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健康な「食」を届けたい だから「はりま」を育てます!【秋川牧園】

国産肉用鶏(ブロイラー)の「はりま」の飼育と普及に力を注ぐ山口市の「秋川牧園」。
日本で飼育されるブロイラーの9割以上が外国産鶏種という現状にあえて立ち向かう。

抗生物質の過剰投与が問題に

 中国で“抗生物質漬け”の鶏が大量死――。そんな記事が今年5月、「週刊文春」に掲載された。「中国政府も、国内のブロイラー産業の現状に危機感を持っている。中国のテレビ報道を政府が認めたのも、この事態を改善したいという姿勢の表れだと思います」
 そう話すのは秋川牧園会長で、今年、中国の養鶏現場を実際に視察してきた秋川実さん。
 中国国営の中央テレビが肉用鶏(ブロイラーの養鶏農場で成長ホルモン剤や抗生物質が過剰投与されている実態を報道したのは昨年12月。さらに今年1月には中国大手食品グループ「河南大用食品グループ」が、病死したブロイラーを加工販売していたことが明らかになった。
 この問題の背景にはマイコプラズマ菌のまん延があると実さんは考える。
 「マイコプラズマ菌に感染すると、免疫力が落ち、さまざまな病気が出る。最も多いのが病原性大腸菌症です。親鶏がマイコプラズマ菌に感染すると生まれたひよこも感染、多くの養鶏場が“病気の巣”と化している可能性があります」
 日本ではブロイラーの飼育には40日以上かけるのが一般的で、たとえ抗生物質を使用しても残留しないように出荷前7日間の休薬期間が定められている。
 「中国でも休薬期間は決められていますが、それを守ると出荷前に鶏がバタバタ死んでしまい、経営が破綻する。出荷直前まで抗生物質を使用せざるをえない状況に追い込まれているのではないでしょうか」

増加する鶏肉調整品の輸入

 鳥インフルエンザがアジアで流行し始めた2004年以降、それまで日本にとって最大の鶏精肉輸入相手国だった中国からの生鮮・冷蔵の鶏精肉輸入はゼロになった。しかし、現地で加熱調理した後に輸入される「鶏肉調整品」は、中国産が5割以上を占めたまま。
 10年前は20万トン以下だった鶏肉調整品輸入は、中国からの精肉輸入がストップした04年以降に急増し、今や43万トンに達した。
 安価なチキンナゲットやから揚げ、焼き鳥などの冷凍品はもちろん、ファストフード店で使用されている鶏肉も中国産が多い。そうした実態を知らないまま中国産鶏肉を食べている日本の消費者は、決して少なくないはずだ。

鶏肉からもホルモン剤?

 日本より早く大規模養鶏が始まり、効率化の最先端を走る米国産鶏肉にも「不安がある」と実さん。
昨年11月、北海道大学遺伝子病抑制研究所の半田康医師が、米国産牛肉から成長ホルモン剤の残留と見られる高濃度の「エストロゲン」を検出したと発表。ブロイラーに成長ホルモン剤を与えることは基本的にないが、実さんは「鶏の飼料に牛の肉骨粉が含まれているのではないか」と推測する。
 米国の食肉業界では、成長促進や肉質改良のためにエストロゲンを雄牛に投与。牛海綿状脳症(BSE)発生後も、エストロゲンを与えた牛の肉骨粉を牛以外の家畜の飼料に使うことが許される。このエストロゲンを人が過剰摂取すると乳がんなどを引き起こす要因になるとの指摘もある。
 「大規模・効率化で、確かに鶏肉も卵も安くなり、私たちはその恩恵を受けています。しかし、安さと引き換えに失ってきたものもあるはず。近年の消費者動向は価格重視で安全性への意識が希薄化しているのが気になります」

