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生協の食材宅配【生活クラブ】
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極上のすり身で作る魚肉練り製品を、日々の食卓に

伏見蒲鉾(ふしみかまぼこ)は新潟県新潟市に本社がある魚肉練り製品の生産者だ。新鮮な魚を使い、リン酸塩を添加しないすり身を原料として、「蒸しかまばこ」、「カニ風味スティックかまぼこ」、「あら挽きいわしつみれ」など、生魚とはまた別の味わいのあるかまぼこ類を作る。

冷凍すり身って?

スケソウダラ(写真/伏見蒲鉾提供)

以前、かまぼこメーカーは、それぞれの前浜に揚がった鮮魚を仕入れてすり身を作り、それを加工し魚肉練り製品を作っていた。しかし1959年、リン酸塩を添加した冷凍すり身の製造技術が開発されると、スケソウダラの冷凍すり身が大量生産されるようになり、それが魚肉練り製品の原料の主流になっていった。

主に白身の魚は、魚肉を生のまま冷凍し保存すると、タンパク質が変性してしまい、解凍しても弾力のあるすり身を作ることはできない。しかしリン酸塩と糖類を加えると、品質が変わることなく1年以上保存することができる。

リン酸塩は食品添加物の一つで、タンパク質の変性を防ぎ保水性を高め、すり身の弾力を保つ効果がある。 一方、体の中ではカルシウムの吸収を抑制する働きがあり、過剰摂取には注意が必要だ。ただ、現在の食品の原材料の表示方法ではすり身自体が一つの原料とみなされ、添加物の表示は免除される。そのため、リン酸塩が使われているか否かはわからない場合が多い。

また、冷凍すり身を作るとき、「水さらし」といって、細かくした魚肉を水にさらして余分な脂肪などを除く工程がある。水量やさらす時間が適当でない場合、本来のうま味や香りが残らない。それを補うため製品にする際、化学調味料などの食品添加物が加えられることも多い。

①②かまぼこの形をした出口。二重になっていて、外側の溝からニンジンペーストなどを練りこんだ「上のり」が出てきて2色のかまぼこになる ③弾力を出すために一晩冷蔵してから蒸して仕上げる。板は、蒸したり冷やしたりする時に、かまぼこの水分を調節する働きがある
 

試行錯誤の蒸しかまぼこ

企画開発部長の長谷川義修さん

生活クラブと伏見蒲鉾の出会いは70年代後半。魚肉練り製品の原料がリン酸塩を使う冷凍すり身に移っていき、保存料や甘味料、着色料など添加物の種類や使用量が増え続けている時代だった。

その頃、添加物を使わず安心して口にできる食品の開発をすすめていた生活クラブは、組合員の強い要望により、添加物を排除した正月用かまぼこの製造を伏見蒲鉾に依頼した。その時の申し入れは、原料魚が明らかでリン酸塩が添加されていない(無リン)すり身を使い、化学調味料などの添加物を使わないで作ることだった。

当初はリン酸塩の代わりに塩を加えたスケソウダラの加塩すり身を使った。加塩すり身は劣化が早いと同時に、 一定の品質のものを手に入れることは難しく、製品にする時は状態を見ながら加える水の量や攪拌時間を細かく調節した。

「冷凍すり身は、品質を一定に維持する働きのあるリン酸塩使用を前提として開発されました。そこからリン酸塩を抜いてすり身を作り、かまぼこを製造するには大変な苦労があったようです」と、現在企画開発部長を務める長谷川義修さん。化学調味料を使わない代わりに、高価だがうま味の強いグチ(イシモチ)のすり身を加えるなど、さまざまな試みを繰り返したという。 
その後、塩ではなく砂糖だけを加えたすり身を作っているメーカーの存在を知り試したところ、及第点のかまぼこができた。量産品ではないため完全な特注品となることを承知で、伏見蒲鉾は本格的に原料すり身の生産を依頼した。

さらに85年、紅白のかまぼこをそろえようと、赤い着色料の代わりにニンジンペーストで色づけしたかまぼこを作った。薄いだいだい色で物足りなさはあるが、かまぼこは白しかなかった生活クラブのお節料理が少しばかり華やいだ。

