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地域内循環農業 パート2【室井 滋さん】

東日本大震災で、水と食べ物がなくなる恐怖を痛感したという女優の室井滋さん。
今回はそんな貴重な「食」の産地である山形県鶴岡市と羽黒町を訪ねました。
話し手/相馬―広さん・大さん(月山パイロットファーム)/斎藤三郎さん(羽黒のうきょう食品加工)

月山パイロットファームにて

話し手 (左)相馬一広さん、大さん室井 化学肥料や農薬を可能なかぎり使わない農法に取り組まれているそうですね。
相馬一広 人類は何百年も何千年も食料をつくり続けてきたわけです。この持続性を支えてきたのが、有機物を介した循環農業と自然の摂理に合った輪作などの農法でしょう。イギリスの農業研究所が50年かけて、化学肥料と有機肥料を使った農業の比較をしたところ、最初の20年は化学肥料を使った方が収量は上がったのですが、土地が荒れてきて、結局は落ちた。ところが、有機の方はしり上がりに良くなり、50年のトータルで見ると有機の収量が多かったというデータもあります。
室井 やっぱり差が出るんですね。
相馬一広 私も最初から農薬や化学肥料を使わなかったわけではありません。その使用を続けるうちに田んぼのドジョウやフナが死に、健康被害を訴える農家も出てきたこともあり、これはいけないと思ったのです。そこで当時できたばかりの「有機農業研究会」に参加し、「自分だけが無農薬・有機を進めるのではなく、社会全体で減らすようにしませんか」と提案した。当時は県に相談にいっても「無農薬・有機なんてやめた方がいい」と言われたものですが、今では県が無農薬・有機を推進しようしています。本当に時代は大きく変わりましたね。
室井 私も農薬や化学肥料を最大限減らして作物を育てることの大切さは、家庭菜園で痛感しています。身にしみたという意味では、今回の大震災ですよ。東京も物が一気になくなって、パ二ックになった時期がありました。そのとき、スーパーの棚が本当に空になるという姿を初めて目にして、食べ物がなくなる恐怖を感じました。
相馬一広 そうです。食べ物のことを考えると、まさに国全体が危うい状況にある。世界人口が70億人に達するとされますが、地球上のすべての農地をフル活用しても最大70億人分の食料しかまかなえません。
 現在、世界の9億2500万人が飢餓に苦しみ、16億人が肥満状態にあるといわれています。これは分配の不平等に由来しますが、これからは絶対量が不足する。もはや輸入すればなんとかなるという時代ではないのです。食べ物で一番重要なのはとにかく“ある”こと、さらに安全性でしょう。どんなことがあっても、これがないことには話にならない。そのためにはつくり続けるという仕組みが必要で、環境とケンカしない農法を追求することが大切なのです。

他人任せにしていいのか?

月山パイロットファームのみなさんと室井 それにしても誰もが食べ物のことを真剣に考えなければいけないところに来ているわけですね。
相馬大 食べるということは買う・選択するという投票行動を伴います。輸入品か、そうじゃないのか。何を選ぶかが日常的に問われています。
 幸か不幸か福島や茨城の産地の様子をテレビで目にする機会が増えました。それで何かに気づく人が増えてくれれば、変わってくるのではないでしょうか。それはつくる側も同じ。農協にこうしなさいと言われたやり方を「どうなの?」と見直す必要があると思います。
 肝心なのは互いが他人任せにしないことですよ。特に安心というのは、食べる側であれば自分の責任で判断してもらいたい。つくる側は自分が信じる方法を選択し、約束したことは責任をもって守りぬくことでしょう。その作物が安心かどうかの判断は、常に情報交換ができる、情報が開示されている関係性を前提にしなければいけないと思います。いつまでもつくる側は農協の責任にし、食べる側はスーパーの責任にしていても前進はないと思いますね。
室井 いのちの源である「食」を他人任せにしないことが何より大切なのですね。それにはどんなものを買うか、選択するかが問われていることもよく分かりました。今日はありがとうございます。


