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次世代に伝えたい、魚のおいしさ

大型巻き網船による漁法が増えるなか、枕崎市漁業協同組合は「一本釣り」にこだわる。品質のよいカツオの提供とともに、資源と魚食文化を次世代に伝えるさまざまな活動をすすめている。

自慢の一本釣り

枕崎市漁協総合加工場営業課長の安藤昭人さん鹿児島県の薩摩半島最南端、東シナ海に面した枕崎市は、赤道周辺を漁場とするカツオ漁など遠洋漁業の拠点として発展してきた。
「カツオ漁には巻き網漁と一本釣りの二種類があり、巻き網は巨大な網で群れを囲み一網打尽にする漁法。一度に何十トンも取れるので最近急激に増えています。一本釣りだと多くても5~6トンで、少なければ何百キロしか取れません」。こう話すのは、枕崎市漁協の総合加工場営業課長の安藤昭人さん。背中に大きく「一本」の文字がプリントされたジャケットを羽織っている。一本釣りをアピールしようと作成した、漁協関係者おそろいのユニフォームだ。

同漁協が一本釣りにこだわるのは、今では全国に24隻しかない一本釣り専用の漁船3隻が同市の枕崎漁港に寄港し水揚げしているから。「自前の船と工場を同じところに持つ漁協は全国でも少ない。せっかく持っているものを生かさなくては」と安藤さん。
巻き網漁船で獲ったカツオは、一度に大量に捕獲されるため、網の中で魚体がぶつかりあい汚れや傷が激しい。船上にあげるまでに死んでしまう魚も多く、大量のカツオのもつ熱により凍結までに時間もかかる。温度があがるのは、アミノ酸が醸成されるので悪いことではないが刺身には向かず、ほとんどがかつお節や缶詰など加工用の原料となる。

一方、一本ずつ釣り上げられるカツオは、傷がつかずストレスも少ない。マイナス20度の凍結液につけ急速冷凍できるので刺身用の鮮度と品質を保持できる。船内冷凍庫にマイナス50度で保管、一度も解凍されることなく凍結した状態で工場に持ち込まれ、刺身やたたきに加工される。自前の船と工場をもつ枕崎市漁協ならではの製法だ。この品質を維持するため、同漁協では一本釣りのカツオのみを扱う。
巻き網漁船で獲ったものでも、中には鮮度のいいまま船倉に入るものもある。そうしたカツオは選別され、解凍した状態で生食用として店頭に並ぶ。3割ほど安く販売できるので、スーパーや量販店の目玉商品となる。

「安売り合戦で、今はそうしたカツオが当たり前のように販売されていますが、味や鮮度の違いは明らかですね」。緩慢凍結されたものは細胞壁が壊れてしまい、解凍したときにうま味がドリップとして流れ出てしまう。最初は同じようにみえても、時間が経過するごとに色もうま味も損なわれてしまうのだという。

課題山積の中で

「カツオは枯渇しない資源といわれてきたが、この間は減少傾向にあり、10年前には全国で年間約3万トンあった漁獲高が、今では半分程度に。背景には、乱獲、温暖化など、漁業をとりまく多くの要囚がある。なかでも国際的な魚食の需要が急増し各国で漁場の奪い合いになっている現状は深刻だ。

「マグロの代替品として缶詰の原料に使われるなど世界中でカツオの需要が増え、買い付けも難しくなっています。人工漁礁を使って集まってくる魚を一網打尽にする漁法などは、小さい魚も取り尽くしてしまうまさに乱獲。ようやく規制の動きが出始めましたが、罰則もなく各国がどれだけ守るのか」と安藤さんは懸念する。

日本では、漁業者の減少、高齢化がこれに追い打ちをかける。
「最盛期に活躍した漁船が老朽化したのがちょうどここ10年。先を考えれば新たな投資も難しく、一本釣り漁船のうち7、8隻が操業を辞めました」
乱獲の影響で水揚げが減り、収入が減ることで労働に見合わないと漁業者も減る。「悪循環です」と安藤さん。大きく育ったカツオを一本ずつ釣る漁法は、資源保護の意味でも貴重だが、このまま世界中が魚を食べ始めたら、とても太刀打ちできないのではないかと不安もよぎるという。

伝えたい魚の価値

魚介に注目する国々が増えるなか、日本では消費者の魚離れが進んでいる。
この流れに「肉類だって今、世界で奪い合いです。しかも肉をつくるには、その何倍もの重量の穀物が必要だし、それも遺伝子組み換えした飼料が、どんどん増えています。そうした食が中心になってしまってこの先、いいのでしょうか」と安藤さんは疑問を呈す。

魚は海の環境と資源さえ守れば、養殖を除きほとんど海が育ててくれる。効率よく摂取でき、健康にもいい良質のタンパク質だ。年間消費量が減少しているとはいえ、日本人の動物性タンパク質摂取量に占める魚介類の割合は36%を超え世界でもトップクラスだ(2009年 水産庁資料)。
「加工用のカツオを生食用に販売したりするから魚本来のおいしさが伝わらなくなってしまうのではないでしょうか。それが魚離れにもつながっていると思うと残念です」と安藤さん。

産業としての漁業を考えれば課題は多く、漁協だけでは解決できないことも多い。それでも、漁師が資源を保護しながら大切に取ってきたものを、一番いい状態で提供することがまずは自分たちにできることだという。本物の魚のおいしさを伝えることで魚の価値を広げていきたいと考えている。

