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生協の食材宅配【生活クラブ】
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沃土に未来を託して

沃土会(よくどかい)は埼玉県深谷市を中心とした野菜の生産者グループ。1981年設立当初より化学肥料を使わず微生物による土づくりに取り組んでいる。おいしい野菜を消費者へ届けるとともに、未来へ続く農業のための土づくりでもある。

土をつくる

「微生物が働いている土には虫が寄ってきませんよ」と、沃土会生産者代表の丸山幸生さん。会員は現在29名。堆肥、なたね油かす、稲わら、もみ殼、落ち葉などを利用して、自然界の微生物を働かせ、病害虫の発生しにくい土をつくり、さらに虫を防ぐために畑まわりの除草作業をていねいに行ない、防虫ネットを使う。「沃土」とは、化学肥料を使わず、有機質をたっぷりと入れ微生物が増殖し分解することによりできる腐植物の多い土壌のことだ。沃土会は、自然界に負荷をかけないよう、化学の力に頼らないで手間ひまかけて作物を生産する。

丸山さんは農家の5代目。先代の時代は高度経済成長期で、化学肥料や農薬を大量に使う農業を営んでいた。しかし環境汚染が問題になり、化学物質が自然界に与える影響を考え、20年ほど前に沃土会に参加して有機農業に転換し、5年の歳月をかけて土をつくり替えた。「農法を変えるのはとても大変でした。苦労しても続けられたのは、同じように環境をよくしていこうと考える仲間がいたからです。農業は一人ではできません。地域で力を合わせて環境づくりをしていくことが大切です」と振り返る。

沃土会では1年を通して40品目以上の野菜を栽培する。関東平野の北部にあるこの地域は、ほとんど雪が降らず霜柱も立たない。日照量も十分にあり、農業に適した温暖な気候だ。自然災害も少なく、利根川と荒川に挟まれた肥沃で平らな土地には、半径10キロの範囲に米、麦、果樹、シイタケ、花きなどが栽培される。

また畜産も盛んだ。稲作でできた稲わら、米を牛、豚、鶏が食べ、そのふんで堆肥をつくり、できた堆肥を畑にすきこみ野菜を育てる循環型農業が営まれる。同じ地域にある米澤製油の油かすや、遺伝子組み換えではない飼料を食べている生活クラブたまごの鶏のふんも堆肥の原料になる。

近年、世代が変わり、農業を続けられずに土地を手放す農家が増え、農地のそばに住宅が建つことも多くなった。住宅に隣接する農地では臭いが気にならないよう畜産堆肥を避け、植物をそのまま田畑にすきこむ「緑肥」を使用するなど、都市農業ならではの工夫も欠かせない。

左上写真:沃土会生産者代表の丸山幸生さん。2011年の原発事故後、消費者の注文が減ったときはつらかったが、自分や家族の健康、周囲の環境を考え直し、農業の基本に立ち返るきっかけにもなったという
 


ミニトマトのハウスには稲わらを敷き、ミツバチを放して受粉を助ける

アースメイド野菜

化学肥料や農薬を多用する農業は、自然界に多大な負荷をかける。
生活クラブではこれをできるだけ回避するため、土づくりを基本とし独自の生産基準で野菜の生産をすすめてきた。この基準に基づいて栽培された野菜を、昨年11月より「アースメイド野菜」と名付け取り組んでいる。毒性の強い農薬の量と散布回数を減らし、残留農薬は国の基準の10分の1未満の達成を目標とし、放射能は国の基準の4分の1以下にあたる25ベクレル/kg以下(生シイタケは50ベクレル/kg以下)、情報公開が原則だ。

アースメイド野菜の中でも栽培方法に違いはあり、それがわかるように、カタログ上に「あっぱれ育ち野菜」と「はればれ育ち野菜」のマークを付けた。

あっぱれ育ち野菜は、栽培期間中、化学合成農薬と化学肥料を使わないで育てた野菜、はればれ育ち野菜は、栽培期間中、化学合成農薬と化学肥料をできる限り減らして育てた野菜だ。

さらに、生産者が生活クラブと持続可能な関係をつくっていくために独自の基準を設けた。天候や病害虫など予期せぬ事態は農業につきものだ。その際、農家だけがリスクを負うのではなく互いに受容していこうというのが、アースメイド野菜の考え方。農薬使用が不可避とされるケースでは、毒性の弱い農薬を使い、はればれ育ち野菜として出荷し、その後基準を満たした段階であっぱれ育ち野菜に戻すことができるとした。

栽培方法ではなく品種が特徴的な野菜は「たぐいまれ野菜」と名付けられた。特徴的な味の品種や地城で昔から栽培されている品種がそれにあたる。その土地で何世代にもわたってつくられ、その土地の気候風土に合った作物や伝統野菜といわれるもので、上手につくるのが難しいため栽培できる地域は限られているが、食べて味の特徴を知ってほしい野菜だ。今のところ「黒田五寸人参」「新黒水菜小松菜」「長ねぎ(あじぱわー)」の3品種がある。

沃土会事務局の小野塚信市さんは「あっぱれ育ち小松菜」、ピーマン、モロヘイヤなどを出荷する。
「自分は30代から農業を始めました。それまでは2時間半をかけて都内に通勤していたので時間がもったいなく、また3人の子どもたちに安全な食べ物を食べさせたいと思うようになったのです。沃土会で3年間講習を受けて就農しました。20年を経て野菜づくりがうまくなりましたよ」と胸を張る。

