生活クラブの電気をつくる発電所―地域の自立をめざす会津電力
自然エネルギーの割合が高い電気を共同購入することで、脱原発をすすめエネルギーの自給・自治の新しいモデルを作っている、生活クラブの電気の共同購入「生活クラブでんき」。生活クラブでんきの電力はさまざまな自然エネルギー発電所から調達していますが、その調達先の中に、東日本大震災後に福島県に誕生した2つの電力会社、会津電力(株)と飯舘電力(株)があります。今回はその一社・会津電力(株)と生活クラブの出会い、会津電力(株)から電気を調達することになった経緯などを、(株)生活クラブエナジーの半澤彰浩代表取締役(生活クラブ神奈川 専務理事)に聞きました。
震災をきっかけに生まれた会津電力
以前このコラムで、生活クラブが建設した発電用の風車「夢風」のことを紹介しました(vol.22「生活クラブ風車「夢風」から広がるいきいきした交流と地域活性化」)。「夢風」は、自分たちで自然エネルギーを作っていく取り組みのひとつ。その他にも生活クラブでは、配送センターや工場等に設置した発電施設で自然エネルギーによる電力を生み出しています。ただ、そうした生活クラブでの電力調達だけでは足りないこともあり、自然エネルギー発電にしっかり取り組んでいる他の発電所や提携生産者にも、調達先を広げていきたいという話は当初からあったのです。
そんな中で出会ったのが、会津電力(株)代表取締役の佐藤彌右衛門さんでした。会津電力(株)は、2013年に設立された自然エネルギーによる電力会社です。佐藤さんはそもそもは、喜多方の大和川酒造店という江戸時代から続く有名な酒屋さんの9代目当主。しかし、2011年3月11日の東日本大震災とその後に起こった東京電力福島第一原発の放射能漏れ事故によって、原子力発電の危うさに直面したといいます。佐藤さんの酒造りは水も米も地元のもので、昔は酒造りに必要なエネルギーもまわりの山からの薪でまかなっていたそうです。会津は元々そうした「里酒」を育むことのできる豊かな土地でした。佐藤さんは震災と原発事故をきっかけにあらためて、酒造りのための電気も、原発に頼らず地元で自分たちの手で作りたい、と思い会津電力(株)の設立に至ったそうです。
佐藤彌右衛門さん
自然エネルギーによる電気が「顔の見える関係」で地域や人をつなげる
佐藤さんが設立した会津電力(株)は、「地域で使うエネルギーを、地域でつくるエネルギーでまかなう」ことをめざす会社。ただ、地域外の人から「会津電力の電気はどこで買えるの?」などと聞かれることもあって、「顔の見える関係であれば会津電力で発電した電力をどこかに売電できないか」ということも考えていたそうなんですね。そんなときに私たち生活クラブエナジーと会津電力との出会いがありました。私と佐藤さんとで意見交換をする中で、生活クラブエナジーが地域の自然エネルギー発電所から電気を調達したいと考えていることを伝えると、佐藤さんも、生活クラブのような志のある組織に供給することを願っていたという話になり、提携に至りました。
会津電力(株)は、小規模分散型の太陽光発電所を中心に、福島県内に70か所以上の発電所を持っています。その中の一つが会津地域初のメガソーラー発電所である「雄国太陽光発電所」。この雄国太陽光発電所の電気が、生活クラブエナジーに供給されています。双方の関係が生まれる中で、生活クラブの組合員が会津電力の発電所を訪ねるような交流も始まっています。また、佐藤さんの酒造会社である大和川酒造店の工場や地元のガーデンホテル喜多方が、生活クラブエナジーから電気を購入しています。地元でつくったエネルギーを使うことで、利益を地元に還元できるしくみです。
自然エネルギーを軸にした取組みで地域活性化をめざす
ドイツに「シュタットベルケ」という、地域の自治体が電力会社を作って地域でエネルギーを回していく地産地消の発電事業の形態があります。会津電力(株)もそういった地域で回していくモデルを念頭に置いています。実は会津は、只見川や猪苗代湖などの立派な水源を持ち、自然エネルギーによる発電の能力を十分に持っている地域なんです。
自然エネルギーというのは太陽や風、水といった地元の資源を使っているので、もともとは地元のものなのですが、電力政策の歪みにより、大手電力会社が利益を独占して地元が潤わないようなしくみになってしまってるのが現状です。
生活クラブは電気の共同購入を通じ、こうした小規模・分散型の発電所との結びつきを深め、自然エネルギーを軸にした自給・自治のしくみづくりと地域活性化への実践を、地域と共にすすめていきたいと考えています。会津電力(株)との取組みがそのひとつのモデルになっていけばと思っています。
((株)生活クラブエナジー 半澤彰浩代表取締役 談)
【2018年6月4日】