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みんなで作ろう「生産」「加工」「消費」の輪(室井滋「食」のふるさと紀行)

本誌「しげるの五感ドック」の執筆者で女優の室井滋さんは、食やその産地に寄せる思いも強い。今回は、1970年代に過疎地での有機農業実践を通じ地域づくりを始めた島根県のやさか共同農場を訪れ、同農場顧問の佐藤隆さんと対談した。同農場は、「いちごジャム」の原料になる加工用イチゴやタカノツメなどを通じて生活クラブとの提携を進めている。

冬を支えたこうじの力

室井 昨日はみそ作り体験をさせていただいて、手がすべすべになって感激しました。
佐藤 こうじの力ですね。昔はおばちゃんたちがつくっていたからみんなその効果を知っていたんですよ。
室井 以前うちの近所に住んでいた90歳近いおばあちゃんが、シミひとつなく色白で超美肌。聞いたら、こうじを使った食べものを欠かさずとってるって。きっと体の中もきれいだったんでしょうね。
佐藤 いい話ですね。
室井 そのときにこうじの役割を知って以来、良質なこうじはどうしたら手に入るだろうと思っていました。
佐藤 みそを作る際にもこうじがしっかりしていれば雑菌はあまり広がらないんです。こうじがちゃんとできているかどうかが非常に大切です。
室井 ということはその元になるコメやムギも大事で、微妙な温度管理など、生産工程も問われるんですね。あとは大豆。みそ作りの時、材料になるパック入りの大豆をそのままいただいたんですが、蒸したての栗みたいな食感で、豆本来の甘みが本当においしかったです。
佐藤 蒸したてを熱いうちにパックするからうま味が逃げないんです。大豆を栽培するのと同時に加工の工程も重要です。黒豆の色素が抜けないようにとか金時豆の皮が破けないようにとか、失敗作をごはん代わりに食べていたくらい、徹底的に研究しました,
室井 私たち女性にとって豆は大事。こうじもそうだし、これから先の自分の人生に強い味方を得たような気分になりました。
佐藤 室井さん、実はね、ここでの仕事を支えているのがみそ作りなんです。ここの冬は厳しいでしょう? 冬の間は畑仕事が一切なく、出稼ぎに行ったりしていました。みそを作るようになってからは冬が一番忙しいのです。朝から晩まで忙しくみそ作りをしているうちに春が来ます。みそのおかげで一番厳しい季節を乗り越えられるんです。

共同の思いを次世代ヘ

室井 はじめから農業を志してこの地にいらっしゃったんですか?
佐藤 そういうわけではなかったんです。1970年ごろ、農薬や公害が社会問題になって、一方で田舎の過疎化が進みました。都会に出回る野菜は見た目はきれいだけど農薬は相当危ないらしいと。都会の人間が農村に入って、一緒に村を再建しなければと思ったんですよ。最初は頭でっかちでした。
室井 最初から過疎地に若者を集めて根付かせようという活動をされていたんですか。
佐藤 そうですね。ちょうど70年代前半のころは、ヒッピーの人たちの共同体づくりがブームで、全国にそうした活動があったんです。
室井 共同農場って何から何まで一緒に暮らすんでしょうか?
佐藤 当時のブームは仲間が一体となって共に暮らすという傾向が強かったのですが、僕らはそれには否定的でした。
僕らがめざしたのは、みんなで協力して道を直したり、困ったときにお互い助け合ったり、そうしたかつての農村の共同精神を、地域の人と共に再現していこうということでした。多くの共同体が失敗しましたが、僕らの場合は、地域の人と共にということで残ったように思います。
室井 今も若い方が多いですね。しかもイケメンぞろい。夕べは、そんな若者にこれからの夢を語っていただき、とても新鮮でした。あんなふうに自分の夢を知らない人にキラキラと語れるなんて、頭でっかちではできないですよ。
佐藤 どんどん外にでて、多くの人と話したり自分の思うことを伝えたりする機会を持つことが重要ですよね。批判されてもそれを恐れずに受け止めているうちに変なプライドもなくなっていきます。
室井 日本中、どこにいっても今、農業することは厳しいですものね。
佐藤 そうです。国の補助金で農業が成り立っていることに疑問を持たないようではおかしいんです。他の産業と同じように自立して、子どもを学校に出せるくらいの収入があるようにしないといけないと思っています。

