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「エッコロ」は、気持ちが通うたすけあい

エッコロ制度(※)は、お互いさまとたすけあい、安心して暮らせる地域社会をつくるための生活クラブ独自の仕組みだ。1986年に5地域の生活クラブ生協で始まり、その後、地域独自に展開するようになった。世代が交代しライフスタイルが変わっても、制度内容の改定を重ねながら使い続けられている。生活クラブ千葉は、高齢化が進み人間関係が希薄になっていく地域社会の中で、人と人とのつながりを取り戻そうと、エッコロ制度を使い地域づくりに挑戦している。 
※エッコロ制度は、単協によって制度名や制度内容に違いがあります。

誰でも気がねなく

「エッコロ」は、イタリア語で「はい、どうぞ」と手を差し伸べる時に使われる言葉。助けて、助けますよ、と、人と人とが気持ちを通い合わせる第一歩だ。

エッコロ制度の発足は1986年。生活クラブ設立より20年ほどがたち、仲間づくりや消費材開発、環境問題、まちづくりなどの活動に多くの組合員が取り組んでいた時期だ。一方、配送形態は、7人前後で班をつくり、人数分の消費材が1カ所に届けられ、それを分け合う形が中心だった。

当時の共済掛け金は200円。100円は全労済(現・こくみん共済coop)と提携し慶弔金給付に充て、もう100円は、生活クラブが独自に運用、入院見舞金とケア金、活動中の負傷、共同購入代金の盗難保障の三つに使われた。当時共同購入代金は班員分を当番が集金し、消費材の配達時に職員に渡していたので、当番の負担が大きかったためだった。

必要最低限の補償内容で始まったエッコロ制度だったが、導入に当たっては大きな議論が展開された。当時の共同購入の活動の基本は班。班員同士、月に何度も顔を合わせ、情報を交換しながら、日常の課題も相談し合う関係があった。しょうゆやみその貸し借りや、子どもの預け合いなどは当たり前であり、そこにお金を介在させるエッコロ制度に違和感を持ち、反対する意見もあった。
しかし時代とともに、ライフスタイルは変わる。設立当初は専業主婦が多く、活動の担い手の中心となったが、高度経済成長期を経て、仕事に就く組合員が増えていった。地方から都会に移り住み隣近所とは縁のない暮らしをし、そこで家庭を持つ核家族も増えていた。

生活クラブ連合会の顧問で、生活クラブ共済連の元会長でもある伊藤由理子さんは、「エッコロ制度は、お互いの『たすけあい』をいとわない関係をつくるための『しくみ』です。地域コミュニティーが希薄になっていく時代に、どんな人でも安心して暮らしていくためには、気軽に頼み、頼まれる関係をつくることが重要だと考えたのです」。知らない組合員同士でも、気がねなく使うことができるよう、あえてお金を介在させたのだと言う。
 
生活クラブ連合会顧問、伊藤由理子さん

エッコロが土台となって

スタート時は、東京、神奈川、埼玉、千葉、長野の五つの生活クラブの統一制度だったが、次の年には、それぞれの生活クラブに共済委員会が設置され、その運営は、地域の生活クラブの組合員が行うようになる。給付申請で寄せられるさまざまな事例はその都度話し合われ、蓄積され、制度内容の改定につながっていった。

組合員が活動に参加する間の家族への食事の用意や、病院への付き添いなど、身近な家事援助に対する申請が増える一方、近所の高齢者の手助けなど、組合員では対応できない事例も多く見られるようになった。

90年代にかけて、核家族化、高齢化がさらに進むと、生活クラブの枠を超えて、地域で支え合う福祉制度の必要性が高まり、各地域の生活クラブは、それぞれの地域に必要な地域福祉事業を展開するようになる。エッコロ制度の給付審査をしながら、その必要性を感じていた組合員の多くが、委員交代を機に、家事援助サービスや訪問介護事業を、「ワーカーズ・コレクティブ」という形で起業していった。「エッコロの活動は、地域社会のケアの仕組みづくりの大きな原動力となりました」と、伊藤さんが振り返る。

今や、地域社会は高齢化が進み、人間関係の希薄化はより深刻さを増している。コロナ禍がそれに拍車をかけた。「孤立感や切迫感を抱えている子育て世代や、これから定年を迎えて地域に戻る人たちにとって、人と人との関係性を取り戻すことは切実です。知らない同士でも、ちょっとしたつながりをつくることができるエッコロは、これからますます重要な役割を果たしていくと思います」と伊藤さん。より多くの人が幅広く使えるエッコロであればいいと期待する。

生活クラブ千葉の、エッコロで地域づくり

現在、エッコロ制度は、各地域の生活クラブが独自に展開している。

生活クラブ千葉では、戸別配送と9カ所にあるデポーの組合員が全体の4分の3を占める。エッコロを使い頼みたいことがあっても、近くに「ケア者」を探せない場合が多い。副理事長で、たすけあい委員長でもある並木道代(みちこ)さんは、「改定に当たっていつも意識していることは、困った時に気軽に助けてと言うことができ、できることはしてあげたいとみんなが思えるようになる地域づくりです。エッコロが、そのきっかけの一つであれば、と思っています」と言う。

そこで2017年の制度改定時につくったのが「サポーター制度」。知らない同士でも気軽にエッコロを使えるように、組合員がエッコロサポーターとして登録する制度だ。申請者にサポーターを紹介するのがエッコロコーディネーター。現在、六つの地域(ブロック)に1~2人ずつ配置している。

24年には、もっと身近な範囲で助け合える関係をつくるため、新たに三つの制度をつくった。
一つは「ほっとカフェ」。二人以上でグループをつくり開催すると補助金が支給される。条件は「エッコロ制度ガイドブック」を開き、地域の困りごとや、頼みたいことを出し合い、自分は何ができるかなど、エッコロの活用方法を話し合うこと。組合員ではない人も参加できる。26年4月現在、103グループがあり、開催数は622回に上った。

「プレママ応援セット」は、子育てをする人が地域の中で孤立しないようにと、母子手帳交付から出産前までの組合員へプレゼントを届ける制度だ。近くのエッコロサポーターが、「私がそばにいます。いつでも助けを呼んでね」、と届けている。

もう一つは、生活保障に新しく加えられた「おたすけサポート」。元気な時でも使える制度で、旅行に行くから水やりをお願いとか、美容院に行くために子どもを見てもらいたいなど、エッコロを使える範囲を大きく広げた。

「人と人とがつながっていることが大事、という気持ちをみんなが持ち続けていれば、安心して暮らせる地域社会になるのでは」と並木さん。そのきっかけをつくるエッコロへの期待は大きい。
生活クラブ千葉の、身近なつながりをつくる「ほっとカフェ」。子育て、介護、健康、料理など、話題はつきない(写真提供・生活クラブ千葉)
 
生活クラブ千葉の副理事長、並木道代さん(左)と福祉事業部の川島早貴さん。「プレママ応援セットは、酒井産業の木のおもちゃ『森のコロコロ』と、黒姫和漢薬研究所の黒姫山草茶です。みんなで子育てを見守りたいですね」
撮影・文/伊澤小枝子
★『生活と自治』2026年6月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2026年7月3日掲載】
 

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