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地域内循環農業─ムダを抑えて「たしかな食」を【室井 滋さん】

仕事の傍ら家庭菜園で野菜づくりにも励み、いずれは「my田んぼを持ちたい」と語る女優の室井滋さん。今回は生活クラブの米や豚肉、野菜に漬け物類の産地の山形県・庄内地方を歩いてもらいました。
話し手/小野寺和博さん(共同開発米部会)/新田嘉七さん(平田牧場)

まずは遊佐町へ

JA庄内みどり共同開発米の前部会長の川俣義昭さん夫妻と室井 山形の庄内地方といえば米どころ。昔からおいしい米で知られた土地柄ですが、皆さんが育てていらっしゃる米は他の産地のものとどう違うのですか。
小野寺 そうですね。2つの点で大きく異なると思っています。第一に「遊YOU米」は私たち農家だけでなく、生活クラブ生協の組合員の意見がしっかりと反映されたオリジナルな米であること。第二に町ぐるみで農薬と化学肥料を減らす努力を重ね、いまや「遊YOU米」の生産農家全員が山形県の農薬使用基準の半分以下での米づくりに取り組んでいます。
室井 組合員の意見が米づくりに反映!? もう少し詳しく話していただけますか。
小野寺 食べる人も米づくりに参加しているということです。生活クラブの組合員と私たちは話し合いを重ね、冷害や病気、台風などの影響で海からの吹きつける潮の害にも強い品種を選び、これを周囲の自然環境に適した方法で栽培する方法を追求しています。だから減農薬・減化学肥料。山形県の認める使用基準の半分以下ということは倍厳しいわけですが、それを500人の農家が達成しています。

減農薬・化学肥料のこころ

左からJA庄内みどり遊佐営農課・佐藤秀彰さん、共同開発米部会副会長・尾形長輝さん、前部会長・川俣義昭さん、室井滋さん、部会長・菅原英児さん、事務局・小野寺和博さん室井 すごいなあ。私も家庭菜園で野菜を育て、農薬を使わないように心がけていますが、虫やら何やらと難儀することが少なくありません。ご苦労お察しします。
菅原 確かに夏場の草むしりは楽ではないですし、イネミズゾウムシなどの虫にも悩まされます。それでも腰をかがめて田に入り、草や虫を手で取り除いていると不思議な達成感というか充足感がある。化学肥料や農薬の原料の多くは輸入頼みですが、そんな「他人任せ」の農業から足抜けできるという快感と言ってもいいかもしれません。それに夏にはホタルが乱舞します。一昨年はトキやタンチョウヅルも見ることができました。
室井 ホタルにタンチョウヅルですか。すごい! 見てみたいなあ。
川俣 菅原さんや小野寺さんは完全無農薬の米づくりにチャレンジする腕前で若手農家のいい手本。私が彼らと地域ぐるみで減農薬・減化学肥料を目指す理由は、昔から持続的に稲作を続けてきたもともとの農法に戻したいからです。私たちの親の世代は農薬も化学肥料もない時代に米づくりをしていたわけです。それが私たちにできないはずがないし、これからの米づくりに欠かせないことだと思います。
室井 自然と歩調を合わせた生産には、さまざまな苦労がつきものとお察ししますが、せっかく鳥海山の恵みの水があるんですもの、絶対に“昔ながら”がいいですよ。どうぞ頑張ってください。


さらに酒田市の平田牧場へ

室井 こちらでは独自の品種交配から生まれる「三元豚」を自社農場と提携農場で育てて、お肉やウインナーなどに加工していらっしゃるそうですね。その一貫した流れを見させていただきましたが、本当に時間をかけて丁寧に仕事をされているなと感心しています。
新田 一般市場には生産効率だけを追い求め、肝心な豚の健康や肉質の向上という視点を欠くような食品が数多く出回っています。私たちはこうしたものと一線を画した食材を社会に広めようと、父親の代から努力を重ねています。平田牧場の豚肉の価値や化学調味料や食品添加物を使用しない加工肉や総菜づくりの社会的な意味を真っ先に理解してくれたのが生活クラブの組合員。かれこれ40年前の1970年代、ウインナーといえば真っ赤なものというのが常識の時代のことです。
室井 聞くところによれば最初の配達で腐ったとか。それでも生活クラブは提携関係を続け、無添加ウインナーの開発をあきらめなかったそうですね。
新田 ええ。腐った原因を徹底的に解明するとともに情報開示を進め、組合員と真剣に議論した結果、「無添加だから腐るのは当たり前。配達を担う職員と食材を受け取る組合員とが何らかの対策を講ずる努力を惜しまなければ、無添加ウインナーは共同購入できる」と頑張ってくれたわけです。