やさか共同農場のみなさんと

共につくる農産加工品

室井 こうじを使った甘酒や塩こうじなどの製品化、それに向けた作物作りについては今後、どう考えていらっしゃるんですか?
佐藤 加工品については、やはり食べる人と一緒に共同開発していきたいですね。たとえばコメにしても、水加減や炊き方で味も変わるでしょう。どこまで食卓に近づいていけるか、きついことも言ってもらって、意見交換しながらいいものを作っていきたい、それが本当の「顔のみえる関係」だと思うんです。ただ野菜に顔写真を付けて販売すればいいという発想ではなく、どこまで食べ方や原料のことを伝えていけるかが大切です。
室井 そうですよね。私も、デポーの組合員なんですけど、時々お店に伺うと、デポーにはそうした資料がちゃんとあるし、いろいろ教えてもらえます。それらを自分の暮らしに取り入れられるのはいいなあと思います。
佐藤 それは輸入農産物には絶対できません。そうしたことをもっと強く発信していきたいです。
室井 大切なことですよね。
佐藤 なんでも自分たちでするのはいい面もあるしこの農場の特徴なんですが、その意味では少しまとまり過ぎているようにも思います。これからは、他地域の農場や加工業者ときちんと連携して関係を広げ、広く社会に伝えていきたいですね。
室井 ぜひどこかと連携して、こうじパックや煮大豆のひと口パックをつくってもらいたいなあ。
佐藤 今の時代の感覚にあうものをつくるには、新しい目線で、新しい仲間との連携も重要。今、仲間と西日本ファーマーズユニオンというグループをつくって共同開発を始めようと考えてます。煮大豆の小分けも準備していますよ。
室井 つぶしてあるのがいいんです。そのひと手間で栗みたいになりますものぉ。


◆健康とイケメンの郷
やさか共同農場のイケメンたち

文・室井滋

 雪がまだそこかしこに残る島根の山あいの弥栄(やさか)町に、今回はお邪魔しました。
 共同農場というネーミングや半ぱない山の中という立地からするに、さぞや足腰の痛みをこらえてがんばるお年寄りばかりと想像していましたが、到着してビックリ! 出迎えてくださったメンバーは元気はつらつの若者だらけではありませんか!?
 「わ、若い! しかも男前じゃないのぉ」
 私ときたらがぜんテンションがあがります。そして全国から集まった若きファーマーたちに誘われビニールハウスに。冬でもスクスク育つ新鮮な小松菜の収穫に立ち会わせてもらうのです。
 「ここでは小松菜とホウレンソウを作ってます。夏場は約1ヵ月、冬場は約3ヵ月、連作を防ぐために代わりばんこです」
 イケメン君に習って私も手摘みさせてもらい、さっそくお味見も。
コマツナをぱくり 「わあ、甘い! コマツナがこんなに甘いの?」
 私が黄色い声をあげてはしゃぐと、すかさずその理由の解説が。
 「冬のコマツナがいっそう甘いのは、この土地の寒さのおかげなんです。すんごく寒いから自分自身が凍らないよう一生懸命光合成して糖をたっぷり蓄えるんです」
 「凍らぬよう糖を? 昔、理科で習った記憶が…」
 「そう。水に砂糖を入れて実験したでしよ? 凝固点降下です」
 コマツナもがんばっているんだと、私は大きく頷(うなず)き、ムシャムシャ。さらに加工用ジャムのイチゴ畑を案内してもらいます。
 まだうっすら雪が残る畑から、イチゴの根を切り、株を整える作業でみなさん大わらわな様子。
 「5月、6月になると、酸味のある昔ながらのおいしいイチゴが山のようになるんですよ。イチゴってバラ科でして、元々はこんな風に路地のものでした。それが生食用はどんどんビニールハウスで改良され、限りなく甘い果物として売られているわけです」
 「イチゴって華奢なイメージだけど、本来は強くたくましい?」
 「はい、路地もののイチゴってとても栄養があって魅力的ですよ」
 収穫期には体にイチゴのにおいが染みついてしばらく取れないほど大忙しなのだそうです。
 「イチゴの香りのイケメンかぁ」とまたまたウットリしたものですが、この後体験させていただいたみそ作りでさらに新たな発見を……。
 この共同体のおかあさんである佐藤富子さんから素朴で楽しいみそ作りを教わりました。
 「つぶした有機煮大豆、塩、麹(こうじ)を合わせてこんな風にお団子にしてバチーンってつぼの中に投げてぇ」
 「バチーン! うふふ、スカッとするわぁ。みそ作りでストレス発散できちゃいますね」
 まるで粘土遊びを楽しんでるみたいな気分になって、すっかり童心に返ります。おまけに、仕上げに塩を振り重しをのせるころ、なぜか私の手がツベツベになっているではありませんか!?
 「わぁ、ひょっとして、これ、麹のお陰?」
 私は自分の手を見てウットリしたものです。
 「お化粧で飾らなくても、ここには自然の香水やすごい美容液がある!」
 やさか共同農場の皆さんの優しさとパワーに、しみじみ胸があつくなりました。

『生活と自治』2014年5月号の記事を転載しました。
 

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