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家庭向け「電力の小売り自由化」 生活クラブエナジーの対応は?

生活クラブ連合会と各地の生活クラブが出資し、2014年10月に設立した株式会社「生活クラブエナジー」(本社・東京都新宿区)では、生活クラブ事業所への電力供給に続き、今年6月から東京、神奈川、千葉、埼玉の組合員1,500世帯に、10月からは全組合員世帯を対象に、再生可能エネルギーの供給事業を開始する。
 

(左から)浜田有士さん、赤坂禎博さん、荒川展道さん 

今年4月からの家庭向け電力小売り自由化をめぐり、新たに電気販売事業に参加する企業間の宣伝合戦が激しくなってきた。
スマートフォンや携帯電話と併せて契約すれば「よりお得」とアピールする通信事業者。ガス料金とセットなら「さらにお安く」と訴える大手ガス会社もあれば、「当社と契約していただければ、通勤通学用定期券の割引率をアップ」とする大手私鉄会社も登場した。

こうしたなか、生活クラブ連合会と各地の生活クラブが出資し、2014年10月に設立した生活クラブエナジーは、生活クラブ事業所などの高圧電力使用者向け売電に加え、今年6月から東京、神奈川各500世帯、千葉、埼玉各250世帯の計1,500世帯の組合員を対象に、風力や太陽光、バイオマス(生物由来資源)発電施設から生まれた再生可能エネルギーの先行供給を開始する。さらに10月からは対象を同生協の全組合員に拡大し、先行実施分を含めた契約数1万4,340件獲得を目標に、新規契約を呼びかけていく。

「脱原発を目指し、温室効果ガス削減に寄与する生活クラブの再生可能エネルギー・グリーン電力供給事業に期待を寄せている多くの組合員に、10月まで待ってもらうのは正直、心苦しいです」と同社営業部長の浜田有士(ゆうし)さん。

同社の電力調達は何より再生可能エネルギーの比率を重視し、その割合を高くしていく設計方針に基づく。その実現には、自社保有の電源(発電施設)からだけでなく、他社とも連携して、調達可能な再生可能エネルギー量を段階的に増やしていく必要がある。

「ですから、どうしても調達量に見合った利用者拡大を進め、利用対象を限定した共同購入にならざるを得ません。ぜひご理解願いたいです」

契約希望者に書類を郵送

これまで東京電力などの一般電力事業者から電気を購入してきた世帯が、別の事業者と新規に売買契約を結びたい場合、新規の契約先となる事業者に連絡するだけで手続きは進む。

生活クラブエナジーは今年4月にコールセンターを開設。各地の生活クラブが集約した契約希望者への対応を進めながら、東京電力などの一般電力からの契約変更希望を電話で受け付ける。

今回の電力小売り自由化では各世帯から新規契約の連絡を受けた生活クラブエナジーなどの小売り電気事業者が、その旨を送配電事業者に伝え、家庭用電力メーターの交換が行われる。遠隔地でも電力使用量が把握でき、定期的な検針が不要な「スマートメーター」への変更となる。
「交換費用は原則としてかかりません。ただし、場合によっては一時的な停電が予想されます。この点は作業を担う、東電や中電などの送配電事業者に確認してください」(浜田さん)

また、料金引き落とし口座は生活クラブの共同購入代金引き落とし口座と同じで支障ないが、新たな登録申請が必要になる。

気になる価格と特典は?

今回の電力小売り自由化に際し、消費者が契約する電力会社を変える際の動機として注目されているのが、付帯サービスの中身と電気料金の低減化だ。生活クラブエナジーとの契約では、どんな「特典」があるのだろうか。

「スタート段階の契約プランは再生可能エネルギー比率30~60%の電気の1種類からスタートします。まずは電気の共同購入事業の安定を考慮し、多様なメニュー展開については今後の課題としています。料金は一般電力事業者の設定より高くはしない、ほぼ同一水準での出発になります」と浜田さん。「とにかく注目していただきたいのは、生活クラブエナジーが調達する電力に占める再生可能エネルギーの比率の高さです」

太陽光、風力、地熱、水力(大型ダムによる発電を除く)、バイオマスの各発電所から生まれる電力は現在、日本全体の電力量の約7%。今年4月から電力小売りに新規参入する企業の大多数が原発や火力発電から生まれた電力を販売するのは必然だろう。

「当社の再生可能エネルギー調達比率は高い水準にあります。これが原子力や化石燃料に頼らないエネルギー自給を目指した事業である証しです。その考えに賛同してくれる人が増えれば、脱原発依存と二酸化炭素削減を進める再生可能エネルギーの、日本の電源構成に占める割合は高まっていきます。これが一番の特典と思ってもらえたらうれしいです」

中部と関西はバイオマス

生活クラブエナジーが、高い再生可能エネルギー調達比率を維持するには電源開発に向けた努力が欠かせない。同社は電源として東京、神奈川、千葉、埼玉の四つの生活クラブ(首都圏4単協)が秋田県にかほ市に2012年に建設した風車「夢風」と生活クラブ北海道の厚田風力発電所(15年1月稼働)からの電力を確保している。