人の健康を考えた「食」

 今、秋川牧園では同社の原点ともいえる「健康にいい食づくり」の視点に改めて立ち返り、より良い「食」の提供を目指していこうとしている。実さんから秋川牧園の経営を引き継いだ社長の正さんは言う。
 「食に関する不祥事の頻発で規制が厳しくなり、『食の安全・安心』という言葉が当たり前のように使われるようになりました。しかし、本当のナチュラルな食、健康にいい食品とは何かを追求するという意味では、ここ10年、何ら改善点はない気がします。だからこそ改めて、からだにいい食を発信していきたいのです」
 確かにそうかもしれない。次亜塩素酸ソーダで洗浄・脱水されるカット野菜は便利だが、新鮮さや自然な食感が損なわれる可能性がある。
 安価な加工肉や練り製品・成形肉に使用される添加物のリン酸塩は、カルシウムなどミネラル分の体内吸収を妨げると、かねてから指摘されている。
 いずれも長期間食べ続けたときの影響を考えれば、はたして「からだにいい」といえるのか。その視点を欠き、ただ経済性や利便性だけを優先した食品が増えている気がしてならない。
 秋川牧園が飼育する国産鶏「はりま」も、「健康な食」という路線の中にあると正さん。
 「はりま」を守り育てていく重要性は「種の自給」の視点から語られることが多い。日本で生産されるブロイラー種鶏の94%は「ロス・ブリーダー社」のチャンキー種と、「コッブ・バントレス社」のコッブ種だ。ひなの供給を輸入に依存しているため、食肉になる鶏の親の代に当たる原種鶏、あるいは祖父母の代の原原種鶏の輸入が止まれば、国内での鶏の持続的な生産は困難になる。
 一方、はりまは鶏の祖父母の代、3世代前の原原種鶏まで国内で飼育されている。だから海外事情に左右されることなく国内自給が可能とされる,
 「実はそれだけではないと私は思っています。はりまには別の意味で潜在的価値が高いと思うようになりました」と正さん。秋川牧園ではチャンキー種も飼育しているが、その品種改良はすさまじく、より経済効率のいい鶏に進化している。
 たとえば米国で需要の高いむね肉だけを巨大化し、極端な逆三角形の体型になってきているという。
 その点、はりまの胸はやや薄くももが太い。もも肉の需要が高い日本の消費者好みの体型で、味の評価も高く、品種改良にもナチュラルさを残す。外国鶏種の品種改良と日本人の食志向のズレが大きくなったとき、外国鶏種に代わる選択肢として大きな意味を持つ可能性があると正さんは考える。
 えさはたくさん食べるが、期待するほどの増体効果は出ず、飼育温度にも敏感で、温度管理を少しでも間違えると死んでしまう。はりまの飼育の難しさや1羽からとれる肉量の多寡を示した歩留まりの悪さは、誰もが指摘する。
 しかし、「結局、5年、10年と食べ続けたとき、からだに一番いい鶏肉は何かという点に行き着くのではないですか。その意味でも、はりまという選択は、間違っていないはずです。今、市販の鶏肉との栄養価の相違を調べ始めたところです。これも食べていただく方の元気につながる、健康な食づくりの一環です。そうした努力を今後も生産者として重ねていきたいと思っています」


米国で広がる遺伝子組み換え

文/農業ジャーナリスト・榊田みどり


NON-GM飼料 日本で初めて抗生物質や合成抗菌剤などを使用しない「無投薬養鶏」の手法を確立したことで知られる秋川牧園。「いのちに直結する食べ物をつくる|という創業時の思いは、1980年代後半、収穫後の穀物に散布される農薬「ポストハーベスト」不使用のトウモロコシ調達に向け、いちはやく動き出したことにも表れている。1ヵ月以上かけ全米を歩き、126ヵ所の農家の実状を調査、全米のポストバーベスト農薬使用地図を作ったというから半端ではない。この調査結果は、98年に非遺伝子組み換え(NON-GM)トウモロコシの調達ルートを確立する際にも活用された。
 ところが、今、米国のトウモロコシ栽培は新たな局面を迎えている。 90年代、初めて誕生した遺伝子組み換えトウモロコシの「Btコーン」は、害虫への抵抗性を持つ品種だが、大手バイオテクノロジー企業が次々と新規開発に参入、乾燥に強い品種や除草剤に耐性を持つ品種も販売され、米国農家の高い支持を得ている。NON-GMトウモロコシは希少価値となり、その契約栽培による販売価格は上昇するばかりだ。米国を視察した秋川実さんは言う。
 「米国では、雑草の繁茂を防ぐため、収穫後に畑を耕し、雑草をすき込むのですが、除草剤耐性トウモロコシなら、その手間をほとんどかけずに栽培でき、生産コストが下がり収量も格段に増えています。バイオエタノール需要もあり、取引価格は2008年以前の5倍以上に跳ね上がっています。残念ながら、もう米国ではNON-GMトウモロコシは皆無に等しい状況です」
 秋川牧園では調達先を南米に切り替えたが、近い将来、米国の動きが南米にも波及すると見ている。国内での飼料米契約は、地元農家約20戸、作付面積も55ヘクタールに増えたが、飼料すべてを飼料米に置き換えるのは難しい。「今後、NON-GM飼料の原料調達には、よりきちっとした契約生産の仕組みが必要になりますし、消費者の覚悟も試されます」
 日本国内では、08年以降の国際的な飼料価格の高騰を受け、割高なNON-GM需要が減少傾向にある。しかし、遺伝子組み換え(GM)作物を拒否している欧州連合(EU)を中心に、GM作物の健康被害への懸念が指摘されている。いまこそ目先の経済性だけでなく、生産者とともに食の未来をつくっていく必要がある。 NON-GM飼料で育つ食肉を選択することは、遺伝子組み換え作物を容認しないという食肉業界への意思表示の一つといえるだろう。
 

『生活と自治』2013年11月号の記事を転載しました。

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