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環境を育てる雑貨【フィトンαシリーズ、未晒し(みざら)木綿、他】

オーガニックコットンの糸で織られた未晒(みざら)し木綿(写真提供:生活アートクラブ)
 
生活アートクラブは、作り手と使い手をつなぎ、雑貨で社会課題を解決していくことを目指す、雑貨の問屋だ。全国各地のメーカー、生産者と協同して、3500品目もの生活雑貨を扱う。自然環境を考えてつくられたオリジナルの雑貨も多く、生活クラブとは約500品目で提携している。

透明な紙袋

生活アートクラブ代表取締役・富士村夏樹さん
 
生活アートクラブの代表取締役である富士村夏樹さんは、薄手のタオルハンカチのような布が入った透明な袋を手に、「何からできていると思いますか」と尋ねた。

タオルハンカチに見えたものは、食器洗い用の布だ。くま笹(ざさ)を漉(す)き込んだ和紙を裁断してより合わせた糸でパイル状に織られている。布が入っている袋の原料は、なんと木だという。一般的なポリプロピレン袋と変わらないような透明な素材だ。バイオプラスチックでもない。

実はこの袋、新しい技術でつくられたものではなく、100年以上前からある、セロハンだ。木をチップにして溶剤で溶かし、繊維を取り除いたものを化学処理してつくられている。庭土の中に埋めると半年くらいで分解されてなくなってしまうという。ポリプロピレン袋と比べると1枚5円ほど価格が高い。けれども使う企業が増えればもっと価格は下がるはずだ。少しでも脱プラスチックをアピールできればと生活アートクラブでは消費材の包材として使用している。
未晒し木綿とセロハンの袋に入った「ササウォッシュ・食器洗い用」。ささ和紙なのでマイクロプラスチックも出ない。吸油性もあり洗剤なしでも洗える
 

くま笹(ざさ)を和紙に漉(す)き込んだ糸。この糸で織られた布「ささ和紙Ⓡ」は、吸水性、抗菌性が高くソックスやアームカバーなどの製品がつくられている(提供写真)
このように、生活アートクラブで扱う製品には、一つ一つに素材へのこだわりがあり、つくられた背景がある。

「仕事を始めるときに、『環境に負荷をかけない』ではもう遅い、それを超えた活動をしようと思いました」と富士村さんは言う。目指したのは、製品を使うことによって、環境が育っていくような仕事だ。「森林の育成、土壌の再生、海洋・河川の浄化、この三つのテーマに合致した製品を世の中に出していこうというところからスタートしています」

例えば生活アートクラブでは、持続可能な森林をつくることを目的に、国産材を使った製品を多く扱う。古紙をリサイクルして再生紙にするよりも、国内の森林の間伐材を使うほうが森を育てることにつながるからだ。

間伐によって木を間引くことで、森林に空間ができ光が差し込む。木は健全に成長し、たくさんの二酸化炭素(CO2)を吸って酸素を吐き出す。間伐は、森林を健康にしCO2削減に貢献するが、戦後、安価な輸入木材の普及で間伐材の需要はなくなり、森林は手入れされないまま放置された。1997年の地球温暖化防止京都会議(COP3)で、日本はCO2削減の多くを森林による吸収で賄うと目標に掲げ、森林整備と国産材利用を推進することにしたが、間伐材の使い道を見いだすことができず、近年、多くはバイオマスチップとして燃やされている。

この状況を打開するには、間伐材の活用、普及が欠かせない。中でも生活アートクラブが力を入れるのは、青森県の下北半島、津軽半島に群生する「青森ひば」の活用だ。青森ひばには他の地域のヒバとは異なり、ヒノキチオールという成分が含まれ、高い抗菌効果がある。カビが生えにくく、シロアリの害が少ないため木が腐敗しにくいのが特徴だ。およそ900年前に建てられた国宝、中尊寺金色堂も青森ひばで建てられている。そうした特徴を生かし、まな板などのキッチン用品や、農薬を使わない防虫スプレー、アロマウォーターなど多くの製品の開発につなげている。
青森ひばの木製品を製造する岩手県宮古市にある木材メーカー。原木の製材から加工までを一貫して担う(提供写真)
 
日光桧(ひのき)の丸太。青森ひば以外にも国内の間伐材をさまざまな製品に活用している(提供写真)

