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子どもも大好き! ジャンルを超えた新感覚スイーツ

埼玉県嵐山町にある和菓子メーカーの紅葉堂。創業69年の老舗が新感覚のスイーツ「DORA焼きマスカルポーネ」を完成させた。

子どもたちにこそ本物を

企画開発部長の渡辺裕晃さん一見、どら焼きそのものだが食べると洋風テイスト。「DORA焼きマスカルポーネ」は、チーズと生クリームが持つ、独特のミルク風味を生かした味わいがある。
「幅広い年代に好まれるチーズを原料に若い世代が子どもと一緒に食べられるおやつを作りたいとスイーツ感覚の焼き菓子をイメージしました」と、同社企画開発部長の渡辺裕晃さんは言う。

和巣子づくりの老舗である紅葉堂が生活クラブと提携を開始したのは1990年。国産小麦粉、沖縄産「素精糖」を使ったカステラ開発の依頼がきっかけだった。以来二十数年、国産原料、遺伝子組み換えでない食材にこだわり、焼き菓子の製造を続ける。
同社のカステラ、どら焼きの人気は今も根強いが、利用者はどうしても中高年層が中心だ。「高品質の原材料で作るおいしさを若い世代にもっと知ってほしいし、子どもたちにこそ本物の味を届けたい」と渡辺さんは新製品開発の動機を語る。子どものころからスイーツ好きで、洋菓子の流行にも敏感だったという。

皮に挟むあんには国内の乳業メーカーが生産する北海道産マス力ルポーネチーズを選んだ。乳脂肪分が豊富で甘みがあり、酸味や塩分が少ないことから「ティラミス」などケーキ材料やデザートによく用いられる。中学生のころティラミスが流行し、味わったことのないおいしさにショックを受けた。その鮮烈な味の記憶が「マスカルポーネのどら焼き」の発想の原点にもなった。
 

試行錯誤の末に

開発部長兼製造部長の伊野松彦さん「『参った』という声が現場から何度も上がりました」と、開発当初を思い起こすのはOEM開発部長兼製造部長の伊野松彦さんだ。和菓子づくりに携わって40年以上、現場を知り尽くす。
「最初はマスカルポーネチーズに白インゲンマメのあんを混合し、サンドしようと考えました」
柔らかなあんを機械で詰めるには、一定の硬さの素材が必要だ。たとえば『生クリーム入りどら焼き』は小豆あんをベースにして生クリームを配合する。伊野さんは、チーズの色と風味を損なわないものをと白イングンマメを選び、組み合わせることにした。

しかし、自信を持って持参した試作品に対する生活クラブ開発担当者の反応は「豆のざらつきが舌に残ってクリームの滑らかさを妨げてしまう。チーズクリームだけにしてほしい」という意外なものだった。
そこでさらに検討を重ねた結果、ベースの素材には同じ乳製品である生クリームをホイップして使用することが決まった。
「白インゲンマメのあんを徐々に減らしてどこまでやれるかやってみよう」と製造現場はこれまで経験したことのないあんづくりに着手した。

食用植物性油脂を使い、菓子業界では使用が一般的な添加物の乳化剤や増粘剤を利用すれば、チーズだけのクリームづくりはたやすいため、同社にも添加物メーカーからの売り込みが頻繁にある。「製造現場も私もそれはしたくないという思いでした。やはりあんづくりは職人技に任せるしかないと腹をくくったわけです」

ホイップした生クリームは、時間を経るにつれ形が崩れゆるくなってしまう。ベテラン職人でも調整は微妙だ。ホイップをしたときにできるクリームの渦の状態をしっかり見極め、チーズと配合してからの変化を粘り強く観察、どの状態なら安定するか、データを蓄積し再現することで、機械で充てんできるしっかりしたクリームを完成させた。

「おいしさの追求が最優先。でも、機械での製造ができなければ製品になりません。割高でも生クリームを使うのはそのためです。試作開始から1年以上もかかりましたが、現場の職人たちと国産原料の価値や今後の食育を再確認しながらのチャレンジになりました」

