影

高橋 芸能界にも2世3世が多いですが、大成功を収めてる人は意外と少ない気がします。

中森 政界同様に世襲は多いですが、大成功となるとなかなか見当たりませんね。

高橋 とすれば芸能界は淘汰が効いているというか、ある種の実力主義の世界ということでしょう。そこには選ぶ側のシビアな目利きが働いているはずです。アイドルを選ぶ主権はファンにあり、そのファンの「選球眼」と比べ、政治家を選ぶ国民の「選球眼」は甘いということになりませんか。

中森 それは選挙制度の問題でしょう。芸能人の子どもならもともと知名度があり、親のコネクションもある。その知名度でキャスティングされることもあります。でも、それが良いか悪いかジャッジするのは大衆であり、そこがダメならダメじゃないですか。選挙は圧倒的にカバンにカンバン、ジバンが結果を左右する大きな要因となります。普通の人が選挙に出られるシステムになっていない。その非対称性は芸能界とは少し違うと思います。

高橋 芸能界より政界がひどいのは最低じゃないかと思います。

中森 そのツケが来ているのが自民党ですよ。55年体制から70年。社会党は社民党になり、自民党VS野党第一党という構図が、ここにきて大きく変化しつつあります。この25年は自公連立政権でしたが、それもとうとう無くなり、自民党の一党支配的な時代が着実に終わろうとしている。その最大の問題点が世襲議員のあまりの多さでしょう。「アベノミクス」で「世界の真ん中で咲き誇る」はずの安倍政権の10年も結局はうまくいかなかった。現在の経済状況を見れば明らかですね。このままではダメだと自民党所属の議員も思っているでしょうが、その解決策がまだ分からない。先行きは不透明で、混乱状態が続いている。

高橋 中森さんの書かれた『推す力 人生をかけたアイドル論』(講談社新書)を拝読してポンと膝を叩いたのは、「最大公約数の時代から最小公倍数の時代になった」という秋元康さんの指摘です。それは政治も同じで今は小さなファン層を固めるという動きに変わってきています。

中森 まさに参政党がそうですね。

高橋 小選挙区比例代表制では小さいファン層を固めれば、かなりいいところまでいけると想定して選挙制度を、ある種ハックする。NHK党もそう。それでいいのかと私は問いたいのです。確かに戦略としては正しい。秋元康さんの選択も正しい。変化する時代のなかで、時代の求めといわれれば確かにそうかもしれませんが、せめて政治は最大公約数、最小公倍数ではなく最大公約数を目指すべきなんじゃないですか。

中森 にわかに自民党と組んだ日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)が、高市総理に衆議院議員定数の1割(50議席)削減を提案し、関連法案が2025年12月の臨時国会で審議される運びとなりました。その対象が比例区選出議員となれば公明党や共産党、れいわ新選組などが少なからぬ影響を受けます。これはこれで問題です。だから、その時々のバランスが重要になるんだと思います。おっしゃるように最小公倍数が突出してきて、それでいいんだろうかという機運がある。結果的に最大公約数を目指す政治は必要だろうという意見も強い。しかし、それを制度に落とし込まないといけない。


選挙とアイドル活動は似ている!?(AIコラージュ)


高橋 比例を主体にすればいいだろうという議論が出てくると思います。最小公倍数のアイドルといえばAKBは一時成功しましたが、現在はどんな感じですか。
 
中森 パッとしない。それが芸能界の良いところというか面白いところですね。政治とは違いますから。いわばエンタメなんて無くても別に構わないし、すぐ廃(すた)れもする。それを秋元さんは分かっていると思いますよ。いまの若者はK-POPのほうを支持している。廃れたとはいえ、紅白歌合戦はいまだに視聴率40パーセント近いでしょう。だけど、一般の大人が知ってる曲がほとんど無い。昔は知ってる曲ばかりでした。そういう最大公約数が失われてしまった。それでも見ているわけです。80年代ぐらいまでは毎日のようにテレビの歌番組があって家族で見ていました。今は違いますよね。せいぜい年に1回、紅白のみでしょ。その紅白が僕には興味深い。K-POPはダンスにしてもすごいスキルです。他方、乃木坂46は女子校のゆるい学園祭みたい。演歌もニュー演歌と呼ばれていてかつてと違う。こんなにバラバラになってしまっているのだから何も大晦日に紅白を放送する必要があるのかとも思いますが、それでもNHKは最大公約数を目指して頑張ってやっている。とはいえ、紅白は無くてもいいけど、政治はそうはいかない。国民の基盤ですからね。芸能と政治の根幹は一緒というのが僕の持論。面白くて当たり前だし、政治が芸能的になっていくのは根源的であり必然的なことですよ。ともに面白く興味深いし、興味を引く展開がある。芸能だと少なくとも誰かが筋書きを書いていたりしますが、どうやら政治には筋書きが無いところが面白い。興味を持つのは良いことですし、ある意味正しい。しかし、この面白さ大丈夫かよと身構えることも必要です。政治選択は私たちの生活を必ず直撃してきますからね。

安倍政治の「不適解」を見ず そのフィクション(虚構)を再び利用するのか?