営業部副部長の五十嵐孝さんは、「無リンのすり身を使い、化学調味料などの添加物を使わないでかまぼこを作り、さらにニンジンペーストで色をつけたのは生活クラブだけです」と、無添加にこだわったことに胸を張る。その後、新たな組合員の要望を受け、紅麹色素を使ったやさしい色合いの赤いかまぼこも作るようになったが、30年以上利用され続けているニンジンペーストで色付けされたかまぼこには、格段の思いがある。

左から「蒸しかまぼこ 赤(紅麹)」「蒸しかまぼこ・白」「蒸しかまばこ・赤(人参)」。現在、原料魚はミナミダラとグチ(イシモチ)

あら挽きいわしつみれ

白根工場の第2工場。「あら挽きいわしつみれ」は奥の南工場で作る

伏見蒲鉾は、クリスマスや正月用に「ジングルベル蒲鉾」「蒸しかまぼこ」「かまぼこ松竹梅セット」などを、また、普段用に、「なると巻」「コーン入りさつま揚」「サラダかまぼこ」など約20品目の練り製品を製造する。

「あら挽きいわしつみれ」は、頭、骨、内臓、皮を除いて作る、スケソウダラの無リンすり身とイワシのミンチが原料だ。スケソウダラのすり身は北海道、イワシは鳥取県の境港に水揚げされる。

スケソウダラは船上で冷凍すり身に加工され、その品質は、魚の鮮度、水さらしの方法、すり身にする技術などにより大きく変わる。伏見蒲鉾が買い入れるすり身は日本人の技術者が乗船し指導してていねいに作ったものだ。

加工工場では「サイレントカッター」が、切る、練る、混ぜるといった処理を一手に行う。スケソウダラのすり身と水を入れほぐしたあと、塩を加え攪拌する。すると、ぼそぼそだったすり身に粘りが出てきてなめらかなペースト状になる。

「質のいいすり身を使えば、指示書通りに作業することで失敗なく製品を作ることができます。それでも、塩を加えてから攪拌する時間の見極めなど、それなりの経験が必要な職人仕事ですよ」と長谷川さん。 卵白、でんぷん、みそなどを混ぜた後、スケソウダラの2倍強の量のイワシのミンチを加える。あら挽き感を残すために短時間カッターにかけ、つみれの形に整えてゆで、さらに蒸すと、ふっくらとしたあら挽きいわしつみれができあがる。秋冬限定のもので、おでんの具としてはもちろん、スープやみそ汁に使ってもいいだしが出る。 また、サイレントカッターでは、生活クラブに出荷するもの以外の製品も作る。「それぞれの製品を作った後に洗浄し、さらに一日の最後に徹底して洗いますが、生活クラブ向けのものは、他の添加物が混じらないように朝一番に作っています」 
 

①塩を加える前のすり身。ボソボソしている ②塩を加えて練ると、粘りが出てくる ③イワシのミンチを加える。サイレントカッターは、一度に約270キロの「あら挽きいわしつみれ」の原料を作る

生産者のみなさん。できたての「あら挽きいわしつみれ」を前に
 

実は、栄養の宝庫

営業部副部長の五十嵐孝さん。伏見蒲鉾白根工場のまわりには、米どころ越後平野の水田が広がる

「魚肉練り製品には魚のタンパク質が多く含まれています。そのうえ、よけいな脂肪分はすり身を作る時に水で洗い流されますから、高タンパク低脂肪の食品と言えます。イワシなどを骨や皮もまるごと使う場合には、カルシウムや鉄分、体内で合成されない必須脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)などがたくさん含まれます。また、血糖値の上昇を抑制する働きがあることもわかってきました」と、長谷川さんは魚肉練り製品の魅力をあげる。

しかし現在は、魚肉練り製品の本当の味や良さが正しく認識されにくくなっていて残念だと言う。

「近年は価格競争が激しくて生産コストを下げざるを得ないことも多い。そのために原料のすり身の質を落としたりすると、まともな製品にはならないので添加物を入れて補うといったものが市販品には多く出回っています」