添加物の怖さを知って

室井 私は仕事柄「ロケ弁」を口にすることが多いのですが、何とも悩ましく思うことがあります。揚げ物などが中心で濃い味付け。化学調味料に添加物は付き物ですし、これで体は大丈夫かなと不安になって。それでも健康診断を受けると「異常なし」。
 でも、あるとき雑誌の取材で毛髪の検査を受ける機会があって調べてもらうと、耳慣れない金属がごく微量ですが検出されたことがありました。それで食生活は何より大切にしなくてはと考えるようになり、その後、1週間室内に放置しておいても腐らないお寿司に遭遇し、本当に恐ろしくなって。
新田 食品添加物や化学調味料に関しては表示の仕方が大問題ですよ。たとえば「アミノ酸等」と書いてあれば、何か体にいいもののように感じませんか。グルタミン酸ナトリウムなどが入っているなら薬品名を示すべきです。本物のだしといいながら内実は化学調味料中心という場合がある。これは許しがたいですね。そんなインチキをせず、自然の素材だけでウインナーやベーコンなどを製造し、原料本来の味わいを引き出したのが平牧工房の食材です。

「食」と「水」がある安心

話し手 平田牧場社長 新田嘉七さん

室井 豚の飼料や豚舎の衛生管理にも気を使われているようですね。
新田 飼料には遺伝子組み換えされていないトウモロコシとダイズかすを使い、日本の穀物自給率を少しでもアップさせたいとの思いから遊佐町や酒田の生産農家が育てた米も使っています。むろん、飼料に抗生剤を混ぜたりすることもなく、常に豚舎を清潔に保つことで健康な豚を育てることを心がけています、残念なことに東日本大震災の影響で遺伝子組み換えトウモロコシの分別ができなくなっています(5月7日現在)が、今後は米の配合比率をさらに高め、対抗していきます。

室井 食料の自給といえば、生活クラブと提携する庄内地方の生産者の皆さんは、互いに連携して地域内での循環型農業を続けられているそうですね。何をどう循環されていると?
新田 当社がJA庄内みどりの農家が育てた米を豚に与え、当社の豚舎から出た排せつ物をたい肥にしたものを先の農家をはじめ、山形県内の鶴岡市や羽黒町の農家に田んぼや畑にいれてもらうという仕組みです。(イラスト参照)
 こうした地域内での資源の循環活用は生産コストを抑えるだけでなく、化学肥料に頼った食料生産からの脱却を促進するのではないでしょうか。そんな工夫と共同の力が当社の製品のみならず、庄内の生産者の食材の「おいしさ」と「たしかさ」を支えています。
室井 この震災で食料と水があること、その「おいしさ」と「品質のたしかさ」の貴重さが身にしみて分かりました。庄内の循環型農業はとても大切な取り組みですね。その根本にある志は私たちの普段の生活のお手本にもなると感じました。


正直な食べ物に理屈抜きで体が!

鳥海山や月山がくっきりスッキリ見渡せる春真っただ中、“庄内・食べ物見学”をさせてもらった。
 山形出身で東京在住の友人は皆、超が付くほどうまいもの好き。ならば「さぞかし!?」と心を躍らせていたところ、やっぱり期待にたがわす。平田牧場や月山パイロットファームをはじめ、杉勇蕨岡酒造場(杉勇酒造)などで「ぜひ試してみて」と勧めてもらった食材は、どれも幸せなあまりホッペが緩みっ放しになるものばかりだった。
 遊佐町で田植えに初挑戦し、平牧工房で加工食品の製造工程を学び、月山パイロットファームでカラシナを前に昨今の農業事情を伺った。杉勇酒造の近くのビニールハウスで出番を待つ酒米の苗を見つめ、羽黒のうきょう食品加工では旬の山菜のコシアブラを一緒に摘ませてもらった。
 生産者の皆さんからこぼれる笑顔はスコブルまぶしく、その言葉にはよどみがない。
 「これは正直な人がつくった正直な食べ物なんだ!」と思うと、胸がキュンと鳴き、目頭が熱くなる。理屈抜きで体が反応するのだ。
 品質安全のために何工程もの手間をかけ食肉加工する平牧工房の外回りには虫を寄せつけぬという性質の木々が勇ましくガ-ドしていたし、羽黒のうきょう食品加工の裏山の柿の木々の周りには、だだちゃ豆の殼が肥料としてドーナツ型にまかれていた。
 JA庄内みどり農協の遊佐営農課の事務所の壁には「あなたも草むしり検定を取ってみませんか!?」というチラシが張られていたが、除草剤などを使わない農法ゆえ人手確保のための“明るいアイデア”が必要なのだなぁと苦労の一端を垣間見る思いだった。
 アイデアといえば、この町の“環境保全・循環型農業”というものは本当に素晴らしい。
 JA庄内みどりの生産農家からの飼料用米を平田牧場が豚の肥育に使用し、食肉加工で出る残さなどをたい肥として農場にまく。杉勇酒造のお酒から出る酒かすは月山パイロットファームの漬け物の原料や平牧工房の豚肉のみそ漬けにも使用される。そのほかにも平田牧場のとんかつ店の廃油をトラクターの燃料に変えるなど、本当に無駄がなくエコなんですね。
 無駄だらけの生活をダラダラ送り、エネルギー消費ばかりの自分が非常に恥ずかしい。
 真に美しい食べ物は一朝一タには生まれない。そこにはたゆまぬ努力と試行錯誤、そして深い愛情があるのだと庄内の地で感じ入った次第であります。
 庄内の皆さん、本当にありがとうございました。


<<地域内循環農業 パート2

『生活と自治』2011年7月号の記事を転載しました。

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