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ライト・ライブリフッド・アジア会議を開催 「民主主義の危機に、教育は何ができるか」を考えました


 
2026年の「ライト・ライブリフッド会議」のひとつとして、「危機に瀕する民主主義を教育がどう救えるか」をテーマにした国際会議を開催しました。日本、ベトナム、台湾などから60人を超える参加者がオンラインで集まり、民主主義の再生と強化に向けた道筋について議論、意見交換しました。

オンラインの活用によって、世界各地の人々とのつながりがより強まり、 活動の成果や課題を共有し、意見交換や相互の励ましを通じて、今後への意欲が高まる集まりとなりました。

「ライト・ライブリフッド賞」に導かれたグローバルな組合員活動

「もうひとつのノーベル賞」と呼ばれる「ライト・ライブリフッド賞」は、1980年にスウェーデンで創設されました。環境や人権、持続可能な開発、平和などの分野で、人類が直面する課題に対して実践的な解決策を示した個人・団体を評価し、その業績を広く伝えるために授与されます。創設以来、世界各地から約200の個人・団体が受賞しています。生活クラブ生協は「先進工業国において、最も成功を収めた持続可能な生産と消費のモデルをつくりだした」ことが高く評価され、1989年にこの賞を受賞しました。

「ライト・ライブリフッド賞」の受賞者たちが互いの経験や知識を活用し広めるために創設された「ライト・ライブリフッド・カレッジ」の呼びかけにより、年に一度、世界各地の受賞者・団体を集めた会議が開催されています。2026年のテーマは「教育」です。

4月13日から5月8日まで、教育がどのように民主主義、集合知*、そして公正な未来を強化できるかを探求するグローバル会議が世界各地、またはオンラインで多数開催されました。

生活クラブは、このグローバル会議のひとつとして、「教育」が民主主義の再生と強化に向けてどのように貢献できるかをともに考える機会として、日本とアジア各地の受賞者・関連団体等を招いたオンライン会議を開催しました(4月25日)。

*注:ここでは、市民参加型の政策づくりを意味し、市民ワークショップや熟慮や対話を通して合意形成を図る民主主義のことを指す。多くの市民が議論に参加することで、より妥当な政策案を導く試み

それぞれのアプローチで取り組む「私たちの民主主義と教育」

会議では、マレーシアのアンワ・ファザールさんが「民主主義の危機の時代に私たち一人一人ができること」と題して基調講演を行ないました。

「世界で起こっている大量虐殺や環境破壊、多くの人の自殺は悲劇であり不幸なことです。これらのことに対して私たちは何ができるか。たとえひとりの人間であっても、変化をもたらすことができます。できることをやり続け、共有し続ける。自分が模範になるということです。
そして、たくさんの人たちとつながってネットワークを作り、できることから始めるのです」

アンワ・ファザールさん(Anwar Fazal, マレーシア)
IOCU(国際消費者機構、現 コンシューマーインターナショナル)元会長。マレーシア消費者協会(FOMCA)やペナン消費者協会(CAP)などの設立に関わり、アジアの消費者運動を牽引してきた。市民社会の発展と持続可能で公正な社会づくりへの貢献が評価され、1982年にライト・ライブリフッド賞を受賞。


続いて、ライト・ライブリフッド・カレッジのグローバル事務局から、デイブ・ショーさんが登壇。挨拶の言葉とともに、参加者へのエールを送りました。

「私がライト・ライブリフッド賞と初めて関わりを持ったのは2004年、22歳の時でした。当時、周囲からは『君は理想主義者だね』といわれたものでしたが、その後いろいろな受賞者と会うことで、彼らが大陸横断的に大きな規模で変化をもたらしていることがわかりました。
生活クラブもそうです。42万人の組合員がいて長年活動を続けながら、さらに活動の幅を広げています。みなさん、どんどん仲間に入って民主主義につながるアクションを起こしましょう。物語を持って伝えることが大事です」

