注視・熟考・検証 「高市政治の素顔」
―アイドル論的視座からの思索― (中)
中森ゼミ特別企画 トークセッションpart2(中)
アイドル研究家 中森明夫さん
朝日新聞編集委員 高橋純子さん
アイドル研究家 中森明夫さん
朝日新聞編集委員 高橋純子さん

前回は高市総理が自らの「天性」を存分に使い、政治家として「男性社会で生き残り、のし上がってきた力」について聞きました。今回はこれからの社会を大きく変質させる恐れが高い法整備についてのセッションです。(取材2026年6月5日)
「オジさんキラー」ねぎらう「野党代表」?
中森 先日、たまたま大竹まことさんのラジオ番組を聞いていたら、ゲストに上野千鶴子さんが呼ばれて「アグネス論争」について語っていました。当時、歌手のアグネスチャンさんが「子連れ出勤」していることについて、著名人や有識者から意見が出されて論争と呼ばれるような事態に発展したのです。
1987年、男女雇用機会均等法が施行されて1年後のことです。子連れ出勤が社会的な議論を呼び、良妻賢母論のススメ的な意見が根強い時代。田原総一郎さんが女性も男性と均質に働くための雇用機会均等法をめぐって「そんなことやったら女が素っ裸で男湯に入ってくるようなもんだ」と評していたと上野さんは呆れていた。そんな環境の政治の世界へ飛び込み、あえてそうした男社会状況を利用して高市総理はのし上がってきたのです。
いわば「オジさんキラー」とでもいうのでしょうか。その天性の力を今も全開にしている。同時にハツラツとした女性としてのイメージも駆使する。確かに女性議員は増えたには増えましたが、国会はまだまだ男ばかりです。とすれば女性で「いること」だけでも強烈なパワーですからね。
高橋 確かにそう。高市さんを見ていると「元気が出る」「あの笑顔を見ると元気が出る」という学生も確かに少なくなくありません。
中森 逆に石破茂元総理や中道の野田佳彦議員に斉藤鉄夫議員はいかにも暗い感じで、正直、見ているとドヨーンとした気分になりますよね。
高橋 絵に描いたような「オジさん」ですから、元気は出ないかもですね。
中森 見逃され、忘れられがちなことですが、自民党からの政権を奪取した民主党政権がいかなる終わり方をしたか? 当時の野田佳彦代表の拙速な決断の責任は重い。その人をもう一度代表に指名するなんて! 立憲民主党の議員たちは健忘症でしょうか?
今度は公明党と中道連合を立ち上げ、小川淳也議員が代表になりましたが、党首討論をテレビで見てがっかりしました。最初に高市総理の外遊を労い「大変でしたね」ですよ。時間がもったいない、すぐにずばりと斬り込んでくれよと。サナエトークンや中傷動画の件も突っ込まないし。
高橋 小川淳也代表のあの笑顔はどうですか?
中森 ルックスはいいんですよ。明らかにね。アイドル的な素養はあるでしょう。
高橋 でもなんでダメなんですか?
中森 内容が希薄じゃないですか。喋り方だけさわやかっぽくて、スカスカで。とうとう皇室典範改正法案にも賛成してしまった。一連の男系天皇についての潮流はひどい。憲法第9条だけでなく明らかに(象徴天皇制を規定した)1条から8条までも問題がはらんでいるでしょう。しかし、即座に天皇制廃止というのも現実的ではない。まず、ともかく現在の皇族に対する人権抑圧はひどい。皇室に入って「妃」と呼ばれるようになった方たちへのハラスメント(誹謗中傷)の酷さは深刻です。何しろ、ともかく男子を産むことだけを強要されている。こんなの国家的な集団セクシャルハラスメントですよ。
にもかかわらず、男系にすべし、宮家を復活すべしと、民意を無視して政治が暴走しているのも絶望的で。皇族だって人間ですよ。彼らの心や思いはどうでもいいんでしょうか? むろん、この種の問題をドラスティック(急激)に変化させることは難しい。むしろ憲法第一条の理念に立ち返って「主権の存する日本国民の総意に基づく」ことを、政治家たちはしっかりと確認して守ってほしいですね。
1987年、男女雇用機会均等法が施行されて1年後のことです。子連れ出勤が社会的な議論を呼び、良妻賢母論のススメ的な意見が根強い時代。田原総一郎さんが女性も男性と均質に働くための雇用機会均等法をめぐって「そんなことやったら女が素っ裸で男湯に入ってくるようなもんだ」と評していたと上野さんは呆れていた。そんな環境の政治の世界へ飛び込み、あえてそうした男社会状況を利用して高市総理はのし上がってきたのです。
いわば「オジさんキラー」とでもいうのでしょうか。その天性の力を今も全開にしている。同時にハツラツとした女性としてのイメージも駆使する。確かに女性議員は増えたには増えましたが、国会はまだまだ男ばかりです。とすれば女性で「いること」だけでも強烈なパワーですからね。
高橋 確かにそう。高市さんを見ていると「元気が出る」「あの笑顔を見ると元気が出る」という学生も確かに少なくなくありません。
中森 逆に石破茂元総理や中道の野田佳彦議員に斉藤鉄夫議員はいかにも暗い感じで、正直、見ているとドヨーンとした気分になりますよね。
高橋 絵に描いたような「オジさん」ですから、元気は出ないかもですね。
中森 見逃され、忘れられがちなことですが、自民党からの政権を奪取した民主党政権がいかなる終わり方をしたか? 当時の野田佳彦代表の拙速な決断の責任は重い。その人をもう一度代表に指名するなんて! 立憲民主党の議員たちは健忘症でしょうか?