確かめられる価値

原料となる鶏卵は黄身が崩れていない状態で入荷するスイーツとしての工夫は、どら焼きの皮にも。通常はみりんとしょうゆを加え和の風味に仕上げるが、新製品はこれらを抜き、代わりにあんと同じ高い純度の生クリームを配合した。マスカルポーネチーズの風味を引き立て、ふんわりした食感に近づける効果がある。

生地の主原料には、地元の埼玉県産の小麦粉と、同じく埼玉にある生産者「生活クラブたまご」の鶏卵を使う。鶏卵は割卵し、できるだけ黄身が崩れていない状態で入荷する。コストが低く保存も利く冷凍液卵もあるが、「それでは鮮度の良しあしもわからない」と伊野さん。小麦粉は製粉メーカーが近く、粉の特性も製法もすぐに確認でき、鶏卵は親鶏のえさや育て方まで分かる。「食べものってそういうことが大事ですよね。地産地消の価値と思っています」

製品開発を担う渡辺さんは「今後も新しい感覚を養って、また食べたいと思ってもらえるお菓子を提供していきたい」と語る。


◆おいしく楽しく、食べ方いろいろ


新感覚だから「DORA焼き」
チーズの栄養価もあり、育ち盛りの子どもにぴったり紅葉堂のどら焼き「栗入り」「うぐいす餡(あん)」「生クリーム入なると金時」など人気シリーズに新たに仲間入りしたのが「マスカルポーネ」。従来のどら焼きのイメージを一新する洋風テイストに、試食した生活クラブ組合員も「どら焼きを超えた!」と感嘆した。そのイメージをどう伝えようかとみんなで考え「DORA焼きマスカルポーネ」と命名した。幅広い世代に楽しんでほしいという願いが込められている。

自分の好みの食べ方で
乳化剤や酸化防止剤など合成保存料を一切使わずに製造しているため、紅葉堂のどら焼きはすべて冷凍で流通する。「0.3ミクロン(10000分の3ミリ)の微粒子まで除去できるフィルターを設置したクリーンルームで製造します。その後、個装・袋入札をして直ちに冷凍庫へ搬入して保管します」と製造部長の伊野松彦さん。

「おいしい食べ方の基本はまずは自然解凍で。食べる数時間前に冷凍庫から冷蔵庫に移しておくと、皮のふんわりした食感とマスカルポーネの風味がマッチした、作りたてのおいしさを実感できます」と企画開発部長の渡部裕晃さん。さらに「DORA焼きマスカルポーネ」ならではの楽しみ方もある。イチゴとブルーベリーを挟むと彩りも楽しく、酸味が加わり一層さわやか「冷凍のままなら『アイス』としてもおいしく、半解凍ならサクサクの食感が楽しめます。好みや気候に合わせておいしい食べ方をみつけてください」

簡単アレンジでおしゃれデザートに
従来のどら焼きより少し小さめの食べ切りやすいサイズが3個セット。小家族にも利用しやすい。また従来品はあんが飛び出さないように2枚の皮で縁辺をきっちり押さえて仕上げるが、マスカルポーネはチーズクリームの柔らかな特性から軽く合わせるだけにとどめている。解凍すると皮ははがしやすくなるのでアレンジもしやすい。スイーツ好きの渡辺さんのお勧めはチーズクリームにブルーベリーやチョコレートソースなどを添えた楽しみ方だ。もう1枚の皮を乗せてサンドにしたりチーズケーキのように皮の上に直接ソースをかけてデザート風にしてもおいしい。
見た目もかわいく手土産にも向くパンダまんじゅう
イチゴやキウイ、パイナップル、生のブルーベリーなど季節の果実を添えれれば華やかさとボリュームが加わっておしゃれなパフェの雰囲気も演出できる。

おやつに人気、パンダまんじゅう
子育て世代に向けて製品開発を担う渡辺さんのもう一つのお勧めが「パンダまんじゅう」。「ほんのりバニラ風味の生地に口どけまろやかな黄身あんのハーモニーが人気です。牛乳と一緒にどうぞ」

『生活と自治』2015年4月号の記事を転載しました。

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