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品種交配とコメが決め手の「おいしさ」

豚の生理に合わせた肥育を心がけ、遺伝子組み換え(GM)作物を使った飼料を与えない。そんな平田牧場の豚肉の「おいしさ」の決め手は─。

あまた出回る「三元豚」だが

コメを配合した飼料 イベリコという名の豚がいる。とりわけドングリだけを食べて成長したイベリコの肉は最高級品として珍重されるという。
 「ドングリといっても、日本のドングリとは別物と思ったほうがいいでしょう。クリに近い感じかなぁ」
 世界各地の豚を見て回っては、肉質や加工原料としての適性を調べてきた平田牧場社長の新田嘉七さんはそう話す。近年、何かと注目されるようになったイベリコだが、「残念ながらイメージ先行の実力不足。品質のばらつきも大きいのが実情ではないですか」と素っ気ない。
 ただし、ドングリだけを食べて育った豚の肉が高級品とされる点には理解を示す。「おいしい豚肉」を世に送り出すための決め手が品種交配と飼料にあると新田さんも考えるからだ。
 赤身の多い豚肉を望むなら、ランドレース種(L)、大ヨークシャー種(W)、とデュロック種(D)を掛け合わせたLWD交配が中心になる。3品種をかけあわせた三元交配、いわゆる「三元豚」と称される豚である。
 一方、平田牧場が目指すのは日本人の「牛肉信仰」を打ち破るような肉質を持った豚の開発といってもいい。霜降りと呼ばれるサシの入った牛肉は、いまなお高級品として売買される。肉といえば牛、豚、鶏と順位付けする市場の論理も揺るがない。こうした社会と業界常識への挑戦が、ランドレース種(L)とデュロック種(D)にバークシャー種(B)を交配させたLDB種の「平牧三元豚」の開発につながり、その品質の高さは生活クラブの組合員の共同購入を通して社会に広く知られるようになった。

見た目で「NO!」のつらさ

平牧三元豚 「いまや豚肉といえば、どこでも三元豚をアピールするようになりました。それらはLWD中心で、当社のようにLDBを導入している事業者はほかにはないといっても過言ではないでしょう」と新田さん。
 同じ三元交配でもLWDとLDBでは大きく異なる。後者は生まれる子豚の数が少なく、短期間で肉付きよく肥育するのが難しい。何より赤身だけでなく脂肪を乗せるための交配であるため、肉になったときの製品歩留まりが悪くなるという課題がある。つまり、製品として出荷する前に切り取って捨てざるを得なくなる脂身の量が増えてしまうわけだ。
 「フレッシュミート(生肉)に限らず、平牧三元豚を原料にしたウインナーやハム類も同じ課題を抱えています。肉のおいしさを追究して脂身を乗せた品種交配がメリットではなくデメリットになり、消費者に敬遠されがちなのが残念です。正直やるせない思いもあります」と話すのは、平牧三元豚を原料とする加工品を生産する平牧工房加工本部長の幸田祐治さんだ。とりわけ悩ましいのがベーコンの脂身の扱いという。
 生活クラブが共同購入しているベーコンはパックに入った状態では、市販品と比べて確かに白っぽく見える。だが、フライパンでさっとあぶっただけで、その白さはうそのように消えてしまう。
 もちろん、味の違いは明らかで、市販品にはないうまさがあるが、どうしても最初の見た目で嫌われてしまうらしい。
 「脂身が多いのではないかという生活クラブからのクレームには謙虚に耳を傾けていますし、対策も講じています。しかし、平牧三元豚を使った加工品である以上、良質な脂のうま味を楽しむという視点を何とか持っていただけないかという思いでいっぱいです」