(写真1)赤道周辺から船内凍結された状態で運ばれ、水揚げされるカツオ
(写真2)マイナス50度の冷凍庫で保管
(写真3)凍結した状態で加工される

僕たちの「マグロ」

枕崎市漁協は、2007年から市内にある鹿児島県立鹿児島水産高校と提携関係にある。同校は毎年3回、生徒が実習船「薩摩青雲丸」に乗りマグロはえ縄漁などを体験する約70日間に及ぶ遠洋航海実習を行う。そこで取れたマグロの一部を枕崎漁港に水揚げし、漁協が買い上げて地元スーパーや生協などに販売する。

その名も「僕達(たち)が獲った水高マグロ」。高校生が命名し、パッケージデザインも手がけた。保護者たちの要望で始まった試みだが、「○○さんちの子が取ってきたマグロ」などと評判は上々だ。
だが実習を体験しても漁師になる生徒は年に一人いるかいないかで、多くは漁業ではなく船舶関係の職種を希望するという。
「それでも漁を経験し、マグロの提供に関わることで、どこかで漁業が次世代につながっていくかもしれません」。安藤さんは、長い目で見守っている。

今年3月、約70日間の実習を終えた青雲丸が枕崎漁港に帰港した。この実習に参加した2年生の福戸山巧海さんは「多くの魚種が実際に水揚げされる光景を間近にみられた」と楽しそうに話す一方、「魚の価値をいかに損なわず食べる人に届けるか、多くの技術を学ぶことができた」と今後の意気込みも語ってくれた。
小さいころから魚と海が大好きだったという福戸山さんの目標は漁師になることだという。課題山積する漁業の未来を切り開く力は、こうしたところから生まれるのかもしれない。

(写真右上)薩摩青雲丸の帰港を迎える枕崎漁港
(写真右下)鹿児島県立鹿児島水産高校2年の東郷優美さん、木原天磨さん、福戸山巧海さん。東郷さんは船舶関係、木原さんは気象関係の仕事をめざしているという
(写真最下)青雲丸の前で。70日ぶりに日本に戻った水産高校生たち。右は「僕達(たち)が獲った水高マグロ」


◆消費材の活用法─かつお本来の「おいしさ」を


「枕崎ぶえん鰹(かつお)」
生臭いとされるカツオのイメージを払しょくしようと、漁師たちが考案したのが船上での活き締め処理。釣り上げた時点ですぐに血抜きし、血管など臭みのある部分を取り除く。独特の臭いが和らぎ、モチモチした食感、鮮やかな赤身になるという。
枕崎市漁協が試行錯誤の来に独自に開発した処理方法で、塩漬けの必要のない新鮮な魚を「ぶえん」と称していたことから「枕崎ぶえん鰹」と命名された。「従来のカツオよりワンランク上の赤身のうま味が味わえます」と同漁協の総合加工場営業課長、安藤昭人さんは言う。

炭火焼きの香ばしさ
一般に「炭火焼きカツオのたたき」とされるのは、最後の仕上げだけ炭火を用いるのが通常だが、枕崎市漁協の加工場では全工程、炭火を用いる。炭火の発する赤外線は、表面を均一にすばやく焼き上げ、うま味を内部に閉じ込める働きがあるからだ。長さ釣3メートルのベルトコンベヤー式焼き台の前で、時折、従業員が炭火の状態をチェック、炭の補充を行う。 「火加減の調整が難しいんです。自分が食べておいしいと思うものを届けたいですからね」と安藤さん。大根おろしにおろしニンニクを混ぜ、軽く絞ったものを、大葉とともにスライスしたカツオの上にのせて、ぽん酢で食べるのが、一番のおすすめだという。

家庭まで冷凍が最適
「生協の共同購入は、刺身用のカツオを鮮度よく食べるには最適のしくみ」と安藤さんは言う。スーパーや量販店では、近海のもの以外は冷凍流通しているカツオを店で解凍、カットして店頭に並べることが多い。店の都合に合わせて解凍されるので、いつ解凍したかもわからない。船上の凍結処理で一時停止していた劣化は、解凍した時点からどんどん進行する。
「時間の経過とともに、色が落ち、味もすかすかになります」と安藤さん。一度も解凍されずに加工された刺身用のカツオが凍った状態で家庭に届き、食べる時間に合わせて解凍できるしくみは、実はかなりすぐれているのだという。

おいしく食べる解凍法
①冷凍庫から出し、流水またはためた水に3分つける②真空の袋に少し空気を入れ冷蔵庫で40分~1時間おく(季節や外気温によって調整)③半解凍の状態でスライスし、ラップで覆い再び冷蔵庫で10~15分おく。
食べる1時間半前から解凍を始めるのが一番おいしくできる方法。
「朝から冷蔵庫に移しておくなんてとんでもない。ドリップとともにうま味がでてまずそうに変色してしまいます」と安藤さんはアドバイスする。

(写真右上)急速凍結したカツオを加工したものは、細胞が生きているため解凍後「ちぢみ」が発生しドリップもでない
(写真最下)微妙な火加減を調整しながら炭火で焼き上げうま味を閉じ込める

『生活と自治』2016年7月号の記事を転載しました。

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