たとえば、かまぼこの弾力を出すために増粘剤を添加する。これは原料のすり身の品質が良ければ入れる必要がない。ペーハー調整剤は日持ちを良くし、ソルビトールは甘味料として使われる。「添加物が必要以上に増えていけば魚の味がうすれ、消費者は魚肉練り製品とはこんなものかと思ってしまいます」

五十嵐さんが続ける。「私たちは自分も含めて家族が喜ぶ食べものを作ろうという気持ちでおいしいかまぼこを作っています。魚肉練り製品の本当の価値を知ってほしいですね」

撮影/魚本勝之  イラスト/堀込和佳  文/本紙・伊澤小枝子

かまぼこ三昧

魚肉をすりつぶし、塩を加えて練った後、蒸す、焼く、ゆでる、揚げるなどして魚を食べやすく加工した食品が魚肉練り製品。ちくわ、さつま揚げ、つみれなどは、おでんや煮物の具材というイメージが強く、 一度火を通さないと食べられないと思われがちだが、加熱してあるのでそのまま食べることができる。また、生魚と違い一週間程度冷蔵庫で保存可能なものがほとんどだ。常備しておき、酒のつまみや、うどん、ラーメンのトッピング、弁当などに利用したい。

伏見蒲鉾は10年ほど前、 一般市場で人気商品だった「カニカマ」に着目して「スティックかまぼこ」を開発した。市販品の原料のすり身には、品質保持のためのリン酸塩や甘味料のソルビトールが加えられるが、それらを添加しないミナミダラのすり身を使った。色付けも合成着色料ではなくオキアミペーストとニンジンペースト。化学調味料も使わない無添加のものだった。細く割いてサラダや卵焼きの具、そのまま海苔巻きの具材に、などさまざまに工夫して使われた。 

その後、カニのぺーストやエキスを加え、よりカニの風味を増し紅麹色素で色付けをした「かに風昧スティックかまぼこ」として食卓を彩っている。

「コーン入りさつま揚」や「お野菜きんぴら揚」など揚げ物に使うタマネギ、ニンジンゴボウ、キャベツなどの野菜類は、旬に応じて国内の各生産地から仕入れ、自社工場内で洗い、皮をむき、カットする。そのため新鮮な野菜の味や風味がよく生きた揚げ物ができる。

弁当やつまみに便利な「茶豆入りまるかまぼこ」は、山形県産のだだちゃ豆をすり身に混ぜ込む。同じような形の「ミニ焼きかまぼこ」は、最初から最後まで焼く「焼きぬき」という方法で加熱するが、茶豆入りまるかまぼこは、形を整えた後、蒸してから焼く。茶豆の食感を生かすためにひと手間を加え、おいしそうな焼き色のついたかまぼこに仕上げる。

ちなみに、伏見蒲鉾の本社がある新潟県は「黒埼茶豆」など味の良い品種の枝豆の生産地で、枝豆の作付面積や収穫量が全国の上位を占める。しかし県民の消費量がとても多く、伏見蒲鉾が原料として使うほどは手に入らないそうだ。

一般に練り製品は、食感を良くしたり弾力を持たせたりするために、卵白や小麦でんぷんを加える。アレルギーのある子どもに、アレルゲンとなる卵と麦を含まないちくわを食べさせたいと願う組合員の要望があり、伏見蒲鉾は「焼ちくわ」の原料を見直した。すり身を、卵白を使うイトヨリダイから卵白を使わないスケソウダラに、でんぷんを小麦ではなく馬鈴薯から作るものに変えた。

アレルゲンはごく微量でも口に入ると反応してしまう人がいることを考え、製造する時は他製品の原材料などが混じらないように細心の注意をはらう。

残念ながら今年3月、伏見蒲鉾の本社工場で漏電による火災が発生し、現在、レンコダイの上品なうま味が加わった「レンコ鯛入り焼ちくわ」は製造していない。すっきりした味で、煮物、炒め物、サラダ、てんぷらなど、季節を問わず楽しめるちくわの製造再開を心待ちにしたい。

イラスト/堀込和佳   文/本紙・伊澤小枝子

『生活と自治』2017年12月号の記事を転載しました。

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