大盛況の「農業ボランティア説明会」
(2008年5月19日掲載)
54人が“就農希望” 当日成約が10人も
収穫の喜びや苦労を生産者と共有してみませんか――。 こうした呼びかけに応え、41人の“就農希望者”が参加したのは、今年3月22日に開かれた「農業ボランティア募集説明会」です。
生活クラブ生協連合会(以下、連合会)では2007年4月に「生産構造への参画プロジェクト準備会」を設置。同年10月からは正式に「生産への労働参画プロジェクト」がスタートし、コメや野菜の共同購入を通して提携関係にある生産者と、「農」の仕事にかかわっていく人材を広く求めてきました。
今回の説明会には3つの生産者(2団体1社)が参加。無農薬・減農薬での野菜づくり、有機肥料による土づくりを進めてきた生産者からなる「西日本ファーマーズユニオン」は、愛知県知多半島の加工用トマト農家や愛媛県西予市の柑橘農家をはじめ、奈良県、島根県、福岡県の農家での「研修生受け入れ」を提案しました。西日本ファーマーズユニオンでは、農業を志す人を研修生として位置づけ、定員や待遇については産地ごとに独自の条件を定めています。
町ぐるみで減農薬・減化学肥料のコメづくりをつづけ、穀物自給率の向上を目指した「飼料用米」の作付面積も広げている山形県遊佐町からはNPO法人「鳥海自然ネットワーク」が参加。無農薬でコメを栽培している水田の草取りや庄内柿の摘果・収穫、森づくりなどの仕事ができる人を募りました。
生活クラブの「国産はちみつ」の生産者である(株)スリーエイトは、長野県の安曇野で採蜜に携わる人を募集しました。期間中の連続4日間、蜂の巣箱を移動し、蜂蜜の入った一斗缶をトラックに積み込むなどの重労働を担えることが条件。このため申し込みは「男性のみ」ということになっています。
「説明会の当日に10人が成約。8人が遊佐町、2人が安曇野で農業体験をすることが決まっています。その後も2人から問い合わせがあり、うち1人の18歳の男性が3月24日から西日本ファーマーズユニオン四国(愛媛県西予市)での研修に入りました。もう1人は長期就農希望ということもあり、産地と調整を続けています」
連合会の担当事務局(開発部・農産課)は、広報と地域での地道な呼びかけが好結果に結びついたと考えています。連合会では昨年6月30日にも「夏だ、耕せ! われらの出番だ~農業体験説明会」を開催。西日本ファーマーズユニオンとNPO法人の鳥海自然ネットワークが受け入れ先となりましたが、“就農希望者”は6人。
「それが一気に41人です。当日、急に来られなくなった人を含めると54人もの希望者を掘り起こせたことになります。ご夫婦が4組、親子2組の参加もあり、若い世代が目立っていたのも特徴的です」(連合会農産課)
農業体験レポートも
今回の説明会を契機に、西日本ファーマーズユニオン四国で3月24日から5日間の研修を終えた埼玉県の男性(18歳)は、農業体験レポートを寄せています。その一部を紹介しましょう。
『大学受験をやり直そうと決めて、気分転換のつもりで行きました。研修センターには様々な若い人が住んでいます。それぞれがはっきりとした目標を持って、農業を学んでいました。特に、ベトナムからの留学生は難しいと言いながら夜遅くまで日本語を勉強し、帰国したら農家になるという目標のために頑張っています。
大半の畑が急斜面で、登るのは大変でしたが、みかん畑から見える眺めは最高でした。海には漁船と養殖の筏(いかだ)が見え、空を見上げるとあちこちに鳶(とび)が飛び回り、無数の鳥の鳴き声に囲まれているととても癒され、気持ちの良い時間を過ごすことができました。夢中になって作業をすることで普段の生活の中での不安や迷い、悩みなどが忘れられ、大自然の中で食べた重箱の弁当や昼寝も忘れられない体験です。
消費者から生産者へ移ったことで学んだことが沢山ありました。農薬に頼るのは簡単ですが、頼らずに栽培するのはどれほど大変かということ。せっかく農薬を使わずに栽培しても、気候によっては不作になってしまうということなど、生産者の抱える問題を知り、私にとって、何気なく普段食べている物についての見方が変わる機会となったのです。このような素晴らしい機会をありがとうございました』
「生産への労働参画プロジェクト」最終答申も
こうした提携産地との人的交流を事業化し、未来の「食」を支える人材を発掘していこうとする連合会の「生産への労働参画プロジェクト」では、08年5月に最終答申案をまとめました。内容は、これまでの生活クラブの生産参画への取組みや「いま、なぜ生産への労働参画なのか」、今後の取り組みの方向性などを提案しています。5月の連合理事会で決定される予定です。