高橋 アイドルの面白さについては「正解」が無い。そこが面白い。政治もそうなはずです。「正解」が最初からあるはずもなく、アホな人も賢い人も抜けた人も皆が合議し、そのなかで何とか「正解」を見いだしていく。それを皆で「当座の正解」として守っていくからこそ、運営され続けられるものでしょう。政治は最初から「正解」がある世界ではないと私は思いたい。


高橋氏=高木あつ子撮影

中森 特に2025年9月から10月にかけての政界は、風雲急を告げるという様相でしたね。今後どうなるのかまったく見当がつかない。そういう時には「正解」を信じてる人は弱い。では「正解」を信じてる人たちがどういう人か。やはり受験秀才でしょう。勉強すれば答えが分かるという時代の人たち。日本がダメになった要因には、そういうことがあると思う。この国で勉強ができる人たちは東大に行き、官僚になった。その人たちが国家をコントロールする時代が長く続いた。太平洋戦争に負け、食べるものも無く、とにかく食べられるよう、雨露を凌(しの)げるようにと奮闘努力を重ねてきた。当時の「正解」は高度経済成長でした。それが1970年代になるとドルショック、オイルショックが起きて低成長の時代を迎え、80年代半ばからはバブル経済に突入する。その崩壊以降は、まったく答えを見いだせない。いわゆる「失われた時代」が延々と続いて現在に至ります。今では、旧来型の答えが分かっていると思い込んでいて「正解」を出そうとする人は政治家にも官僚にも不向きではあるでしょう。先行き不透明なこの時代には務まらないともいえる。

高橋 「ハコモノアイドル」というと失礼かもしれませんが、AKBを卒業して活躍している人を見ると、いろんなことを考えたり学んだり雑駁(ざっぱく)にいうと知性があると思います。何も考えず時流に乗ってやっている人たちとは格段の違いがあります。ここで目線を政治に移すと、安倍政治の罪が大きいと私は思っています。安倍チルドレンをつくり、絶対選挙に勝つ安倍さんについて行きさえすればいい、右を向けと言われたら1番に右を向く人たち、自分の頭で考えなくていいという人たちを量産してしまいました。この罪は非常に大きいと思います。中森さんはハコモノアイドルのその後について、どう思っていますか?
 
中森 AKBに限らず、ハコモノアイドルたちは懸命に考えないと生き残れない。それこそAKBには総選挙があったじゃないですか。いったいどうすれば票が取れるのか。最初から輝いていたわけじゃないし、アンチもいっぱいいた指原莉乃がなぜ1位になったのか。それがファンの出した結論だという以外にはない。そうした答えが無いところで戦わなきゃいけないのは本当に大変です。普通の大手事務所に入ってるアイドルとは全然違う。高橋さんがおっしゃった自民党のような、とにかく選挙で勝って自民党内で偉くなりさえれば、常に政権を握る機会を狙えるわけですよ。そこでは国民に対する意識が決定的に欠けている。結果、耐用年数の尽きた旧来の政治機構による負債を我々国民が延々と支払わされています。問題の要因は未だはっきりと分からない。けれど、いつの間にかこの国はこうなってしまった。少子高齢化、格差社会、景気の長期低迷、将来不安……と、どんどん問題が噴出してきて、だれも明確な解決策を提示できていない。

かつて東京大学のトップ成績の卒業生らはみな高級官僚になった。今は違う。外資系のコンサル企業に入るみたいですね。コンサルのみならず、儲かるチャンスに恵まれるスタートアップの起業家を目指すそうです。彼らはよく「最適解」という言葉を使う。最適解とは過去から演繹(えんえき)された正しい答えを意味します。でも、今ではそうなるかわからない。過去の演繹で未来が予測できるわけではまったくなくなった。政治も景気もそうでしょう。トランプ大統領なんてその言動の行方はまるで読めません。どこかで戦争が起きたら全部変わってしまう。そういう想定外の事態に対応できないと思うんです。ずっと安倍政治だろうという時代は最適解さえ考えれば済んだ。上から言われることをやっていればいいし、安倍さんのご機嫌を伺い、忖度(そんたく)してさえいれば良かったかもしれない。それが自民党や政界だけのことではなくなった。

若い人にアンケートを取るとすごく保守的な傾向が強い。高市総理や参政党への支持が非常に高いんですね。なぜか?  おそらく安倍政治の10年が長かったからではないか。現在20歳の人は10年間、つまり人生の半分の時間が安倍政治的な感性で染まっています。また、30代以下の人たちが政治に経済対策や景気対策しか求めていないのは顕著でしょう。自民党右派はもちろん、野党の参政党や国民民主党などを見ても、景気対策重視の一方、政策はきわめて危い。スパイ防止法なんてその最たるもので、戦前の治安維持法を連想させます。しかし、国民の関心があまりそちらに向かない。高市総理も景気対策のことばかり派手にぶち上げて、効果的に喧伝すれば支持率はさらに上がるでしょう。それも安倍政権の負の継承ですね。あれほど続けたアベノミクスの結果が現在で、景気は上向かず国民の暮らしは益々きびしくなっている。高市総理も「アベノミクス」同様の「サナエノミクス」で国力強化と説いているけれど。ここまで国民生活は疲弊し、円安によるインフレと物価高に国民があえいでいるのは明らかにアベノミクスの失敗に起因している。その根本的な見直しと反省なくして、また空虚で派手なスローガンのみの負の継承を続ければ失敗することは目に見えているでしょう。
(part3へ続く)


たかはし・じゅんこ
1971年福岡県生まれ。1993年に朝日新聞入社。鹿児島支局、西部本社社会部、月刊「論座」編集部(休刊)、オピニオン編集部、論説委員、政治部次長を経て編集委員。

なかもり・あきお
作家・アイドル評論家。三重県生まれ。さまざまなメディアに執筆、出演。「おたく」という語の生みの親。『東京トンガリキッズ』『アイドルにっぽん』『午前32時の能年玲奈』『寂しさの力』『青い秋』など著書多数。小説『アナーキー・イン・ザ・JP』で三島由紀夫賞候補。近著に『推す力 人生をかけたアイドル論』(集英社新書)がある。

撮影・コラージュ 越智貴雄  取材・構成 生活クラブ連合会 山田衛
撮影・人物 高木あつ子

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