「容器包装リサイクル法」の次の改正に向けた課題を議論!
容器包装リサイクル法(以下、容リ法)が改正されて2年。この間、3Rはどのくらい進み、どの程度のCO2を減らすことができたのでしょうか? 12月3日に「容器包装の3Rを進める全国ネットワーク(以下、3R全国ネット)」結成5周年を記念したシンポジウムが東京都内で開催され、生活クラブの組合員を含む多くの消費者が改正容リ法後の課題について話しあいました。(2008年12月19日掲載)
容器包装はメッセージ
3R全国ネットは容器包装の3R(リサイクル、リユース、リデュース)を進めるために全国でゴミ減量に取り組む団体や個人のネットワークで、生活クラブ連合会や全国の単協、 びん再使用ネットワークも参加しています。
基調講演は京都大学教授で廃棄物学会副会長の酒井伸一さんが「容器包装プラスチックリサイクルのあり方」と題し、京都市内におけるレジ袋削減の取り組みを紹介するほか、レジ袋に含まれる鉛や廃プラスチック類から検出される残留性化学物質の危険性について警鐘を鳴らしました。続いて登壇したのは東京都港区の武井雅昭区長。23区では包装容器プラスチックを可燃ごみとして処理、あるいは一部しか資源回収しない自治体が多いですが、港区では2008年10月より容器包装を含む全てのプラスチックの資源回収に取り組んでいます。今年10月の不燃ゴミの量は190トンで、前年度同月の1150トンから約85%減少したと成果を発表しました。
これらの報告を受け、3R全国ネット事務局の山本義美さんが、市民の立場から見た改正容リ法の評価を行い、「容器包装は表示も含めてメッセージであると私たちは考えています。容器の中身である食品や飲料のCO2排出量のほかに、容器を回収・リサイクルするためのコストを区別して、環境メッセージとして容器に表示してほしい」と話しました。
国に先駆けリユースを進めてきた生活クラブ
生活クラブではこれまで、リサイクルよりリユースやリデュースを重視した取り組みを行ってきました。容リ法が制定される2年前、1994年には グリーンシステムをつくり、調味料のびんをリユースする活動を始めました。同時に生活クラブを始めとする全国の4生協が「びん再使用ネットワーク」を立ち上げ、びんの容量等の規格を統一し、「R」のマークがついたリターナブルびんを、生協の枠を超えたおおぜいの消費者で回す仕組みをつくりました(2001年には6生協団体が加盟)。
容リ法は家庭ゴミの約6割を占めているびん、缶、ペットボトル、プラスチックなどの容器包装ゴミを減らそうと、1995年に制定された法律です。ところが容リ法の制定以降、リユースよりもリサイクルの方が重視されるようになり、びんを含む容器包装は1回使ったら回収して再資源化するという「ワンウェイ化(1回きりの使用)」の流れが加速しました。その結果、「ペットボトルはリサイクルできるから」と、リサイクル率が高まってもゴミの総量は減らないという状況に。
びんやペットボトルをリサイクルするためには容器を収集し、洗って砕き、繊維やガラスの原料とすることが必要です。容リ法では最も費用のかかる収集を担うのは地方自治体と定めています。つまり、税金を使ってリサイクルするわけです。一方、リユースに関してはメーカーが費用を負担するため容器包装のコストが高くなり、販売価格に上乗せされます。リサイクルよりリユースの方が割高なため、一般市場からはリユースびんが急速に姿を消し、ビールびんや一升びん、生協のRびんといった、一部のびんしかリユースされない状況に陥ってしまったのです。
これに対し、2003年に3R全国ネットが立ち上がり、「メーカーは容器包装のリサイクル費用を商品価格に含めて負担し、製品の廃棄まで責任を持つべき」と呼びかけ、リサイクル費用を税金で処理するのは止めるよう100万人の署名を集め、国会に提案しました。これを受け、2006年の容リ法改正時にはレジ袋の有料化などが取り入れられました。しかし、「リユース」の前進のための改正はなく、課題は残されたままです。今回のシンポジウムは、次の改正に向けての課題を考えるために開催されたのです。
びんを使い回す全国的な仕組みが必要
午後は、3つの分科会に分かれてパネルディスカッションが行われました。第1分科会は「どこまで減らせた? レジ袋」。全国の自治体で広がるレジ袋の有料化を受け、事業者と行政、そして消費者が連携して市民の意識を変えることが必要との意見が出されました。第2分科会は「ペットボトルはこのままでいいのか?」。廃ペットボトルが中国等に輸出され、国内循環が危機に瀕している状況と、反対に10月より中国輸出が前面ストップして、廃ペットボトルが行き場をなくしているなど、容リ法が機能していないとの厳しい意見が出されました。
第3分科会は「がんばれ! リユース」。生協ではRびんの使用でおなじみのリユースですが、一般市場での認知度はまだまだ追いついていません。いかにリユースを広げていくか、大学やNGO、NPO、事業者、行政が、それぞれの立場から活動報告を行いました。
千葉大学は今年の大学祭で、若者向けのオシャレで軽いリユースびん「 Rドロップス」のテスト販売を行いました。300mlの軽くて携帯しやすいRびんにりんごジュースを詰め販売したところ、回収率は89.3%に上ったといいます。ただ、千葉大の学生のほとんどが「リユース」「Rびん」を知らず、今後いかに啓蒙活動をしていくかが課題として挙げられました。
ガラスびんリサイクル促進協議会事務局長の木野正則さんは、2009年2月にスタートするインターネット上の「リターナブルびんポータルサイト」についてアピール。酒造やビール、清涼飲料水メーカーなどリユースびんを使用している事業者の情報や、リユースできるびんの種類、製造から廃棄までのCO2を示したLCA(ライフサイクルアセスメント)のデータ集などが網羅される予定です。木野さんは、「ポータルサイトがリユースについての情報発信とデータベースの場になることで、リユースへの理解が広まるはず」と意気込みを語りました。
最後に、びん再使用ネットワーク事務局の山本さんが、2008年の秋に行われた「くり返し使うびん応援コンテスト」の結果を発表しました。大賞を受賞したポスターのコピーは「100個つくるか、100回使うか」。「このメッセージに込められた意味こそが、リユースの大切さを表している」と話しました)。
分科会の参加者からは、「一般のスーパーなどでびん製品を買う場合、どれがリユースできるものなのかまったくわからない。生協の加入者以外の人にもリターナブルびんを広めていくには、全国統一されたマークと、全国的にびんを使い回す仕組みが必要なのではないか」という声が上がりました。
シンポジウムでは活発な意見交換がなされ、大盛況のうちに幕を閉じました。びん再使用ネットワーク代表幹事で3R全国ネット事務局次長の中村秀次(生活クラブ連合会)は、「リユース社会を復活させるには、回収費用のメーカー負担といった社会的制度と、Rびんのように使い回せるリユースびんが全国で流通する基盤が整っていること、両方が必要です。消費者がリユースに取り組む事業者を応援することが事業者の意識を変え、流通が変わります」と話しています。