デイブ・ショーさん(Dave Shaw, アメリカ)
カリフォルニア大学サンタクルーズ校ライト・ライブリフッド・センターのコーディネーター。ライト・ライブリフッド・カレッジのグローバル事務局メンバー。環境学の博士課程学生。2013年設立の同センターは、ライト・ライブリフッド賞を授与する財団と連携し、大学間の国際ネットワークを運営。


生活クラブ組合員の取組み

生活クラブの活動例として、NPO法人「大人の学校」代表理事の吉田文枝さんと、「コミュニティー・レストラン 木・々(もくもく)」代表の鈴木美紀さんがそれぞれの活動を報告しました。

生活クラブ埼玉の組合員として活動を担い、理事長を務めた経験もある吉田さんは、生活クラブ埼玉の30周年記念事業として「大人の学校」を立ち上げ、今年で21年目を迎えます。これまで続けてきた事例として、メンバーが企画案を持ち寄る「自主講座」や「食に関する講座」、フィールドワークを通して社会問題を学ぶ「スタディツアー」などを紹介しました。

「生活クラブには創立時から班配送のシステムがあり、班は組合員どうしが共に学びあう “共育(ともいく)” の機能も持ちあわせていました。ところが、個人配送を選ぶ人が増えその機能が薄れたことから、教育の必要性を感じて立ち上げたのが『大人の学校』です。
自分で考えて自分で行動することは、今の社会ではますます必要になっています。私たちは『市民が主体となって自治する社会をめざす、市民がつながり社会を変える力となる』という目標を掲げ、誰かの言葉や報道に流されることなく、ちゃんと考えて、手をつないで活動していくことを大事にしています」
NPO法人「大人の学校」代表理事 吉田文枝さん

 

「大人の学校」の講座例
多摩きた生活クラブの鈴木美紀さんは、2000年に組合員9人とともに「コミュニティー・レストラン 木・々(もくもく)」を発足。地域に開かれた居場所づくりに取り組む中で、絵手紙や俳句などの大人向けプログラムのほか、子ども食堂やフードパントリーなどの子ども向けプログラムを用意。「宿題ルーム」では、毎週2回、子どもたちへの学習支援を続けています。

鈴木さんは、「宿題ルーム」に通う子どもたちの例として、親を失った子、ヤングケアラー、外国籍の子に対するサポート事例を紹介。一人ひとりに丁寧に寄り添うことで、子どもたちがスタッフとの信頼関係を結びながら、日々成長していく様子を発表しました。

「子どもは、本音を話せる安心感や認めてもらえるうれしさを感じられると、他者を認め、理解することができるようになります。そうした関係性のなかで、民主主義の原点が自然に身につくのではないでしょうか。
私たち大人も一緒に、目と目をあわせて会話をして学び、自分で考え、自分で行動することによって、いろいろなことに気づく力が身につきます。『木・々』が知らず知らずのうちにそうした体験のできる空間になることを願っています。
西東京市から日本へ、そして世界に広がっていけば、民主主義が実現されるのではないかと思っています」

「コミュニティー・レストラン 木・々(もくもく) 」代表 鈴木美紀さん

 
宿題ルームの活動の様子とサポート事例
国内・国外の各地の取組み

日本の大学での事例として、龍谷大学の斎藤文彦教授と、法政大学の伊丹謙太郎教授が登壇しました。さらにアジア各地から、ベトナムでオルタナティブ教育を推進するヴ・トゥロングさん、タイで食料システムの改革に取り組むハンス・ファン・ウィレンスワードさん、ワラパ・ファン・ウィレンスワードさん夫妻が登壇し、それぞれの活動や民主主義と教育への思いを発表しました。

龍谷大学では2021年から毎年「学生気候会議」を開催し、学生たちが地球温暖化の問題を討議する場を設けています。この会議をきっかけとして「(大学が)創立400周年を迎える2039年までにカーボンニュートラルにする」ことを2022年に宣言しました。2023年には3つのキャンパスで使用するすべての電力で再生可能エネルギー100%を達成しています。

