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あえてチャレンジ─自社工場

環太平洋連携協定(TPP)への参加交渉が大詰めを迎えている。日本農業へ影響の大きさが指摘されるTPP。そんな先行き不透明な時代にあっても志を持つ農業者でつくる「西日本ファーマーズユニオン」は新たな展開を模索し続ける。

変わる食卓に向き合う

 「野菜を食べる」といえば、買ってきた青果を自宅で調理するのをイメージするが、その実態はここ十数年で大きく変わった。外食や総菜、カット野菜などに利用される加工・業務用野菜としての消費が増え続け、野菜消費量全体に占める割合は、いまや6割と1970年代の3割以下を大きく上回る。
 「畑にあるのは同じダイコンでも、消費者が買い求めるのは“おでん”や“サラダ”です」と西日本ファーマーズユニオンの九州支所である九州農業生産協同組合(同ユニオン九州)に加盟する「鳥越農園ネットワーク」代表の鳥越和廣さん。
 以前は青果の出荷だけを考えていたが、需要がすでに半分以下になっていたことを知りがくぜんとしたという。しかも加工・業務用野菜に占める輸入品の割合は年々増加している。
 「青果だけ生産していたのでは、この先国内の農地はどんどん減ってしまうのではないか」と鳥越さんは危機感を募らせた。
 九州や四国、中国、関西の生産農家やグループが「西日本ファーマーズユニオン」という広域に及ぶネットワークを結成した目的のひとつは、そうした困難な課題に各地の農家が連携して向き合っていくことにある。
 「農業をトータルにみて、生産現場から加工も含めた食の提案をしていかなければ」と鳥越さん。冷凍野菜は、そうしたチャレジの一環でもある。

偽装の余地なき一貫生産

右から税所篤さん、篤朗さん、鳥越和廣さん、耕輔さん、篤さんと耕輔さんは次世代の農業を担う後継者、農業の魅力を若い世代に発信していきたいという 高級ホテルなどが提供している食事で、メニュー表示と異なる食材の使用が問題になった。デフレによる廉価販売競争が続くなか、原料コスト削減を追求するあまりの食材の偽装は、ここ数年くり返されてきた。
 生活クラブでも2008年、冷凍野菜の製造を委託した業者に産地偽装の疑いが生じ、取り扱いを中止した経過がある。その後、原料野菜の産地が明らかで自給力の向上につながる食材を求め、新たに開発したのが同ユニオンの冷凍野菜だ。
 冷凍加工は宮崎県綾町にある「綾・野菜加工館」が担う。もともとは綾町が県と一緒になって誘致した企業の施設だったが、経営難により半年で企業は撤退、町からの要請で、これを同ユニオン九州の「丸忠園芸組合」が買い受け、原料野菜の栽培と加エを一貫して行うと決めた。同組合では以前から冷凍加工用の野菜栽培を行ってきたが、業者との提携では工場の都合を優先されるのが慣例だった。
 「ホウレンソウがどんどん収穫できる時期に今はロールキャベツで忙しいからと引き取ってくれなかったり。心底腹が立ちました」と会長の税所(さいしょ)篤朗さん。自分たちが工場経営に乗り出したことで、どの時期に何がどれだけ必要かがわかり、計画的な栽培ができるようにもなったという。
 税所さんの野菜栽培へのこだわりは強い。組合に属する生産農家は約80人、そのすべてに独自の肥料、種子、農法を徹底し安全性や品質の向上を図る。「作物は土で育つ。いかに土壌の微生物を増やすかが重要で、化学肥料や農薬に頼ったら微生物が減ってしまう」と税所さん。
 現在、丸忠園芸組合が栽培したホウレンソウの糖度は最低でも7度、旬の時期には13~14度とスイカ並みの甘さになるというから驚く。通常のホウレンソウの平均精度が4~5度だから、その甘さは相当なものだ。
 こうした野菜がそのまま工場に納品される。
 「一般にはエ場の都合に合わせて商社があちこちからかき集めてくるんですが、うちの野菜は誰がどの農場でどんな農法でつくったか工場でも全部把握しています」と一貫生産の利点を強調する。

