「共謀罪」テーマに社会経済セミナーを開催
生活クラブグループのシンクタンク「市民セクター政策機構」と生活クラブ生協の提携生産者からなる「生活クラブ親生会」は昨年12月9日、大阪市内で「共謀罪」をテーマに「社会経済セミナーin大阪」を開催しました。生活クラブ連合会と関西地区の生活クラブ生協も協賛し、生活クラブから組合員など約70人が参加しました。
演題は「先にあるもの」に
社会経済セミナーは37回目の開催になりますが、「市民セクター政策機構」が一般社団法人となり、関西地区にも生活クラブの仲間が増えたことから、生産者でつくる生活クラブ親生会(近畿親生会)の共催で、関西では初めての開催となりました。
初めに同政策機構の伊藤由理子副理事長が「共謀罪ができて、私たちが自由に考え、自由に事業活動を行なっていることが監視され、何らかのレッテルを貼られるような社会が来ているのではないかと思うと、大変な危機感を持ちます。どうしていったらいいのかということをしっかり考えたいと思います」と開会のあいさつをしました。
続いて、横浜合同法律事務所所属で、秘密保護法対策弁護団事務局次長を務める海渡双葉弁護士が講演。企画段階での演題は「共謀罪の危険性」でしたが、その後の衆議院の解散、総選挙で自民党など改憲を掲げる勢力が増えたことから、急きょ「共謀罪の先にあるもの」と題しての講演となりました。
条約は無理やりのこじつけ
海渡弁護士はまず「私の弁護士人生はずっと安倍晋三首相の政権で、特定秘密保護法の後にも戦争法(安全保障関連法)も出てきて、早く安倍首相が辞めてくれないと私の仕事が増えて仕方がありません」と会場を笑わせた上で、「法の原則や憲法を軽視することがどんどん出てきているので今後も抵抗していかなければならないと思いながら活動しています」と自己紹介しました。
海渡弁護士は犯罪の実行について合意しただけで成立する共謀罪の特異性を分かりやすく解説。「既遂」「未遂」に加え、日本では殺人の道具を用意するなどの「予備」も処罰対象になっていますが、共謀罪はそれ以前の段階で犯罪が成立し、「具体的な危険が生じていなくても、話を持ちかけた、反対しなかったという場合でも処罰される可能性があります。(現行の)刑法の『行為』を処罰するという基本原則を否定しています」と述べました。
さらに、政府が共謀罪新設の根拠として国際組織犯罪防止条約批准のためで、東京五輪・パラリンピックに向けてのテロ対策と説明していたことに触れ、「条約は主としてマフィアの経済犯罪を念頭に置いており、テロ対策とは無関係。共謀罪がないと批准できないというのは、無理やりのこじつけだったのではないでしょうか」と指摘。「処罰要件とされた『準備行為』も曖昧かつ広範囲で、処罰の対象が限定されているとは到底言えません」として共謀罪の危うさを示しました。
市民を黙らせる共謀罪は廃止を
また、盗聴の日常化など共謀罪によって起こりうる悪影響を挙げ、「『物申す市民』が例えば、座り込みなどで抵抗するようなことを組織的にやれば共謀罪の対象になります。そういう話し合いをした時点で共謀罪に問われる危険性が高くなります」
その上で海渡弁護士は「だからこそ私たちは声を上げていかなければなりません」と訴え「みんなでこんなのに負けないぞという形でやっていかなければなりません。共謀罪に限らず社会問題に対して声を上げていくことが重要です。改憲による『戦争ができる国づくり』を終わらせるために市民を黙らせる共謀罪は廃止しなければなりません」と締めくくりました。
参加者との質疑応答の後、生活クラブ大阪の浅井由起子理事長が閉会のあいさつで「もしかしたらと恐怖を感じました。そういう社会にしないために、社会問題に関心を持つ市民になる必要があると感じました」と語りました。
★海度双葉さんの講演録は、市民セクター政策機構の季刊誌『社会運動』2018年4月15日発行号に掲載予定です。
市民セクター政策機構のウェブサイト
http://cpri.jp/
【2018年1月10日掲載】