今度は公明党と中道連合を立ち上げ、小川淳也議員が代表になりましたが、党首討論をテレビで見てがっかりしました。最初に高市総理の外遊を労い「大変でしたね」ですよ。時間がもったいない、すぐにずばりと斬り込んでくれよと。サナエトークンや中傷動画の件も突っ込まないし。
高橋 小川淳也代表のあの笑顔はどうですか?
中森 ルックスはいいんですよ。明らかにね。アイドル的な素養はあるでしょう。
高橋 でもなんでダメなんですか?
中森 内容が希薄じゃないですか。喋り方だけさわやかっぽくて、スカスカで。とうとう皇室典範改正法案にも賛成してしまった。一連の男系天皇についての潮流はひどい。憲法第9条だけでなく明らかに(象徴天皇制を規定した)1条から8条までも問題がはらんでいるでしょう。しかし、即座に天皇制廃止というのも現実的ではない。まず、ともかく現在の皇族に対する人権抑圧はひどい。皇室に入って「妃」と呼ばれるようになった方たちへのハラスメント(誹謗中傷)の酷さは深刻です。何しろ、ともかく男子を産むことだけを強要されている。こんなの国家的な集団セクシャルハラスメントですよ。
にもかかわらず、男系にすべし、宮家を復活すべしと、民意を無視して政治が暴走しているのも絶望的で。皇族だって人間ですよ。彼らの心や思いはどうでもいいんでしょうか? むろん、この種の問題をドラスティック(急激)に変化させることは難しい。むしろ憲法第一条の理念に立ち返って「主権の存する日本国民の総意に基づく」ことを、政治家たちはしっかりと確認して守ってほしいですね。
かつての「リベラル」いまは「テンプレ」路線

高橋 国民の「総意」というなら、性急な法整備などできないはず。それに主権者たる国民の暮らしの安寧が大きく揺らいでいるときに、その解決よりも皇室典範改正が最優先というのは納得できません。男系にご執心の時代錯誤も度し難いですが、多くの国民の関心は皇室典範ではなく、生活と暮らしの向きがどうなるかにあると思います。
――高市総理は126代続いた世界に比類の「万世一系」と崇敬したかと思えば、経済安全保障と称して自律型生成AI(人工知能)技術や植物工場、核融合炉といったイノベーション(技術革新)における科学技術の創造に傾倒して突っ走ってみたりしています。どこかチクハグな気がします。
中森 昔の彼女の発言を見ると伝統や習慣にとらわれるタイプではなく、かなりリベラルだったことがわかります。今は自民党のタカ派の立場にいるからテンプレ(既定路線的な)発言をしているだけでしょう。芯からそんなことを思っていないですよ。
「選挙制度」も「恣意的にいじっちゃおう」
――いったい本音はどこにあるんでしょうね。
高橋 本音というか、政治家としての「思想」がないのでは、長いものにはすぐ巻かれ、良くも悪くも、上手に誰かの「色」に染まることができる。そんな風に私は見ています。
中森 それは高市総理に限ったことではなく、現在の自民党議員のなかの「ある世代」に共通したことだと思う。たとえばコバホーク(小林鷹之議員)は東大法学部卒、財務省出身の超エリートのキャリアですが「皇位の男系継承は2600年以上に亘って先人たちが守り抜いてきた皇室の伝統」と非科学的な妄言を堂々と発している。小泉進次郎議員も最初の総裁選で主張した「夫婦別姓」が大ブーイング(不評)だったからあえなく引っ込めました。
若い世代の多くが「別姓支持」なのに、自民党の改正案はまるで違う。ちくま新書の『新しいリベラル』が話題になりましたね。そうした新しいリベラル世代で自民党に投票している若い人、あるいは参政党を支持している若者たちは実は排外主義ではない。彼らは参政党かれいわ新選組かと決めあぐねていたりもして。夫婦別姓問題に関しては大多数が圧倒的にリベラルです。ただ自民党の中枢がそうじゃないだけで。
高橋 そうですね。「保守」を自称しているけれど何の思想もない。いったい何を守りたいんですか?と聞きたいです。ただ、それにしても与党としっかり対峙せず、すぐに「妥協する」中道のセンスの無さも気になります。
