協同組合の横断的な連帯で被災地の復興を(農業協同組合新聞)
2011年04月22日:農業協同組合新聞
生活クラブ事業連合生協連は、4月21日、東京で2010年度活動報告と2011年度活動方針などを討議する「2011年政策討論集会」を開催。すでにまとめられ単協などで討議されている「活動報告」「活動方針」に加えて、東日本大震災と原発事故に対する生活クラブとしての基本的な考え方と「東日本大震災対応方針」をこの日提案した。
◆共同購入に結集することで生産者に勇気を
生活クラブの基本的な考え方について、理事会の決定ではないとしつつも加藤好一会長が「東日本大震災と福島第一原発事故後の基本的な問題意識」として概略次の4点について提案を行った。
第1点は、大震災と原発事故で「非常事態宣言」状態となり、通常とは異なるイレギュラーな対応を強いられているが、中計の基本方針を堅持し、これを大震災後の状況に対する対応につなげていく。
緊急支援カンパでは多くの善意が集まったが、被災地の「復興」は長期化するので継続的で持続的な取組みが必要だ。そうであれば生活クラブの「主要品目」(牛乳・米・鶏卵・豚肉・牛肉・鶏肉・青果物・水産物)が牽引する共同購入を維持し、「より利用する力を結集する」ことが「生産者をもっとも勇気づけることであると確信」し、「組織的な共感」をつくることなどによる「なによりも被災地の『復興』に組織を挙げて全力で努力」していくことをあげた。
第2点は、大震災発生直後から九州や西日本で組織展開しているグリーンコープ連合会の迅速な対応に助けられた経験を踏まえ、同連合会との相互の緊急時対応力強化に努めること。
原発事故が「レベル7(深刻な事故)」を超えてしまうかもしれない「あってはならない可能性を想定した緊急時対応についてシミュレーションし、共同購入を維持するための対応力を強化」など、「『非常事態宣言』下にあってリスク・シミュレーションを強化」する。
◆被災地復興は農業・漁業の再興から
第3点は、「国際協同組合年のテーマは東日本大震災からの『復興』」だとし、12年の国際協同組合年はこの大震災によって「決してイベントで終わってはならない事態になった」とし、次のような提案を行った。
まず、被災地の「復興」は、これまでの主要産業であった「農業」「漁業」の再興が決定的に重要であることから、日本の「協同組合陣営が横断的に連帯を強め」、被災地における第一次産業の再生に努力すべきである。そのために「復興」のための基金形成など、資金的な面における対応がまず必要であること。それとともに、どういう形で第一次産業を再興するかの「ビジョンづくり」も大切な課題だとした。
また、国は津波被害を受けた農地の集約化・大規模化や壊滅した漁港を集約化する法案を提出する予定だが、こういう課題において協同組合陣営が大いに政策提案するべきだと指摘。さらに地域産業興し、若者の雇用につながる「原発事故の不安のないローカルな電力体制が築かれるべき」だと提案している。
具体的な政策提案をするために生活クラブグループのシンクタンクを中心に研究を進めていくことにしている。
第4点は「『脱原発』に向けた運動を強める」で、生活クラブはすでに「脱原発」の姿勢を明確に打ち出しているが、今回の原発事故と今後のことを考える上で十分認識しなければならないことは、福島県民は事故を起こした原発が供給する電力を使っておらず、「その電力はすべて首都圏に供給されていた事実」であり、そのことをふまえずに今回の事態の正確な理解はないことを強調している。
そして、今回の原発事故により「放射能と付き合うほかない生活を強いられることになる」という状況を踏まえ、「放射能に関する自主基準について改めて議論を始める必要がある」としている。
◆畜産飼料などで独自基準を一時的に緩和
具体的な「対応方針」では、配合飼料メーカー工場・港・原料サイロの被災により東日本の畜産生産者では、飼料の確保ができないので、NON―GM原料や飼料米の使用などの規格について「一時的に解除」し、畜産飼料不分別(GMO)配合飼料の給餌を実施している。
また生活クラブでは放射能汚染の自主基準値(セシウム37Bq/kg)を設けて運用してきたが、今回の放射能汚染は「未曾有の規模で起きている事象」で「独自基準で管理しきれない」こと。独自の自主基準でその生産物を扱わないことを決め、その事実が世間に流布した場合、「提携生産者が周囲にいる一般の生産者が激しい風評被害にさらされることになる」ことから「原発事故に対応した国の暫定基準値を採用」することにしている。
これらの提案は、最終的には「活動方針」に盛り込まれ、6月24日の総代会で決定されることになるが、会場からは支持する発言が多数出された。