「会議に参加した学生からは『新たな視点を持つことができた』『話しあうことの大切さ、情報を知ろうとする姿勢の大切さを学べた』などの感想が寄せられました。一人では何も変えられないと諦めたこともあったけれど、考えることは大事だと学生たち自身が気づき、変わっていったのです。今では、会議に参加したOBや大学院生たちによって、他大学との横のつながりもでき始めています。『自分たちは将来を良くするために何かできるかもしれない』という感覚を持つことは、とても大事だと思っています」

斎藤 文彦さん
龍谷大学国際学部グローバルスタディーズ学科教授。開発研究、国際協力、社会的連帯経済を専門とし、アジア・アフリカ地域でのフィールドワークを重ねてきた。地域社会のガバナンス、市民参加、公共政策の実践をテーマに、国際的視野から研究と教育に取り組んでいる。
2021年「龍谷大学学生気候会議」のポスター
 
2022年には「グラフィックレコーディング」を用いた会議も
ヴ・トゥロングさんは、何でも教師に従うように教わる画一的な学校教育のあり方や、権威的、資本主義的な価値観に疑問を持ち、仲間を集めて自分たちの学校を設立しました。この学校では学習者自身がいつ、どこで、何を学びたいかを重視し、自ら教師を探し、教えてもらうという教育方針を採用しています。

「私は18歳の時に学校から離れ、いろいろな人と会う活動を始めました。それまでの私は、都市部に住む人間であり、農家の人がお米をどのようにつくっているかをまったく知らなかったのです。これはショックでした。そして、ずいぶん偏った人間になったと感じたのです。
現代の画一的な学校教育は、消費者になるための教育です。学習者の立場には立っておらず、決して民主的なものではありません。教育は権力者から与えられ、押し付けられるものではありません。学習者に自らの教師を選ぶ自由があって初めて、真の教育があると考えています」

ヴ・トゥロングさん(Vu Truong,ベトナム)
ベトナムの VCIL Community のリーダー。エコバーシティ(持続可能な社会に向けた教育・学びの場づくり)の実践をはじめ、オルタナティブ教育の推進に取り組む。さらに、旅行と学びを組み合わせたラーニング・ジャーニー型プログラムを展開し、体験を通じて持続可能な暮らしや地域コミュニティのあり方を学ぶ機会を創出。近年は共同購入グループを立ち上げ、市民主体の連帯型経済の実践にも力を注いでいる。2026年5月には生活クラブの視察のため来日した。

VCIL Community のプログラム「ラーニングフェスティバル」での活動の様子。(VCIL CommunityのHPより)

ウィレンスワード夫妻は、農業や食べ物の分野において、消費者と生産者との心のこもった(マインドフルな)取引や持続可能な食のあり方をめざす「マインドフル・マーケット」を提唱しています。夫妻が2014年にタイのバンコクで開催した「第1回マインドフル・マーケット国際フォーラム」では、生活クラブ連合会も招聘され、加藤好一会長(当時)が「食べ物・農業・幸せ、そして新たな精神」というテーマで基調報告を行ないました。

「私たちが活動を始めたころ、生活クラブは先生のような存在でした。食のシステム変革において、生活クラブには60年にわたるサクセスストーリーがあります。小さな集団を、長い時間をかけてより大きな組織に育て、社会における重要な機関になれることを示してくれました。
世界経済は自由市場に基づいています。大企業に有利な規制があるなかで、小規模な農家を支える私たちの活動は、その流れとは相反するものですが、こうした向かい風を受けながらも、生活クラブが安定した体制を築いていることに対し尊敬の念を抱いています」

 
 
写真左から、ワラパ・ファン・ウィレンスワードさん(Wallapa van Willenswaard,タイ)
ハンス・ファン・ウィレンスワードさん(Hans van Willenswaard,タイ)
Innovation Network International 共同創設者。持続可能な社会と市民主体のイノベーションをテーマに、国際的なネットワークづくりを進めている。「マインドフル・マーケット」の提唱、実践を通じて、生産者と消費者を結ぶ倫理的で協働的な市場モデルの構築に取り組むとともに、チュラロンコン大学を拠点にライト・ライブリフッド・カレッジの活動にも参画。