竹からつくる紙

鹿児島県は日本最大の竹林面積を持ち、タケノコの産地であるが、国産タケノコの需要の低減と高齢化による廃業により、放置竹林の課題を抱えている。

竹は成長が早く、成長期は一晩で70センチメートル伸びることもある。地下茎が横に伸びていき、どんどん芽が生えてくる。成竹は20メートルにもなり、密集して上空を覆い光合成を遮る。枯れると斜面を滑り落ちていくこともあり危険だ。竹は根を深く張らないため、大雨が降ると地面が地下茎ごと剥がれてしまい、土砂災害が起こる原因にもなっている。

対策として、山林の所有者に農薬(除草剤)を無償配布する自治体もある。しかしこれでは竹は枯れても虫もいなくなり、生物多様性は奪われる。農薬の成分は川から海まで流れ、水中生物や漁業への影響も出る。

「山を手入れすることは、山のためだけでなく、海のためにもなるのです」と富士村さんは言う。

放置竹林の課題を少しでも解決しようと、生活アートクラブが手掛けるのは鹿児島県産の竹でつくる「竹紙」だ。年間に生産される竹紙は1000トンで、この内600トンを自社で発行する雑貨のカタログに使用する。カタログに使うには高価だが、誰も使わなければ、課題は何も解決しない。原料竹の出荷は地域の貴重な収入にもなっている。
 

竹紙でつくられた生活アートクラブのカタログ

生活アートクラブは、環境を育てるという思いを共有する各地の生協との提携も多い。そうした生協に配布するカタログには、竹紙も使用するが、それ以外にも力を注ぐ。掲載する製品には、吸収できるCO2の量を示すなど、読み物としてまず組合員に手に取ってもらい、脱炭素、脱プラスチックへのメッセージや、製品の背景が伝わる工夫を凝らしている。

「ただ製品を右から左に流すだけの問屋ではなくて、メーカーの思いをどう伝えるのかということも私たちの役割です。問屋でありながら制作会社でもあるという立ち位置だからこそできることも多いと自負しています。利益を追求するだけでなく、社会の課題をどのように克服していくのか、生活クラブをはじめとした各地の生協とともに、考えていきたい」

価格高騰など厳しい社会情勢が続くが、富士村さんは運動と事業の両立は可能だと自信をのぞかせる。

若い人たちへの期待

富士村さんと長年親交があり、製品の共同開発も手掛けたのが、11年にわたって本紙にコラムを連載、昨年亡くなった料理家の枝元なほみさんだ。一緒に講演することもあったという。「オーガニックコットンでさらしをつくってほしい」と依頼されたことから、「未晒(みざら)し木綿」という製品を開発した。「未晒し」とは、薬品で漂白や染色をしていないという意味で、真っ白ではなく、温かみのある生成りの色合いだ。食品や乳児にも安心して使えるものをという思いからつくられた。

例えばおにぎりはラップに包むと通気性がなくご飯が水っぽくなってしまうが、未晒し木綿で包むことで適度な水分になり、おひつに入れた冷やご飯のようなおいしさが保たれる。出汁(だし)や果汁をこすのにも最適だ。

2メートルあるので、用途に合わせた大きさに切って使えるのも実用的だ。この未晒し木綿を富士村さんが若い大学生たちに紹介したところ、「かっこいい」「使いたい」という声が上がったという。小さめに切るとティッシュやラップの代わりになり、しかも洗えばまた使える。この使い捨てないところが「かっこいい」のだ。

「若い人たちは環境問題にとても関心が高いです。SDGsについて学校で教わっていることもありますが、今の環境問題が将来自分たちの身に降りかかってくるという危機感があります。この度の中東情勢の悪化によって、石油製品を使い捨てていくことへの意識が変わった人もいるかもしれませんが、危機が起きてから対処するのではなく、その前から考え、行動することが必要ではないでしょうか」と富士村さんは話す。

生活アートクラブの数々の雑貨には、日々の暮らしを豊かにするということだけでなく、将来起こりうる危機を未然に防ごうという思いが込められている。

食べ物の産地や原材料を気にして選ぶ人は多いが、日常に使う雑貨の背景を知って選ぶ人はまだそう多くはない。雑貨も「わかって買う」ことで私たちも社会課題の解決に参加し、未来の環境をつくっていくことができる。
カエデ、サクラ、ホオノキなどの5種類ほどの木でつくられた「もくロック」。木によって収縮率が異なるため、それぞれ部屋を分けて乾燥させてからブロックに加工している。素材のままの色が美しい

こんなところも脱プラで。パルプ100%の紙製クリアファイル
撮影/永野佳世
文/本紙・佐々木和子
 
『生活と自治』2026年7月号「連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2026年7月24日掲載】
 

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