右写真:丸山さんが育てるピーマンの苗。品種は「ちぐさ」

写真左から、米澤製油の「菜種油粕(かす)」、良質の微生物がつく稲わら、ほ場のまわりに住宅が並ぶ

手ごたえが励みに

沃土会がつくる野菜は農法に照らし合わせると、すべてがあっぱれ育ち野菜とはればれ育ち野菜に当てはまる。生活クラブの注文を受けて出荷する業務を担当する小野塚さんは、「あっぱれ育ち野菜とはればれ育ち野菜の取り組みが始まった昨年の冬は、例年より注文が増えました。11月から12月にかけては余ってしまうこともありましたが、1月以降は収穫した分、希望通りに出荷できました」と、自分たちが進めてきた農法が認められていると手ごたえを感じている。

しかし、生活クラブの取り組み上、あっぱれ育ち野菜として扱える品目は現在、小松菜など6品目だけで、ほかの品目は同農法でつくってもカタログ上、そうは表示されない。また、生産量がまとまらず欠品となる可能性が高い季節には、あっぱれ育ち、はればれ育ちのマークをつけず標準野菜として扱われることもある。

沃土会は、需要に合わせて同じ農法でつくった野菜を供給できる産地を広めるために、ほかの生産者を招いて長ねぎの無農薬栽培の講習会を開いた。「長ねぎを育てて収穫するには1年間かかります。無農薬栽培はむずかしく、またその土地で長年行ってきた農法を変えるには不安が残るものです」と小野塚さん。それでも「安定供給できるように、これからも講習会を開き情報を共有しながら農法を広げていきたい」と抱負を語る。

沃土会の土づくりはおいしい野菜をつくるためのものだ。化学肥料や農薬に頼ると病気が発生し連作障害の原因になり土を壊す。土づくりをして農業の土台さえつくっておけば、これから就農する人につなげることができる。沃土会はそんな将来への想いを持った生産者の集まりだ。

右上写真:同じ思いの仲間とおいしい野菜をつくっている。左から丸山幸生さん、小野塚信市さん、金井修己さん
 

左写真から、トマトはひとつひとつ汚れをふいて箱詰めする、収穫した野菜を計量し、生産者カードとともに袋詰めする出荷作業場

◆あっぱれ、はればれ & たぐいまれな野菜づくり

撮影/高木あつ子 文/本紙・伊澤小枝子

生活クラブ連合会が、首都圏の組合員と地場生産者、全国農業協同組合連合会(JA全農)で「種子農法推進チーム」をつくったのは2002年のこと。当時は、農法が生産者によってバラバラで、種子は海外への依存率が8割を超えるとされ、規格は生産や流通の都合に合わせ画一化される一方だった。そこで、農法を統一し、つくりにくさや見た目の悪さはあっても、おいしくて個性のある在来種を残して種子の国内自給率を高めていこうと活動が始まった。長ねぎ、ほうれん草、小松菜などのさまざまな品種の試験栽培や試食を繰り返し、おいしくて特徴ある品種が絞られていった。その中で実際に取り組みが始まった、「黒田五寸人参」「新黒水菜小松菜」「長ねぎ(あじぱわー)」の3品種が「たぐいまれ野菜」だ。

長ねぎ(あじぱわー)は群馬県の「下仁田ネギ」と神奈川県の在来種「湘南ネギ」の交配種。加熱すると甘くてジューシーだが、緑の部分が折れやすく、土寄せや収穫の作業の時に手間がかかる。沃土会で以前から栽培している黒田五寸人参は、芯まで鮮やかな紅色で人参らしいうまみと香りがあるにもかかわらず、生育の差が大きく不揃いなため限られた地域でしか栽培されなくなった。一般に見られる小松菜はチンゲン菜との交配種で、茎が太く葉が折れにくく収穫も流通も容易だ。新黒水菜小松菜は折れやすく傷みやすいが、やわらかな食感と小松菜らしい味をなくしたくないと栽培が続けられている。沃土会の小野塚信市さんは新黒水菜小松菜の栽培に挑戦した。「生育が気温に大きく左右され、いつ収穫できるか全く予想がつきません。大きく育ちすぎるなど、生活クラブの企画週と出荷の時期を合わせることがとても難しいです」と苦労を語る。

沃土会で親の代から農業を営む金井修己(おさみ)さんは、3品種のトマト、ズッキーニ、ルッコラ、筒菜、かき菜など多くの種類の野菜を栽培する。農薬と化学肥料の使用はすべて、「はればれ野菜」の農法に定められた基準以下に抑えている。
トマトのわき芽をていねいに取り除き、4月にズッキーニの花が咲くころは、手作業で雄花の花粉を雌花に着けて受粉させる。手間を惜します作業を続け、季節が進むと、トウモロコシ、モロヘイヤ、なす、二ガウリ、ピーマン、玉ねぎ、ジャガイモなどでほ場が埋まっていく。何種類もの野菜が区切られたスペースに隣り合わせで育つほ場が、緑のグラデーションの美しいパッチワークのようにひろがる。それは、未来もこの土で作物を育てることを願う農業者と、その生産物を利用する消費者がつくる、いつまでも残したい風景だ。

右上写真:沃土会生産者の金井修己さん。20年ほど前、迷わずこの道に進んだ

『生活と自治』2017年6月号の記事を転載しました。

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