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生協の食材宅配【生活クラブ】
国産、無添加、減農薬、
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どんな牛肉がお望みですか?

安全の反対は危険。安心の反対は不安。確かに輸入牛肉の販売価格は国産の半値から4割安だが、この差額は危険で不安の“代償”もしれない。そんな低価格輸入肉の大攻勢のなか、生活クラブの牛肉の存在価値が問われている。

北海道の酪農を応援

最近、テレビCMや新聞の広告欄で「赤(あか)」という商標の牛肉をよく目にするようになった。「あか」は赤肉の赤、健康長寿に欠かせないすべての必須アミノ酸を含み、鉄分も豊富な牛肉という。

牛肉といえば、適度に脂肪が入った「霜降り肉」が高級品とされるが、実は赤身こそ栄養の宝庫である点に、注目する女性も増えているという。
栄養面だけではなく、牛肉は日本の酪農を守り、日本の「食」の生産基盤を根底で支えている。ホルスタインの去勢牛の肉をしっかり利用することが、日本の未来の「食」の安定確保にもつながっているわけだ。

「完全栄養食品」とも呼ばれる牛乳を人が得るためには、雌牛を妊娠出産させ、母乳が出る状態にする必要がある。ただし、誕生するのは雌ばかりでなく、雄も生まれる。この雄を不要とばかりに捨てるわけにはいかない。そこで農家は雄を去勢して肥育し、「乳用去勢牛」として出荷する。

これを30年以上も共同購入してきた生活クラブの組合員は、“赤身の牛肉”を食べて北海道の酪農を応援。最盛期には年間約4700頭分の枝肉(内臓と頭を除いた半身の肉)を共同購入し、提携先の北海道農協連合会チクレン(北海道チクレン)に加入する肉牛生産農家の持続的な「食」の計画生産を支えてきた。

1頭で7万7千円の赤字に

東谷隆幸さんところが現在、生活クラブの牛肉利用頭数は年間約3100頭まで低下、生産農家の計画生産に少なからず影響を与えている。それでも「生協陣営では断然トップの利用量。心底ありがたい」と同チクレン業務部長の東谷隆幸さん。ただし「いまがデッドライン。この水準を割り込めば廃業に追い込まれる生産農家が続出する恐れもある」と言う。

北海道農政部の2012年の調査によれば、ホルスタイン種の去勢牛を飼育する農家は、1頭出荷するごとに7.7万円の赤字を抱える状況が続いている。さらに子牛の購入価格も通常価格の3倍から4倍に相当する1頭6万円から7万円台の高止まり状態だ。しかも米国産、オーストラリア産牛肉の輸出攻勢により、精肉1キロ当たりの価格は引き下げ圧力を受け、安値での納品を余儀なくされることも多い。

「この逆風が環太平洋連携協定(TPP)で一気に強まる可能性が出てきた。消費者の家計の厳しさは理解しているが、こんな時代だからこそ乳用去勢牛の肉を選択してもらいたいし、応援してほしい。それが日本の食の生産基盤を守ることにもつながる」(北海道農政部)。

農場から食卓まで明らかに

貞廣修さん
では、米国産やオーストラリア産と生活クラブの牛肉の価格はどれくらい違うのだろうか。いくつかのスーパーを回り、ステーキ用サーロインの販売価格を比べてみた。輸入品は生活クラブ組合員価格の半値から6割程度の値段だ。

仮に後者が1枚100円だとすると米国産は50円、オーストラリア産は60円。そんな米国産に「エージング技術」を利用した「安くてうまい」サーロインが登場した。と畜解体後に成形加工、部位別パーツにした牛肉を庫内温度0~5度で保管、湿度を80%に保ちつつ、同一条件で保管可能な貨物船で、太平洋を越えて日本の港まで運ぶ。2週間程度とされる輸送期間で肉のうま味が増すというが、雑菌の繁殖などのリスクも抱える。

「米国産をうまくて安いという人もいるかもしれない。そういう選択をせざるを得ない経済状況があるのも承知している。だが、生活クラブの組合員が求めた肉はそういうものなのか」と北海道チクレン理事長の貞廣修さん。

貞廣さんには生活クラブの組合員が求める品質を徹底的に追求し、生活クラブにしかない仕様の牛肉をつくってきたという自負がある。しかも米国産牛肉には不安を感じざるを得ない飼育管理上の不透明さも付いて回る。それは発がんリスクが指摘される成長ホルモン剤の乱用、牛の病気予防を目的とする抗生物質の常用だ。