羽黒・のうきょう食品加工にて

羽黒・のうきょう加工食品社員が栽培する行者ニンニクの畑で室井 どんなものをつくっていらっしやるのですか。
斎藤 いわゆる赤カブ漬けという漬物が中心です。原料は温海(あつみ)カブという在来種の一種で、昔は殿様に献上したくらいの歴史があるカブを甘酢に漬けたものです。昔はぬか漬けだったそうですよ。もうひとつが民田(みんでん)ナス。これも松尾芭蕉が奥州を歩いたころからあったとされる在来種で、こちらはカラシであえた漬物です。
室井 カラシも地元産?
斎藤 はい。当社で栽培したものを使います。今では国産のカラシはほとんどなく、カナダ産が一般的かな。
室井 国産はそんなに少ない?
斎藤 ええ。それから市販のカラシといえば黄色をしていますが、あれはウコンの色か、もしくは合成着色料の黄色4号の色を使ったもの。しかも今は漬物のほとんどがアミノ酸などで味をつけているものばかりです。そんな化学調味料を使わないのが当たり前、漬物づくりの常識なのに、それが通用しません。
室井 どういうことですか。
斎藤 私たちの目標は調味料まで含めて地域自給すること。そうはいってもしょうゆやみりん、砂糖までは難しいので、現在は生活クラブの提携生産者の食材を使っています。それ以外は原料をはじめ、副原料も地元産。耕作放棄された田畑を何とか増やさないようにと、赤カブを植えてもらっては買い取り、地元の農家が農業で暮らしていけるような手だてを講じています。
 農地が山手でどうしても無理がある農家には根曲り竹、あるいは姫竹と呼ばれる親指ぐらいのタケノコ(月山竹)を植えてもらい、それを私たちの加工場で買い取っています。これらを無添加で漬物や総菜にするわけですが、「色がおかしい」とか「味が違う」という理由で一般市場には出せないことが多いのです。

ながら「食」に米は合う?

話し手 齋藤三郎さん室井 本当の味が分からない人が多い、増えているということかなあ。
斎藤 うまみ成分を食感できる舌を持たない人が、すごく増えている気がします。苦いとか渋いも嫌いますよね。そういう部分を感じ取れない。だから今の若い人たちは「辛い」に好みが集中しているのではないですか。
室井 それこそ山菜なんかが持っているような味とか、渋い、苦いとか、ちょっとえぐみがあるとか、そういうものが全部まずいものになっちゃっている。日本古来の味なのに。
斎藤 どこかがやっぱりおかしい。食育の必要性が叫ばれていますが、まずはそこからスタートしていかなければダメなのではないですか。それにもうひとつ、悩ましいのは米離れです。最頂期には12億円あった当社の漬物の売り上げが8億円台にまで落ち込んでいますが、この背景に米離れがあるのです。朝ご飯を食べない。「歩きながら」とか、「仕事しながら」の食事にはご飯は合わない。当然、漬物も合わないわけです。
室井 そうかあ、私は大のごはん党。朝食はごはんしか考えらんないなあ。

斎藤 私たちも嘆いてばかりもいられません。農家は確実に高齢化していきますし、後継者がなくて荒れた農地も増えてきました。これからは製品の幅を広げていく必要があると思っています。あるものは乾燥させ、あるいは塩漬けにし、ジャムにもしてみるというような方法を検討し、形にしながら食べる側への提案力を高めていくことをさらに真面目に考えていかなければいけないわけです。
室井 無駄にしては意味がないですし、地元の農業を守ることもできなくなってしまいますものね。
斎藤 そういうことを考えるのは私たちが協同組合の加工場だから。単純に利益だけを追求するなら、外国から原料を輸入して調味液に漬けるだけの量産体制を取ればいい。しかし、私たちが守りたいのは地元の「食」と「農」。この地域から農家が消えて何のための協同組合か。そう私は思っています。
室井 この羽黒はブルーベリーの生産も盛んな産地と聞きました。漬け物と合わせてぜひ全国にアピールしてもらいたいです。


