希望の持てる公正な社会へ ワークショップで体験する戦略的非暴力
国際秩序が揺らぎ、紛争が絶えない。交渉や協調よりも自国の軍備増強を優先する空気が世界規模で広がっている。立ちはだかる「暴力」の壁を乗り越え、正義と平等に基づく社会へと変革する道をどうつくっていくのか。世代や団体の垣根を取り払い、ともに社会を動かすために、学生や若い市民活動家、生活クラブ組合員、職員が集い、非暴力による戦略的なアクションを学び合った。
権力を変革できるのは市民

ジョー・ワージーさん
2026年2月、生活クラブ連合会(東京都新宿区)で、戦略的非暴力アクションの基礎を学ぶワークショップが開催された。米国オハイオ州出身のジョー・ワージーさんをファシリテーター(進行役)に迎え、人々の共感を集め、社会を動かすにはどんな戦略と行動が必要かをテーマに、参加対象と内容を変え、2日にわたり講座が行われた。
今回のワークショップは、24年5月から25年7月にかけてオンラインを中心に開催された「気候正義と非暴力」の国際ワークショップに生活クラブの組合員4人が参加したことがきっかけとなった。講座のファシリテーターを担ったワージーさんは、その経験を生かして市民運動のリーダーや社会的変革を目指す人々に向けた教育機関「戦略的非暴力アカデミー」を設立。現在国際的に活動している。
今回のワークショップは、24年5月から25年7月にかけてオンラインを中心に開催された「気候正義と非暴力」の国際ワークショップに生活クラブの組合員4人が参加したことがきっかけとなった。講座のファシリテーターを担ったワージーさんは、その経験を生かして市民運動のリーダーや社会的変革を目指す人々に向けた教育機関「戦略的非暴力アカデミー」を設立。現在国際的に活動している。
戦略的非暴力とは、著書『独裁体制から民主主義へ』で知られる米国の政治学者、ジーン・シャープが確立した理論。権力やそれを行使する体制は状況によって変わる相対的なもので、国家や大企業もそれを支える人々がいなければ成り立たない。暴力に頼らずとも、権力者側に対する抗議行動や説得、非協力によって無力化できるとする考えだ。気候危機回避のための再生可能エネルギーの普及や安心できる介護体制は、生活クラブにとっても喫緊の課題だが、現体制ではその実現が難しい。どう変革していけるのか。単なる抗議行動を超えて持続的な社会変革を実現するための行動として、戦略的非暴力は大きなヒントとなる。
ワージーさんは、既存の不当な制度を解体する「妨害的手法」、それに代わる制度を構築する「建設的手法」、人と人をつなぎ運動の力を育てる「コミュニティ組織化の手法」、これら三つの手法をバランスよく組み合わせ行動すれば、単に不正を止めるだけでなく、より公正な「もうひとつの社会」を創り出せると説く。自身もこの手法を組み合わせ、地域の若者たちを組織して警察の不当な行為を監察する委員会が実効性を持つよう改革を実現させたり、米国南部のミシシッピ州では黒人女性たちを組織し、出産後の医療ケアの権利を勝ち取るなど、さまざまな成果をあげている。
ワージーさんは、既存の不当な制度を解体する「妨害的手法」、それに代わる制度を構築する「建設的手法」、人と人をつなぎ運動の力を育てる「コミュニティ組織化の手法」、これら三つの手法をバランスよく組み合わせ行動すれば、単に不正を止めるだけでなく、より公正な「もうひとつの社会」を創り出せると説く。自身もこの手法を組み合わせ、地域の若者たちを組織して警察の不当な行為を監察する委員会が実効性を持つよう改革を実現させたり、米国南部のミシシッピ州では黒人女性たちを組織し、出産後の医療ケアの権利を勝ち取るなど、さまざまな成果をあげている。
意見や文化は違っても

初日のワークショップには気候正義や平和の活動に取り組む外部団体からも参加
ワークショップ初日は、気候正義や平和活動に取り組む団体や学生、生活クラブ組合員が参加し、非暴力アクションの基礎を学んだ。
「これまでに活動が停滞した経験があるか」「その原因は何か」。冒頭、ワージーさんが問いかけると、「燃え尽きてしまった」「世代間の連携がうまくいかなかった」という答えが返ってきた。これに対してワージーさんは「活動を続けるには、まず自分の内面に目を向け、心のケアをすること、自分自身に共感することが大事です」と語りかけた。
この日は以下のプロセスを踏み、グループごとに話し合いを進めた。まず、自分自身を知り、ありたい姿や弱さを言葉にする。次に権力を支える柱とこれを揺さぶる三つの手法(妨害、建設、組織化)を学ぶ。最後は、学んだ手法を使って、世界で現実に起きた対立の事例を分析し戦略を練った。
参加団体や活動内容は違っても、活動を継続し、課題を解決する悩みはどこも同じだ。「自分の思いを語り、人の共感を集めること。それは対立に勝つのではなく、対立の中から協力を導き出す道筋をつくることです」というワージーさんの言葉に「対立する相手の意見も考えていきたい」「今日出会った人と協力すれば、思い描く未来を実現できそう」と、多くの参加者が勇気づけられた。
翌日のワークショップには、生活クラブ連合会理事、監事が参加した。直面する社会課題の解決に向けて、権力側との「交渉」から「抗議」へ、さらには「行動」へと運動を進めていくとき、その契機となるものは何か。脱原発、生活クラブでんきへのスイッチング、介護保険制度改悪を防ぐなど、グループごとにテーマを決め話し合いを行った。
「たとえ意見が違っても、同じ地域に暮らす仲間として認め、否定しない」。それがワージーさんの揺るがないスタンスだ。食料やエネルギー資源の奪い合い、気候危機など、地球規模の課題であっても、解決の糸口はそれぞれが住む地域にある。対話を重ね、人とつながり、社会を変える生活クラブの歩みは、ワージーさんとの出会いによってまた一歩前進した。
撮影/新井春衣
文/本紙・元木知子
★『生活と自治』2026年5月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2026年5月29日掲載】