また栃木、茨城、大阪、京都の各生活クラブと首都圏4単協が設置した太陽光発電施設からも電力を調達する。
これに「生活クラブSOLAR栃木発電所」(14年12月稼働)と「生活クラブSOLAR群馬」(15年2月稼働)が加わったが、太陽光は夜間に発電できず、風が吹かなければ風力発電は稼働しない。

そこで生活クラブエナジーでは、特定規模電気事業者(PPS)のサミットエナジーと提携し、同社のバイオマス発電所から電力を購入している。
「今年1月、やはりバイオマス発電事業者の発電所(山口県岩国市)と新規受給契約が成立し、中部電力と関西電力管内の生活クラブ組合員5,000世帯にも10月からの供給が可能になりました」と生活クラブエナジー代表取締役社長の半澤彰浩さん。

当初、中部電力と関西電力管内では電源の確保ができず、長野、静岡、愛知、大阪、京都、奈良、滋賀、兵庫の各生活クラブヘの供給は17年度以降の課題とされていた。これに落胆していた中部と関西の組合員には朗報となった。

課題は電源開発と需給調整

「生活クラブエナジーは組合員の道具。ぜひ上手に使ってほしい」と半澤彰浩さん電力調達の連携パートナーであるサミットエナジーは、首都圏4単協が風車建設に併せて設立した発電事業者のグリーンファンド秋田から電力を購入し「需給調整」をしながら生活クラブの各事業所に供給してきた。

需給調整は利用者が必要とする電力量(総需要)と送電量(総供給量)の差を30分単位で点検し「プラスマイナス3%」の枠内に抑える業務を指す。この枠を超えた場合はペナルティーが課され、供給された電力は送電網を所有する電力事業者に無償で引き取られる。
「コスト負担を考えれば、需給調整も自社で担いたいのですが、専門性が高い業務であり、当面はサミットエナジーに委託します」(半澤さん)
新規契約者が増えれば増えるほど、新たな電源開発を進めなければ再生可能エネルギーの調達比率が下がる可能性が高い。需給バランスが崩れた状態が続けば、収益悪化が常態化する恐れもある。

半澤さんは言う。
「電気の共同購入の主役は契約者である生活クラブの組合員。組合員参加で(事業内容の)メニューをつくり、電源を開発して、再生可能エネルギー100%の社会を目指していきたいです。これまで私たちが受動的であった電気の購入のあり方を主体的につくり変え、持続可能な社会、未来をつくる選択として電気の共同購入を位置付けたいです」

そして、重ねて訴える。 「今後は生活クラブの提携生産者とも力を合わせ、24時間発電が可能な小水力発電の開発に努めます。同時に脱原発依存と二酸化炭素削減を進める電源の普及を目指す他団体との連携を深め、電源を融通しあう関係構築も進めていきます。生活クラブエナジーは持続可能な未来を育てるための皆さんの道具です。各家庭で省エネを進め、何としても積極的に使いこなしてください」


◆「文句があるなら対案」というのなら─


何らかの理由で原油の輸入が止まれば、電力供給をはじめ生活全般に深刻な影響が出るのは必然だろう。だが、だれもが「そんなことを気に掛けている暇はない」といわんばかりの日々を送っている。「だから危ない。もっと謙虚に暮らしの足元を見なければいけないし、人が生きるのに不可欠な事物は何かを生き物の視点に立って、もっと真剣に考えてみる必要がある」と話すのは解剖学者の養老孟司さんだ。

いうまでもないが、大気に水、お天道様なくして、人は生きていけない。その生命の源たる「食」はもちろん、それらを煮炊きし、暖をとり、風呂を沸かすのにも使い続けられてきた森林資源も自然の恵みといえる。恵みというならば、ときに畏怖し、感謝し、一目も二目も置くのが筋なのに、「ある」のが至極当たり前なせいか、そんな気持ちは生まれにくい。

いまでは森林資源は石油や天然ガスに代替され、両者を使って生まれる電力が暮らしを支える。おかげで「食」は「つくる」から「買ってチンする」へと変化し、何事も手間いらず」が一番。おまけに激安・格安なら言うことなしの時代になった。そんな社会を根底から支える電力を生み出すための石油はだぶつき気味で安価が続き、天然ガスの供給も安定しているという。

しかし、石油も天然ガスも限りある資源であり、燃やせば温室効果ガスが発生する。だから「原発は必要かつ不可欠な電源」と説く永田町と霞が関の主たちや財界人も少なくない。その原発が尋常ならぬ数の命を脅かし、未曽有の自然破壊を引き起したという大罪を犯したことをどう受け止めるのか。核廃棄物の最終処分問題もある。
安倍首相にも問いたい。今年1月の国会で「(憲法改正に)文句があるなら対案を出せ」と野党に向けて発言されたようだが、原発再稼働に反対する人びとが文句を言うだけでなく、対案として提示し、一歩ずつ具体化を進めている再生可能エネルギー普及をどう受け止めているのか。
「国民の生命と財産を守る」というのなら、「自然と共生」と「自給」の視点が欠かせない。この視点に立った「食」の共同購入を続けてきた生活クラブの組合員が、新たに
「再生可能エネルギー電力」の共同購入に挑戦する。

平和で健康的な暮らしを支える電力自給の実践は「無いものねだり」のお任せ主義とは一線を画した生活基盤の確立でもある。

イラスト・掘込和佳

『生活と自治』2016年3月号の記事を転載しました。

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