[本の花束2026年6月]生ごみのコンポストから始まる半径2キロメートルの循環 ローカルフードサイクリング株式会社 代表取締役 たいら由以子さん

1997年からコンポストに取り組むたいら由以子さん。
本書では生ごみを土へと還す各種コンポストの使い方や、暮らしの中で循環を育て、楽しみながら
持続可能な未来へとつなげる工夫を紹介しています。
──コンポストに取り組むようになったきっかけは。
1997年に父が病気になり、食事から見直そうと考えました。
福岡市内で無農薬野菜を探し歩きましたが、なかなか手に入らない。ようやく見つけた自然食品店で買った野菜は高価で鮮度も低く、その貴重さと流通の少なさを実感しました。それまで証券会社に勤め、世の中を知っているつもりでしたが、実は足元の暮らしについては何もわかっていなかったのです。娘が将来も安心して食べられる環境をどうつくるかと考えたとき、暮らしを変える必要があると感じました。誰もが環境に貢献できる方法を模索する中で、コンポストに行きつきました。
──本書の「半径2キロメートルの栄養循環」という考え方が印象的です。
幼い娘を抱えて父の食養生に取り組んでいた当時、私の世界は半径2キロメートルほどの小さなものでした。でも、その狭い生活圏だからこそ、自然に触れたり近所の人と付き合う中で地域への関心が深まり、暮らしを見直すきっかけにもなりました。この身近な範囲で生活に必要な資源が循環する仕組みをつくることが重要だと気づいたことが、現在の活動につながっています。
──ダンボールコンポスト講座の講師として活動を始められてから約30年。活動の広がりについて、どのように感じていますか。
始めた当初は「誰もがすぐに共感して取り組んでくれるはず」と楽観していました。しかし実際には、土のもつ見えない価値を伝えるのは難しく、無関心層にどう働きかけるかを考え続けてきました。近年は、災害やコロナ禍を経て、暮らしを見直す人が増え、土に触れることで安心感を求める方も多くなったと感じています。一方で、日常が戻ると元の暮らしに戻ってしまう面もありますが、確実に変化は広がっています。
──本書では、設置型・ダンボール型・バッグ型など多種のコンポストが紹介されています。それぞれの特徴と選び方のポイントを教えてください。
お庭がある方は設置型のコンポストが使いやすく、段ボールコンポストやバッグ型を併用する方も多いです。日々出る生ごみを入れるものと、熟成させるものを分けることで、無理なく循環の流れをつくることができます。マンション暮らしの方には、段ボールコンポストや電気式のもの、バッグ型などがおすすめです。ベランダなど限られたスペースで使いやすいものとして、バッグ型コンポストが取り入れやすいと思います。
──2020年に開発されたバッグ型の「LFCコンポスト」は、すでに5万世帯で使われているそうですね。
約2か月分の生ごみが入る設計で、バッグごと持ち上げて混ぜられるなど、扱いやすさが大きな特長です。また、防虫ファスナーの採用により、虫やにおいも大きく軽減されています。
バッグと基材を組み合わせることで、ほとんどの生ごみに対応できます。庭のない都市部でも取り組めるようになったことで、コンポスト普及の可能性が広がりました。
──「LFCコンポスト」は、サポート体制も充実しているそうですね。
これまでの普及活動の中で、コンポストを続けるためには身近に相談できる存在が必要だと感じていました。そのためにアドバイザーを養成し、LINEで相談できる体制を整えています。現在は約10人のメンバーで対応し、寄せられた質問をもとに、よりわかりやすい伝え方を毎週のように検討しています。
──今後、目指していることを教えてください。
家庭でつくった堆肥を地域へと循環させる「コミュニティコンポスト」を広げていきたいです。生ごみを堆肥にして、それを地域の農家さんや土地に戻していく取り組みです。東京都台東区とは3年前から連携協定を結び、普及活動とともにできた堆肥の回収にも取り組んでいます。こうした自治体との連携をさらに広げていきたいです。
──最後に、生活クラブ組合員へのメッセージをお願いします。
生ごみを堆肥にし、野菜を育てて食べる――その循環を地域の中で人と人が関わりながらつくっていくことが、これからますます重要になると思います。
AIが発展する時代だからこそ、顔の見える関係や温かみのあるつながりが大切になります。
循環は特別なことではなく、暮らしの中から始められるものです。楽しみながら続けることがいちばん大切ですし、そこから見える景色はきっと変わっていきます。皆さんと一緒に、「おいしい循環」を広げていけたらうれしいです。
インタビュー: 上野裕子
著者撮影:尾崎三朗
取材:2026年2月
著者撮影:尾崎三朗
取材:2026年2月
●たいらゆいこ/福岡市生まれ。1997年より暮らしと土壌の改善をつなぐためコンポスト活動を開始。半径2㎞での栄養循環をつくるため国内外でコンポストや人材の育成を行なう。循環型コミュニティガーデン協会代表、生ごみ焼却ゼロプラットフォーム共同代表、NPO法人循環生活研究所理事などを務める。

『おいしい循環 生ごみを捨てない暮らし』
●たいら由以子 著
●婦人之友社(2025年7月)
●21×14.9cm/126頁
本書の内容
●料理をして食べる
( 採れたての野菜で作るランチ)
●半径2㎞の栄養循環
(コミュニティガーデンの可能性)
●生ごみをコンポストへ
(生ごみはごみじゃない!)
●堆肥ができる
(はたらきものの微生物)
●野菜を育てる
(堆肥のいろいろな活用法) ほか
●たいら由以子 著
●婦人之友社(2025年7月)
●21×14.9cm/126頁
本書の内容
●料理をして食べる
( 採れたての野菜で作るランチ)
●半径2㎞の栄養循環
(コミュニティガーデンの可能性)
●生ごみをコンポストへ
(生ごみはごみじゃない!)
●堆肥ができる
(はたらきものの微生物)
●野菜を育てる
(堆肥のいろいろな活用法) ほか
図書の共同購入カタログ『本の花束』2026年6月4回号の記事を転載しました。