高橋 本音というか、政治家としての「思想」がないのでは、長いものにはすぐ巻かれ、良くも悪くも、上手に誰かの「色」に染まることができる。そんな風に私は見ています。
中森 それは高市総理に限ったことではなく、現在の自民党議員のなかの「ある世代」に共通したことだと思う。たとえばコバホーク(小林鷹之議員)は東大法学部卒、財務省出身の超エリートのキャリアですが「皇位の男系継承は2600年以上に亘って先人たちが守り抜いてきた皇室の伝統」と非科学的な妄言を堂々と発している。小泉進次郎議員も最初の総裁選で主張した「夫婦別姓」が大ブーイング(不評)だったからあえなく引っ込めました。
若い世代の多くが「別姓支持」なのに、自民党の改正案はまるで違う。ちくま新書の『新しいリベラル』が話題になりましたね。そうした新しいリベラル世代で自民党に投票している若い人、あるいは参政党を支持している若者たちは実は排外主義ではない。彼らは参政党かれいわ新選組かと決めあぐねていたりもして。夫婦別姓問題に関しては大多数が圧倒的にリベラルです。ただ自民党の中枢がそうじゃないだけで。
高橋 そうですね。「保守」を自称しているけれど何の思想もない。いったい何を守りたいんですか?と聞きたいです。ただ、それにしても与党としっかり対峙せず、すぐに「妥協する」中道のセンスの無さも気になります。

中森 今の政治において何が一番の問題かといえば、選択肢が無いことですね。この日本で大問題なのはアーキテクチャー(基本構造の構想力)の脆弱性です。その意味で僕がいちばん危惧を感じているのは、比例を45議席減らす「議員定数削減法案」。これが国会を通ったら明らかに少数政党は壊滅です。どう思われますか。
高橋 もちろん、賛成するわけにはいきません。現行の小選挙区比例代表並立制は問題を多く抱えており、見直しを行うこと事態は悪くないと思います。ただし、自民党と日本維新の会が合意しただけで「議論がまとまらなければ、自動的に比例区のみ45議席削減する」法案なんてありえません。手続き論としても暴挙というしかない。「どうして比例だけなのか」「なぜ45なのか」。そんな当たり前の疑問にもまったく答えられていない。これまた「思想」がないんですよ。有権者は本当に怒った方がいい。高市さんは高支持率に乗っかって、維新との連立維持のため、ひいては「自分が総理であり続けるため」に民主主義の根幹の選挙制度まで恣意的にいじろうとしている。そんなことは決して許してはいけません。
中森 残念ながらこの国はすぐには良くならない。長い時間をかけて再生させていくしかない。まずは、選挙制度をはじめとするこの国の基本構造を成す制度をどう変えていくか、そこからですね。それにしてもいきなり国会議員を1割減らすとは、まさに暴挙以外のなにものでもないでしょう。
高橋 まったく同感です。比例区削減は中小政党に不利で、多様な民意を国政に届けるパイプを細らせます。民主主義をまともに考えていたことがある人なら、こんな暴挙に出ることは決してないはずです。
たかはし・じゅんこ
1971年福岡県生まれ。1993年に朝日新聞入社。鹿児島支局、西部本社社会部、月刊「論座」編集部(休刊)、オピニオン編集部、論説委員、政治部次長を経て編集委員。
なかもり・あきお
作家・アイドル評論家。三重県生まれ。さまざまなメディアに執筆、出演。「おたく」という語の生みの親。『東京トンガリキッズ』『アイドルにっぽん』『午前32時の能年玲奈』『寂しさの力』『青い秋』など著書多数。小説『アナーキー・イン・ザ・JP』で三島由紀夫賞候補。近著に『推す力 人生をかけたアイドル論』(集英社新書)がある。
撮影・越智貴雄 取材・構成 生活クラブ連合会 山田衛
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