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生協の食材宅配【生活クラブ】
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豊かな緑を次世代へつなぐ 伝統の循環型農業継承のために

埼玉県所沢市と狭山市にまたがる約1万5000平方メートルの、とある雑木林。「さんとめどんぐりヤマ」と名付けられたこの場所で、生活クラブ埼玉は、1990年代から環境保全の活動を続けてきた。ただ保全するだけでなく、さまざまなイベントを開催し、子どもたちが自然に触れ合う機会もつくっている。こうした活動が、生き物を慈しむ心を育て、次の世代が地域の自然を守る行動につながっていく。
 

Ⓒ株式会社コア

ダイオキシン報道の衝撃

埼玉県南西部の4市1町(川越市、所沢市、狭山市、ふじみの市、三芳町)一帯に広がる三富(さんとめ)地域は、火山灰が積もったやせた土壌に加え、川が少なく水も乏しいため、農業には不利な土地柄だった。だが、江戸時代中期(17世紀末~18世紀初頭)、農家の屋敷、耕地、雑木林が並ぶ短冊状に土地を区画する開拓が進むと(イスト参照)、雑木林の落ち葉を堆肥化して、肥料にする循環型農業が発展した。三富地域独自のこの農法は、現代にまで受け継がれ、現在は「武蔵野の落ち葉堆肥農法」として、日本農業遺産と世界農業遺産に認定されている。

生活クラブ埼玉が三富地域の保全活動をするようになったのは、テレビ報道がきっかけだった。

1999年、テレビ朝日の報道番組『ニュースステーション』が、所沢産の農産物、とりわけホウレン草などの葉物野菜から毒性の強いダイオキシンが高濃度で検出されたと報じた。後に、特に値が高かったのは煎茶で、摂取時のリスク評価とは異なる指標によるものであると明らかになったが、広がった風評は収まらず、所沢産のホウレン草の不買運動が起きて、価格は暴落し、売り場から消えた。

当時、三富地域の耕作放棄地には、さまざまな産業廃棄物処理業者が進出し、一部では産業廃棄物の不適切な焼却がなされていた。その煙がダイオキシン汚染の原因のひとつとされたのである。

だが、ダイオキシン汚染は、所沢に限らず、ごみ焼却や過去の農薬を背景に全国で問題になっており、事実、各地の生活クラブは、ダイオキシンや環境ホルモン(※1)の問題に取り組んでいた。そのため、生活クラブ埼玉でも、報道を受けて地場野菜の受け取り拒否なども起きた。一方で、ホウレン草農家は環境汚染の被害者でもある。そこで、生活クラブ埼玉・所沢ブロックの組合員たちは、地元農家を支援するための行動を起こす。そのメンバーの一人だったのが、菊一敦子さんだ。
「生活クラブ埼玉として、ホウレン草の農家の力になればと、カンパ金を集めましたが、地元の農協から受け取れないと断られてしまいました。せっかく集めたお金の使い道がなくなってしまったのです」

考えたすえ、菊一さんたちは、集めたお金で定期的に落ち葉掃きをして、それを堆肥化し、地域の農家に使ってもらうなどの活動を始めた。

「雑木林や畑を保全すれば、産廃業者の進出を防げますし、落ち葉の堆肥化をすれば、循環農法の継承にもつながると考えたんですよね。実際に活動を始めてみると、どんどん雑木林がきれいになっていくとわかり、とてもやりがいを感じました」

※1:環境ホルモンとは、プラスチック製品や洗剤、化学薬品、農薬などに含まれる物質で、体内のホルモンバランスを乱し、成長や生殖機能に悪影響を及ぼす化学物質の総称。ダイオキシンもその一種とされることがある
 
生活クラブ埼玉・副理事長の相澤順子さん(左)と、三富の保全活動の立ち上げから携わってきた組合員の菊一敦子さん

絶滅危惧種に会える森

三富の保全活動は、落ち葉掃きと堆肥化にとどまらない。取材当日に開催されたのは、毎年恒例の「春の生き物調査」だ。親子で集まった組合員たちは、どんな植物が生えているか、調べて記録していく。「どんぐりヤマ」は、キンラン、ギンラン、オオバノトンボソウなどの絶滅危惧種の宝庫でもあるので、見つけたら、踏まれないよう目印をつける。これも大切な保全活動のひとつだ。「『絶滅危惧種』は、動物だけじゃなくて、植物にもあるとわかった」と子どもたち。植物だけでなく、たくさんの昆虫に触れる機会にもなった。

「普段、ゲームばかりやっている子どもがこんなに目を輝かせるなんて、と驚かれるお母さんもいましたよ」と菊一さんは笑う。

一方、生活クラブ埼玉の副理事長、相澤順子さんは、こう語る。
「三富周辺の組合員に限らず、生活クラブ埼玉全体として、より多くの組合員が関われるように、若い組合員も含めて伝えていかなければなりません」

活動を広く認知してもらうため、生活クラブ埼玉は、活動報告として年4回の「さんとめ通信」を発行し、ウェブでも公開している。
「この活動を『遊び仕事』と表現したことがあって、私はとても気に入っているんです。理屈はいいから、森へ行こうと、みんなに呼びかけたいですね」と菊一さん。この保全活動が20年以上続いてきた背景には、こうした肩ひじ張らずに森を楽しむ姿勢がある。
「さんとめどんぐりヤマ」は、美しい緑が保全されている一方で、近年は、カシノナガキクイムシという甲虫が運ぶナラ菌が伝染してナラ、クヌギ、カシなどの広葉樹が枯れてしまう「ナラ枯れ」が問題となっている
 
絶滅危惧種を見つけると、踏まれないようワイヤーを張り、ネームプレートを付けて保全する
撮影・大山克明
文/本紙・山本 塁


★『生活と自治』2026年7月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2026年7月31日掲載】
 

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