あの味がどうしても

文・室井 滋

 庄内への“食いしん坊の旅”から戻って約1ヵ月。おみやげにいただいたり、買ったりした“うまうまな品々”もペロリとたいらげ、何だか急に口さびしくなった。
 「あぁ、あの村や町、何を食べてもおいしかったなあ。羽黒・のうきょう食品加工の“潰物の里”の板そば、また食べたいな。ブルーベリージュースも全部飲んじゃったし、残るは月山パイロットファームの“だだちゃ豆”の苗が成長してくれんのを待つのみかぁ……」
 私はうちの屋上菜園に植えかえた茶豆に水をやりながら、茶豆ソフトクリームの味を思い出して唇をキュッとかんだ。
 「ダメッ、たまんない。もっと食べたい!杉勇のお酒も飲みたい!ああ、すぐにでも庄内へ飛んで行きたいのに……」
 しかし、私とて一応は働く社会人だ。仕事を放り出して、調子よくホイホイ旅行になんて行ける身分じゃない。
 自分自身に“メッ”と言い聞かせ、私は北東の空を未練がましく見上げるしかなかった。果たしてそのうち、屋上の手すりに止まってすっとこちらをにらみつけていた1羽のカラスが「アッ…アッ…アッポ」と妙な鳴き声をあげるのを耳にし、私はハッとひらめいた。
 「アッポ?…アッポ…、そうだ、“デポー”があったっけ。私、デポーの組合員になろう。そうすれば、都内にいながらにして庄内の味をゲットできるじゃん!!」
 そもそも地方巡業の多い女優という仕事柄、生活クラブの宅配制度は自分には難しいとあきらめていたが、デポーなら時間と必要に合わせて私にも利用できるというものだ。

杉勇蕨岡酒造場のみなさんと 私はさっそく“生活と自治編集室”に電話をし、自宅もしくは事務所から一番近そうなデポーの住所を教えてもらう。そして、善は急げで自転車にまたがったのだ。
 約40分後、私は美肌の女性スタッフに加入の手続きを済ませてもらい、大きなカートにカゴを2段積み、デポーの店内を水を得た魚のようにいきいき動き回っていた。
 平牧三元豚バラしゃぶしゃぶ肉、月山パイロットファームの赤カブ漬け、杉勇蕨岡酒造場の清酒などと1ヵ月ぶりの再会を果たし、私は1人幸せをかみしめる。
 と、そんな私に白三角布にエプロン姿の調理場の女性が「コロッケ揚げたてだけど、試食いかが~っ」とミニコロッケをニューと差し出してくれるではないの。
 「うわあ、おいしい!これって平田牧場のお肉入ってます?」
 「ウフフ、ピンポーン。人気なんですよ、このコロッケ。こっちの紅シャケ入りコロッケもすぐ完売なんです」
 ホカホカのその笑顔にひかれて、私は小ぶりのコロッケを8個も買ってしまうのだった。
 それにしても、生活クラブの扱う食材への信頼は庄内見学を経て実感していたけれど、デポー店内の様子を見て、さらに感じ入った。
 スタッフのみなさんがキリッとさわやかで、お客さん同士にも楽しげな会話がある。初心者の私にも、見知らぬ奥さんが“この淡路島のソテー・ド・オニオンなら、うちのタマネギ嫌いの子も食べるのよ”などと声をかけてくれるのだ。世知辛い大都会にこんなお店があるなんて驚きだ。
 デポーデビューを果たした私はもう上機嫌! 自転車の前カゴや後の荷台に山のような食材や飲み物を積んで「アッポ~、アッポー~、デッポ~、デポー」と口すさみながらペダルを踏むのでありました。
 

<<地域内循環農業─ムダを抑えて「たしかな食」を(パート1)

『生活と自治』2011年8月号の記事を転載しました。

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