2014年に開催された「第1回マインドフル・マーケット国際フォーラム」にて。

伊丹謙太郎教授は法政大学で連帯社会経済を専門とし、協同組合をはじめとした市民社会と協同のあり方を研究しています。2022年からは4年にわたり、社会的連帯経済について学ぶ公開講座を開催。また、同大学院ではグローバルで活躍する社会運動のリーダー育成にも力を入れています。
 
伊丹 謙太郎さん
法政大学連帯社会インスティテュート(協同組合プログラム)/大学院公共政策研究科教授。協同組合や社会的経済、公共政策を専門とし、市民社会と協同のあり方を研究。理論と実践を架橋しながら、持続可能で包摂的な社会づくりに向けた教育・研究に取り組んでいる。

「2025年度法制大学連帯経済インスティテュート公開講座」のフライヤー

次のプログラムとなるパネルディスカッションでは、伊丹教授が司会を担当。登壇者が互いに印象に残った活動について感想を語りあうなかで、伊丹教授が各コメントをまとめるといった流れで、意見交換が行なわれました。

ハンス・ファン・ウィレンスワードさんの「今の民主主義は、少数者の意思が十分に反映されていない。すべての人の尊厳を守ることが大事」という発言を受け、伊丹教授は、「民主主義は秩序を守るため、維持するためのものではなく、もっと豊かなもの。個人レベルで、“自分にとっての民主主義とは何か” を考えることは、今までのマインドセットを変化させてくれるような経験になる。民主主義とは人々の成長であり、主体性を回復させていくようなもの」とコメント。

また、ヴ・トゥロングさんがすすめるオルタナティブ教育の話題においても、伊丹教授が以下のように補足し、議論を深めました。
「消費者というものをその立場や枠の中だけで考えることはできない。生産者といろいろな形でコミュニケーションを図ることによって、主体的に社会に関わる消費者になりうるのではないか。また、協同組合のはしりの一つというのが、実は中世の大学だったといわれている。500~600年前に、若い人たちが大学を作ろうとした時と同じような感覚を持って、ヴ・トゥロングさんは新しい挑戦をされていると思う」

自分にできることは何か。一人ひとりが考え続けることが大切

会議の後、参加した人たちから以下のようなコメントが寄せられました。

「多様性が認められづらい社会は日本社会の問題のように思ってしまっていたと分かりました。無いものねだり的に他国のあり方や教育方法を羨むところもあった。でも、どこでも同じ問題があり、それに気づいた人たちが声を上げている。その魅力的な行動もヒントにはなるが、自分はどうするかが基本であることを改めて感じた」

「伊丹先生がまとめとして仰っていた「自分にとって民主主義とは」という問いについて。主体性を回復していくということが内包されているはずが、現在の秩序を維持するということになっていないかということも含めて、画一的な学校教育とは違う世界をよりよくする学びを、それぞれが求めていくことが大切なのだと改めて思いました」

会議のしめくくりとして、山本江理さん(生活クラブ連合会常務理事)がコメントしました。

「生活クラブでは60年間にわたり『真の豊かさとは何か』ということを学び、行動し続けてきました。学ぶということには、新しい知識や技術を個人で取得するということだけではなく、自分の考えを深め、多くの人と連帯して、人々の行動を変えていく力があると考えています。
今回の会議で、「学び」とは場所や資格に規定されるものではないとわかりました。そして、自分が必要とされる場やお互いが信頼できる場があれば、自然と学びあいや対話が生まれることもわかりました。
生活クラブは、オンラインミーティングを活用しながら、これからもアジア各国のみなさんとつながりあい、さまざまな「学び」をつくっていきます」
【2026年6月29日掲載】

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