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生協の食材宅配【生活クラブ】
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どんな卵がいい卵?

2013年10月、生活クラブの鶏卵生産者「鹿川グリーンファーム」が社名を変更、新たな一歩を踏み出した。「生活クラブたまご」(埼玉県岡部町)の誕生だ。

「コンセプトは『健康な鶏の卵』。そこに尽きます」と話す吉野訓史専務新生の「生活クラブたまご」専務の吉野訓史さんは言う。「何より大切にしているのは鶏の健康管理。そうでなければ組合員に納得してもらえる品質の鶏卵を届けることができません。その方針を今後も堅持していきます」


えさは遺伝子組み換え作物を使わず、約25%が国産の飼料用玄米。日本の気候風土に適合するよう国内で品種改良された国産鶏種の「さくら」と「もみじ」を開放鶏舎で育てる。だが、この飼育形態を守りながら経営を維持するのは容易ではない。


業界を圧迫する飼料価格


とにかく悩ましいのが飼料の主原料となるトウモロコシ価格の高騰だ。2008年、1トン当たり約223ドルと史上最高値をつけたトウモロコシの国際相場は、12年には米国内の干ばつの影響で、同298ドルの最高値となり、記録を更新した。


2013年には同258ドルと若干値を下げたものの、アベノミクスによる円安誘導で、1トン2万3,800円(12年)の国内販売価格が2万5,200円(13年)に値上がりした。また、遺伝子組み換えトウモロコシの作付面積の世界的な拡大により、「プレミアム」と呼ばれる非遺伝子組み換えトウモロコシの価格は、さらに上昇した。


鶏卵の生産コストは1キロ当たり約180円とされ、うち6割以上を飼料代が占める。「生活クラブたまご」の場合、飼料全体に占めるトウモロコシの比率は37.5%で、一般養鶏よりかなり低いが「農場全体での飼料の使用量は、年間約1万トン。飼料価格が1キロ1円上がると経費は1,000万円上がります。低迷していた卵価が13年秋から回復したおかけで、若干の黒字は出そうですが、14年度のおおまかな予算は、利益ほぼゼロです」

進む養鶏産業の寡占化

「もみじ」を抱く農場の担当者。純国産鶏種のシェアはわずか6%という貴重品だ世界鶏卵評議会が11年に公表したデータによれば、日本の鶏卵消費量は約250万トンで、国民1人が平均329個を食べている計算になる。これはメキシコに次いで世界2位の数字で、日本人は世界トップクラスの鶏卵好きといえそうだ。


案外知られていないが、鶏卵の輸入自由化は1962年に実施された。それでも輸入品の比率は5%程度にとどまり、自由化の波に打ち勝ってきたといえる。ただし、その採卵養鶏業界も近年では激しい業界再編に揺れている。


鶏卵の消費が飽和状態を迎え、70年代から業界は自主的に生産調整を続けてきたが、この措置を事実上2006年に撤廃。卵価の低迷が続くなか、さらなるコスト低減を追求する大規模養鶏企業の規模拡大と、中小規模養鶏農家の廃業が進み、100万羽規模の企業養鶏による寡占化が進んだ。08年以降のトウモロコシ相場の高騰と卵価の低迷が、その流れに拍車をかけた。


いまや大規模養鶏では、窓のないウインドーレス鶏舎のなかに一般的には8段、最大15段ものケージを積み重ねるのが一般的。いわば鶏用の高層マンションといったところだろうか。一方、「生活クラブたまご」の岡部農場のケージは3段、坂戸農場は1~2段。同じ床面積でも、鶏の飼養羽数では大規模農場の5分の1から15分の1の水準でしかない。つまり、生産効率は著しく低いが、その分、鶏の生育条件は快適なものになるわけだ。


また、大規模農場が導入するウインドーレス鶏舎では、産卵率を上げるため、温度や光量を調整しているが、「生活クラブたまご」の開放鶏舎は外気の影響を受けやすいため、鶏卵の生産効率も落ちる。これらの差は当然、生産コストに跳ね返る。

黄身の色が差別化の道具

卵のパッキング。汚れやひび割れ、血班卵は、ラインから取り除く食品加工業界や外食業界を中心に安価な輸入卵粉の使用も増加している。水を加えればとき卵状になる粉末で、軽量な上、長期保存が可能だ。鶏卵の消費が伸び悩むなか、卵粉輸入が増えれば、国産鶏卵のシェアは縮む。そうなれば国内養鶏企業の産他間競争とコスト競争はさらに激化しかねない。


こうしたなか、中小規模の養鶏業者は、飼料や飼育方法にこだわるなどして付加価値化を進め、一般市場の価格競争と一線を画す動きが顕著になってきた。一時期は、非遺伝子組み換え飼料が差別化の大きな武器だったが、08年以降の価格高騰以降、遺伝子組み換えが大半を占める一般トウモロコシに原料を切り替えるケースが増えている。