輸入トウモロコシをコメに

 飼料の原料と配合バランスもおいしい豚肉をつくるための決め手の一つだ。社長の新田さんは「イベリコがドングリ育ちなら、平牧三元豚はコメ育ちです。コメのおいしさと栄養分がしつこくなく、味わい深い脂質と良質な赤身の豚肉の源になっています」と胸を張る。
 生産コストの問題もある。
 飼料用トウモロコシをバイオエタノール原料にする米国の動きや、ブラジル、ロシア、インド、中国、新興4カ国(BRICs)の経済成長による食肉需要の高まりが、トウモロコシの国際相場を高止まりさせ、2008年以降は飼料価格の世界的な高騰が続いている。
  「1キロ30円から35円」と聞くと、それで高いの? と思うかもしれないが、1頭の豚が食べる量だけでも200日間で300キロ。これが約20万頭分ともなれば、キロ当たり数銭の差が膨大なコスト増となってのしかかってくる。
  遺伝子組み換え(GM)のトウモロコシを与えた場合の豚への影響はもちろん、その肉が最終的に人の口に入る以上、未知のリスクを抱えたGMトウモロコシをえさには使えない。
 ところが、米国産トウモロコシの約9割がGMで、非遺伝子組み換え(NON-GM)トウモロコシを購入するには、プレミアム(付加金)まで負担しなければならない。そんな輸入トウモロコシ価格に飼料用のコメの価格が匹敵するようになってきた。背景には政府の政策と栽培助成措置がある。
 「だったら、トウモロコシをコメに置き換えてみようと考え、親類の農家に頼んで飼料用米を栽培してもらいました。この試みの背中を押してくれたのも、生活クラブの組合員です」と新田さん。コメだけでなく、牧草や野菜などの粗飼料で育ち、バークシャー種のように脂質のうまさを持った品種の豚を探し求め、中国原産の何種類もの豚の試験肥育も繰り返した。
 最終的には中国の高級ハムの原料に使われる「金華豚」だけを残し、ランドレース種(L)とデュロック種(D)と金華種(K)を交配させるLDK種の「平牧金華豚」を開発。その導入が進められようとしている。
 飼料に配合される輸入トウモロコシの3%(重量換算)をコメに換え、肥育する豚の一部に食べさせる実験がスタートしたのが1996年。2014年には生後78日から120日の肥育前期に与える飼料に配合されるトウモロコシの10%を、以降200日までの肥育後期には15%をコメに置き換えている。
 「今年2月からは肥育前期にはトウモロコシの15%、後期は30%をコメに換える実験を進めています。これが地元の庄内地方(山形県)はもとより、全国の水田をつぶさない力となり、日本の食料確保への道を確たるものにすると信じています。コメを食べて育った豚の赤身はしっかりした肉質で、脂も上品なうまみがあります。とにかく実際に味わってみてください」(新田さん)


◆「ビジョンフード」と予見の書
「共同開発米部会」元会長の川俣義昭さん
 「家畜のえさにするコメを作ってもらえないか」と、だれかに初めて言われたときの農家の驚きは並大抵ではなかっただろう。
 人が食べるのが当たり前、やおよろずの神への供物のコメを家畜のえさにするとはどういう了見かと、相手を詰問したくもなったはすだ。そうした複雑な思いを抱えながら、どのコメ産地にも先駆けて「飼料用米」の作付けに挑んだ人がいる。
 山形県遊佐町の川俣義昭さん。生活クラブの「遊YOU米」生産農家で、庄内みどり農協(JA庄内みどり)「共同開発米部会」の元会長だ。川俣さんは平田牧場が肥育する豚のえさにコメを使う実験を開始してまもなく、自分の田んぼに飼料用米を作付けした。「まったく抵抗がなかったわけではありませんが、コメ づくりとともにある遊佐の暮らしと田園風景を後世に残すための挑戦に参加しないかという誘いにやりがいを感じ遊佐町の田んぼました。ひと言でいえばわくわくするような思 いがしたわけです」
 川俣さんの決断が起爆剤となり、遊佐町はもとよりJA庄内みどり管内の山形県酒田市でも飼料用米の栽培が普及していく。これを農林水産省が支援し、栽培面積10アー ル当たり8万円の助成金を支払うなどの対策が講じられるようにもなった。川俣さんら庄内の稲作農家と平田牧場の英断が国を動かしたといってもいい。
 現在、農水省は飼料用米の栽培を奨励するため、収量に応じて10アール当たり5.5万円から最大10.5万円までの補助金制度を導入している。さらに、今年3月、同省が発表した「食料・農業・農村基本計画」にも、今後10年、飼料用米の普及により力を入れていく方針が盛り込まれた。ただし、消費量が減り続 ける主食用のコメの作コメ育ちの「平牧三元豚」付けについては助成措置を見直し、市場原理に基づく農家間の自由競争に委ねられる。 
 こうした時代の到来を予見した本がある。東北大学名誉教授の角田重三郎さん(故人)が1991年に農村漁村文化協会から刊行した「『新みずほの国』構想」だ。たとえ人が食べる量が減ってもコメは増産すべきと角田さん。家畜のえさにしてもいい。バイオエタノールの原料にしてもいい。日本のコメ、欧州の小麦、米国のトウモロコシという三大穀物の適地適作を維持発展させていく以外に、世界の食料事情を安定成熟させる道はないと訴える。
 コメを食べて人が生き、コメを食べて家畜も育つ。コメから作ったエタノールで自動車が走り、何より田んぼとともにある農家の暮らしがある。そんな社会を 次世代へとつなぐのが生活クラブの豚肉であり、「遊YOU米」であるとするならば、まさに「ビジョンフ-ド」と呼ぶにふさわしいと思うが、どうだろうか。

『生活と自治』2015年6月号の記事を転載しました。

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