不確実性を

綾・野菜加工館社長、税所篤三郎さん 偽装の余地がない反面、一貫生産ならではの苦労もある。「工場を稼働して7年ですが、ここ3年は毎年異常気象で運営が難しくなっています」と話すのは「綾・野菜加工館」社長で、税所篤朗さんの実弟、篤三郎さん。工場では、作物の生育に合わせて製造ラインの人員配置を行う。生育が遅れ作物が納品されないと労働力が無駄になり多大なロスがでる。「効率いい工場の稼働にはやはり複数産地からスポットで集めることが有効ですが、うちでは約束した条件がある以上、ほかからの購入はできません」
 この課題を解決するには、工場と生産者である丸忠園芸組合との日々のコミュニケーションが欠かせない。篤朗さんの息子で、丸忠園芸組合の社長を引き継いだ篤さんは、毎朝畑の生育状況をみて作業をどうするか直接工場側と相談する。
 「他社の工場であれば電話1本で終わり。なければほかに回されるだけで次にどうなるかもわかりません。じかに相談できるのは自社工場ならではのメリットかな」と篤さんは言う。さらに組合員同士の作付け時期を調整するなど、不確定要素の多い自然相手の農作物を安定して工場に納品するためのさまざまな工夫を重ねる。それでもなお、これからの農業にとって、冷凍野菜の可能性は大きいと篤さん。「計画的に作付けでき、市場相場に左右されないから年間収入が見通せる。農業の魅力を若い人に伝えるには、その点が何より重要なんです」

農業の新たな未来を

ゴボウの収穫 課題が山積する日本の農業だが、国では土地の集約化、企業の参入なども進めている。とはいえ、篤さんは企業が参入したからといって農業がうまくいくとは考えていない。
 「この土地と気候を知り、愛着を持つ僕らだからできることは多い。自分たちの町と農地は地域の人たちとともに自分たちのやり方で守っていきたい」と農業と地域の未来を語る。
 鳥越農園ネットワークの鳥越さんは「TPPが紛糾されたらどうなるか、実はわからないことも多いのが現状です。逆にわかっていることははっきりしています。つくる人と食べる人の関係をより強くしていくことだと思っています。食べる人にとっても食の自給、環境、食育など農業の力で解決できることは多いのです。共に農地を守っていくための共同作業をよびかけていきたい」と消費者にも期待を寄せる。


◆食べる人もつくる人も。両方うれしい冷凍野菜

【収穫から半日 鮮度を閉じ込め食卓へ】

 農業経営の安定につながる冷凍野菜だが、知られていないメリットは多い。「綾・野菜加工館」社長、税所篤三郎さんは次のように話す。
「収穫された野菜が市場を通って店先に並ぶまで一般流通では早くても1~2日はかかりますが、うちの加工館は畑のすぐ近くにあり収穫から半日以内に製品化するのが基本。かなりの高鮮度だからほとんどの栄養素が失われることなく食卓に届きます。また、加工用は厳密な規格がないので大きさにこだわらす畑で完熟させることができます。 1、2月に加工する、肉厚で糖度の高い完熟ホウレンソウのおいしさは格別ですよ」と言う。さらに、ボイルではなくスチームによって加熱処理を行う点はこの工場ならではの特徴だ。おいしさ、栄養をさらに逃さずに製品化できる。

【食卓の最強サポーター】

 忙しい暮らしの中、洗ったり切ったりする必要がなく、すぐに使えて調理時間も短い冷凍野菜はありがたいし、重宝だ。まな板、包丁を使わないため、多少の後ろめたさを感じる人も少なくないというが、冷凍野菜を活用すれば農地の維持や地域経済の活性化を支えるという側面もある。「ぜひそうした点にも目を向け、すべてを冷凍野菜にということでなく、忙しいときや買い物に行けないときなど、ライフスタイルに応じてうまく取り入れてほしい」と税所さんは言う。

【殺菌は最低限で】

 「綾・野菜加工館」では、スチーム蒸気で加熱殺菌した後、薄めた次亜塩素酸ソーダと冷やした水を用いて殺菌・洗浄・冷却を行う。「極力薄く、残留しない程度にしか使いません」と営業部長の坂元昭人さんは言う。本来、殺菌は蒸気の加熱で十分、としつつも、調理時に加熱しない場合、購入後の保管状態などさまざまなケースを想定し、万が一の事態を起こさないため、どうしても最低限度の殺菌処理はせざるをえない。

【冷凍野菜の上手な使い方・おすすめ】

 最大のボイントは、自然解凍せず凍ったままの状態で調理すること。直接、熱湯にいれたり、フライバンで炒めたりするのがポイントだ。坂元さんのおすすめは「冷凍きざみねぎ」。市販のものはボイル処理をするが、ここでは加熱せずネギの食感・風味をそのまま製品化することに成功した。みそ汁に薬味にいろいろ活用してほしいと言う。

『生活と自治』2014年2月号の記事を転載しました。

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