この間、よく見られる飼料に海草粉末やビタミン類を混ぜる「プチ・ブランド化」も差別化の一つ。そのブランドイメージを支える武器が黄身の色だ。黄身の色の濃い卵のほうが高級感を伴い、栄養価も高いというイメージを消費者に与えるのが、業界常識になっているという。


実は鶏が体内で黄色い色素を合成することはなく、黄身の色はえさの成分によって変わる。一般的には、トウモロコシの色素で卵黄が黄色味を増す。飼料米の使用を増やせば、黄身の色は薄くなって白さが強まり、パプリカなどの色素を飼料に添加すれば、さらに濃厚な黄色やオレンジ色の卵黄を作り出すこともできる。


「一般に販売されている卵の黄身の色が当たり前だと思うと、生活クラブの卵は色が薄く、栄養価もなく、味が薄いという印象を与えてしまう面もあるようです。黄身の色と栄養価とは全く関係ないのですが」と吉野さんは言う。

JA庄内みどりに堆肥を

2013年度の「生活クラブたまご」の供給高は前年比95.6%と減少傾向にある。「他の消費材の供給高も減少していることを考えると、最大の要因は、生活クラブ組合員の高齢化と組合員が増えないためかと思います。しかし、若い組合員のアンケートの回答を見ると、黄身の色や鶏種、飼料の違いなど、生活クラブの卵の価値が理解してもらえていない歯がゆさも感じますね」


それでも、「生活クラブたまご」は、新たな価値の創出に向けて動き出している。昨年は、堆肥化プラントを整備し、コメなどの共同購入を通して提携する「JA庄内みどり農協遊佐(ゆざ)支店」に、鶏ふん堆肥の供給を始めた。提携産地ネットワークの中で、有機物循環の輪がつながり始めた。


吉野さんは「健康な鶏の生んだ卵という基本的な考えの延長線上に動物福祉(アニマルウェルフェア)があると個人的には思っています」と言う。


すでに欧州連合(EU)やオーストラリアでは、鶏が自由に動き回ったり砂浴びもできる、アニマルウェルフェア型の改良ケージでの飼育が付加価値になり始めている。日本でもアニマルウェルフェア市場が確立される日が迫っているのだろうか。


◆国産鶏の卵の価値って?

文/農業ジャーナリスト・榊田みどり

2013年、「生活クラブたまご」は設立と同時に国内唯一の国産鶏種メーカー「後藤孵卵(ふらん)場」(岐阜市)との連携を強化した。データ集積や共同試験など、国内シェアわずか6%の国産鶏種の鶏卵の維持と普及に一歩踏み込む取り組みを始めたのだ。

国産鶏卵は生産、販売において他国との競争を迫られるグローバル経済のなかでも海外産に負けなかった。高度経済成長期の物価上昇局面にあっても、値上がりどころか逆に値下がりしだ物価の優等生”と言われ続けてきた。しかし、グローバル経済の荒波は卵を産む鶏のひな、飼料となるトウモロコシなどの輸入依存度を高め、国内の養鶏業者は規模拡大とコスト削減を図ることで、輸入品との価格競争に耐えてきた。

生産は国内で行われるという意味で国産鶏卵ではあっても、親鶏とえさという採卵養鶏の生命腺は、輸入依存の状況が続く。

鶏のひな輸入が自由化されたのは1961年。この前年に関税貿易一般協定(ガット)を批准した日本は、70年代の農産物自由化ラッシュより一足早く、「黒船に乗ってきたひな」の輸入を開始した。輸入されたのは、ほとんどが米国産。日本の鶏より育てやすく、多産だったこともあり、わずか1年足らずで米国産の鶏が日本養鶏場を席巻した。日本の民間育種場は次々と姿を消していった。


そうした逆風の最中、育種研究所を新設して地道に日本の気候風土に合った国産鶏の育種改良を続けてきたのが後藤孵卵場。 90年、生活クラブの鶏卵を国産鶏種産に全面的に切り替えることができたのは、同社の力添えによるところが大きい。 日本で育種改良された国産鶏種なら、仮にひなの輸入が途絶えても生産を継続できる。鶏卵を産んだ鶏の親世代、祖父母世代までさかのはって、どんなえさを食べ、どんな方法で飼育されたのかといった生産履歴も確認できる。なにより、食べ手である消費者の意見も反映させながら、より良い鶏種への改良が可能だ。


原産地表示は義務化されているが、種鶏の原産地に関しては表示義務がなく、一般市場ではその価値を評価する基準もない。一般のスーパ一の店頭に並ぶ鶏卵と生活クラブの消費材の違いを見分けるのは難しいかもしれない。しかし、環太平洋連携協定(TPP)への参加が現実になろうとしている現在、量的・質的に安定した、持続可能な生産という視点で、外見や表示だけではわからない「国産鶏種」の潜在的な価値を改めて考えてみる必要がある。

国産鶏種「もみじ」と「もみじ」の卵(右)。トウモロコシの使用が少ないこともあり、黄身は淡いレモンイエローだ。左はイメージ

『生活と自治』2014年3月号の記事を転載しました。

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