しかも12年前に消費者を震え上がらせた牛海綿状脳症(BSE)感染牛が依然として出荷される可能性も否定できない。また、米国では遺伝子組み換えトウモロコシと大豆(脱脂)のえさも当然視されている。貞廣さんは力を込めて言う。
「チクレンと生活クラブはBSE問題が起こる10年以上前から、農場から食卓までの生産履歴の把握管理を徹底、個体識別番号がなくても、出荷したすべてのパーツ肉がどの牛のものかを確認できるようにしてきた。ここまで透明性と納得性の高い牛肉流通はほかにはないと信じている」

苦肉の策で乗り切るも─

伊藤重敏さんチクレンは遺伝子組み換えではない(NON-GM)トウモロコシと大豆の価値を一軒一軒、肉牛生産農家に説明し、その価値を広げるとともに多国籍企業による種子支配という「食」の危機に、生活クラブとともに立ち向かってきた。

ところが、世界最大のトウモロコシと大豆の輸出国である米国で組み換え作物が急激に普及、トウモロコシは90%、大豆は93%が組み換え品種となった。バイオエタノール原料としてのトウモロコシ需要とともに国際相場も跳ね上がり、政府の経済政策「アベノミクス」が招いた円安が穀物取引価格を高止まりさせている。

「牛肉の生産コストの6割は飼料代。組み換えトウモロコシと大豆の価格が上昇するなか、非組み換え作物の値段はさらに高騰している。そんなコスト高、消費減少、価格安の状況では、生活クラブ以外の納品先へは組み換え作物を与えて育てた牛肉を出荷せざるを得なくなった」

同チクレン理事兼参事の伊藤重敏さんはそう語る。生活クラブの組合員が新規加入者を増やし、自ら選んだ生産者と育ててきた消費材の利用を呼びかけるように、チクレンも遺伝子組み換えではない飼料の利用を生産農家に呼びかけてきた。そうした社会運動が後退局面を迎えている。
「本当に悔しいし、悩む。だが、どうすればもっと食べてもらえるのか、利用してもらえるのかがわからない」と伊藤さん。必要なのは少容量化か、それともさらなる価格の見直しか─。

部位別価格を調整し冷凍での供給なら、ある程度価格を引き下げられるかもしれないという。いずれも検討しなければならない課題であり、北海道チクレンは実際にチームを立ち上げて協議も続ける。
「私たちが誇りを持って生産農家と育てているのは生活クラブ仕様の牛、生活クラブ組合員の宝。むろん、今後も努力は惜しまないが、しっかり食べてもらえなければどうにもならない。もはや何をすればいいのかわからない」
伊藤さんの言葉が重く響く。

◆季節による消費部分の片寄り

約3100頭の年間利用を維持、生活クラブ組合員の「牛肉利用人員率を24%から30%に少しでも近づけていただきたい」と東谷さん。いまは組合員10人中2人の牛肉利用者を1人増やして3人にしてほしいという。また、通常月はリブロースとサーロインが余り、夏休みや年末年始にはその他の部位が余る傾向が続く牛肉。「無駄なくバランスよく利用してもらうのが一番大切です」とも言う。


◆人気の駅弁レシピ─いつもの調味料で極上の味に!


~少し濃いめの味でしっとり、牛飯弁当~
ひき肉は加熱前にほぐして味をしみ込ませることで堅くなりません。しっとりしたそぼろに仕上がります。
材料(4人分)
リブロース薄切り肉300gの煮汁
かつおだし(80ml)、しょうゆ(大さじ4)、みりん(大さじ2)、砂糖(大さじ2)
ひき肉200gの煮汁
かつおだし(大さじ1)、しょうゆ(大さじ2)、みりん(大さじ1)、砂糖(大さじ2)
作り方
(1)薄切り肉
●鍋に煮汁の材料を入れ中火にかけ、煮立ったら一ロ大に切った牛肉を弱火で煮る●煮汁が半分ほどに煮詰まったら火を止める。
(2)ひき肉
●ひき肉と煮汁を鍋に入れて箸で細かくほぐし、味をしみ込ませておく●肉がほぐれたら中火にかけ、箸でまぜながらそぼろにする。照りがでたら火を止め冷ます。
 

『生活と自治』2013年12月号の記事を転載しました。

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